あれからロセと遊びまくり、若干だが日が傾き始めていた。今は公園のベンチで休憩中だ。いや~、楽しかった。いい年こいてゲーセンで遊びまくっちまった。相変わらずリリスとイリナは奥の木に隠れているようだ。
俺がそれを確認していると、ロセは笑顔で言った。
「楽しかったですね。ゲームセンターで遊んだのは初めてかもしれません」
「初めてって、いくらなんでもそれはないだろ」
ロセの言葉にそう返したが、こいつのことだ。本当に行ったことがない可能性もある。
にしても、監視の目がキツいな。これはリリスからだけじゃないような……。
俺が警戒していると、ロセが立ち上がった。
「すいません。お手洗いに行ってきます」
「ああ、わかった」
ロセはそう言うと走っていってしまった。どうも嫌な予感がする。俺がデートをすると必ずって言えるくらい問題が起こるからな。だからってロセの後についていくのも失礼だ……どうしたもんか。
俺があれやこれや考えていると、俺の元に何かが飛ばされてきた。それは地面に叩きつけられて砂煙を起こしながら停止する。
煙が晴れると、そこにいたのはイリナだった。パッと見では怪我はしていなさそうだ。
「イリナ、問題発生らしいな」
俺は立ち上がり、リリスが隠れていた木を、正確にはリリスを掴んでいるその影を睨んだ。俺は影を確認すると同時に結界をはり、関係のない人を遠ざける。結界を張り終えると同時に俺は斬魔刀を取り出した。イリナも立ち上がり聖剣オートクレールを取り出し、俺と同じように影を睨んだ。
「出てきたらどうだ?『死神』さんよ」
俺が言うと影から派手な装飾が施されたローブを着た骸骨が出てきた。骸骨頭なので表情はわからないが、俺には不敵に笑っているように見えた。
《突然で失礼。私は最上級死神が一人、ゼクロム。以後お見知りおきを》
本当に不敵な声音で俺とイリナに言ってきた。俺はゼクロムを睨みながら言う。
「で、俺たちとその子に何か用か?俺がレヴィアタン様の眷属、イリナがミカエル様の
俺が怒気を込めながら言うとゼクロムは頷いた。
《はい、知っておりますとも。我々はあなた方をつけ狙うこのテロリストの
「オーフィス?そいつは行方不明だろうが、ゼクロムさんよ、おまえ、バカか」
俺は斬魔刀を右肩に担ぎながら言うと、ゼクロムはこう返してきた。
《その行方不明のオーフィスがこれなのですよ。わかりませんか?》
その発言を待ってたんだよ!
俺はニヤリと笑みを浮かべてゼクロムに言ってやった。
「その程度のオーラしかないドラゴンがオーフィスなわけないだろ」
オーフィスとリリスは異常なまでに厳重な封印を施され、かなりオーラを抑えられている。もっと言うとリリスは俺に鎧形成用のオーラを分けてくれているので余計に弱い。同じドラゴンでも初見ではわからないほどだ。おかげでタンニーンの領土でものんびり出来ていたわけなのだが、こいつらはそれでもオーフィスと言い切った。それはつまり。
「その子をオーフィスと言ったな?何を根拠に言っている」
ゼクロムは俺の言葉にしばらく黙りこんでいたが、こう返してきた。
《オーフィスは顔写真が公開されているでしょう?だからですよ》
「オーフィスは見た目を自由に変えられる。写真だけじゃ、本当にオーフィスなのかわからんぞ。それこそオーラを関知しないとな」
俺はそう言い返すとゼクロムは突然笑いだした。
《くくく、ははははっ!シドウ・グレモリー!貴様は本当に面倒くさいな!やはり大義名分は要らない!ああ、こいつがオーフィスだってのは最初から知ってたさ!だからもらいに来たんだ、全てはあのお方のためにな!》
今までの口調を砕き、狂ったように言ってきた。たぶんこっちが素なのだろう。
そのゼクロムにイリナが言う。
「日本神話体系とギリシャ神話体系は、私たち三大勢力の仲介で同盟を結ばれています!日本神話体系の領地で許可もなくこんなことをしたら、あなた方、ゼウス様からも見放されますよ!」
