グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 12 ハルマゲドン再び 開会式編

ライザー立ち直り作戦を成功させてすぐのことだ。

俺は割りと本気で走っていた。兄さんからある忠告があったからだ。

忠告と言っても俺の命に関わるようなものではないから良いのだが、行動しておかないとリアスたちがうるさそうなので走っているわけだ。

で、走ること数分。アザゼルに何かの書類を差し出されているイッセーの姿を確認出来た。兄さんの予想が当たっていたようだ!

イッセーが書類を受け取ろうとした瞬間に全速力を出し、イッセーから書類を掠め取った!

「うわっ!ビックリした!」

驚くイッセーを放っておいて、書類を破りながらアザゼルに言う。

「アザゼル、イッセーはこっち側だ。手出しするな」

「そうだ、アザゼル!イッセーくんはこちら側の者だ!」

いつの間にか横には兄さんがついてアザゼルに物申していた。って、兄さんがなんでこんなところにいるんだよ!

驚く俺を他所(よそ)に、アザゼルは舌打ちをした。

「チッ!リッパーだけじゃなく、魔王様まで現れるとは!フハハハハハ!さらばだ!」

悪役みたいな捨て台詞を吐いてアザゼルは逃げていった。

兄さんがイッセーの肩に手を置いて息を吐いた。

「……油断も隙もない男だ。シドウがいなければ義弟を堕天使の選手にされるところだった」

しれっと、イッセーのことを義弟呼びしているが、気にしたら負けだと思うんだ。

「間に合ったからOKだろ?戦闘以外で全速力で走ったのは久しぶりだ」

俺は軽く汗を拭いながら兄さんに返したところで、イッセーが訊いてきた。

「あ、あの、シドウさん、サーゼクス様。何事なのでしょうか?」

「詳しくはこれから話すが……」

「リアス眷属が集まったら改めて説明しよう」

と言うわけで、兵藤宅に兄さんが訪問することになったのだった。

 

 

 

 

 

 

『三大勢力の運動会ーっ!?』

兵藤宅のゲストルームにて、リアスたちが素っ頓狂な声をあげた。

説明した兄さんが紅茶を飲んで頷いた。

「うむ。実は三大勢力での親睦会ということで、スポーツに興じようという話になったのだよ。それで、運動会を開催することになった」

セラからは昨日説明されたのだか、まぁ、驚いたよ。もしまだコカビエルがいたら、そこで死合(しあい)が始まるとも思ったぐらいだ。

「あ、私もさっきそのことを天界から聞きました」

イリナも挙手しながら言った。そっちも連絡が行き届いているようで安心だ。

俺が続く。

「てなわけで、おまえらには悪魔側の選手として参加してもらいたい。異文化交流はどの時代でも大事だからな。それに、おまえらは冥界で大人気だからな」

それを聞いたリアスたちもやる気のようで「運動会かー」「おもしろそう」と好印象の様子だ。命を懸けない戦いってのも大事なことだ。それに、対テロリストへの関係強化にも繋がるだろうしな。

イッセーが挙手をして兄さんに訊いた。

「あ、あの、さっき先生が俺を勧誘したのは?」

兄さんは苦笑しながら返した。

「……おそらく、堕天使側の選手としてキミを引き入れようとしたのだろう。キミの人気と神器(セイクリッド・ギア)能力は競技に影響を与えそうだからね。……まったく、変なところで行動が早い総督だ。グレイフィアがもしかしたらと言うから、シドウに動いてもらったんだが、案の定だった」

「結果的に兄さんも来てるけどな」

どうせオフだろうからタメ口でいかせてもらうが、兄さん情報じゃなくて義姉さん情報だったのか。

で、イッセーが鼻の下を伸ばしてるんだが、どうせ堕天使のお姉さんと出会いたかった!とか思ってるんだろうな。

「……いやらしい妄想してましたね?」

イッセーの膝の上に座る小猫が頬をつねっていた。いつもの光景だ。

リアスが立ち上がると兄さんに言った。

「了解しましたわ、サーゼクスお兄様。私たちでよろしければ喜んで参加させていただきます!」

「俺も参加するからよろしくっと」

こうして俺たちは運動会に参加することになったのだった。

天使や堕天使とスポーツで戦う日が来るとは、長生きしてみるもんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パン!パン!パン!

