グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 33 忍者シドウ! ②

丹紋(たんもん)さんの弟子になってしまった俺は、黒い忍装束に着替え、廃墟の1階にある、ホール跡に移動していた。

俺の横には、同じく忍装束の黒歌、ルフェイ、オーフィス、メタトロン。

着てみて思ったが、この格好、思っている以上に動きやすい。さすがは忍の正式装備だ。

黒歌が言ってくる。

「どうかにゃ?忍の格好は?」

「ああ、動きやすいな。てか、おまえは露出しすぎだろ」

俺は黒歌を指差しながら言った。黒歌以外のメンバーは、いたって普通の忍装束なのだが、黒歌だけは、やたらと露出が多いのだ。

「あれ?意外に私のことを見てるのかにゃ?」

イタズラっぽい笑みを浮かべて黒歌は言ってくるが、

「あ?見てるわけないだろが。俺はセラ一筋だ」

今のところは、だけどな。

「そんな事言っちゃって、溜まっているんじゃないかにゃ~?」

「………黒歌。あと1時間で良い。黙ってろ」

俺と黒歌が口論していると、丹紋さんがそれを制してきた。

「お二人とも、お静かに」

「はい」

「はいにゃ!」

俺と黒歌は一旦口論を止め、丹紋さんの方に向き直った。

「それでは、メタトロン殿。あれを配ってくれ」

「はい。皆さん、これを」

メタトロンが俺たちに渡してきたのは、いわゆる手裏剣というやつだ。

俺は手裏剣をつまみ上げて、様々な角度から見てみる。

こんな十字みたいな刃物を投げるのか、まっすぐ飛ぶのか、これ?

疑問符を浮かべながら手裏剣を見ていると、丹紋さんが言った。

「まぁ、簡単なところで、手裏剣はこうですな」

丹紋さんは手に持った手裏剣を手際よく投げていった!その全てが人型の的の急所に突き刺さる。

おおっ!さすがはニンジャ!

それは別として、俺もこれをやるのか。うまくできるのか?まぁ、やるだけやってやるか!

俺がやけくそで覚悟を決めたところで、丹紋さんが言った。

「では、早速あなた方にも………」

丹紋さんがそう言いかけたところで、建物の外から盛大な爆発音が聞こえてきた!

いきなりなんだよ!やってやろうと思ってたのによ!

俺は心の中で愚痴りながら、黒歌たちと目を見合わせる。二人とも疑問符を浮かべていた。だが、丹紋さんとメタトロンは覚えがあるようで、嘆息していた。

とりあえず、警戒しながら廃墟の外に出ると、

「「「グーッ!」」」

謎の声を出しながら、全身黒タイツの戦闘員が俺たちの目に飛び込んできた!

な、なんだあの格好は!新手のニンジャか!?

