俺、シドウは死神を蹴散らしながら突き進んでいた。ロセもしっかりついてきてくれている。少しだけ怒りは抑えられるようになったが、たぶんまたキレるな。
俺が死神にオーラを飛ばすとロセが言った。
「あの~、シドウさん?」
「ん?どうかしたか?」
ロセが若干不満げな表情になりながら言ってきた。
「もう、シドウさん一人で良いんじゃないですか?」
「だから先に帰ってくれって言ったのによ」
俺はそう言いながらオーラを飛ばして死神を吹き飛ばす。
どうやら死神どもは俺がここまで来るとは予想していなかったようで攻撃がまちまちだ。もう逃げる前提にも見える。
逃げる奴を撃つ趣味はないが、逃がす気はない。まぁ、逃げ場所もないんだけどな。ところで最上級死神ってあれで全部だったのか?全く出てこないぞ。
そんなことを思いながら突き進むこと数分。王の間へと続くと思われる巨大な扉の前にたどり着いた。ここまで来るのに死神はほとんど狩り尽くした気がする。それにしても、ベルたちは動いてくれてんのかな?
「ロセ、行くぞ」
「はい」
ロセの返事を聞いて扉を開けようと手を添えようとするが、その前に勝手に扉が開いた。俺たちは頷きあって中に入る。
中は真っ暗ではあるが、悪魔だから問題ない。派手なレリーフの柱が何本もあり、死神はいないようだ。
俺たちが部屋の中央まで移動すると壁や柱にかかっている松明に炎が灯った。
俺たちは一段高い場所に設置された玉座を見た。そこには派手な装飾のローブを着てミトラを被っている骸骨野郎、ハーデスが座っており、禍々しい程のオーラを放っていた。ハーデスは俺たちを眼球のない目で睨んでくる。
俺はハーデスに威圧するように言う。
「ハーデス、あの子はどこだ?」
《私の領地で好き放題してくれた者の言葉には思えないな》
話を逸らそうとするハーデスに俺は殺気と共に言葉を送る。
「次はない。あの子はどこだ」
ハーデスはそれを聞くと指を部屋の隅に向けた。俺たちがそな指のさした先を確認すると、そこにはリリスが倒れていた。
「リリス!」
「リリスちゃん!」
俺たちはリリスに駆け寄り、無事を確かめる。息はあるが顔色が悪い。何をされたんだ。
「ハーデス!リリスに何をした!」
ハーデスは愉快そうに笑った。
《ファファファッ!いやなに、聖槍の小僧と同じ事をしたまでよ》
「「っ!?」」
俺とロセは驚愕した。曹操と同じ事をやったってことは……この子にサマエルを!?
「テメェ!」
俺は斬魔刀の切っ先をハーデスに向けた。
《ほう、我と勝負をするつもりか?良いぞ認める。コウモリよ、その力見せてみよ》
「言ってろ!」
俺は飛び出して斬魔刀をハーデスに振り下ろした!
ハーデスは玉座に座ったまま影から
さすがは神様、なかなかやる。
俺とハーデスはそのままつばぜり合いになり、力比べを始めた。だが、なかなか押しきれない。
俺はつばぜり合いを辞めて後ろに飛び退いた。同時にロセに指示を出す。
「ロセ!リリスを頼む!すぐに終わらせるから待ってろ!」
「わかりました」
ロセは頷くと、自分とリリスを囲むように防御障壁を展開した。
俺はハーデスを見た。ハーデスは立ち上がると鎌を強く握った。あいつもおそらく宝玉を使っているんだろうが、変だ。アザゼルからは『俺と本気のサーゼクスだったら余裕で対処できる』と言っていたが、妙に強い気がするぞ。
《舐めてくれるなコウモリよ。我が力は高まり続けているぞ》
ハーデスは余裕そうにそう言ってくるが、なるほど、だいたいわかった。あいつ、リリスのオーラを、自分か埋め込んだ宝玉に宿しやがったな。
俺は斬魔刀を握り直してハーデスに飛びかかった。縦横無尽に動き続け、時にはフェイントを織り混ぜてハーデスの背後を取って斬りかかろうとするが、ハーデスはそれに余裕で見切って俺に鎌を振ってきた!俺はそれを上体を後ろに反らしてギリギリで避けると勢いのままハーデスを蹴り飛ばす!がハーデスはゆっくりと着地して見せた。ダメージなしかよ!ヴァーリの鎧でも蹴り砕ける威力だぞ!?
