俺が駒王学園の教師になって最初のうちは何も問題はなかった。そう『なかった』。今は………
「「「「おっぱい!!」」」」
「キャァァァァァ!」
「来ないでぇぇぇぇ!」
「……何これ」
大量の
俺は駆け出して女子に触ろうとしていた変態の一人を割りと本気で殴り飛ばした。快音と共にその変態は何人かを巻き込むように吹き飛んでいき、殴られた本体と巻き込まれた数体が霞のように消滅した。本当に何これ?
俺が首をかしげていると変態はまだいた。てか、すごいいるんですけど!?
「はぁ………」
俺はため息を吐くと再び変態の駆逐に動き出した。
変態の駆逐を開始して数分。今は生徒会室に籠城していた。あの後ソーナたちと合流したんだが、女子が多い生徒会メンバーではキツいものがあり、対策を考えるために逃げ込んできたわけだ。それを知っている変態どもがドアを叩いてきている。
「開けろ!開けろぉぉぉぉぉ!」
「おっぱい!おっぱい!」
俺は息を吐き、ソーナたちを見る。服は無事だが、色々と消耗がすさまじく、若干息が荒い。
俺はソーナに訊く。
「さて、あの変態どもの『服を弾き飛ばす』能力は何なんだ?」
「兵藤一誠くんの『
ソーナは冷静に言ってくれるが、語気が強く、キレかけていることがわかった。イッセー、後が怖いぞ。
「女性のってことは、俺や匙は問題ないわけだ。よし、行くぞ。男の意地を見せてやる」
俺はそう言うと匙の首根っこを掴んでドアを開けようとするが、思い止まった。今ドアを開けたら変態どもが雪崩れ込んでくる。そう思ったからだ。
俺は振り向いてソーナに訊く
「ソーナ、窓から出るが良いか?」
「シドウ先、生……」
「私は構いませんよ。早急にこの問題を解決しなければなりませんから」
「よし、今度こそ行くぞ」
「シド……先………」
何か消え入りそうな声が耳に届いているんだが、なんだ?
「シドウ…先生……息が……」
「……あ」
匙の首根っこを掴んだはいいが首を締め付けていたようだ。匙が顔色を悪くしていた。俺は匙から手を離して窓を開ける。下を除きこみ、安全を確認する。下に変態どもはいないな。
俺は飛び降りようと窓の
『もしもし、お兄様。いまどこですか?』
「生徒会室に籠城中だ。脱出手段は確保したが、ソーナたちは動けんぞ」
『それはわかっています。これからある作戦を行うので合流しましょう。旧校舎まで移動できますか?』
「ああ、問題ない。で、あの
俺が訊くと生徒会メンバーも聞き耳を立てた。この事件の元凶を知るためだ。まぁ、誰かは判りきっているけどな。
リアスが嘆息しながら言った。
『アザゼルです。イッセーを使って彼のドッペルゲンガーを作ろうとしたら、こうなったらしいです』
「あのバカが……」
俺は右拳を血管が浮き出るほど握り、若干ながら殺気を放った。生徒会メンバーも同様に殺気を放っていた。まだかわいいもんだがな。
「とにかく合流しよう。そっちに行けばいいのか?」
『はい。こちらの準備は出来ています』
「あ~、だったら始めててくれ。すぐに合流する」
『わかりました。それでは』
リアスはそう言うと電話が切れた。アザゼルの野郎……とりあえず殴ろう。
俺はそう決めるとソーナたちを見渡した。
「リアスから聞いた通りだ。俺は行くが、終わるまで籠城してろ」
「そのつもりです。リアスが何を考えたのかは判りませんが、私たちよりは手際は良いでしょう」
ソーナを言葉を聞くと、俺は窓を開けて下を確認する。さっきと変化なし。行きますかねっと。
「じゃ、鍵掛けとけよ」
俺はそう言いながら飛び降りる。地面に着地すると一度生徒会室の窓を確認する。窓はしっかりと閉められていた。俺はそれを確認できるとすぐさま走り出した。
旧校舎に向かう最中でもイッセーを殴り倒していく。一発当てれば消えてくれるので楽なもんだ。
女子生徒は全員眠り、彼女たちを守るように小規模な結界が張られていた。たぶんアザゼルがやったのだろう。俺はそれを確認しながら速度を上げていった。
と、いうわけで旧校舎に到着したのだが……。
「これは俺のだ!」
「エロ本だ!」
「読ませろ!」
リアスたちが部室の窓から釣竿を使ってエロ本を垂らしていた。それを掴んだドッペルゲンガーは釣り上げられ、中に待機しているであろうメンバーに狩られていることだろう。そんなことお構いなしにエロ本に群がるドッペルゲンガーたち。入れ食いとはまさにあの事を言うのだろう。それぐらいドッペルゲンガーが釣り上げられていっていた。
う~む。中に入ろうにもドッペルゲンガーが多過ぎて進めない。一旦様子を見よう。
俺は近くの木に背中を預けて釣りを見物した。
数分後、ドッペルゲンガーは知恵をつけたのか木に隠れて様子見を始めた。リアスたちも一旦引っ込み、作戦を練っているようだ。今のうちに中に入るかね。
俺がそう決めて歩き出すと、旧校舎から誰かが出てきた。あれは……朱乃副部長だな。てか何でバニーガール?
