タンニーンの領地の雪原地帯で走り込みをしていた。
「ドラゴン!ドラゴン!ほら、ライザーも!」
「ド、ドラゴンっ!」
俺はライザーにペースをあわせて声を出す。かれこれ三十分は走っている気がするが、日頃の鍛練の成果なのかあまり疲れることはない。
ライザーはそういうわけにもいかず、踏み慣れない雪に足を取られて消耗しまくっており、さっきから息を荒くしていた。それでも足を止めないのは俺が横にいることと。
「ライザー殿、シドウ殿と赤龍帝殿を見習ってください。お二人は余裕そうですぞ」
水色の鱗のドラゴン『
「お兄様!これぐらいで
そのドラゴンの背に乗るレイヴェル嬢が
俺たちの前方ではイッセーと
それにしても……。
「平和だねぇ~」
「どこがですか!?」
俺の呟きにドラゴンに追いかけ回されるライザーが突っ込んできた。こっちもまだまだ元気そうだ。
さらに三十分走ったところで休憩となり、俺とイッセーは水分補給していた。横ではライザーが死にかけている。
「……し、死ぬ……」
息も荒く、声も絶え絶え。スタミナ不足だな。
「まだ走り始めて大して時間経ってないっすよ?」
イッセーが言うと、ライザーは不機嫌そうに声を荒げた。
「う、うるさい!山にこもって修行なんて野蛮人のすることだ!これだから転生悪魔は!」
「野蛮人で悪かったな」
俺は半目でライザーを見ながら言うと、ライザーは慌てて訂正した。
「いえ、シドウ様のことは言っておりません!シドウ様とてこのようなことはあまりいたしませんでしょう?今回は私に付き合わせてしまっただけです」
「よーし、元気そうだから次のメニューいこう!」
「な、何ですと!?」
こうして着々とライザー立ち直り作戦は進んだのである。
山にこもって三日目。
イッセーはレイヴェル嬢からの差し入れを食べに一旦離脱。俺とライザーは元気一杯に雪山を走っていた。
「ほら、ドラゴン!ドラゴン!」
「ドラゴン!ドラゴン!」
ドゴォォォン!
「ライザー殿、遅いですぞ!」
「当たっちゃいますよ!」
元気一杯というよりは例のドラゴン二匹から逃げ回っているのだ。俺はまだまだ余裕だが、ライザーは限界が近そうだ。そこで俺はあることを思いついた。たぶん、イッセーも知らさせているはずだ。
「ライザー、ちょっといいか?」
「な、何でしょうか!出来れば後にしていただきたいのですが!」
ドラゴンから逃げ回りながら言ってくるライザー。初日と比べるとだいぶ余裕が出てきているようだ。
「いやなに、今日リアスたちがここの近くにある『温泉』に入りに来るんだとさ」
「何ですと!?」
ライザーは驚愕しながら足を止めてしまった。あ、これは、ヤバイ。
俺がそう思った矢先、ドラゴンの攻撃がライザーに放たれ……
「ぎゃああああっ!」
直撃した。うん、大ダメージ確定だ。まぁ、
俺は今の一撃で気を失ったライザーを担いでイッセーと合流することにした。
その夜。タンニーンが修行中の寝床として用意してくれた洞窟から抜け出してある場所に陣取っていた。
今日の昼頃に教えた情報。それがあればあの二人は確実に覗きに行く。それを阻止するためだ。まぁ、イッセーは見慣れてるだろうから良いような気もするが、修行中にそれをさせるほど俺も優しくない。
待つこと数分、赤い何かと火の鳥が殴りあっている姿を確認できた。あの感じだと、イッセーは鎧を纏ってきて、対するライザーはドラゴン恐怖症を克服できたのか?スケベ根性恐るべし……。
二人は激しく激突し、距離を取った。観戦にも飽きたので俺はその二人の間に高速で割り込む。
「シ、シドウさん!?」
「シドウ様!?なぜここに!?」
俺の登場に驚愕する二人だが、そんな二人に言う。
「いやなに、妹とその眷属の入浴を覗こうとするやつを……」
殺気を放ちながら二人に告げる。
「半殺しにしても問題ないだろ」
「「っ!?」」
二人は俺から距離を取り、構えを作った。
「ほう、やる気か?いいぜ、相手になってやるよ」
俺はブレードを作り出し、構える。
イッセーが叫ぶ。
「ライザー、手を貸してくれ!シドウさんを倒さないと覗きどころじゃない!」
「シドウ様には申し訳ないが……俺はリアスの裸を見たい!」
二人はそう言うとオーラを膨れ上がらせた。スケベ根性、ここに極まれり。バカだろこいつら、だが。
「単純なやつは嫌いじゃない。さぁ、来い!」
「行くぜぇぇぇぇぇっ!」
「はぁぁぁぁぁっ!」
イッセーとライザーは同時に俺に飛び出してきた。それを高度を上げることで回避するが、こいつらバカだろ。
俺は二人の間に入るように割り込んだ。そんな俺に同時に飛び出せば……。
「「……あ」」
ガシャーンッ!