俺が少し驚愕しているとハーデスは笑った。
《ファファファ。言っただろう、舐めてくれるなと》
これは、本気にならないとダメだな。リリスのためにも速攻で終わらせる!
俺は斬魔刀を右手で持ち直すと切っ先を天に向け、宙に円を描いた。円が魔法陣へと変わり、そこから放たれた光が鎧となると俺の体を包み込んだ。鎧を纏うと同時に左腕を振り、光を弾けさせる。
よし、問題ねぇ。だが時間もねぇ。一気に行くぜ!
俺は兜を装着すると一瞬でハーデスとの距離を詰めて真・斬魔刀を振り下ろした!ハーデスは俺の動きに対処しきれずに左腕を斬り落とされた。ハーデスは大きく鎌を振って俺を牽制しようとするが左腕一本でそれを受け止める。するとハーデスは感嘆の息を漏らした。
《ほう……なかなかやる》
『遊んでる暇はないんだ。終わらせる!』
俺はそのまま鎌を弾き飛ばすと斬魔刀を上段から一気に袈裟懸けに振り下ろした。ハーデスは咄嗟に後ろに飛び退いて避けようとするが、タイミングが遅く、深々と斬り裂かれた。普通ならこうなるんだろうが、手応えがなかったんだが……。
俺はハーデスを見る。ローブは斬り裂かれているが、体にはダメージなしっていうか斬るべき肉がねぇ!あ、そうか、あの野郎骸骨だからか!
俺は今度こそ終わらせようと真・斬魔刀を右脇に構えると、ハーデスは再び笑った。
《その鎧か。噂のグレートレッドの力を、いや、今はそこのオーフィス『もどき』の力だったな。それを鎧として身に纏う。なかなか面白い》
あの野郎!リリスをオーフィスもどきだと!ふざけやがって!
俺が飛び出していこうとすると、ハーデスは鎌を柄頭を床につけるように垂直に立てた。何をするつもりだ?
《だがな、その力は貴様だけのものではないぞ?》
『何っ!?』
俺が驚きの声をあげると、ハーデスは鎌を持ち上げ柄頭で床を強く叩いた!衝撃波が波紋のように広がると魔法陣のようになる。
《コウモリどもから受け取った宝玉にオーフィスもどきの力を込め、それを解放する。貴様とやっていることは同じことだ》
なるほど、それでも出力は出なさそうだな。俺がそんなことを思っていると、ハーデスは言った。
《出力では勝てんが、その差を埋める手立ても用意してある》
ハーデスは魔法陣の光に包まれながらも鎌を両手に持ち、高く掲げた。
《
ハーデスが言うと同時に奴に霊的な物が殺到し始めた。幽霊にたかられている骸骨にしか見えないが、あれはヤバイな。俺が阻止しようと走り出すとそれを幽霊が邪魔をしてくる。斬れば消えるが、数が多すぎる!ロセの方は問題なさそうだ。
《
ハーデスが宣言のようにその言葉を言うと、幽霊が一斉にハーデスに張り付いていった。張り付いた幽霊は鎧となり、籠手となり、具足となってハーデスを覆っていった。
同時に禍々しい光が強くなり、俺の視界を遮る。
俺はそれに構わず駆け出し、ハーデスの気配を感じる場所に斬りかかった!
だが、それは何かに防がれた。光が止むとそこにいたのは……ハーデスの鎌のように
《ファファファ。これで良い勝負ができるな》
ハーデスはそう言うと骸骨を模したと思われる兜を装着して俺を弾き飛ばすと鎌を構え直した。骸骨頭が骸骨の兜とは、意味あるのか!?
俺は態勢を立て直して着地するとハーデスを睨んだ。
『良い勝負?笑わせんな、速攻で終わらせる!』
《来い、コウモリよ!》
俺とハーデスは同時に駆け出し、お互いの
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