グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 20 魔法少年シドウ!? ②

そんなこんなでオーディション当日。

俺たちは都内のある高層ビルのホールに集まっていた。

オーディションに参加する女の子、もしくは男の子がたくさんいる。番号を記したプレートを衣服につけている少年少女がざっと三百人だ。女の子の方が多いな。

そこまではいいのだが、問題は年齢だ。見た感じだと小学校高学年から中学生くらいが中心だ。で、俺たちは俺とセラ、ロスヴァイセを除いたら高校生だ。と、言ってもロスヴァイセも年齢だけで言えば高校生ぐらいなのだが……。

それにしても、周りからの視線が痛い。明らかに俺たちをバカにしたようなものも感じるぞ。

「……これは己との戦いね」

フリフリな魔法少女の衣装に身を包んだリアスがそう呟いた。ちなみに兄さんに送れるように写真は撮ってある。

兄としてはかわいいと思うが、年齢的にはかなり無茶しているようにしか見えない。まぁ、二十歳に近い魔法少女も有りだと思うぜ?

現に俺も白いアンダーシャツに、その上から例の黒に青ラインのロングコートを着ている。ズボンはシャカパンだ。で、背中には模造の大剣を背負っている。

にしても、もう少しコスプレして来てもいいと思うんだけどな。コスプレしてるの俺たちだけだぞ……。

「まぁ、今日はがんばりましょう、リアス。うふふ」

若干楽しげに朱乃副部長は巫女服姿だ。なんか普通のと違って露出が多い気がするんだがな。

「………こ、このような姿、実家の者に見られたら私は死ぬしかないわ……」

魔法少女衣装のソーナが全身を震わせながら開口一番にそう呟いた。胸元に大きなリボンをつけたプリティな衣装だ。写真は……止めとこう。

「ぐはっ!」

匙が鼻血を吹き出して倒れやがった!

「おい、どうした!」

俺は慌てて匙を抱える。過呼吸気味になっているが、なんか幸せそうだ。

「か、会長の魔法少女……。も、萌える……。萌え死ぬ……。シ、シドウ先生……お、俺、死んでもいいです……」

そう言えば匙はソーナラブだったな!ソーナの魔法少女姿が、こいつの好みのどストライクだったのか!

「メ、メガネっ子の魔法少女……。か、会長が俺を殺しに来てます……」

「がんばれよ!俺だって、妹のコスプレ見て案外いいなって思ったけどさ!」

「な、ななな、なにを言っているんですか!?」

俺と匙の会話が聞こえていたようで、リアスが顔を真っ赤にしながら狼狽えていた。

ちなみに、倒れている匙もコスプレしている。こっちは紺色に黒ラインのロングコートに右腕に黒い龍脈(アブソーブション・ライン)

イッセーが黒に赤ラインのロングコートに左腕には赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)

木場が黒に白ラインのロングコートに模造の刀剣を腰に帯刀している。男は全員ロングコートだな。

「せ、先輩……シドウ先生………」

っと思っていたら俺たちの前に魔法少女姿のギャスパーの姿が!なんでギャスパーまで魔法少女少女姿なんだよ!おまえは男だろうが!

「ギャスパー、おまえ、男だよな?」

俺が訊くと、ギャスパーは頷き、こう返してきた。

「……レ、レヴィアタン様が僕の分まで書類を出していたそうで……。つ、通過しちゃっていたんですぅ……」

マジか!?セラのやつ、何してんだよ!てか、男のこいつを通過させる上の連中の頭がよくわからんわ!

くそ、どうしてこうなった。

生徒会の面々も合流していき、後は審査員を待つだけかと思いきや……。

「……悪魔さんにょ?」

……何だ、『にょ?』にょって言ったのか?俺の背後をいつの間にか取った何かが『にょ』と言ったぞ。

俺はゆっくりと振り向き、その何かを確認する。

巨木のごとき太さの上腕、サイズが合っていないマジカルな衣装と、それを張り裂こうとしている厚い胸板。フリフリのスカートからは女性の腰回りよりも太い足が姿を現しており、頭部には猫耳………。

俺は顔を引きつかせながら、横にいるイッセーに訊いた。

「イッセー、何だ、この、世紀末覇者みたいな猫又は……」

「ミルたんです。俺のお得意様ですよ」

「あー、おまえのお得意様ね……」

イッセーのお得意様か。で、何でこの(おとこ)はこんなところにいるんだよ……。

「ミルたんはミルキーの大ファンなんです。たぶん、今回のオーディションにはミルキー役で参加を……」

イッセーがそこまで言うと、ミルたんは殺気を放っている純粋無垢な瞳で俺を睨んできた。ヤバイ、コカビエル以上の何かを感じる!