金属と肉がぶつかり合う音が山に響き渡った。
「ライザー!なんでそっちも突っ込んでくるだよ!」
「悪魔としてレヴィアタン様の眷属と戦いたいのだ!」
二人は口論を始めるが、その隙に右足に魔力を込めていく。
「だいたい、シドウさんを倒せてもライザーには部長たちの裸を見せ?わけないだろ!」
「何を!少しは見せろ!あのデカイ胸を一度も生で見ないで諦められるか!」
こいつらが言いたいことはよーくわかった。
「二人とも……」
「「何だ!」」
二人は振り向きながら俺を睨んでくるが、その顔は少しずつ恐怖の色に変わり始める。
「死に晒せぇぇぇぇ!」
俺は急降下しながら右足を前に突き出した!
「ま、まずい!」
ライザーはそう言いながらイッセーを盾にした。
「て、テメェ!」
イッセーは抗議しようとするが、両腕にオーラを込めて俺の一撃を防ぐ態勢を取った。
「舐めるなぁぁぁぁぁ!」
俺が叫んだ瞬間、魔力を込めた右足がイッセーを捉え、弾き飛ばした!イッセーの後ろにいたライザーも巻き込まれて一緒に吹っ飛んでいく。……って、あっちは温泉じゃねぇか!ミスっちまったな!
俺は急いで二人を追って飛び出した。
「……………」
「………いてぇ」
温泉に墜落していた二人。ライザーは犬神家のあの人のように上半身だけ温泉に浸かり足だけが飛び出していた。気を失ってるな。イッセーは意識はあるが大ダメージのようで、鎧は解除されていた。
スケベ根性恐るべしだが、どうにかなったか……。
俺はホッと一息ついていると
「……すごい音がしたかと思えば、お兄様とイッセーじゃないの」
聞き慣れた声が聞こえた。嫌な予感がしてならないが、俺はゆっくりと振り抜く。そしてそこにいたのは全裸のリアスだった!
見ない間に立派になって、お兄ちゃん嬉しいです!いやいや、そうじゃなくて!
俺はリアスを視線から外して言う。
「リアス!イッセーはともかく俺もいるんだから隠そうぜ!」
「部長、眼福です!」
イッセーは両手を合わせて合掌している始末だ。
「あらあら、イッセーくんだけではなくてシドウ様まで」
「イッセーさんとシドウ先生もいらっしゃったんのですか?」
「さすがはイッセーだ。私たちの温泉を覗きに来たか。シドウ先生まで来るとは予想外だったが」
朱乃副部長、アーシア、ゼノヴィアは何か受け入れているが。キミたち、だから隠そうよ……現に。
「イッセーくん、シドウ先生。懺悔なさい!」
「もうお嫁に行けませぇぇぇん!」
「イッセー先輩だけではなく、シドウ先生まで……」
イリナとロスヴァイセ、小猫は恥ずかしそうに隠れていた。そして……。
「イッセー様、シドウ様……」
レイヴェル嬢までここに来ていたようで、彼女は胸元を隠しながら顔を真っ赤にしていた。
そして、その背中には炎の翼が展開されていた!これは、ヤバイ!
俺は待避しようとするが、時すでに遅く……。
「イッセー様の、シドウ様のエッチィィィィィッ!」
ゴオオオオオオオオオオッ!
「「ぎゃああああっ!」」
レイヴェルからの火炎を食らい、俺、イッセー、ついでにライザーも雪山で焼かれた!
その後、黒こげになりながら洞窟に帰還した俺は横になりそのまま寝ようとしたのだが……。
「リアスのことは諦める。だから、今度一度だけリアスの乳を見せてくれ」
「ふざせるな!焼き鳥野郎!」
何て言いながら洞窟を飛び出して再び激突する両者。もう知らん!ゆっくり寝させてもらうぜ!
その後、ライザーは無事にドラゴン恐怖症を克服、ゲームへの復帰を目指し始めたらしい。
「………で、どうしてこうなった?」
俺は再び小西屋に連れてこられていた。メンバーはレイヴェル嬢を含めたあの人温泉にいた女子たち。
リアスが当然のように言ってくる。
「私たちの入浴を覗いたんです。いちおうの義理は通してください」
「つまり、奢れと」
「はい」
俺が何かやらかすと小西屋に連行されるのは暗黙の了解的な感じなのか?
「まぁ、いいや。奢ってやるよ。ある程度俺のことを考えてくれよ」
『ご馳走になります』
こうして後処理もこなすことになった俺なのだった。
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