グレモリー家の次男   作:EGO

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life30 約束

俺、シドウとリリス、アザゼルは転移室に移動すると、そのまま転移で移動した。向かう先は人間界、兵藤宅だ。

玄関からではなく、いきなり転移で行くのも失礼な気がするが、イッセーたちが話をしてくれているようなので直接転移で行くことになった。

転移の光が止み、俺たち三人は無事に兵藤宅に到着。転移魔法陣の前にはリアスたちが迎えに来てくれていた。リリスが俺の背中から飛び降り、オーフィスの元に走り寄っていくと、二人は抱きしめあい、再会を喜んでいるようだ。

「お帰りなさい!シドウさ……」

ロセが笑顔でそう言ったが、俺の左腕と額を見て言葉を切ると、体をプルプルと震わせていた。

ロセはアザゼルの肩を掴み、問い詰めた。

「シドウさんに何をしたんですか!ただの検査とかじゃなかったんですか!」

アザゼルの肩から『メキメキ』と嫌な音が出始めている。そのアザゼルは耐えるように歯を食い縛りながら言った。

「お、落ち着け……ただヴァーリと模擬戦をさせただけだ!俺は何にもしてねぇ!」

「え、そうなんですか?」

ロセはあっさり手を離し、俺の方に来た。

「本当に大丈夫なんですね?怪我は……これ以外にはしていなさそうですが」

ロセは俺の体を触って確かめてくる。ロセってこんなことするキャラだったっけ?

ロセが奥のアーシアに言う。

「アーシアさん、回復をお願いします」

「はい!今いきます!」

アーシアは駆け寄ってきて、俺に回復のオーラを当ててくれた。効果ばつぐんというか、力が高まっているな。そのおかげですぐに痛みも引いた。

「サンキュー。後で来る奴にも頼むかもしれないから、そのつもりでいてくれ」

「誰かいらっしゃるんですか?」

アーシアが訊いてきたが、答える前に魔法陣から降りる。

「まぁ、すぐに来る……っと、噂をすれば」

俺たちが降りると同時に、魔法陣が光を放った。その光が止むと、現れたのはヴァーリチームだ。ヴァーリは相変わらず包帯姿だった。

「アーシア、頼む」

「は、はい」

アーシアはヴァーリに駆け寄っていき、回復のオーラを出していた。

ヴァーリが一礼すると、アーシアもそれに一礼を返し、こちらに戻ってくる。

それを確認したアザゼルが言う。

「さて、VIPルームに行くぞ。話はそれからだ」

アザゼルの言葉に頷いて、俺たちは移動を開始した。

 

 

 

 

 

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俺、兵藤一誠と俺の眷属、リアスたち、ヴァーリチームはVIPルームに移動して、ある映像を見せてもらっていた。

アザゼル先生曰く『シドウとヴァーリの戦闘』だそうだ。当事者のシドウさんとヴァーリも真剣に見ていた。

序盤はシドウさんが優勢だったけど、ヴァーリが全力になったところから互角の勝負になっていき、最終的に引き分けになっていた。

明らかに別次元の動きなんだけど、俺もあれぐらい出来るようにならないと!

映像が終わり、アザゼル先生が訊く。

「さて、ヴァーリ。戦闘中に違和感を感じなかったか?」

質問されたヴァーリは、何か思い当たることがあったのか口を開いた。

「映像でいう飛龍(ワイバーン)が斬られたところだな。突然、彼の気配が消えた」

あの時か。ヴァーリが飛龍(ワイバーン)を使って攻撃していた時に、突然シドウさんが消えたと思ったら飛龍(ワイバーン)が斬り裂かれた。そんなことが二回あったんだ。

「で、モニターしていた俺から言わせてもらえれば、『マジで消えてた』レーダーからも消えたんだ」

「え?マジで?」

それを訊いたのはシドウさんだ。いや、シドウさんが一番わかってるんじゃないの?

