グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 31 悪魔がお社を建てるそうです ③

俺が徹夜で作業をした日の昼。

切り出したおいた木材を組み合わせて、小さめのお社を組み上げていく。

切り出しと加工の精度がしっかりしていたのか、図面の通りに組むだけでお社が出来上がっていった。そして、形となったお社を固まった土台の上にのせて固定する。

「いちおう、完成か?」

俺がフーっと息を吐いて出来を確認する。俺的には木造の立派なお社に見える。

『おおっ!』

皆で拍手をしながら声を出していた。

「鳥居も届いたぞ」

転移魔方陣からゼノヴィアが朱色(しゅいろ)の鳥居を持ってきた。ヒト一人が通れるくらいの小さいものだ。それをお社の前に設置し、同じく届いたしめ縄もかけていく。

「昨夜、シドウ様が作ったものです」

姫の付き人の妖狐(ようこ)が、俺が徹夜で作ったそれをお社の前に設置した。

「お賽銭箱じゃないですか!シドウさんがこれを作ったんですか!?」

それを見たイッセーが驚きながら言ったが、失礼なやつだな。

「俺をバカにするなよ。こちとら徹夜で作業してたんだ。後半からくっそ眠かったぞ………」

俺は目を擦りながらそう言うと、

『ありがとうございます!』

皆からお礼を言われた。これだけで頑張った甲斐(かい)があったな。

そんなこんなで形になっていくお礼周り。そして、最後に飾るのは、一対の狛犬ならぬ龍の像だった。片方が赤く、もう片方が白い。

「これは、二天龍を模したのかな?」

イッセーの問いに、リアスが答えた。

「ええ、像が何がいいって、フィスに訊いたら、ドラゴンの赤いのと白いのがいいって言うものですから」

オーフィスが興味津々の二天龍に(なら)ったみたいだな。

俺が後ろで納得していると、オーフィスがペチペチと赤い龍の像を叩いていた。首をかしげているから、もしかしたら彼女の想像と違ったのかもしれない。

「グレードレッド?倒す」

「疑問符を浮かべながら、ペチペチやらないでくれよ!それ、俺やドライグのことらしいから!俺を倒さないでぇぇぇっ!」

イッセーはそう叫んでオーフィスを止めていた。

その後、姫が簡単な神事を執り行って、ついにお社も完成となった。お社の段差に鎮座するオーフィス。どこか、嬉しそうだ。

姫が言う。

「神事をかなり簡略化したが、これで、良いと思うのじゃ。本格的な行いを済ませて完成させるとなると神聖な力が高まりすぎて、悪魔であるお主らに悪影響が出るやもしれぬからな。これぐらいがちょうど良いと思うのじゃ」

姫の言うとおりだ。悪魔である俺たちが身近にいる以上、強すぎると体調を崩しそうだ。だが、神事を簡略化してくれたおかげで、そこまで気持ち悪いものを感じない。

朱乃が何かを思いついたように口を開いた。

「うふふ、じゃあ、完成記念に、皆でフィスちゃんにお願いをしてみましょうか?」

なるほど、それは面白い。

てなわけで、俺たちでオーフィスに願うことに。

 

 

アーシアの願い

「世界が平和でありますように」

「平和……世界の平和、どこからが平和になる……?」

なかなか深い答えを出してくれるものだ。

 

 

小猫の願い

「………イッセー先輩のスケベがほどほどになりますように」

「来世に期待」

その来世は1万年後か、10万年後か。俺みたいに二度目が来るのだろうか?

 

 

ゼノヴィアの願い

「女子力を高めたい」

「エクス・デュランダルを極める」

それは女子力ではない。ただの戦闘力だ!

 

 

朱乃の願い

「お料理がもう少し上手になれたら嬉しいですわ」

「我もうれしい」

時々食わせてもらっている俺も嬉しいかな。

 

 

レイヴェル嬢の願い

「背がもう少しだけ欲しいですわ」

「牛乳を毎日飲む」

それはただの生活のアドバイスだと思うぞ!

 

 

イリナの願い

「クリスチャンの私が願ってもいいものかしら……」

「ミカエルより我のほうが強い」

強者が正義ってか!?なんか違う気がするぞ!?

 

 

木場の願い

「えーと、悪魔の仕事がたくさん舞い込みますように」

「……ZZZZZZ………」

寝ている……だと………。真面目な願いはスルーですか!?

 

 

ギャスパーの願い

「え、えっと、もっと男子力をつけたいですぅ」

「ミルたん」

にょ!?なぜオーフィスがミルたんを知っているんだ!?

