グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 27 仲間が強いと色々と楽 ③

広大な草原を歩き始めて数分。

『スライムが現れた』

アザゼルの声と同時に魔方陣が展開され、ゲル状の生き物が複数体出現した。

魔物はこうやって出現するのか。最初はスライムってのは、お馴染みだな。

俺がゲームシステムに感心していると、幸彦くんが十束剣(とつかのつるぎ)を抜き放って、スライムに向かっていった!

「とおっ!」

ズバッ!っと幸彦くんの剣がスライムを切り裂いた!

『スライムに20のダメージを与えた。スライムを倒した』

ダメージまで言ってくれるのか、ありがたいような、迷惑なような。てか、今ので20って、セラの体当たりどんだけ強かったんだよ!

それはともかく、幸彦くん、なかなかいい動きするな。これは将来楽しみだな。

俺がそちらにも感心していると、セラが一歩前に出てスティックを突きだした!

「やるわね、勇者くん!私も負けてられないわ!くらいなさい、ファイヤーショット!」

セラのスティックの先端が輝いた瞬間、俺は咄嗟に幸彦くんの前に移動し、盾を展開して衝撃に備えた!防御の態勢に入った瞬間!

グゴォォォォォォンッ!

この空間を揺らすほどの衝撃と、俺たちの前方で地獄の業火が巻き起こった!盾越しにでも伝わる熱気!なんつーもん撃ってんだよ!

炎が止んだことを確認して、盾を消して周囲を見渡す。先程まであったキレイな草原が焦土とかしていた!スライム一匹に何てことを!

『スライムに6300万のダメージを与えた。スライムを倒した』

アザゼルは冷静にそう言ってきやがった!ゲームでそんなダメージを叩き出すキャラなんか知らんわ!てか、セラはスライムに恨みでもあるのか!?

「うむ、さすがは魔法使いだ。序盤の魔法でも十分にスライムを倒してくれる」

何てことを言う兄さん。そう言う兄さんも残ったスライムの前に立った。

「私も負けていられないな!遊び人として芸を見せようじゃないか!」

手元から滅びの球体をいくつも作り出していく。球体は縦横無尽に動き回り、スライムの方へと向かっていった。

「ここに取り出したのは、謎の球体。これをジャグラーのように回していき、敵に当てていく。すると……」

ギュパンッ!

滅びの球体がスライムを消し飛ばした!

「はい、不思議!敵は手品によって、キレイさっぱり消えてしまいました!」

「何がキレイさっぱりだよ!完全消滅だろあれ!アザゼルもダメージを言わないぞ!測定不能ってか!?」

『ああ、これは、なんと言えばいいか……』

「知るかぁぁぁぁっ!」

俺が何てことを叫んでいると、残っていたスライムが俺に体当たりをしてきた。

ポフッ……。

『戦士は1のダメージを受けた』

うん、1だよね。1もくらってないような気がするけど、システム上、仕方ないよね。

溜め息をつきながら、ブレードを生成、そしてスライムに構えた。

「俺に斬れないものはない!」

と、言いながらスライムに斬りかかる!

ズバッ!

『スライムに5900万のダメージを与えた。スライムを倒した』

うん、だよね。俺でも万までいくよね。

パンパカパーン!

突然、軽快なファンファーレが鳴り響いた!俺とイッセーは、何事かと警戒していると、アザゼルが告げてきた。

『レベルアァァァップ!』

今までに比べて異常にテンションが高いアザゼル。どうやら、レベルアップのようだ。

『魔法使いと遊び人、戦士のレベルが上がった!魔法使いと遊び人のレベルは5001に、戦士は4501になった!』

スライムだけで俺たちのレベルが上がった!?ここは幸彦くんじゃないのか!?俺たちでもそれぞれ1上がったんだから、幸彦くんは10とかいってるんじゃ……。

『レベルアップ終わり!』

え、終わり?マジで?レベル上がったの俺たちだけなの!?どうなってんだよこのゲーム!クソゲー臭しかしないぞ!

