グレモリー家の次男   作:EGO

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life02 デートと追跡者

俺、シドウは例のトレーニングフィールドに来ていた。術の練習のためだ。

右手を前に出して魔法陣を展開。そして魔力弾を放つ。

それなりに速く飛んでいき的を撃ち抜いた。前回に比べれば規模は小さいが、圧縮されているため火力は上がっている。だが、燃費が悪い。

ロセのように『十の威力を五で放つ』をしたいのだが、今の俺は『十の威力を十で放っている』わけだ。完全に燃費改善で行き詰まっている。まぁ、近接戦闘が中心の俺には大きな問題ではないのだが、できることならやっておきたい。

俺がそんなことを思いながら本を確認していると、リアスたちから分かれてきたのかロセが近づいてきた。

「シドウさん。調子はどうですか?」

「うん。後は慣れだと思う」

俺は適当に返したのだが、ロセは頷いた。

「確かに慣れは大切です。それで、慣れました?」

「全然ダメだな。少しずつ燃費は良くなっているとは思うが……」

「見せてもらっても?」

俺は頷き、右手を前に出して魔法陣を展開する。ロセはそれに顔を近づけて細部まで確認していた。

「そうですね……力を入れすぎです。北欧の魔術は過程が大変ですが火力は出ます。変に力を入れると疲れるだけですよ?」

なるほど、力を抜いてみればいいのか。

俺は少し力を抜いてみる。魔法陣の光が少し弱くなったが展開は出来ている。

「少しだけ良くなりました。後は……」

ロセは自分の手元に魔法陣を展開すると俺のものに近づけてきた。目ではわからないところまで解析しているようだ。ある程度調べると本の魔法陣を指さした。

「ここの部分がまだ(いびつ)です。調整してみてください」

「あいよっと」

俺は魔法陣を少しずつ変えていく。すると、魔法陣が力を抜いた状態でも先程のように光が強くなった。

「おお……こんな感じなのか」

「はい。北欧の魔術はシドウさんに合っているのかもしれなせんね」

面と向かって言われるとなんか照れくさいな。俺は頬を掻きながら魔法陣を消す。

「後は、慣れか。反復練習するかね」

「その調子です」

ロセのアドバイスの元、俺は再び魔法陣を出したり消したりしながら調整を繰り返していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の午後、俺は駅前の広場いた。ロセと出かけるためだ。理由は、まぁ、色々と迷惑をかけたのでそのお詫びの意味が大きい。

五月ということもあり、少しずつ暖かくなってきたので俺は調整がしやすいような服装で行くことにしていた。

俺が腕時計で時間を確認していると俺を呼ぶ声が聞こえた。

「シドウさーん」

見ると、ロセが手を振りながらこっちに駆け寄ってきていた。転ばないことを祈りながらロセに近づいていくと、彼女は案の定つまずいてしまう。俺は咄嗟にロセを抱き止めると、彼女の目を見ながら俺は言う。

「気を付けろよ。怪我するぞ」

「は、はい。すみません」

ロセは顔を赤くしていたが、不意打ちで抱き締められてるからか?

俺はロセを立たせると手を差し出す。

「えっと……」

「手、繋がないのか?」

「は、はい!」

ロセは慌てながら俺の手をとった。ロセの手、暖かいな。

俺がそんなことを思っていると、俺たちのことを見てきている気配を感じとった。

俺はゆっくりとそちらを見ると、柱に隠れて頬を膨らませたリリスがいて、彼女にはイリナが同伴していた。俺たちが気が付いたことに気が付いたようで、イリナは申し訳なさそうに頭を下げてきた。リリスはかなり厳重な封印がしてあるからわからないやつが見てもわからないと思うが、連れてきて良かったのかよ!

俺は心の中でそう思いながらロセに言った。

「イッセーと朱乃もこんな感じだったのかな」

「かもしれませんね」

俺とロセはそんなことを言いながら歩き出す。背後からリリスの視線を感じて仕方がなかった。

 

 

 

 

 

 

今回の目的も東京の百均ショップ『ベラ』だ。前にも行ったが、ユーグリットが途中で割り込んで来やがったせいで大変だったな。

というわけでリベンジ(ロセ談)したかったとのことだ。

ロセは相変わらず興奮しながら皿や食器類を中心に様々なものを物色していた。

「シドウさん!これなんてどうですか?」

見せてきたのはペアのマグカップだ。取っ手部分が他の物と比べて独特な形をしている気がするが、それを気にしなければ白を基調としているシンプルなデザインだ。俺は嫌いじゃない。

「良いんじゃないか?ロセがいいと思ったんならそれが一番だ」

「そうですか?」

なんて言いながらロセの顔は真っ赤である。

そんな俺たちを見ているであろうリリスの視線を感じるんだが、気にしたら負けか。

「それでは、これにします。お会計に行きましょう」

「おうよ」

その後、俺とセラはベラを出て二人で歩き出した。リリスとイリナが追いかけてきていたが……。

 

 

 

 

 

 

 

俺とロセが来たのは喫茶店(ユーグリットとあった場所とは違う店)に入店、休憩していた。奥の席にはリリスとイリナが座っており、リリスはいつも通りにすごい量を食べ、イリナは財布の中身を心配していた。後で立て替えてやろう。

俺はコーヒーカップに口をつけるとロセに言う。

「こっちから誘っておいて訊くことかわからないが、楽しめたか?」

誘うと言っても何か買いたいものがあるか訊いただけなんだがな。

ロセは満面の笑みでこう言った。

「はい!もちろんです!シドウさんと二人で(?)出かけるのも久しぶりなので」

若干疑問形なのはリリスたちのことを言っているのかな?

「まぁ、若干の予定外の事態が発生しているが、そこまで問題はないな」

「はい」

ロセはそう言うとコーヒーを飲んだ。彼女はコーヒーカップを置き、フッと息を吐くと急に真剣な顔になった。

「こうやって、二人で出かけてるのも久しぶりですね」

「確かに、二人だけで戦うことはあったけどな」

「ふふ、それも懐かしいですね」

「あの時も死にかけたからな~」

「大変でしたね」

俺とロセが天界で二人だけで戦ったこと。イリナがいるから余計に意識したのかもしれないな。そのイリナは何か食べ始めているが……。

俺はコーヒーを飲み干すとロセに訊く。

「さて、次はどこにいく?ここら辺は娯楽施設が多いからな」

「そうですね……色々周ってみましょう」

ロセもコーヒーを飲み干したことを確認して俺は立ち上がる。イリナとリリスがそれを見て動き出そうとしていた。

「どうする?撒いちまうか?」

「いえ、このままでいきましょう。リリスちゃんに見せつけてあげないと」

リリスに何だって?突然声を小さくされたから後半が聞き取れなかった。

俺とロセは店から移動してデートを楽しんだのだった。

 

 

 

 

 

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『マスター、いかがなされましょう。現在ターゲットの護衛は天使もどきとコウモリもどき、そして魔王の眷属が一人だけです。魔王の眷属はグレモリーの者、動くのであれば、今が好機かと』

《そうだな……最近、カラスどもの元総督やコウモリの首領がいちいちうるさい。そろそろ誰が冥界を冥府を統べているか、はっきりさせたい頃合いだ》

『では、始めます。我々の()()で』

《ファファファ、テロリストの首魁を捕らえる。それだけで十分な大義名分よ》

『では、(のち)ほど』

《ファファファ、オーフィス……あの時は手に入らなかった。だが、それがもうすぐ手に入る。………楽しみだ》

 

 

 

 

 

 

 




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