朱乃副部長は俺に気がついていないのか大きな声を発した。
「イッセーくーん!おっぱいですわよー!」
なるほど、次は色仕掛けってわけか。だが、いくらドッペルゲンガーでもこんな罠に飛び込むほどバカじゃ……。
「「「「「「「「おっぱい!」」」」」」」」」
ドッペルゲンガーが大挙して朱乃副部長に突撃していった。いや……何でだよ。
俺はそれをゴミを見るような目で見ているとあることに気がついた。俺は先程の木から少しだけ旧校舎に近づいた。ドッペルゲンガーはあらゆる方向から群がってきている。つまり、
「どけどけどけ!」
「俺を止めるやつは、全部敵だ!」
「おっぱいまでもうすぐだぁぁぁ!」
「デスヨネー」
俺は異常なまでの殺気を放つドッペルゲンガーから逃げる形で朱乃副部長の方へと走り出すことになってしまった。
「ふふ、では、いきますわよ?」
朱乃副部長はどこか楽しそうな笑みを浮かべた。そういえば、リアスから彼女はSっ気が強いって聞いたな。ま、まさか!?
「ちょ、副部長!待っ…」
「
カッ!ドオオオオオオオオオンッ!
「「「「「「「「「ぎゃぁぁぁっ!」」」」」」」」」」
ドッペルゲンガーどもはすぐに消えるが、俺は……。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
最後の最後まで痺れさせられた。俺が何をした!
俺が立ち上がろうとすると、ドッペルゲンガーの第二陣が来ていた。つまり……。
「もう一撃!」
カッ!ドオオオオオオオオオンッ!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺はこの後三回痺れさせられた。
「申し訳ありません!」
朱乃副部長が俺に頭を下げてきた。理由は、判りきっている。
「いや、良いって。避けれなかった俺にも問題がある」
「しかし……」
俺が気にしないと言っても彼女はまだ食い下がってきていたが、アザゼルが笑いながら言った。
「気にすんなって!朱乃に近づいたリッパーが悪いんだからよ!案外、リッパーもおまえの体に……」
「アザゼル、いっぺん、死んでみる?」
俺はアザゼルの喉元にナイフを突きつけた。割りと本気で……。アザゼルは俺が本気だと察したのか慌て出した。
「わかった!悪かったから、これを下ろしてくれ!」
「チッ」
俺は舌打ちをするとナイフを消した。やれやれだ。
「アザゼル、次の作戦は?リアスにバニーガールをさせたら、今日がおまえの命日になるぞ」
俺が
「リッパー、口が悪すぎるぞ!まったく!まぁ、次の作戦はリアスが中心になってもらうが、バニーガールじゃねぇから安心しろ」
俺は少しだけ安心したが、この後すぐに後悔した。
「フハハ!愚かなイッセーどもめ!」
旧校舎の屋根の上に立つアザゼル。悪役のラスボス感全開の衣装に身を包み、背中からは十二枚の堕天使の翼を展開していた。
アザゼルが叫ぶ。
「これを見ろ!」
アザゼルの横にはドレス姿のリアスのが現れた。まぁ、短距離転移ってやつだ。悪役に捕らわれた姫ってことなのだが、本物の姫でもあるので似合っていた。写真撮っとこ。
「あの~、シドウさん?何をしてるんです?」
写真を撮る俺にイッセーが訊いてきた。俺は一旦撮影を止めてイッセーに言う。
「兄さんに送ってやろうかなって思ったんだ。兄さんはリアスラブだからな」
「シドウさんも中々だと思います」
「何か言ったか?」
「何でもないです!」
イッセーはぼそぼそ声で何かを言っていたが、何を言ったんだろうか?
俺とイッセーがそんな事を話しているとアザゼルが叫んだ。
「ドッペルゲンガーども!聞こえるか!俺は今からリアスの胸をもむぞぉぉぉぉ!それがいやなら力ずくで止めてみろぉぉぉぉ!」
「イッセー……」
「何ですか?」
「とりあえず、後で一発殴ろう。そうすれば俺もおまえもスッキリするはずだ」
「はい!」
俺とイッセーが決意を固めているうちにドッペルゲンガーが葬られていっていた。さすがは総督、強い。
それにしても……。
「ドッペルゲンガー、必死だな」
ドッペルゲンガーたちはアザゼルに怯むことなく立ち向かっていっていた。何かこっちが悪いことしている気がしてきた。
ドッペルゲンガーが傷つきながらも叫ぶ。
「部長を助けるんだ!」
……だよな。さて、行きますか!