 

 

姫の願い

「願いはたくさんあるが、京都が平和であれは問題なしじゃ!」

「お社をありがとう」

二人とも、良い子だなぁ。

 

 

リアスの願い

「アーシアほど規模は大きくないけれど、この町にいる皆が平和であるなら、いいのではないかしら」

「町の平和は我が守る」

オーフィスが本気を出したら誰も勝てないって!

 

 

ロスヴァイセの願い

「リアスさんの後に言いにくいのですが、彼氏がお金が欲しいです」

「………………」

な、何か、オーフィスが無言で俺を見つめてくるんだけど、俺の顔になにかついてるのか?

「あの~?」

「近くにいるかも」

「ほ、本当にですか!?」

オーフィスの言葉を聞いたロスヴァイセは、少し興奮気味になった。それにしても、オーフィスは、なんで俺を見たんだ?

 

 

俺の願い

と、訊かれても、いきなり願いって言われても難しいな。

俺はしばらく真剣に考えて、願いを口にする。

「願いってもなぁ。とりあえず、何十年後か、何百年後か、そのうちできるであろう俺の子供を抱きたいね」

「………体を大事に」

オーフィスから真剣な顔で言われてしまった。まぁ、無理はするけど無茶はしないようにするか。

 

 

俺の願いの次はイッセーだ。だが、こいつのことだ。

「で、イッセーは?どうせスケベな願いだろうがな」

「な!シドウさん、俺をバカにしないでください!俺の願いは『皆と平和に生きたい!』です!」

おー、意外としっかりした願いだった。何か、イッセーに失礼なことを言ってしまった気がする。

すると、オーフィスがイッセーに正面から言った。

「大丈夫、我、イッセーのことをいつだって見守っている。いつだって助ける。イッセーは我の友達」

それは心強い。さっきはあれを願ったが、最悪イッセーたちだけども助けるつもりではいたんだな、オーフィスが助けてくれるなら大丈夫だろう。

などなど、俺たちがお社完成の余韻に浸っていると、そこに現れる人影がひとつ。

「ふいー。徹夜明けの日差しは辛いもんだぜ……」

アザゼルだ。どうやら、麻雀(マージャン)大会は徹夜に突入していたようだ。

「遅かったな。で、大会はどうだった?」

俺が訊くと、アザゼルは悔しそうに言った。

「バラキエルの優勝だよ。まったく、今まではあいつがビリとかだったのによ。喧嘩していた親子が和解するとこうも違うのか?俺も子供が欲しくなってきたぜ」

それを聞いた朱乃は呆れていたが、どこか嬉しそうでもあった。てか、俺とアザゼルの願いが被っている!俺は真面目に願ったのに、アザゼルはどこか適当な感じだ!そんな理由で子供を作って良いのかよ!だが、アザゼルの場合、理由はどうであれ、子供ができたら溺愛しそうだけどな!

「さて、俺は昼寝でもするかね。徹夜明けの作業は辛いんだ」

俺がそう言うと、リアスが軽く礼をしてきた。

「お兄様、お賽銭箱、ありがとうございました」

「おう、壊すなよ?」

俺はそう言って踵を返し、屋上の出入口に向かっていると………。

カッ!ドォォォオオオオンッ!

背後からわ突然の閃光と爆発音が聞こえてきた!振り向いてみると。

「ガガガガガガガガガガッ!」

「ギャギャギャギャギャギャギャッ!」

イッセーとアザゼルが雷に痺れていた。何だろう、天罰?

「?」

現に、オーフィスも首をかしげて不思議そうにしている。

俺には関係ないことだ。とりあえず、寝よう。

俺はそう決めて、改めて屋上から降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

姫が京都に帰る日。

お社建造という名目も終え、一泊した姫がついに帰ることになった。俺たちは地下の転移室に見送りに来ている。

風呂敷で包んだお土産を姫たちに持たせ、準備も整った。

「ありがとう、九重(くのう)

「九重、また来なさいね」

「またな、姫。なかなか楽しかったぜ」

イッセー、リアス、俺で別れのあいさつを済ませる。姫も名残惜しそうにしながらも、

「うむ、大変楽しい時間であった!お世話になりました」

と、元気に振る舞ってくれた。

最後にオーフィスが1歩前に出て、姫に言った。

「また我と遊んでくれると嬉しい」

それを聞いた姫は満面の笑みを浮かべた。

「うむ!私とフィス殿はお友達じゃ!また、遊ぼう!」

オーフィスにまた友達が増えたな。それは良いことだ。

京都の姫、九重か。これからちょくちょくこっちに来そうだ。てか、そのうちこっちに住むことになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




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