グレモリー家の次男   作:EGO

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Extra life 02 楽しい(?)グレモリー一家 ①

リアスがロスヴァイセを眷属を迎えてすぐのことだ。

「大変だわ」

リアスが表情を険しくしてイッセーの部屋と一階を行ったり来たりしていた。俺は一階でのんびりとお茶を飲んでいた。まぁ、簡単なやつだけどな。

「シドウさん。部長に何かあったんですか?」

俺に対面するように椅子に座るイッセーが訊いてきた。

俺はもう一度お茶に口をつけてから言う。

「今日は義姉さんが来るからな」

「ねーさん?グレイフィアさんですか?」

「ああ、いつもはメイドなんだが、今日はオフをもらったらしいからな。義姉としてだったらリアスに厳しいから……。てか苦手なんだよ。リアスは義姉モードのグレイフィア義姉さんが」

「部長にも苦手な人がいるんだな」

イッセーの横でうんうん頷くゼノヴィア。俺は苦手ではないんだがな。女にしかわからないものなのかもしれない。

「それでオフを利用して俺の家に?」

「話があるんだと」

俺とイッセーが喋っているとリアスが部屋から戻ってきた。しかし、なにか思い残しがあったのか再び部屋に向かってしまう。かれこれ五回目のチェックだが、もう何もないだろ。

「シドウさんは良いんですか?部屋とかチェックしておかなくて」

「うん?ああ、大丈夫だ。別に俺の部屋何もないし」

「そうなんですか」

「寝るためだけにあるみたいなもんだからな」

俺たちがそこまで話すと、戻ってきたリアスがイッセーのチェックも始めた。父さんたちからも期待されてるからな。イッセーに自覚があるかはわからないが……。

ピンポーン。

玄関のチャイム音が鳴った。時間通りに到着したようだ。リアスは急いで玄関まで走っていき、俺たちもその後に続く。

玄関から姿を現したのは、セレブな衣装に身を包んだ義姉さんだった。メイド服じゃない義姉さんを見るのは久しぶりかもな。それにしても、豪華そうなリムジンが停められているのは正式に兵藤宅に来たかったからだろう。

義姉さんは俺たちに視線を向けると、気品溢れる微笑を浮かべた。

「ごきげんよう、皆さん」

義姉さんは丁寧に挨拶をしてくれると、俺とリアスに視線を向けてくると、朗らかに微笑しながら義姉さんが挨拶をしてきた。

「ごきげんよう、シドウ、リアス」

「ごきげんよう、義姉さん」

「ごきげんよう、お義姉様」

俺はいつも通りに返したが、リアスは若干緊張の色が見て取れる。

「お久しゅうございますな、シドウ殿、リアス姫」

聞き覚えのある声が俺たちの耳に届いた。声の主の方を見ると、そこには、頭部は龍ののようでいて、全身は紅い鱗に包まれ、胴体は鹿や馬を思わせる大きさ二メートル程の生物。久しぶりに見たな。

その生物はイッセーたちに頭を下げた。

「お初にお目にかかる。私はサーゼクス様にお仕えする『兵士(ポーン)炎駒(えんく)と申す者です」

「は、はぁ、こちらこそ、よろしくお願いします!」

イッセーは慌てて挨拶を返えしていた。

「イッセー、この謎生物は炎駒。麒麟(きりん)って言えばわかるか?」

「謎生物とは、シドウ殿はお口が達者ですな」

「炎駒、久しぶりね」

俺と炎駒が喋っているとリアスが彼の頬を撫でた。

「麒麟は本来神聖な生物だ。それを眷属に出来た兄さんがどんだけ別次元か、わかるな?」

「あはは、マジっすか……」

「ああ」

俺がイッセーにひそひそ声で話していると、炎駒は紅い霧になって姿を消した。

「私が冥界にいた頃、話し相手になってくれていたの。よく背に乗せてもらったわ」

俺が任務で飛び回っている間にそんな事が、俺もその頃のリアスに会いたいもんだ。

俺がそんな事を考えていると、義姉さんが咳払いをひとつ。うん、いい加減入りますか。

「それでは、立ち話もなんですから中にどうぞ」

「ええ、お邪魔させていただきます」

こうして、兵藤宅に義姉さんが訪問してきたわけだ。

 