アザゼルはそのドッペルゲンガーに指からビームを放つが、俺がドッペルゲンガーの前に立ち、ブレードで弾く。
ビームはあらぬ方向へ飛んでいき、爆発した。
俺が振り向くと、ドッペルゲンガーは驚愕の表情になっていたが、いつの間にか移動してきていた本物のイッセーの肩を借りて立ち上がった。
「おいリッパー!何しやがる!もうちょいで解決だってのによ!」
アザゼルが若干怒気を込めながら叫んできたが、俺はアザゼルを睨む。
「もとはと言えばテメェが悪いんだろが!つーわけで、死に
ブレードの切っ先をアザゼルに向けると俺の横に立つ影が複数……。
「シドウ先生の言う通りです」
「うん。木場と同意見だ」
木場とゼノヴィアがそれぞれの
背後から淡い緑色の光が放たれていた。たぶんアーシアだろう。
気がつくとリアスの眷属が全員集合していた。
こいつら、何だかんだで良い奴らだよ。
俺は不敵に笑んでアザゼルに言った。
「さて、アザゼル。言い残すことはあるか?」
「俺は死ぬ前提か!?」
「アザゼル、自業自得よ」
リアスも嘆息しながらそう言った。その通りだ!
「いくぞおまえら!リアスを助けて
『はい!』
俺たちは同時に駆け出してアザゼルを目指した。
「バ、バカな!?」
飛んで逃げようとするアザゼルだが、
「にがすか!」
俺はイッセーの腕を掴むと体を時計回りに大きく回して、遠心力を乗せると全力でイッセーを投げる!
イッセーは勢いのままアザゼルの腹に体当たりを決めた。
「こ、この俺が!こんなところで!ぎゃぁぁぁぁぁ!」
断末魔と共に落下してきたアザゼルを、俺たちは逃がすまいと取り押さえた。
「くそ!大勢で俺をいじめやがって」
顔に
「で、懲りたか?」
俺が訊くとアザゼルは笑った。
「今回は失敗しちまったからな。まぁ、次に期待だ」
「次があってたまるか」
俺はそう吐き捨てると携帯を取り出した。
「ソーナ、終わったぞ」
『わかりました。ありがとうございます』
「まぁ、頑張ったのはオカ研なんだかな。今回の事件は記憶を消すことで解決するそうだ」
『それで事態は収拾できると思いますが、気を付けてください』
「え?何かあったのか?」
『女子生徒がそちらに殺到しています』
「は?」
俺は窓の外を見ると、殺気を放った女子生徒が押し寄せてきていた。
アザゼルが言う。
「言い忘れてたが、記憶を消しすぎると危険だからな、イッセーに服を剥がされたことだけは覚えてるぞ」
「なるほど、イッセー」
「何ですか?」
疑いもせずに近づいてきたイッセーの首根っこを右腕で掴み、足を左腕で持つ。
「え、ちょ、まさか!?」
「このままだと帰れないんでな。女の子に囲まれてこい!」
俺はそう言うとイッセーを投げ飛ばした。運動部の女子たちに受け止められ、団体の真ん中に落とされる。
俺はそれを確認すると素早くアザゼルを捕まえ、イッセーと同様に持ち上げる。
「ま、待て!俺は何もしてねぇだろ!」
抵抗するアザゼルに俺は言う。
「とりあえず、逝ってこい!」
言うと同時にアザゼルも投げ飛ばす。アザゼルが落下したと同時に叫ぶ。
「女子諸君!その教師も殴っていいぞ!イッセーに指示をしたのはそいつだ!」
「「ふざけんなぁぁぁぁぁ!」」
二人の断末魔を無視して俺たちは帰り支度を始めたのだった。
-----------------
サーゼクスは普段の通りに仕事に励んでいた。だが
「おや、シドウからメールだ」
弟からのメールに一度手を休めた。
「ルシファー様、どうかなされましたか?」
そんな彼に仕事モードのグレイフィアが訊くと、サーゼクスは彼女にもメールが見えるようにして読み始めた。
『駒王学園で色々とやらかしたんだが、その一コマ』
と、同時にリアスのドレス姿の写真が現れた。
「グハッ!」
「サーゼクス!?」
不意打ちに見せられたドレス姿の妹にサーゼクスは倒れ、グレイフィアがそれを介抱する。シスコン魔王のおかげで仕事が止まってしまったわけだが、グレイフィア的に言えばいつも通りなのであまり気にしてはいない。
後でシドウは説教を受けることになるのだが、それをシドウは知るよしもなかった。
誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。