グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 35 何事も特訓が大事 ②

イベントが終わり、楽屋に戻ってきた俺、兵藤一誠を含めたオカ研と、三人の『ゆるキャラ』たち。

戻ってきて早々に、サイラオーグさんは椅子に腰掛けて深くうなだれていた。

「………なんということだ。子供に嫌われてしまうとは……俺は『ゆるキャラ』失格だッ!」

相当ショックを受けているようだ。顔を両手ど覆い、見たことがないほど落ち込んでいる。きっと、畑違いってやつだと思うんですけど。

「きっと、気合いが入りすぎて闘気があふれ出してしまっただけですって」

「そうよ、気にする必要はないわ。場数を踏めば要領も得られるでしょうし。って、何も次期当主がやらなくてもいいのよ?」

俺とリアスが励ますが、サイラオーグさんは深く息を吐いた。

「それでも俺は……己の鍛練の甘さを恨めしく思うばかりだ」

根っからの真面目なヒトだから、いつも以上に張り切っていたのだろう。

『ゴモゴモ』

『ゴモモ』

『ゴモりん』と『ゴモりんJr.』がサイラオーグさんの肩に手を置き、励ましていた。

「……俺を慰めてくれるというのか、ゴモりん。……いや、あなた方は、まさか!?」

サイラオーグさんが何かを察して勢いよく立ち上がった。

『ゴモりん』が頭部を脱ぎ出した。そこに現れたのは。

「ごきげんよう、皆さん。私です」

紅髪のダンディな男性!

「お、おおおおおおと、お父様っ!?」

仰天するリアス!当然だろう!『ゴモりん』の中からお父さんが出てきたのだから!

リアスのお父さんが言う。

「ちなみに、『ゴモりんJr.』は……』

『ゴモモっ』

そう言って『ゴモりんJr.』から現れたのは、

「俺だ」

紅髪の若い男性!

「お兄様!?」

「シドウさんっ!?」

リアスはさらに仰天した様子だ。ロスヴァイセさんも『今日は仕事だから行けない』と言っていたシドウさんが『ゴモりんJr.』の中から現れたのはだから!

 

 

 

 

 

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そんなわけで『ゴモりんJr.』の中から現れた俺、シドウは、汗を拭い、軽く息を整えていた。

「お兄様、大丈夫ですか?」

そんな俺にリアスが訊いてきた。

「ああ、大丈夫だ」

と、言ったものの、本当は辛い。

だって、着ぐるみで『ブランディ』だぞ!?『前方宙返り』だぞ!?『バグ宙』だぞ!?しかもそれで前進だぞ!J○Eのあの人じゃあるまいし、死ぬ!本当に死ぬかと思った!

何てことを心の中で思っていると、リアスがに俺たちに言ってきた。

「お父様にお兄様も!どうしてこのようなことをっ!?」

「落ち着きなさい、リアス。これも公務の一環なのだ。当主だって着ぐるみを着ることもある」

父さんがそう返したが、それはないと思う。当主がそんなことするわけないって!

リアスはそれを聞いて、今度は俺を見てきた。

「俺は、サイラオーグが困ってるって聞いたんでね。恩返しを込めて助けてやろうってな」

「『恩返し』ですか?」

俺の発言を聞いていたサイラオーグが訊いてきた。

「ああ。アウロス学園でグレンデルから助けてもらったからな。その恩返し」

「あの時の、ですか?」

「そう、あの時」

俺たちがそこまで話すと、父さんが咳払いをした。

「さて、サイラオーグ。『ゆるキャラ』の基本は己を殺すことなのだよ。キャラに徹して他者に触れあうことこそが行動原理となる」

「さすが叔父上。叔父上には敵いませぬな」

サイラオーグはそう漏らすと、拳を震わせて始めた。

「しかし、このままでは今後『ゆるキャラ』のイベントには出られんッ!他者が許しても俺がそれを許さないのだッ!このままでいいのか!?否ッ!己を研磨してこそ俺ッ!己を虐げて高めることこそサイラオーグ・バアルなのだッ!」

サイラオーグは心底悔しがっていた。すると、不意にイッセーを視線を送った。

「兵藤一誠、頼みがある」

「え?あ、はい!」

イッセーも少し驚きながらも返事をすると、サイラオーグはイッセーの肩をつかんだ。

「俺と山籠りをしてはくれないだろうか?山でおまえと共に『ゆるキャラ』を高めていきたい……ッ!」

山!なんで急に!?

俺が横で驚いていると、イッセーが訊いた。

「や、山籠りですか?い、いやー、俺、山籠りは何度かしたことありますけど、『ゆるキャラ』の修行はしたことないなぁ……」

少し消極的なイッセーだが、そこに父さんが追撃を加えた。

「うむ。では、サイラオーグ、私が付き添おうではないか」

だったら、

「俺も行こうかな。こっちは命を救われてるんだ。こんぐらいで恩返しは終わらないぜ」

「叔父上!?シドウ様!?し、しかし……」

俺たちからの申し出に若干遠慮するサイラオーグ。すると、父さんが笑みを見せた。

「遠慮するものではないよ、サイラオーグ。ここは叔父の私と、従兄弟のシドウに任せなさい。グレモリーのことなら何でも知っている。『ゆるキャラ』修行に最適な山に案内しよう。兵藤一誠くんもついでに来なさい」

父さんの言葉でサイラオーグは覚悟を決め、イッセーも巻き込まれる形で参加することになった。

「それでは、父さん。座標をお願いします。転移魔方陣は俺が展開しますので」

「うん、任せたよ」

てなわけで、転移魔方陣を展開する。

俺が準備を整えているうちに、サイラオーグがイッセーを捕まえていた。

今にも転移しそうな俺と父さんに、リアスが言ってきた。

「お父様、お兄様!きっと、お母様が激怒されますわ!」

………そ、それは、怖いな!けど、けど、今は!

「男として、通したい義理なんだ!俺は引かない!いや、引けないっ!」

俺は強がってそう宣言したが、横では父さんが震えていた!が、振り切るようにリアスに手を振った!

「……行こう、三人とも!」

「「わかりました!」」

「こうなったらどこまでも付き合いますよ!くそッ!」

俺とサイラオーグはやる気十分に、イッセーはやけくそ気味にそう返事をした。

それの確認ができたところで、転移魔方陣を起動。俺たちは転移の光に包まれていった。

こうして、俺たちは『ゆるキャラ』修行のため、山籠りをすることになった。

 

 

 

 

 




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