「皆さんお強いんですね!自分の力量の無さを痛感します」

幸彦くんが若干気落ちしてしまった!やり過ぎたか?幸彦くんもなかなか良い線いってると思ったけどな。てか、周りが強すぎるだけだ。

初戦闘はそんな感じだったが、その後の戦闘も、幸彦くんの初々しい攻撃と俺たち三人の圧倒的な攻撃で即終わらせ、予想通りサクサクと進んでいった。

ある程度進んだところで、幸彦くんの休憩のために、村に寄ることにしたのだが……。

「ここはカラ村だぞ」

手にデュランダルを持った少女、ゼノヴィアが村の入口に立っていた。いや、何でだよ。

同じ事を思ったのか、イッセーがゼノヴィアに訊いた。

「ゼノヴィア!お、おまえ、村人役なのか?」

「ここはカラ村だぞ。と常に言えとアザゼル先生から命じられているから、ここはカラ村だそ、といい続けるだけだ。ここはカラ村だぞ」

つまり、ゼノヴィアはゲームでいうところのNPCってやつなのか。デュランダルを持った村人がいるって、この村は平和そうだな。

とりあえず、ゼノヴィアの横を通りすぎて村に入ってみる。木造のゲームっぽい建物がいくつも並び、質素な服装の村人が歩き回っている。

このエキストラの皆さんはどこからか集めてきたのか疑問がつきないが、今は散策だな。

「村の様子も本格的だなぁ。俺、武器が欲しいっス!」

幸彦くんは楽しげに走り回り、剣のマークがついた看板の店に入っていった。俺たちも後を追って歩き始める。

お金は十分にある。モンスターを倒すと、その場でコインに変化したんだ。ゲームのシステムもしっかりしているようだ。金が手に入らないバグとかあったら詰んでいた。

俺たちが歩いていると、セラが言ってきた。

「それにしても、楽しそうね。あの子」

「だな。まぁ、子供は元気が一番だ。自由できるうちに自由にやっとかないと、大人になったら忙しいし」

「それもそうだな。今度はミリキャスとグレイフィアを連れて参加しようかな?」

「それは楽しそうだ。義姉さんが参加してくれるかは別だけど」

「ふふ、今度はシドウとのんびりやってみたいわね」

「はは、確かに」

「できれば、そこに私たちの子供も……」

「ん?何か言ったか?」

「何でもないわ」

よく聞こえなかったが、セラの顔はその時を楽しみにしている表情になっていた。そのうちオフでももらうか。

俺たちが話している横で、イッセーとアーシアの会話も聞こえてきた。

「イッセーさん。今度、オカルト研究部の皆さんでピクニックに行きませんか?」

「いいなそれ!って、どうしたんだ、急に?」

「いえ、皆さんと草原を歩いていると、不思議とそう思ったんです」

「なるほど、それじゃ、今度リアスに訊いてみようぜ」

「はい!」

俺たち年長者三人は、その会話を聞いてほっこりしていたりする。

なんてことをしながらゆっくりと歩いていると、武器屋から幸彦くんが顔を出した。

「皆さん!お早く!お店の人が待ってるっス!」

「はいよ!」

「今いくわ☆」

「すまない、少し話し込んでしまったな」

俺たちは駆け出し、武器屋に入っていった。

……で、入って驚いたのだが。

「店員はおまえか。木場よ」

「はい。アザゼル先生から、『おまえなら、どんな聖剣でも魔剣でも用意できるだろ?』と言われまして」

若干苦笑しながらそう言う木場。こいつも苦労しているようだ。

頼めば聖魔剣も創ってくれそうだが、その手の適性とか因子がない俺たちに扱えるのかどうか。

「私は氷の魔剣が欲しいかも☆武闘派の魔法使いもいいわよね♪」

「では、私は炎の魔剣を。最近体を動かせていなくてね、攻撃力不足に悩んでいるんだ」

何て言いながら魔剣を頼む二人。二人はそんなもの要らないと思うんだけどな。さて、俺は……。

何て思いながら店内を見渡す。すると、一振りの大剣が目についた。

