グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 24 騎士と人魚と海賊 ②

俺とグラッグのゲームが決まって数分。

俺は独り、ヨットに乗って海上に来ていた。俺の前には先程の大型帆船が確認できる。

ヨットなのはいいが、多分使わないと思うんだよな……。ヨットから飛び出して、一気に速攻を仕掛けて終わらせる。

俺とグラッグの仲を取り持つポセイドン様は、デカイ亀の上でリリティファと一緒にいた。これで不正はできないはずだ。

「このポセイドンが合図を出したら戦闘開始だ!ルールは簡単!全滅した方が負け!殺し合いにならぬようその辺だけは気をつけいっ!」

全滅したら負けって、俺は絶対に倒れなれないな。まぁ、やられる気もないが。

ただの保護活動だったのに、どうしてこうなるのか……。早く帰ってアイスでも食べたい………。

何て思いながらも軽くストレッチを始める。こうなるんなら体をほぐしておけば良かった。

にしても、どうやってあの船を消し飛ばしてやろうか。俺のことを散々言ってくれたんだから、それ相応の罰を与えなくては……。

独りでストレッチをしている俺に、グラッグが言ってくる。

「グレモリー家の脇役!我が眷属は海上でのバトルに秀でた猛者揃いよ!怖くなったら帰ってもいいんだぞ?」

「あぁんッ!」

ドスの効いた声を出しながらグラッグを睨む俺。これだけ見たら俺が悪役に見えるだろうな。

てか、どんだけ無知なんだよ!俺を脇役脇役言いやがって!もうどうなっても知らないぞ!俺は、自分を抑えられない……!

俺が静かにオーラを放っていると、ポセイドン様が大声を張り上げた。

「はじめーいっ!」

ドォォォォンッと、開幕と同時に帆船から大砲の弾が発射された!弾は近くの海面に当たり、大きな水柱と水しぶきをあげた!やっぱり、あるよな。そりゃ、海賊船だもんな。

揺れる船上で、俺はゆっくりと右手を挙げ、空中に壁を作るように、大量のブレードを展開した!

「………沈め」

冷酷なまでの声音でそう言いながら右手を下げ、ブレードを射出していく!

ブレードは船に当たった瞬間に爆発、船を破壊していった!帆柱が折れ、海賊旗がボロボロになっていく!

「ぬがぁぁぁぁぁっ!私の大事なフライング・ダッチマン号がぁぁぁっ!」

グラッグは自慢の船を破壊されて目玉が飛び出るほど驚いていた。

「おのれ!やれぇぇいっ!」

グラッグがサーベルを俺に向けると、船から下僕どもが飛び降りて、海中からこちらに高速で迫ってきていた。

ブレードを海中にも飛ばすように角度を調整して、さらに射出していく!

「ぎゃぁぁあああっ!」

「ひでぶっ!」

「うごああぁぁぁぁっ!」

当たったグラッグの下僕たちは、様々な断末魔を発しながら海面から飛び出し、そして海面に叩きつけられると同時に気を失っていった。

「まだまだっ!」

「でりやぁぁぁああああっ!」

「食らいやがれぇぇぇぇっ!」

ブレードの雨を避けきった下僕が飛び出してくるが、遅いな……。

俺は素早く手元に一本のブレードを生成して、その下僕が空中にいるうちに斬り伏せ、海面に落下させた。

さて、後はグラッグ本人だけかな?

俺が確認しようと目線を帆船に目を戻す。帆船はあちこちに穴が開き、少しずつ沈み始め、所々から火の手も上がっていた。が、グラッグの姿を確認することができない。あいつ、どこ行った!?

俺がキョロキョロとグラッグを探していると……。

「きゃーっ!」

リリティファの悲鳴があがった!見ると、彼女は巨大なイカ的な足に巻かれていた!

「ぐははははははっ!」

この下品な笑いかたは!

笑い声の主がわかった瞬間、ザパーン!と水柱を立てながら登場してきたのは、巨大なイカと思われる怪物と、その怪物の頭?の上に立つグラッグだ!

「こいつは我が忠実なる使い魔、クラーケン!海の魔物よ!ぬふふふ、この人魚はもらい受けるぞ!」

「グラッグ!ポセイドン様の前でリリティファに手を出すとは、万死に値するぞ!」

そう言いながらブレードの切っ先をグラッグに向ける。てか、ポセイドン様、何してんだよっ!

文句を言おうとポセイドン様を見ると………。

「ぐごごごごごぉぉぉぉぉ………」

豪快にイビキをかいて寝ていた!亀の上で立ったまま寝てるよあのヒト!どんだけ疲れてんだよ!パトロールするなら、当番制にしろ!

「疲れてるんだな、神様も大変だ」

「神が見ていないので隙ありということだ!」

グラッグは何て言っているが、さっさとリリティファを助けますか!俺が飛び出そうと構えた瞬間……。

「おっと、動くな!動いたらこの人魚がエロいめにあうぞ!」

何て言いながら、いやらしい眼でリリティファを見るグラッグ。本当に下品な野郎だ。でも、下手に動くわけにもいかなくなった……。さて、どうしたもんか。

俺が思慮していると、俺の足に何かが巻き付いた。見てみると、それは巨大なイカの足。つまり、クラーケンの足だ。クラーケンは俺を巻きつけた足を高く上にあげた。

体を逆さまにしながらも、俺は歯を食い縛り、次に起こることに備えた!

その瞬間、クラーケンは俺を海面に叩きつけた!

高所から勢いよく海面に叩きつけられる、言えば簡単だが、着水姿勢もままならないこの状況ではめっちゃ痛いっ!