確かにそれも一理ある。現に同盟の象徴たるD×Dのイリナは殴り飛ばされたわけだし、こんな大胆なことをしたら、上がうるさいだろう。
ゼクロムは笑みを辞め、不気味に光る双眸で俺たちを睨んできた。
《だからなんだと言うんだ?我々死神はもとより毛嫌いされているんだぞ?今さら何をされようと構うものか!》
興奮気味に俺たちに叫ぶゼクロム。それでも隙を見せないあたり、さすが最上級死神だ。
俺はゼクロムに聞こえないようにイリナに声をかける。
「イリナ、リリスを助けるぞ。俺が隙を作るから一気にぶんどれ」
「わかりました。いつでもどうぞ」
俺とイリナはジリジリとゼクロムに近づいていこうとすると、奴が突然、右手を突き出してきた。
《おっと、下手なことは考えるな。こいつの首が飛ぶぞ?》
ゼクロムはそう言うと影に左手を突っ込み、中を探ると何かを取り出した。影から引きずり出されたのは銀髪の女性だ。俺はその女性を見てぶちギレそうな自分を抑えるのに必死になった。ゼクロムが取り出した女性は……。
「テメェ、ロセに何をしたぁぁぁぁ!」
ロセだったからだっ!俺がそれを見たと同時に全身から放ったオーラが風圧を発生させ、木々を揺らした。イリナも足を踏ん張って耐えているほどだ。ゼクロムはそれを見て肩をすくめると言った。
《独りになったところで襲ったんだ。シドウ・グレモリー、貴様は慈愛深いグレモリーの悪魔だ。こうすれば下手に動けないだろ?》
ゼクロムは俺に彼女の顔を見せつけるように髪を乱暴に引っ張ると、足元の影から鎌を出現させるとそれを右手で持ち、ロセの首に向けた。
《改めて言わせてもらうが、下手に動いたらこいつの首が飛ぶ、オーフィスにも言ってあるからこんなにおとなしいんだぜ?》
「テメェ………」
「この外道……」
俺とイリナはほぼ同時にそう言った。ゼクロムはそれを聞いて不敵に笑ったように見えた。
《外道で結構。俺は死神、魂を冥府へ誘う者だ。死を司っている俺たちがまともだと思うか?》
ゼクロムはそう言うが、俺はまともな奴はいると思うぜ!俺と真っ正面からぶつかり合った野郎とかな!
「そんなことはどうでもいい……ロセとその子を離せ……!」
俺の怒りに反応して刀身が深緑色に染まった斬魔刀の切っ先をゼクロムに向ける。だがゼクロムはビビる様子もなく返してきた。
《おや、この子も?それは無理だな。俺はこいつを連れて帰らなければ、あのお方に消されかねない。ロセって子も無理だ。こいつは人質にさせてもらう。それに……》
ゼクロムはロセの顔をマジマジと見ながら言った。
《俺の好みだ》
「テメェ!ロセに手を出したら、生まれてきたことを後悔させてやるからな!」
《怖い怖い。だが、楽しみだ》
ゼクロムはそう言うとリリスとロセを連れて影に沈み始めた。
《さぁて、勝負といこうぜ?もうすぐあのお方から連絡が来るはずだ。そしたら冥府に来い。死神総出で、もてなしてやるよ》
ゼクロムはそう言い残すと完全に影に沈んだ。
くそ……!くそ!
俺は斬魔刀を地面に突き刺した!斬魔刀は深々と地面に突き刺さるが、俺は構わず引き抜き、何度も何度も突き刺していく。どうにかして怒りを発散しないと、洒落にならない!今まで感じたことがない程、今の俺はキレてる!
「イリナ……」
「は、はい!」
今の俺を見て、イリナは少し怯え始めていた。だが、今は……!
「戻るぞ。ミカエルたちに連絡しろ」
「わかりました」
怯えながらもイリナは連絡を始めてくれた。
俺も覚悟が決まったよ。上の連中がなんと言おうと、俺は……冥府を滅ぼす!
俺はそう覚悟を決めると斬魔刀を亜空間にしまい、結界を解除して歩き出した。
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