俺がさらに警戒心を高めていると、その戦闘員たちが左右にはけ、道を開けた。その道を堂々と歩いてくるのは……。

「グハハハハハッ!NINJAよ、今日こそはグリィィィィィィゴリィィィィィィの軍門に降ってもらうぞっ!」

聞き覚えのある、豪快な笑い声が辺りに響き渡った。今、俺たちの眼前には、鎧、兜、マントということ出で立ちの男性がいる。

眼帯にヒゲ、手には斧と盾。ちょっと昔の特撮ヒーロー番組の悪役を思わせる格好をした、イッセーとは別ベクトルの変態だ。

こいつに会うのは、運動会以来か。

「グハハハハハッ!ついでに貴様の命ももらい受けよう、NINJA天使メタトロォォォォォンッ!」

「アルマロスっ!また貴殿か!」

メタトロンも刀を抜き放ってアルマロスと対峙する。

「当然だ!貴様は我が偉大なる組織グリィィィィィィゴリィィィィィィと因縁の者ッ!今日こそ決着をつけようぞッ!」

そういえば、二人はノアの箱船、大洪水の頃からの因縁があるんだったな。

すると、不意にアルマロスと目があってしまった。

「アイエエエエエエ!シドウがNINJA!?NINJAナンデ!?」

謎のテンションで無駄に驚いてくれた。なんだ、『アイエエエエエエ』って。

アルマロスは一度咳払いをして、俺に言ってきた。

「ぬぅっ!貴様もNINJAを狙っておるのだな!?」

いや、全くの偶然でこうなってるんだけどな。黒歌を追いかけてきたら、出来れば会いたくなかったやつと再開するとは、今日は厄日だ。今年に入ってから、厄日がやけに多い気がする。

「まぁ、良い!今度こそ、NINJAは我々がいただいて行くぞぉぉぉぉぉぉっ!」

斧を俺たちに向けながら、そう宣言してくるアルマロス。本当に帰りたい……。

やる気なしの俺を無視して、アルマロスは続ける。

「今宵は我がグリゴリ自慢の怪人を連れてきたぞ!」

アルマロスはそう言うと指を鳴らした。

まだ何か来るのかよ、面倒だなぁ。

てか、こんなやつが連れてくる怪人とか、どんなのが来るんだろう?

俺が若干楽しみにしていると、アルマロスは叫んだ。

「まずはこいつだッ!いでよ、雪男怪人ッ!」

雪男って、あの白いゴリラ的なあれか?

俺がそんなものを想像しているなか、現れたのは……。

「フッ。まさか、この僕がNINJAの相手とは、まったくエレガントではないね」

ニヒルな笑みを浮かべた、Gの刻印がある白いタキシードを着た白髪のイケメンだった。

そうだ、忘れてた。雪男って、やたらとイケメンたが多いんだよな。イッセーが見たら、なかなかの殺気を放ってくれるはずだ。

「さらにもう一体はこれだっ!我がグリゴリの改造手術を受けて誕生した、河童怪人だぁぁぁっ!」

今度は河童かよ!雪男と来たら、雪女じゃないのか!?

俺が少しだけ、ガックリしていると、現れたのは……。

緑色の肌、頭部の皿、鳥のようなくちばし、亀のような甲羅を背負った、まさに河童だった!

少しイメージと違うのは、両サイドが尖ったサングラスをかけているくらいか。それと、腹部にGの刻印がある。

「フッ。まさか、この俺がこの町に帰ってくる何てな」

自嘲的に笑う河童。今の発言を聞いた限りでは、この町の出身か?

「河童、あんた何者だ?」

俺が素直に訊いてみると、河童は答えてくれた。

「俺はサラマンダー・富田!前はこの町の外れにある池に住んでいた者さ!そういうあなたは?」

河童のさんか。ところで、サラマンダーって炎の妖精だったような……。気にしたら負けか。

「俺か?俺はシドウ・グレモリーだ」

俺が名乗ると、富田さんは少し驚いた表情になった。

「グレモリー?あなた、リアスさんの家族かい?」

「ん?ああ。リアスは俺の妹だ」

俺が答えると、富田さんはさらに訊いてきた。

「あなたの知り合いに、小猫という子は?」

「いるが、それがどうしたんだ?」

「あの子、好きなヒトはいますか?」

なんか、思い入れがあるようだな。だな、それは俺が言うことじゃない。

「それは本人から聞け。俺は何も言わないさ」

「そうか、そうだよな。俺としたことが、当たり前のことを言われちまった」

俺たちはそこまで言うと、同時に構えた。

「あなたに恨みはないが、グリゴリ怪人として、あなたを倒します!」

「俺も恨みはないが、やらせてもらう!」

俺がようやくやる気になったところで、それに割り込んでくる影がひとつ。

「ストップにゃん♪」

黒歌だ。いきなり俺の前に立って、構えを取った。

「なんか、白音の関係者みたいだから、私がやるわ」

「ほう、噂に聞いた小猫ちゃんのお姉さんか。誰が相手だろうと、俺は容赦はしないぜ?」

「ある程度の事情は知っているようね。これ以上は無粋にゃ。習いたての忍法をお見舞いするにゃ!」

黒歌はそう言うと印を結んだ!富田さんも飛び出してくる!

