グレモリー家の次男   作:EGO

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この章ラスト、次からが最終章です!


life32 新たなる組織 EXE

ロセとリリスから解放されたのは午後二時四十五分。いい加減出発しないと遅刻してしまう。

俺は急いで体から水分を飛ばすと脱衣場に用意していた服を着る。

一応魔王領に行くのでしっかりとした服装で行くか迷ったが、その手の服は全部グレモリー城だ。今日はついでにそちらにも寄って取りに行くつもりだ。

そんなわけで場所は転移室。俺が魔法陣の中央に立ちそのまま操作。ロセとリリスが見送りに来てくれていた。

「それじゃ、行ってくる。リリスを頼むぞ」

「はい。任せてください」

「リリスも、ロセと一緒にいろよ」

「うん」

俺は二人にそれを確認すると魔法陣を起動、魔王領に転移した。

 

 

 

 

光が弾けるともうそこは魔王領だ。到着した瞬間に俺に飛びついてくるヒトがいた。

「シドウ!」

「おっと」

俺はそのヒトを抱き止め、時計回りに回りながら勢いを殺す。

「セラ、久しぶり……でもないか」

「私からしてみれば久しぶりよ」

セラは俺のことを抱きしめながらそう言った。考えてみると最後に会ったのは………昨日じゃね?

「さて、兄さんは?」

セラは一旦離れ、俺の手をとった。

「こっちよ。ついてきて」

そう言いながら進み始めるセラ。俺も手を引かれて歩きだした。

 

 

 

 

 

 

移動することさらに数分。ようやく部屋に到着した。

俺は部屋に入り兄さんと対面するように席に座る。セラは俺の横に座ったが、こういうときは兄さんの横ではないのだろうか。

兄さんは特に気にせずに笑顔で口を開いた。

「さてシドウ。調子はどうだい?」

「うん?問題ないが……何でだ?」

「キミのことを心配するのは当然だよ」

今は『ルシファー』ではなく『グレモリー』として話してるのか。

「体調は問題ないが、何か大変」

俺が言うと兄さんとセラは首を傾げてきた。セラが訊いてくる。

「シドウ、大変って?」

「リリスに突然『パパ』呼びされたんだぞ?混乱もするさ」

「「……大変ね(だね)」」

二人は同情するように言ってくれた。本当に大変なんだぜ?

「……ってパパ!?シドウ、どういうことよ!」

セラはそう言いながら俺の回転椅子を回し、彼女が俺の正面にくるようにした。

「……どうも何も、みんなして俺とリリスが『親子』みたいって言うから、リリスが本気になった」

俺がそう返すとセラは俯きながらプルプルと震え出す。そして顔を上げて俺を見た。すごい覚悟に満ちた表情だ。

「シドウがパパなら、ママは私よ!ロスヴァイセちゃんにはあげないわ!」

二人とも子供が欲しいようだ。俺、大丈夫かな?

「詳しい話は後だ。いい加減本題に入ってくれないか」

俺が回転椅子を戻しながら兄さんに言うと、兄さんの表情が真剣なものになった。

「シドウ、キミの駒についてだが……アザゼルが送ってくれたデータを元にアジュカと話し合った結果、それは純粋な悪魔の駒(イーヴィル・ピース)でも、変異の駒(ミューテーション・ピース)でもなくなっているという結論が出た」

「純粋なものでも変異でもないって、じゃあ俺のは何なんだ?」

俺が聞き返すと兄さんはこう答えた。

「グレートレッドに二度も取り込まれた影響で変化した悪魔の駒(イーヴィル・ピース)。なので名称を龍の駒(ドラゴン・ピース)と仮称することになった。まだまだ未知な部分が多いが、一つだけ確実に言えるのは」