 

 

 

 

それから義姉さんと兵藤宅に住んでいる女子たちは談笑していた。リアスも笑顔だが、どこか堅い。そこまで緊張しなくても……。

「あとは……殿方かしらね」

義姉さんの一言で室内の空気がガラリと変わった。

「ま、まさか……そういうことなのですか?」

アーシアがハラハラした顔つきになり、

「そうよね、グレイフィア様が正式にここへいらっしゃるということはそういうことも含まれるわよね」

朱乃副部長も笑顔だがプレッシャーを滲ませていた。

「……いつか来るとは思ってましたが」

いつもは無表情な小猫も険しい表情になっていた。

ゼノヴィアとイリナはわかっていない様子だ。そして、当のイッセーもわかっていないようだ。リアスたちも苦労しそうだな。

リアスが顔を真っ赤にさせて義姉さんに言う。

「お、お義姉様!その件でここにいらしたのですか?そ、それは自然に事を進めるということで私にすべて任せてくださると思っていましたのに!」

「あら、リアス。私もお義母様もそのようなことは一言も口にしてはいなくてよ?一度、身の上のことを破談させたのだから、私たちを安心させるものはあなたの務めではないのかしら?」

破談ってのは、フェニックス家との話だな。俺が帰ってきてから『グレモリーのわがまま姫が婚約を破断させた』と聞かされた。純血を重んじる悪魔的には大事件だからな。

「何か、すいません」

「どうしてシドウが謝るのです?」

「いや、俺が任務受けてなかったら、リアスにも変なこと背負わせなかったのかなって思いまして……」

俺は素直にそう言った。まぁ、セラと付き合ってる時点で難しかったと思うけどな。

「シドウにも事情があったでしょう?それに、その間にもあなたは命懸けで動いてくれていたのです。誰も責めませんよ」

義姉さんは微笑して言ってくれたが、うーん、そんなんで良いのか?

義姉さんは再びリアスに視線を戻した。

「話を戻します。悪魔はただでさえ、出生率が危ぶまれています。特に名家の血を絶やすわけにはいかないものです。いずれ、あなたたちにも次世代の子の親になってもらいたい。お義父様とお義母様、私とあの人の願いでもあるのよ」

『あなたたち』ってことは俺も含まれてる感じか?

義姉さんは真剣な表情だったが、途端にその表情を緩和させると苦笑した。

「と言っても、私もあの一件に関わっているものね。いえ、それ以前に、私とあの人がも何だかんだで自由な恋愛をしてしまったのだから。当時、立場で言えば、あなた以上に複雑だったわ」

「お二人のラブロマンスは悪魔の女性にとって、まさに伝説ですわ」

朱乃副部長が頬を赤らめながらそう言う。

「……劇にもなっています」

小猫が言うが、劇にもなってたのか。

「あれは大変でしたね」

「シドウには苦労をかけました」

俺と義姉さんが昔を思い出していると朱乃副部長が訊いてきた。

「シドウ様も関わっていらっしゃるんですか?」

「ああ、当時の俺の任務は、義理姉さんの亡命支援だったからな」

それを聞いた小猫がぼそりと言った。

「……劇の途中に出てくるあの人はシドウ先生がモチーフだったんですね」

「俺も出てるのかよ……」

「サーゼクスが『彼のおかげだから』とよく言っていましたから」

「本当にあの頃からシドウに苦労かけてばかりだったね」

はぁ………。

「兄さん、なにやってんの?」

俺たちが喋っているうちにいつの間にか来ていた兄さんが笑みを浮かべていた。

「やぁ、シドウもリアスも元気そうで何よりだ。眷属の皆も変わりないようだね」

相変わらずのニコニコ顔だが、今日って大事な会議があるってセラから聞かされたんだが……。

俺の心配を他所に、兄さんが何かを取り出した。

「お土産を持ってきたんだ。私がプロデュースしたリアスの写真集、タイトルは『スイッチ姫と呼ばれた娘 ~リーアたん成長編~』幼少の頃から日本のハイスクールに入学するまでの成長記録なのだよ」

