俺の真・斬魔刀とハーデスの鎌がぶつかり合うと激しい衝撃波が発生した!壁や床、柱にヒビが入り、大きく神殿を揺らした。
俺とハーデスはそんなものお構いなしに打ち合っていっく。避けられた俺の一撃が神殿の床を裂き、避けたハーデスの一撃が神殿の柱を砕く。鎧を纏っているとはいえ一撃もらえば大きな隙となって致命傷を与えられかねない。それは向こうもそうだ。つまり、一撃入れれば勝負は決まる!
俺はさらに攻撃のペースを上げていき攻め立てる。ハーデスもそれにあわせてペースを上げて応戦してきた。
俺が上段から振り下ろした一撃をハーデスが鎌の柄で止めて再びつばぜり合いになる。
《ファファファ、楽しませてくれるな。コウモリよ》
『ほざぐな!』
俺は一気に腕に力を入れて押しきると真・斬魔刀を振り上げてハーデスを逆袈裟に斬りにいくが、ハーデスはすばやく鎌を戻して防いだ。ハーデスは後ろに飛び退き距離を取ろうとするが、俺は飛び出してハーデスに打ち込んでいく。ハーデスは器用に鎌を回しながら俺の剣撃を捌いていく。少しずつだが、動きに慣れ始めているな。だったら!
俺はアザゼルに言われていた『生命エネルギーの操作』を行う。エネルギーをゼロにして、最高速度でハーデスの後ろを取るとそのまま真・斬魔刀を振り下ろした!奴は反応できていない、取った!
俺がそう思った矢先、ハーデスは鎌を背中に回すようにしてそれを防いだ。
『なっ!?』
俺が驚愕していると、ハーデスの蒼い鎧の背中に目玉のような模様があった。それはギョロギョロと動き俺を見てくる。何だこれ、キモ!
ハーデスは体を時計回りに回して俺を弾き飛ばしてくる。俺は前回り受け身の要領で態勢を直して真・斬魔刀の切っ先をハーデスに向けた。同時に生命エネルギーを元に戻す。
《貴様に殺された我が
ハーデスの鎧となった死神どもが目の役割もしているってことか……。背後を取っても意味がない、真っ正面から攻めきるしかないってわけか。いや、待てよ………。
俺は立ち上がりながら再び生命エネルギーをゼロにして飛び出す。ジグザグに動き回るが、例の目玉の模様が動いて俺を見てきていた。そうだ、それでいい。
俺は右手をハーデスに向かっ伸ばして魔法陣を展開。そのから魔力弾を放つ。鎧の影響で火力、速度が驚異的なまでに強化されたそれはまっすぐにハーデスに飛んでいった!
《血迷ったか……》
ハーデスはそう漏らすと魔力弾を鎌で斬り裂いた。瞬間、魔力弾が弾け激しい閃光が発生した!
《ぐおっ!》
ハーデスは大きく怯み、鎧の目も閉じられた!
俺は生命エネルギーをゼロにして再びハーデスに接近する。目も潰して気配もゼロ。これを見切れる奴はいない!
俺はハーデスの正面につくと真・斬魔刀を上段から振り下ろした!その一撃はハーデスを頭から一刀両断にする!はずだった。
《舐めるな……》
ガキンッ!
ハーデスは冷静に鎌で今の一撃を防いだ。バカな!?
俺は生命エネルギーを元に戻して真・斬魔刀を押し込もうと力を込めるが、押しきれない。真・斬魔刀の刀身と鎌の柄がぶつかっている所から火花が出始めた。
これ以上は鎧が維持できなくなる!少しずつ焦り始めた俺にハーデスは言う。
《生命エネルギーをゼロにする。確かに気配は消えるが》
ハーデスは俺を弾き返して鎌を振ってきた。俺は真・斬魔刀の腹でその一撃を受けるが、すさまじいパワーに押され片膝をついた。
《魂が消えぬ限り、我々からは逃げられん》
魂を関知して動いてんのかよ!気配とかそんな生やさしいもんじゃねぇ、さっきの目玉はわざとってことか!
俺はそう思いながらも少しずつ鎌を押し返そうとするが、鎌は微動だにしない。真・斬魔刀と鎧を使っても押せないのか!
すると、少しずつ鎧からオーラが消え始めた。ヤバイ、鎧が消える!
俺がそう思った矢先に鎧が消え、斬魔刀も元に戻ってしまった。どうにか鎌を防いでいるが、押しきられる!