兄さんはそこまで言うとやさしい笑みを浮かべた。

「キミはシドウで、セラフォルーの騎士(ナイト)ということだけだ」

俺は俺で、セラの騎士(ナイト)か。改めて言われると何か嬉しいな。

俺は若干照れながら兄さんに訊く。

「そう言ってくれるのはありがたいが、話は他にもあるんだろ?」

兄さんは頷き、再び口を開いた。

「シドウ。キミにあることを頼みたいんだ」

「それは任務か?」

兄さんはそれを訊くと少しだけ困ったような表情になった。

「任務とも取れるが、取れないとも言える」

よくわからないが、こういう時は訊いておくのがベストだな。

「詳しく頼む」

俺がそう言うと兄さんは頷き、話を続けた。

「キミがリゼヴィムに捕らえられる前、つまりアグレアス奪還作戦の前に話し合っていたことがあるんだ」

俺がアグレアスでリゼヴィムの手駒にされていたときにか、知らなくて当然だな。

「僕たちはD×Dに継ぐ新たな組織を設立しようと思っている。対テロではなくそれを未然に防ぐ組織、人間界で言うところの『CIA』や『MI6』のような秘密情報局をね」

へー、スゴいことになってたんだな。俺はどこか他人事だったが、なぜそれを俺に話すのか疑問に思った。だが、そう思った矢先にわかった。

「俺に所属してもらいたいと?」

兄さんは無言で頷いた。俺って危険なことばっかりしてるな。

セラが俺の手を握りながら言う。

「無理にとは言わないわ。もうシドウは十分頑張ったんだから、他の誰かに任せてもいいのよ?」

セラは辞退してもらいたいような声音で俺に言った。確かに俺はクリフォトとの戦闘で左腕と体をダメにした(今は治ってるがな)。セラやロセに心配をかけたくはないが、俺はかなりのバカだからな。

「確かに俺は色々やってきて色々失ったが、せめて俺や、リアスたちの子供が平和に暮らせるようにしてやりたい」

俺はセラを見つめながら言った。セラは一瞬だけ悲しそうな表情になったがすぐに笑みを浮かべた。

「やっぱりシドウは受けちゃうわよね。わかってたわ」

兄さんは頭を下げてきた。

「すまない。キミにばかり押し付けてしまって」

「兄さん、顔を上げてくれ。魔王なんだから簡単に頭下げんなよ」

兄さんは顔を上げてまっすぐ俺を見てきた。

「組織名は『EXE(エグゼ)』になる予定だ」

EXE(エグゼ)?あぁ、E×E(イーイー)ってことか」

俺が言うと第三者の声が聞こえてきた。

「テロ対策チーム『D×D(ディーディー)に属し、D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)たるグレートレッドの肉体を持ったキミが、『E』となる。運命とはこのようなことを言うのかもしれないな」

そんなことを言いながら入室してきたのはアジュカ様だ。ファルビウム様はまたサボってんのか?

アジュカ様は椅子に腰を掛けると言葉を続けた。

「発足自体は、一、二年後を予定している。まだ戦後復興で忙しいからね。もっとも最終手段をやっていたらもっとかかっていただろうがね」

それを止めたのが俺なんだがな。一回死んだけど。

俺は話をある程度聞くと、今度はこっちから質問する。

「他の勧誘予定メンバーは?」

「イッセーくんやヴァーリくんをはじめとした神滅具(ロンギヌス)所有者は全員入れたいところだね」

兄さんはサラッと言ったが、なかなか大変じゃね?確か見つかってない神滅具(ロンギヌス)もあるよな。ま、まさか!?

「……俺に見つけてこいと?」

俺が訊くと兄さんは首を横に振った。

「まさか、そこまでキミに頼りきるわけないだろ。人材確保はこっちが動くよ」

俺は息を撫で下ろした。世界を回って神滅具(ロンギヌス)探しとか、三十年はかかるぞ。

「で、その組織のリーダーは誰にするんだ?またデュリオか?それともアザゼル?」

俺が訊くとアジュカ様が答えた。

「いや、俺たちは兵藤一誠くんに期待している。デュリオくんやアザゼル、シドウくんにも期待はしているが、少なくともデュリオくんとキミはやらないだろう?」

「ああ」

俺が即答で返すとセラから「もう……」と言われた。俺は上に立つより下である程度自由に動ける方が好きだ。

「まぁ、影からサポートくらいはするさ」

「お願いするよ」

アジュカ様はこう返すと、俺をじっくりと見てきた。

「トライヘキサ迎撃のおり、俺はキミたちとは別れてある人物と会っていた。その人物がキミを見て言ったよ。『シドウ・グレモリーか。いつか会ってみたいものだ』とね。彼はキミが帰ってくると直感していたようだ」

