アザゼルとの戦いで気を失った俺は再び救護テントまで運ばれていた。
本当に今日は厄日だ。不味いモノばかり食っている。てか、基本不味いモノしか食わせてくれない。
俺は溜め息を吐きながら起き上がり、応援席まで移動する。そろそろ午後の部が始まる時間だ。
「シドウ、大丈夫?」
応援席まで戻ってきた俺にセラがそう言った。
「大丈夫に見えるか?」
俺はそう返して再び溜め息をついた。午前に比べれば短時間ですぐに吐き出したからまだ大丈夫だが、アザゼルはたぶん無理だろう。
ボケッとそんなことを考えていると。
『まもなく各陣営全員参加の玉入れを行います。指定の場所に移動してください』
っと、時間のようだな。俺はこれにも参加だ。玉入れだから、何か食わされることはないはずだ。……たぶん。
「シドウ、行きましょう☆」
セラも参加するんだから俺も頑張らないとな。
俺はやる気ではあったが嫌な予感がしてならなかった。そんな不安を感じながら素早く指定のポイントに移動した。
てなわけで全員集合。
「シドウ様だ。もう復活を、さすがです!」
「レヴィアタン様の眷属だぞ?それくらい当然だろう?」
なんて声が聞こえてくるが、セラの眷属だからあれには耐えれるって理屈はおかしいぞ。まじであれはヤバイ。
話を戻して玉入れ競争だ。
各陣営の選手がそれぞれの背の高い棒の先端に設置されたかごを中心にして円を描くように配置されていた。
これが日本の玉入れってやつなのか。やるのは初めてかもな。覚えてないだけかもしれないが……。
『それでは天使、堕天使、悪魔、全員参加の玉入れ競技のスタートです!』
アナウンスの掛け声と共に赤い玉を拾い上げてかごに放っていこうとした瞬間。
「悪魔どもに光を投げろぉぉっ!」
天使陣営から光の玉が飛んできて……。
チュドォォォォンッ!
大爆発。何人かの悪魔が負傷した。
「あのときの恨みっ!」
堕天使陣営からも光の玉が飛んできて……。
ドォォォォォンッ!
大爆発。天使陣営にも被害が出ていた。
「ハルマゲドンじゃ、こんちくしょうがぁぁぁっ!」
「終末の角笛を鳴らしてやろうかぁぁっ!」
負けじと悪魔陣営も反撃を始めた。
ドドドォォォォォォォンッ!
皆さん玉入れそっちのけでバトルし始めてしまった。何やってんだよ!玉入れの最中だろうがっ!
「シドウ、護衛は任せたわ!玉は任せて!」
「何なんだよくそ!了解!」
俺は毒づきながらもセラの指示のもと、飛んできた攻撃をナイフで弾いていく。
てか玉に紛れて槍も飛んできてるぞ!?殺す気満々じゃねぇか!
『ちょっと!攻撃を止めてくださいっ!てか槍を投げるな!競技が違うだろうが!』
突っ込むとこそこなのか!?
アナウンスの的外れな突っ込みに心の中で突っ込んでいる俺の視界にミカエルと、顔色が悪いアザゼルが映った。あいつ、立てたのか。
「よー……ミカエル……。ここで会ったが万年目ってやつだな……」
「ふふふ、顔色こそ悪いですが、いつぞやの戦役のような目付きですね。邪悪極まりない」
睨み合う両者。まさに一触即発だ!
「ああ、あの時を思い出すぜ。テメェ、よくもあの時俺が天界でいた頃に書いたレポートを発表しやがったな」
アザゼルはそう言いながら玉をミカエルに投げた!ってそれはかごにいれるもんだろが!
避けたミカエルがあごに手をやりながら意味深な笑みを浮かべた。
「ああ、あれのことですね?『僕が考えた最強の
「ぷっ!」
「リッパー、テメェ!何笑ってやがるんだよ!」
「いや……だって、何だよそのネーミング。おまえ…俺が生まれる前からそうだったのかよ」
俺が笑いを耐えながら声を振るわせながらそう言うと、アザゼルは俺にも玉を投げてきた!
「うるせぇ!あれのせいでな、俺は一時期、幹部連中に『
「ハハハ、それは失敬!」
「今度父さんに聞いてやろ。出来ればその時代に生まれたかったぜ!」
俺は笑いながらアザゼルからの攻撃を避け、同時にセラの防御を行う。全く忙しいね!
俺は上手く攻撃を避けていると、今度は朱乃副部長とバラキエルが対峙していた!まぁ、あっちは親子だ。こっちみたいにはならないだろう。
「あ、朱乃………」
どう声をかけるかわからないようだ。すると、朱乃副部長は手を組んで目を潤ませながら懇願した。
「……父様!私たちを助けて!」
憂いのある表情で愛娘から頼まれたバラキエルは……。
「……うぅ、うおおおおおっ!」
叫びながら悪魔側の玉を悪魔側のかごに放り込んでいった!これは助かる!
アザゼルはバラキエルの行動に驚きながらも言った。
「バラキエル!?お、おい!おまえ、何てことを!黒いボールを投げろって!」
「すまん、アザゼル!娘が!朱乃が!これも一人娘の溜めなのだぁぁぁぁぁっ!」
バラキエルはそのままこちら陣営の玉を投げ入れてくれていた。
「うふふ」
朱乃副部長も楽しそうだ。まぁ、久々に会えた家族と何かしたいってのはわかる。
「……三大勢力も大概ですね」
ロスヴァイセがそう呟いていたが、そんな彼女にも光の槍が放たれていた!
「ロスヴァイセッ!」
「え?」
俺は咄嗟にロスヴァイセに飛び付いて彼女と共に倒れこむようにして避ける。あ、あっぶねぇぇ……。
槍が通り過ぎたことを確認してロスヴァイセから離れる。
「大丈夫だったか?」
「は、はい……」
ロスヴァイセは顔を真っ赤にしながら頷いた。急に抱きつかれたから驚いちまったか?
「シドウ、戻って!防御が薄いわ!」
「了解っと!ロスヴァイセ、気を付けろよ!」
「わ、わかりました!」
俺はロスヴァイセにそう言い残して、再びセラの護衛についたのだった。
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