《勝負ありだ》
ハーデスはそう言うと俺に蹴りをいれてきた!
「かはっ」
俺は腹を蹴られて態勢を崩したところでハーデスは再び鎌を振り上げ、俺を斬り裂こうときてくる。俺は咄嗟に横に転がり避けようとするが、若干かすってしまった。
出血はしていない。ならやれる!俺がそう思った瞬間、俺は急な脱力感に襲われ、視界が霞んだ。
死神の鎌は外傷と共に魂を削るものだが、真の使い手は外傷無しで魂だけを削るらしいからな。ここまで効くもんなのか……。
俺はふらつく足を懸命に踏ん張って立ち上がってハーデスを睨んだ。
《我が一撃でも魂を削りきれないとは、恐れ入る。だが、終わりだ》
ハーデスはそう言うと鎌を構えて俺の視界から消えた!
俺は集中してハーデスのオーラを探ろうとする。だが、魂が削られたせいか集中できない。
「後ろです!」
ロセの叫びに反応して俺は振り向くと、ハーデスが鎌を右から振り抜こうとしていた。俺は斬魔刀を垂直にたて、防御のために魔法陣を展開する。その瞬間に放たれるハーデスの一撃。それは防御魔法陣をあっさりと砕くと斬魔刀とぶつかり合い、俺は競り合うことなく吹き飛ばされて壁に激突した。
「がっ」
魂は持ってかれていないが、体が動かんな。骨が何本か逝ってるぞこれ。
「シドウさん!大丈夫ですか!」
ロセがリリスをおぶって俺の横に来ていた。ロセの近くに弾き飛ばされたようだ。どうにかして二人だけでも逃がしたいが、これはキツいかもな。だが……。
「ロセ、リリスを連れて逃げろ。時間稼ぎぐらいならしてやる」
俺がそう言うとロセは怒鳴った。
「バカなこと言わないでください!帰るときは一緒です!」
ロセはそう言うとリリスを降ろして一歩前に出ると、ハーデスに向かって数十個の魔法陣を展開した。
「やめろ、ロセ!おまえじゃ無理だ!」
俺は止めようとするが、ロセは魔法陣から一気に魔力弾を放った。ハーデスは鎌を回して全て防いでいく。
俺は足を動かして立ち上がろうとするが、まったく力が入らない。どうにかしないと、ロセが!
俺が焦っていると何かが俺に触れた。見るとリリスだった。顔色が悪く息も荒い。ハーデスにそうとうオーラを持っていかれたようで限界が近いのだろう。
「シドーパパ。ロセ、助けて……」
リリスはそう言うと俺に顔を近づけてきた。ま、まさか!?
俺は腕を動かしてリリスの顔を抑える。
「リリス、よせ……死ぬぞ……」
「リリス、死にたくない……けど」
リリスはそう言うと俺の手に自分の手を添えてきた。
「家族に死んでほしくない……」
リリスは覚悟の表情になっていた。リリスがこんな顔をするなんて、相当な覚悟なのだろう。
「シドーパパ、お願い」
「……わかった」
俺はリリスから手を離す。リリスは微笑むと俺に口づけをしてきた。いつかにされた程ではないが、俺にオーラが流れ込み、力がみなぎってくる。これでもいけるかどうか……だが、やるしかねぇ!
「リリス、ありがとう」
「……パパ、がんばって」
リリスはそう言うと力が抜けたように床に崩れ落ちた。
ああ、任せろ。ロセもリリスも、俺が助ける!
俺は飛び出してハーデスに斬りかかった!ハーデスは驚きながらもそれを受け止めた。
《バカな!?貴様の魂は半分は削ったのだぞ!なぜ動ける!》
ハーデスは俺とつばぜり合いながら言ってきた。俺は笑みを浮かべてハーデスに返す。
「ロセを助けてくれって、『娘』がうるさいんでね。頑張らないとよ!」
俺はハーデスを押しきると斬魔刀を横凪ぎに振って鎧に傷をつける。なかなか硬いな。
俺は斬魔刀の切っ先をハーデスに向けた。
「今度こそ終わらせよう。ハーデス!」
《貴様に何が出来る。コウモリ風情が!》
俺とハーデスは同時に飛び出し激突した。鎧はまだ使えない。この状態で使い始めたら最後まで持たない。生身でやれるところまでやるしかない!
俺は斬魔刀を必死に振り、ハーデスに打ち込んでいった。
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