材料集めのメンバーは、俺、リアス、イッセー、ゼノヴィア、そして
生い茂る山の木々はかなり樹齢を重ねているように見え、1本1本が巨大で、力強いものばかりだ。そんな木々に囲まれている俺たちは、それらに圧倒されていた。
木々だけじゃなく、山全体から静寂で霊的な雰囲気を感じる。人の手が入っていないようで、悪魔としての第六感が不思議と刺激される場所だ。
「到着したが、姫。目的地はここであってるか?」
俺が確認すると、姫は頷きながら1歩前に出た。
「はい、さすがシドウ殿。寸分違わぬ場所に出られましたぞ。この山の神にはすでに話が済んでおりますゆえ、樹齢の永い杉を1本いただくことになっておりまする」
それなら話が早い。急な話だったと思うのに、対応してくれてありがたいね。
「樹齢を重ねた立派な杉なのに、木材にしていいのかな」
イッセーがそんな事を言っていた。こいつ的には『杉に精神がある』と思っているんだと思う。日本の
そんなイッセーに姫が答えた。
「安心せい、イッセー。なんでも先日の天災で真っ二つになってしまった杉があるそうなのじゃ。それを今回いただける運びとなっておる」
だよな。俺たちが使えるのはその傷んでしまった杉というわけだ。
それを確認して、その杉のもとまで移動した俺たち。そこには、確かに真ん中あたりから見事に折れてしまった巨大な杉があった。
「この杉は
400年!俺もそれくらいなら生きているが、なかなか見事なもんだ!
ゼノヴィアが折れた杉に手を添える。
「うん。あとはこれを運ぶだけか。私はてっきりこの山の巨木をデュランダルで伐るものだと思っていた」
「豪快すぎだ。俺がこっちに呼ばれた理由が何となくわかったよ」
「む、それはどういうことだ。シドウ先生」
「ゼノヴィアがやったら、無駄に木を傷つけそうだってことだ」
「な、なんだって!」
まったく、今回は下手に伐りまくれないというのに……。
「とりあえず、作業開始ね」
俺とゼノヴィアがくだらないことで言いあっていると、リアスの指示が入り、俺たちの作業が始まった。
まずは姫が山と杉への感謝の儀式を済ませた。
次にイッセーが鎧を纏って折れた巨木を運び。
俺とゼノヴィアで今回用に用意されていた特殊儀礼済みの刀剣で大体で切り分けていく。
そしてリアスが展開した転移魔方陣にそれを放り込んでいくが、俺は様子を見て、自分でも転移魔方陣を展開して、木材を転移させていく。
転移先は兵藤宅の地下。そこでは日曜大工組が待機しており、そこで杉を加工しているのだろう。
屋上でもブロック基礎組がお社の土台を組んでいると思う。
この手の作業には専門知識が必要だが、それは姫の付き人でもあった
俺が作業している横で、リアスと姫が少しずつ距離を縮めていっていたようで、お互いを名前で呼ぶことになったようだ。
「シドウ殿は、側近の方を作らないのですかな?」
姫が何か思ったのか、俺に訊いてきた。
「側近?ああ、第二夫人とかそういうやつか」
「うむ」
姫は頷いて、俺の答えを待っているようだ。
俺は一旦作業の手を止め、あごに手をやって少し考える。
今までセラ以外の女性と関わることもなかったし、俺から関わるろうとも思っていなかったしな。
「まぁ、気になる人がいればアタックすると思うぞ?……いればな」
「因みにじゃが、気になるお方はいるのかの?」
それを言われた瞬間、なぜかロスヴァイセが脳裏をよぎったのだが、単純に身近な仕事仲間だからなのかもしれない。
「………どうだろうな」
俺は曖昧に返して、再び作業に戻ろうとしたが、姫が再び訊いてきた。
「ところで、シドウ殿。セラフォルー殿とはどのように出会ったのかの?」
恋する乙女の好奇心なのか、グイグイ訊いてくるな、この姫様は。
「セラと初めて会ったのは、子供の頃にシトリーの屋敷に呼ばれた時だな。最初はテンション高くて苦手だったんだが、なんだかんだ言って、あいつのことは気にしてたし、よく言う『一目惚れ』ってやつだな。で、告白したのは三竦みの戦争中だ。コカビエルに左目を潰されたすぐ後だな」
「なるほど、シドウ先生とセラフォルー様は幼馴染みというわけか。どこぞの『自称』天使なイッセーの『自称』幼馴染みも見習ったほうが良い」
ゼノヴィアも作業をしながら話を聞いていたようで、そう相づちを入れてきた。その自称呼ばわりされているのは、イリナだろうな。
「お兄様、いつまでも喋っていないでください。休憩することも大事ですが、こちらの作業が滞ると、後続の作業も止まってしまいます」
「スマン。さて、ペース上げていきますか!」
ある程度休憩できたので、最初よりもペースを上げて作業を進めていった。
一通りの作業が終わった深夜。皆は上でゲーム大会をしているそうだが、年が年なので自重して、俺は独りで余っている木材であるものを作っていた。もちろん、付き人の妖狐さんに手伝ってもらってだ。
「こんな感じか?」
「はい、初めてとは思えない出来です」
「それはどうも。スマンね、付き合ってもらっちゃって」
「いえ、これも九重様も為ですので」
「そっか、まぁ、ありがとうな」
「はい。では、これにて」
妖狐さんはそう言うと「ドロン!」と再び消えていった。
とりあえず、寝るか。なんか、疲れた。
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