運動会らしく花火が鳴っていた。

俺は三大勢力の運動会が行われる会場(レーティング・ゲームのフィールド)に来ていた。なかなか広いこの空間はかなりの無茶が効くように作られているそうだ。

悪魔用の赤いジャージに着替えた俺は、リアスたちとは別行動でセラの元に移動していた。

「セラ、久しぶりだな。そっちはどうよ」

「問題ないわ。そっちこそどう?教師生活には慣れた?」

「いまさら、若者たちから元気を分けてもらってるよ」

俺とセラが近況報告をしていると、俺たちに近づいてくる男性天使が一人。

「お久しぶりですね、お二人とも。天使長のミカエルです。セラフォルーさんとはよくお会いしますが、シドウさんとは初めましてになりますね」

「え、あぁ……そうです………ね?」

なかなか際どい質問だ。いちおうジャックとしてだったら会ったことがあるが、シドウとしては会ったことがないわけだからな。てかこのヒト、俺がジャックだってこと知ってるよな?なんで初めまして?

「ミカエルちゃん。今日は正々堂々と楽しみましょう☆」

セラが笑顔でそう言うとミカエル様も頷いていた。

「ミカエル様ーっ。開会式が始まりそうですわよー」

第三者の声が聞こえるが、女性の声だ。そちらに目を向けてみるとウェーブのかかったブロンドでおっとりした雰囲気の女性天使が近づいてきていた。

なかなかの美人でスタイルも良い、イッセーだったら一発で落ちるであろう巨乳の持ち主だ。

「シドウ、いつまで見てるのよ」

「ひたい、ひたい。わかったから手をはなひて」

女性天使を普通に見ていただけなのにセラに頬を引っ張られた。見惚れているように見えたのか?俺はセラ一筋なのに……今のところは……。

セラは手を離して女性天使を見た。若干不機嫌になりながらだが……。

そんな俺たちを見てミカエル様は微笑んだ。

「ほら、ガブリエル、自己紹介を」

「はぁい。ごきげんよう、四大セラフのガブリエルと申します」

ガブリエルはニッコリと笑いながら礼をしてきた。誰かは知ってるよ、伊達に戦争は経験してない。

曰く『天界一の美女』『天界最強の女性天使』だったな。ちなみにセラがライバル視するほど冥界でも人気があったりする。まぁ、美人だしな。

「…………」

「あの~、セラしゃん?」

無言で俺の頬を引っ張るセラ。何か悪いことをしたか?

「ミカエルちゃんにガブリエル。そろそろ開会式でしょ?戻らなくていいの?」

セラは俺の頬を引っ張りながら二人に言った。

「そうでした、ではまた後程」

「それではまたー」

二人はそう言うと立ち去っていった。同時にセラも手を離してくれた。若干ヒリヒリする。

にしても、俺の参加種目は『パン食い競争』と『借り物レース』なんだよな……やけに日本式だが、まぁ、影響はされたらしい。

開会式が終わり、応援スペースに移動。何か天使、堕天使の各陣営からただならぬ気合いを感じるんだが、マジで死合は勘弁だぞ。

「天界もグリゴリも元気一杯のようだ。我々も負けぬよう精一杯競い合おう。交流会だからといって手を抜くのも失礼だ。本気でやるように」

兄さんが爽やかな笑みでそう言うと

『ハルマゲドーンッ!』

古株の悪魔からそんな叫びが発せられた!物騒極まりないなまったく!戦争を思い出しちまうだろうが!

やる気十分なのはわかったから、もっと平和にいこうぜ?

俺はそんなことを思いながら運動会を楽しもうと決めたのだった。

 

 

 

 




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