怖っ!なんかヤバイやつに目をつけられてるな。

「あ、そうだ。一つ言い忘れていたよ」

兄さんが何かを思い出したように言った。

「キミを『おっぱいドラゴン』か『マジカル☆レヴィアたん』の『劇場版』に出したいんだが、どっちがいい?」

スゲェ真面目な顔して何言ってるんだ。てか劇場版ってどっちもなかなか人気なんだな~。

「あ~、考えとく」

俺が適当に返すとセラが首根っこを掴んできた。

「何で迷うのよ!私と共演するの!」

キレ気味に言うセラだが、力は抜いてくれているためあまり苦しくはない。

「とりあえず、城に戻んないと。服とか多々諸々を人間界(むこう)に送れない」

俺がそう言うとセラは手に力をいれてきた。

「『とりあえず』じゃないわよ!どうするの?私?それともリアスちゃん?」

なかなかの究極クエスチョンだな。兄さんがスゴい見てくる。ここでセラって言っても問題はないのだろうが後が怖い。

「だから、考えとく」

「むー!」

セラは頬を膨らませながら手を離してくれた。やれやれだよ。

 

 

 

 

 

 

その後何とか解放された俺はグレモリー城に転移した。父さん、母さんと少し喋り(兵藤夫妻の話だ)終えると、俺は自室に戻ろうとする。その矢先俺に駆け寄ってくる少年がいた。

「シドウお兄様!お久しぶりです!」

「ミリキャス!久しぶりだな!背、伸びたんじゃないか?パーティーの時に見つけられなくて悪かったな」

「大丈夫です。僕もお父様とお母様と一緒に楽しめましたから」

「それは良かった」

俺はそう言いながらミリキャスの頭を撫でる。それを見たグレイフィア義姉さんが言う。

「親子と言われても納得してしまう方がいそうですね」

「まぁ、親戚だしな」

「えへへ~♪」

ミリキャスがリラックスし始めたな。何か頭を撫でるのが得意になり始めている気がする。

「では、お荷物を。大変でしたよ、一度は遺品のとして回収したのですから」

「ははは、はぁ……」

『遺品』と言われると本当に一度死んだんだなって思える。

溜め息を吐いた俺に義姉さんが言う。

「申し訳ありません。とんだご無礼を」

「いや良いって、死んだってことは変わらないんだし」

「はい」

若干義姉さんが冷たい。なぜだ?よく見ると俺の手とミリキャスに視線が行っているような……。ミリキャスを撫で回したいのかな?

「じゃあ、俺はこれで。ミリキャス、またな」

「はい!シドウお兄様!」

「義姉さんもまたそのうちに」

「はい。お待ちしております」

俺は再び転移魔法陣に乗り、人間界に帰還した。

 

 

 

 

 

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『サーゼクス、通信越しだがいいか?』

「アザゼルか、どうかしたのか?シドウには例の件、話をしたぞ」

『ああ、それは良いんだが。クリフォトについてだ』

「クリフォト……彼らは壊滅したのだろう?」

『壊滅はさせた。だが疑問が残ってたんだよ』

「疑問か……無いこともないな」

『で、調べてみたらビンゴだ』

「ビンゴ?いったい何がわかったんだ?」

『クリフォトにリゼヴィムの居場所を教え、コキュートスへの裏ルートを教えた野郎だ』

「……!そうか。だが予想通りではあっただろう?」

『ああ、あの()()野郎だ。あいつ、懲りてねぇぞ。クリフォトから情報と引き換えに宝玉をもらっていたようだ』

「その情報、どこから」

『クリフォトが宝玉を作ってた機械からだ。まず間違いねぇ』

「そうか、やはり……」

『設立前で悪いが、シドウのEXE(エグゼ)としての最初の仕事になりそうだな』

「まったく、シドウに休暇をあげてやりたいのに……」

『まったくだよ。だが、はっきり言ってまだ情報が足りない。集まったら武力を振るう前に止めるぞ』

「ああ、そうだな」

 

 

 

 

 

 

 




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