そこから、三度同じように叩きつけられ、俺の全身は赤くなり始めた。すごいヒリヒリする………。

「いい加減、負けを認めたらどうだ?この人魚は、私が可愛がってやるぞ?」

グラッグは勝ち誇ったように言ってきた。

「シドウさん!もういいですっ!私がこのヒトの眷属になれば、それで済むことなんです!」

リリティファが俺を心配してくれたのか、涙を溜めながらそう言った。それを聞いたグラッグは下品に笑った。

「ぐははははははっ!そうか、そうか!分かってくれたか!では、早速、この女王(クイーン)の駒を……」

と、言いながらリリティファに駒を差し出すグラッグ。俺は逆さまの態勢のまま、手元にナイフを生成して、それをグラッグの手元に投げつけた!

グラッグはリリティファに伸ばしていた手を咄嗟に引っ込め、俺を睨んできた。

「貴様っ!この人魚の話を聞いていなかったのか!?」

「聞いてたさ、なぁ、リリティファ。おまえはどうしたい?俺はこの際どうなってもいいさ。だから、おまえはどうしたいんだ?」

今までにない程、優しい声音でリリティファに問いかけた。この状況からの逆転はまだまだ狙える。だが、助けるヒトの意志は尊重したい。リリティファが本当に行きたいのか、どうか。俺はそれが知りたい。

「わ、私は………」

「ええい!貴様は黙っていろ!この人魚は私の眷属となるのだ!クラーケン!」

グラッグの指示を聞いたクラーケンが再び俺を海面に叩きつけ始めた!縦だけではなく、横にも振り回して勢いをつけ、執拗(しつよう)に海面に叩きつけ続けた!

再びリリティファの前に俺を移動させるクラーケン。あーいってぇ………。

俺は痛みの表情を出さないように気にしながら、リリティファに笑みを向けた。

「なぁ、リリティファはどうしたい?こいつと行くか、自由になるか……」

「貴様!まだ言うか!」

グラッグは三度(みたび)クラーケンに指示を出そうとした瞬間、リリティファが叫んだ!

「わ、私は!自由に生きたいです!こんなヒトに会うことがない、平和な場所で暮らしたいです!」

リリティファの叫び、確かに聞き届けたぞ!

「その言葉、待ってたぜっ!」

俺は素早くブレードを生成、リリティファを拘束している足に斬撃を飛ばして切断、彼女を解放する!

「しまった!」

グラッグが驚愕しているが、その隙が命取りだ!

ブレードを大剣に変更し、そこにオーラを溜めていき、突きを放つ要領で解放する!

「『滅びの凶刃(クリムゾン・ファング)』ッ!」

紅のオーラを至近距離で食らったグラッグとクラーケンは……。

「ぎゃぁぁあああっ!」

『…………ッ!』

撃沈、少しずつ海に沈み始めたが、そこで問題が起こった。クラーケンが俺を離さなかったのだ!ヤバイ!このままだと一緒に沈む!

そう思った時にはもう遅く。俺たちは完全に沈んでしまった!

水中でどうにかクラーケンの足を斬り離そうとするが、水の抵抗のせいで満足に勢いがつけられず、さっき大技をしてしまった影響で切れ味が悪い!

ヤバイ………もう………意識が…………。

消えかける俺の視界に、こちらに手を伸ばす誰かの姿が映った…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………じょ……です………」

誰かの声が聞こえる。聞き覚えがあるし、さっきまで聞いていた声だ。

「大丈夫ですか!」

俺はゆっくりと目を開き、その誰かを確認する。緑色の髪をした女性。リリティファだ。彼女は身を乗り出して俺の顔を覗きこんでいた。

俺は笑みを浮かべて、彼女に言う。

「ああ、久しぶりに死にかけたけどな………」

俺はゆっくりと体を起こして、周囲を確認する。

先程のヨットの上のようだ。グラッグとクラーケンは確認できない。沈んだようだ。まぁ、あいつらなら大丈夫だろう。

「にしても、どうやって俺を助けたんだ?」

俺が訊くと、リリティファは顔を真っ赤にしながらもじもじとし始めた。なんだ?何か恥ずかしいことでもあったのか?

俺が首を傾げていると、リリティファが口を開いた。

「その………私が口移しで……酸素を…………」

「………えと、ありがとうな」

リリティファの言葉を聞いて、俺は苦笑した。まさか、リリティファを助けるつもりが、彼女に助けられることになるとは………。

「で、ポセイドン様は?」

「シドウさんに巻きついていたクラーケンの足を切り落としたのはポセイドン様です。私だけではどうにもできませんでした………」

なるほど、あのヒトもあのヒトなりに助けてくれたんだな。

一通り話を聞けた俺は、改めてリリティファに問う。

「で、これからどうする?要望があるなら、できるだけの配慮をさせてもらうが」

俺が訊くと、リリティファは再び恥ずかしそうにもじもじし始めた。彼女の反応にはもう慣れた。

リリティファは大きく深呼吸をすると、口を開いた。

「でしたら……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、俺の仕事は無事に完了した。

リリティファの要望、それはグレモリー領の湖に住むことだった。とても簡単な願いではあったが、それが了承された時の喜びっぷりは忘れなれない。

 

 

 

 

 

 

「………で、リアス。偽物って何なんだったんだ?」

「それが、正体はヴァーリチームだったんです。どうやら、クロウ・クルワッハを捜索していたところ、魔龍で困っているグレモリー領の村に行き着き、そのまましばらくお世話になったらしく、その一宿一飯の恩を返すためにイッセーと私の姿を借りたそうです」

「そうか、案外いい奴らなのかもな」

 

 

 

 

 




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