と、言いながら俺に写真集を渡してくる兄さん。俺だけでなく、イッセーたちにも配り始めていた。早速見させてもらうが、俺が旧魔王派にいた頃のリアスか~「生で見たかったなぁ」

「シドウお兄様!?いきなり何を!?」

「え?声に出てたか?スマンスマン。この頃には任務だったなってさ」

と言いながら写真集に視線を戻す。俺が任務に出たあとくらいから胸が大きくなってきているのか……。

「見ないでください!」

俺のを取り上げようとするが、俺はそれを避けて立ち上がると、再び向かってきたリアスの額にまっすぐ伸ばした右腕を当てる。リアスは必死に腕をブンブンと振り回してくるが、俺にはギリギリ届かない。

俺はリアスを抑えたまま兄さんに言う。

「で、兄さん。今日は会議じゃなかったのか?割りと大事な」

「そのはずよね?まさか、抜け出してきたのかしら?」

俺と義姉さんは兄さんを睨む。

「うん。ここから参加しようと思ってね。私の映像をリアルタイムであちらに転送すれば大丈夫……痛い痛い痛い。痛ひよ、グレイフィア」

義姉さんに頬を引っ張られ涙目になる兄さん。いつも通りで何よりです。

そして義姉さんのプレッシャーがすさまじい。リアスも怖がるわけだ。

俺たちがそんな事をしていると、テーブルに魔法陣が出現した。魔法陣から立体映像らしきものが映しだされはじめた。ノイズ混じりだったが、少しずつ正常となっていく。そこから立体映像が映りだした。

『……サーゼクスちゃん……聞こえる~?……おーい』

はぁ、面倒だな。セラが変なこと言わなきゃ良いんだが。

『サーゼクスちゃん!もう、勝手に人間界に行っちゃうんだもん!私だって行きたいのにぃ!』

「やぁ、セラフォルー。すまない、いま、兵藤一誠くんのお家に来ているんだよ」

兄さんの説明を受けて、セラが視線をイッセーたちに向けた。

『あららら。本当ね。やっほー☆赤龍帝ちゃん。ちょっと待って……シドウもいるの?』

「呼びました?」

『シドウ!久しぶりね!元気?私はちょっとシドウ分が足りないかも……』

「元気そうでなによりです。こっちは元気ですよ、マスター」

皆の前なのでマスター呼びにしておく。

『たまには連絡してよ!シドウの声を聞きたいんだから』

「まぁ、考えときます」

『良い方向の返答を待ってるわよ?』

「わかりました」

『ふふ。それで、サーゼクスちゃん。どうしてそっちに?』

兄さんは微笑むと、イッセーとリアスを交互に見ると口を開いた。

「実はリアスに『例のあれ』をしてもらおうと思っていてね。グレイフィアがここを訪れたのもそれが目的でもある」

「『例のあれ』ってあれか?」

「うん、あれだ」

「あれか~、リアスももう大人か」

俺と兄さんが勝手に納得していると義姉さんが言った。

「そういうことなのです、リアス。拒否は認めません。それぐらいの安堵を私たちに与えてくれないといけないわ。………うちの人が余計な方を引き寄せてしまったけれど。サーゼクス、わかっているわね?帰ったら、再教育ですよ?」

兄さんの頬を思いっきり引っ張る義姉さん。その視線はとても冷たいものだ。はっきり言うと怖い!

「はぅぅぅぅ、イッセー………ど、どうしよう……」

リアスは顔を真っ赤にさせていた。あれをやるのは良いが、セラが余計な人を呼ばなきゃ良いんだけどな……。

「見てください!細かな生活用品は全部百均で揃えたんです!日本には百円均一のお店があって、素晴らしい限りです!安いって最高ですね!」

ロスヴァイセが帰ってきたのは兄さんたちが帰ったあとだった。

 

 

②に続く………

 

 

 

 




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