それは、剣と呼ぶには大きすぎる、ぶ厚く重く大雑把すぎる、まさに鉄塊のような剣だった。

「木場、あの剣は?」

俺が訊くと、木場は再び苦笑した。

「あの剣ですか?特に意味もなく、とりあえず創ってみたんですけど、重すぎてまともに振れなかったんです」

ふーん、なるほど。

俺は試しにその鉄塊を持ってみる。マジで重いが、ギリギリ振れるか?いや、こんなんで戦闘は無理だな。できたとしても盾代わりにしかならない。

俺はその鉄塊を置いて、木場に言った。

「一番良い装備を頼む」

 

 

 

こうして、装備を整えた俺たちは、再びフィールドに出て、モンスターを蹂躙していっていた。

因みに、俺がもらった魔剣は、西洋剣を思わせる、属性無しの切れ味重視のものだ。腰の後ろの鞘にいれて帯刀している。重さもほどよく、いつかの任務で使った剣に似ていた。

そんなこんなで洞窟に来たわけだが、一番気をつけなければならないのは、兄さんとセラの攻撃魔法だ。火力がありすぎて洞窟が崩落しかねない。

「こんなに小さい滅びの球体を作るのは久しぶりだ」

パチンコ玉サイズの球体でモンスターを消し飛ばす兄さん。

「加減がちょっと難しいかも☆」

首をかしげながら敵を凍りつかせるセラ。それでもモンスターを蹂躙できるのは流石である。

「俺は気にせずにいけるがな!っと」

などと言いつつ、先程買った魔剣と滅びのブレードの二刀流で敵を蹴散らす。兄さんたち程の派手さがないから、こういう時には俺の方が立ち回りやすいんだよね。

途中、宝箱から薬草のような何かも回収したが、このメンバーならノーダメージでいけるだろうから要らないと思う。まぁ、なくて困るものでもないからいいがな。

洞窟をさらに奥に進むと、少し開けた場所に出た。ゲームならここでボス戦となりそうな場所だ。

久々のような気がするアザゼルの声が洞窟に響いた。

『リザードマンが現れた』

どうやら、敵のようだ。リザードマンってことはトカゲ系の魔物か?何て思っていると、

ズゥゥン、ズゥゥン。

地鳴りをさせながら奥から現れたのは巨大なモンスター。大きな腕に、大きな脚、そして大きな翼!まさにドラゴンだ!って、こいつは!?

「……リ、リザードマン……だぞ」

恥ずかしそうにそう漏らしたのは巨大なドラゴンだが、俺たちには見覚えがあった!共闘したこともあるんだ、忘れるわけねぇだろ!

「「タンニーン(のおっさん)!?」」

俺とイッセーは同時に驚愕の声を出した!最上級悪魔のタンニーンが、何でこんなところに!?

「タンニーン、おまえ、何でこんなところに?」

俺が訊いてみると、タンニーンは答えた。

「シドウ・グレモリー、兵藤一誠もいるのか。久しぶりだな。いやなに、アザゼル総督から依頼が受けてな。一人の少年を男にするために力を貸してくれと。だが、ここに赴いたら……このような役をしろと言われたのだ」

このゲーム、豪華すぎるだろ!パーティメンバーが魔王二人、ボスの一体が元龍王って、本当にすごいな!これからタンニーンと戦うのか?それは心躍るなぁ!

俺が魔剣を抜き放ち構えようとすると、アザゼルの声が俺を制してきた。

『おっと!ここは勇者だけで挑む大事なイベントだ!他の者は手出しするなよ!』

「何だよ……。せっかく楽しめると思ったのによ、しらけさせるなよ!」

「まあまあ、ここは勇者くんに頑張ってもらいましょう」

「セラに言われるとな……。わかったよ。幸彦くん、頑張ってこい!」

俺は渋々後ろに下がりながら幸彦くんに檄をとばした!

「はい!任せてください!」

幸彦くんも元気に返事をして、タンニーンに挑んでいった!

こうして、勇者VS元龍王というカードが決まったのだった。

 

 

 

 

 

 




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