life01 ある日の早朝
兄さんたちから話を聞いて一ヶ月程が経った。人間界はもう五月だ。俺の職場復帰まで二ヶ月ちょい。いや~楽しみだ。
俺は目を覚ましてそんなことを考えていたのだが、腕が痺れてそれどころじゃなくなってきていた。原因は……。
「シドウしゃん……」
寝言を言いながら俺の右腕を抱き枕にするロセ。寝る前にも思ったがなぜネグリジェ姿なんだ!?
「パパ……」
寝言を言いながら俺の左腕を抱き枕にしているリリス。って俺をパパ呼びするな!
ロセとリリスの二人がそれぞれ右腕と左腕に組み付いてきており腕の先まで血が巡っていない気がする。痺れの原因はたぶんこれだろう。
「二人とも、そろそろ起きてくれ」
俺は声を少し大きめにして言うが、二人は聞いていない。てか起きてくれない。休日はいつもこんな感じだ。
夜中、ロセが例の如く一緒に寝て良いか訊きにくると、リリスが俺に飛びついてくる。それを見たロセが俺の返答を待たずにベッドに入ってくる(嫌ではない)。で、二人でどうくっつくか決めて現在にいたる。こんな感じで三人で寝ているわけだ。
それにしても、最近アザゼルが気難しい顔をしているんだよな。
俺はそこまで考えると再び声を出す。
「そろそろ朝食だぞ」
「……!」
真っ先に反応したのはリリスだ。実際そろそろ朝食の時間なので勝手に起きると思ってたがな。
「……うぅ……」
ロセは腕にしっかりと掴まってしまい離れる気がないらしい。
リリスが俺の腕を離して体を起こすと訊いてくる。
「シドーパパ、ご飯?」
「ああ、ご飯だ。先に行っててくれ」
「うん!」
リリスはベッドから降りるとトタトタと小走りで部屋を出ていった。ドアを閉めていってくれるのは俺の教育の成果だろう。
「ロセもだ。いい加減起きてくれ」
「……あと五『時間』」
「時間!?分じゃなくて!?」
俺は『時間』というところに反応した、いや、反応してしまった。
ロセは小さく笑みを浮かべてこう返してくる。
「じゃぁ、五『分』ならいいんですね?ではあと五分だけ……」
ロセはそう言うと俺の腕を一旦離すと今度は腕を枕にする。そして改めて体を抱きしめてきた。
くそ……油断した!ロセはいつもこうなのだ。俺に揺さぶりをかけ一分でも長く(俺にくっついて)寝ようとする。朝食前だとリリスがいなくなるため俺とロセは二人っきりになる。そこを狙ってきているのだ。
「はぁ……」
俺は溜め息をついた。最近ロセに勝てない。北欧の魔術の練習は順調に進んでいるが、行き詰まっている感じだ。
俺はそう考えながら首だけでロセを見る。安心しきった顔で寝ている。本当にかわいいもんだ。
俺は懲りもせずにロセの頬をつつく。相変わらずプニプニしているなぁ~。つつかれまくったロセは目を開ける。
「うぅん……シドウさん……」
ロセはもう一度指をくわえようとするがそれをされる前に指を引っ込める。
「二度もやられるかよ」
「む~」
ロセは不機嫌そうに口をへの字に曲げた。だが、ロセは唐突に俺の手をとった。
「へ?」
「ふふ♪」
ロセは笑みを浮かべるとそのまま俺の腕をネグリジェの隙間に潜り込ませて自分の胸に当ててきた!?
ムニューと独特の触り心地が俺の五指を刺激してくる!無意識に動いてしまう五指からセラとは違う弾力を感じた。何かこう、ありがとうございます!ってイッセーみたいになってきちまったな!
「ロ、ロセ!どうかしたのか!何か変なものでも食べたのか!?」
俺が訊くとロセは真剣な顔で言った。
「最近、思ったんです。もっと大胆にならなきゃなって」
オーディンの爺さんからは生娘呼ばわりされてたのに……何があった!
そこで俺は気がついた。ロセの心音が若干速い気がするのだ。もしかして、緊張してる?
「ロセ……バックバクだぞ。大丈夫か?」
「わ、わたすだって、緊張ぐらいするだ!」
ロセは顔を真っ赤にして方言が出ているが、俺はロセの胸から手を離して頭を撫でてやる。ロセは黙ってそれを受け入れた。
「ロセが緊張するのもわかるが、いきなりそれをされると俺も困る。最初は……こっちか?」
俺はそう言うと顔を近づけてそのまま唇にキスをする。
ロセも最初は驚いていたがそれを受け入れてくれた。
「………シドーパパ?」
俺とロセは唇を離して起き上がり声を主を見る。リリスが俺を見ていた。
「リリスか、どうかしたか?」
俺とロセは特に気にせずにベッドから降りる。リリスが走りよってきて俺に抱きついてきた。リリスは俺に抱きつくと頬を膨らませながらかわいくロセを睨んだ。
「むー!」
「ふふ、かわいいですね」
当のロセは微笑みながらリリスを見ていたが、何か本当に余裕を感じられる笑みだ。
「さてと、リリス。呼びに来てくれたのか?」
「うん」
「そっか、ありがとうな」
俺はそう言いながらリリスの頭を撫でてやる。リリスは目を細めて気持ち良さそうにしている。するとロセが俺に言ってきた。
「行きましょう。せっかくの朝食が冷めてしまいます」
「そうだな。それじゃあ、行きますかねっと」
俺は抱きついているリリスを抱っこするとそのまま歩き出す。
「な!?」
「~♪」
ロセが
「リリスがロセばっかりズルいって目をしてたんでね」
「だ、だったら、仕方ないですね……」
ロセは強がるように言ったが、また何かしてやらなきゃかな?
そんなこんなで平和を楽しんでいる俺だった。
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