「よくわからないが、任せた!」

そう言いながら、視線を黒歌と富田さんから雪男に移す。

「フッ、僕の相手はあなたかな?」

格好つけながらそう言ってくる雪男。名前も知らない相手だが、黒歌に取られてしまったからな、やるか。

俺が雪男に対して構えると、俺の横をトコトコと小走りで通りすぎる小さい影が……。

「我も戦う。忍法、グレートレッド殺し」

オーフィスだ。オーフィスは走り寄った勢いのまま、雪男にビンタをかました!

ベシィィィィィィィンッ!

凄まじい快音を響かせ、そのビンタはクリーンヒットした!

「アババババババババババーッ!」

異常なまでのパワーのビンタをくらい、雪男は間抜けな断末魔とともに吹っ飛んでいった!

「オタッシャデー」

オーフィスはそんなことを言っているが、どこで覚えたのだろう。

奥でも、

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

アルマロスが、メタトロン一方的に攻撃されていた。あの声はどうにかならないのか?

俺が手持ちぶさたにしていると、前方に魔方陣が出現した。

紋様はルシファーのものだ。……ん?ルシファー!?

俺は驚きながらも見守っていると、そこから出現したのは、

「NINJAがここにいると情報を得たぞ!」

「アイエエエエエエ!?ニイサン!?ナンデ!?」

ニイサンだった!?なぜここに!てか、どこでニンジャの情報を知った!?

俺が驚愕していると、その後方からも魔方陣が出現し、そこから義姉さんが現れた!義姉さんはソッコーで兄さんを取り押さえた!

「ほら、帰りますよ。というよりもいい加減にしないと怒るわよ、サーゼクス!」

「待ってくれ、グレイフィア!冥界にもNINJAが必要なのだ!だから、頼………」

なにかを言い残す前に強制送還された兄さん。一瞬の出来事だったな。

てか、みんな、ニンジャ好きなんだな。ある意味、意見がひとつで嬉しいよ。

一連の出来事を見て、ため息をつく丹紋さん。

「ふむ……。天使やら堕天使やら妖怪やら、忍者もけったいですな」

「なんか、申し訳ない」

「いえいえ、では、修行を続けますよ?」

「「はい」」

「我もやる」

俺、ルフェイ、オーフィスの三人は、黒歌対富田さん。メタトロン対アルマロスの激闘を置き去りにして、忍術の続きを行うことになった。

 

 

後日。俺が部屋でのんびりしていると、

「お兄様!どういうことですか!」

リアスが乱暴にドアを開け放って、部屋に入ってきた。

「こんな時間にどうした?」

俺が訊くと、リアスは悪魔の雑誌を見せてきた。

そこには丹紋さんが載っており、長々とインタビューされていた。

「丹紋さんじゃん!あの人、冥界で活動を始めたのか!」

俺が勝手に興奮していると、リアスが言った。

「ここに書いてあります!『シドウ・グレモリーくんに忍術を教えたのですが、なかなか飲み込みがよかったです』と。お兄様、NINJAの弟子だったのですか!?」

あー、なるほど。そういうことね。

「1回だけ修行したな。なかなか面白かったぞ」

俺がそう返すと、リアスはプルプル震えながら言った。

「どうして私も誘ってくれなかったのですか!?」

「だって、リアスたち寝てたし………」

「それは、そうですが……」

「ま、何か機会があったら紹介してやるよ」

「本当ですか!ありがとうございます!」

リアスは礼をして部屋から出ていった。

やれやれ、ニンジャに関わると面倒事になるな。まぁ、退屈はしなかったけどな。

こうして、忍術騒動は、とりあえずの幕引きとなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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