「悪魔さんのお知り合いかにょ?初めまして、ミルたんだにょ」

と言いながら丁寧に礼をしてくれるミルたん。案外いいやつかも?

「初めまして、こいつがお世話になっているようで……今後もよろしくお願いします。あなたもヒーロー役のオーディションに?」

俺が訊くと、ミルたんは顔を上げ、俺を睨んできた!

ヤバイ!マジでヤバイ!俺、ここで殺されるんじゃないか!?

と、思っていたら、ミルたんは彫りの深い顔を笑ませた。

「悪魔のお兄さんは冗談がうまいにょ。ミルたんは魔法少女になるために来たにょ」

「あなたは魔法ってよりも拳法の方が似合ってますよ」

何て言いながら俺は今回のオーディションの基準に頭を抱えていた。だって、男の()とか(おとこ)とか、明らかに基準がおかしいって!

そんなことを考えていると、会場がざわつきだした。何事かと思えば、映画の関係者らしき数人が会場に入ってきてようだ。

ひと昔前のプロデューサーのように肩にセーターを羽織った業界人的な男性プロデューサーと思われる人物が俺たちに言ってきた。

「はーい、皆さーん。今日はお集まりいただいてありがとうございまーす」

そう言った男性の横には帽子、サングラス、チョビヒゲという出で立ちの怖そうな雰囲気の男性とロン毛の線の細い男性の二人が並んだ。

プロデューサー風の男性がマイクを使って俺たちに言ってきた。

「私は『劇場版魔法少女ミルキー』のプロデューサー、酒井でーす。そちらの帽子を被った方が監督の遠山監督、その隣にいる髪の長い方が脚本家の東海林(しようじ)先生!」

「…………」

「どーも」

無言の監督と軽い脚本家。

「見て見て、シドウ!魔法少女モノと特撮モノに定評のある遠山監督と東海林先生よ!」

セラが大興奮しながら俺に言ってきた。どうやら、その方面では有名人のようだ。

プロデューサーが続ける。

「遠山監督や東海林先生と共に今日は映画に出演するキャストを選んでいきます。しくよろ~」

な、なんか軽い。とりあえず、この人たちが選考員ってことか。

『よろしくお願いします』

オーディション参加者の全員があいさつをした。

………と、監督が眉間にしわを寄せて、会場にいる俺たちをマジマジと見ているようだ。監督はうんうんと頷くとプロデューサーに耳打ちをしていた。

「ふんふん。なるほどなるほど」

プロデューサーは相づちを入れると、書類と照らし合わせながら俺たちのほうを見てきているようだ。

「えーと、いきなりですが、今回の一次試験の結果がいまここで決まりました」

早っ!?周りからも「ええっ!?」と驚愕の声をあげていた。いきなりだねぇ~。

で、最初に発表されたのは女子たちで、受かったのはリアスたち、ソーナたち、セラ、そしてミルたんとあと数人。

「シドウ・グレモリーさん。兵藤一誠さん。木場裕斗さん。匙元士郎さん……」

どうやら、俺たちも大丈夫だったようだ。

「以上です!監督はフィーリングを大切にされる方なので、すみませんがこれにて一次試験終了でーす!」

『えぇぇぇぇぇぇぇっ!』

不満と驚きの声をあげる女の子たち。

「「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?こんな格好で!?」」

同様に驚くリアスとソーナ。ここまで来たら腹を括れ。

まぁ、俺も受かるとは思わなかったよ。もっとこう、厳しいものを創造していたんだがな……。

「やったー☆やっぱり、わかる人にはわかってしまうのね!」

大はしゃぎのセラ。本当に、どうしてこうなったのかね。

「それでは、ヒーロー役のオーディションを先に行います!合格者は移動してください!」

早速、俺たちの番のようだ。それじゃ、行きますか!

 

 

 

③に続く…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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