「シドウ………おまえな」

アザゼル先生が半目でシドウさんを見ていた。シドウさんは頬を掻きながら苦笑した。

「俺でもまだよくわかってない(ふし)があるからなぁ~。今は、何というか……無意識でやってる」

無意識でもあそこまで出来るのもすごいと思います。

俺を含めた全員が、同じ事を思ったかのか苦笑していた。

アザゼル先生が続ける。

「で、俺の考察なんだが。イッセー、おまえの生命エネルギーが不安定だって話はしたな?」

「はい。何か、メーターがゼロになったり振り切ったりしてるっていうのは前に」

俺の体は、オーフィスとグレートレッドの力で再生した。そのせいで問題は無い程度に生命エネルギーが不安定なんだ。それをリアスや朱乃さん、小猫ちゃんの協力で安定させている。

アザゼル先生は頷いて、シドウさんを見た。

「で、シドウは戦闘中にそれを無意識な内に『操作』している可能性が高い。鎧を纏うときや攻撃の時に全開して、不意討ちを狙うときや回避の時に生命エネルギーをゼロにする。そうすれば気配が完全に消えて、察知出来なくなる。デカイものが急に小さくなれば見失うだろ?それを利用してるんだと思う。敵が見失ったら、後は神速で動いて、相手を斬るなり、逃げるなりしてるってわけだ」

「へ~」

当のシドウさんはどこか他人事だ。それでいいんですか?

「アジュカが言っていた悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の変異もそれに一役買っているのだと思う。まぁ、それはアジュカに確認してみるさ」

「今度はアジュカ様のところに出向くのか。忙しいな、まったく」

シドウさんはそう言いながら苦笑した。でも心底嫌だってわけでもなさそうだ。

「とりあえず、俺の力はそんなもんかな。生命エネルギーがゼロになるってのも変な感じだ。長時間やったら、今度はマジで逝っちまうかもしれねぇな」

シドウさんは冗談半分で言ったと思うのだが、それに噛み付くヒトが一人。

「そんな事言わないでください!」

ロスヴァイセさんだ。珍しく声を荒げてシドウさんに詰め寄っていた。

シドウさんもその迫力に若干押され気味になっていた。

「ロセ、落ち着け」

シドウさんはロスヴァイセさんを落ち着かせようと声をかけた。

ロスヴァイセさんは深く息を吐いて、シドウさんに言った。

「本当に、もう言わないでください」

「ああ、わかった」

シドウさんが頷くと、ロスヴァイセさんは小さく笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

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それから解散となるとイッセーたちはプールに行き、リリスはそれに(正確にはオーフィスに)ついていった。俺はみんなと別れ、兵藤夫妻に挨拶をしていた。

「申し訳ありませんが、今日からお世話になります」

俺は頭を下げた。

「そんな、シドウさん。顔を上げてください」

「そうですよ。せっかく戻ってきたんですから、またのんびりしてください」

聞いた話では、二人はイッセーやリアスたちが悪魔だということを知っており、イッセーの上級悪魔昇格式も見に行ったそうだ。つまり、二人は俺の正体も知っていて、滞在を許可してくれている。

俺は頭を下げたまま、言った。

「ありがとうございます」

「ですから、そこまで改まならないでください」

「イッセーがお世話になってるですから、これくらいはしますよ」

俺が顔を上げると、兵藤夫妻は笑顔だった。本当に良い人たちだ。

兵藤夫人が言う。

「シドウさんの部屋はずっとあのままですから」

「……ずっと、ですか?」

俺が訊くと、兵藤夫人が頷いた。

「ええ、ロスヴァイセさんが『いつ帰ってくるかわかりませんから』って時々掃除していたんですよ?」

俺はそれを聞いて胸が締め付けられた。

俺は、俺が思っている以上にロセを追い詰めてしまっていたようだ。

「わかりました。では、またお世話に……」

「シドウさんったら、また」

「几帳面ですね」

「ははは、すいません。何か癖みたいなもんです」

俺は一度頬を掻くと、「それでは失礼します」と一言告げてから、部屋に戻った。

 

 

 

 

 

部屋に戻った俺は驚いた。本当にそのままなのである。

兵藤夫人は時々と言っていたが、毎日掃除をしていたように、手が行き届いていた。

ベッドと本棚、机や椅子の位置も本当にそのままだ。

細かい荷物は今度グレモリー城に取りに行くが、一日二日だったら、問題はない。

俺が部屋に入るとドアを閉め、ベッドに腰を下ろした。色々あったが、ここも落ち着く。

そう思えるのは、ここも我が家だと思っている証拠なのかもしれない。

俺がのんびりしようとするとゆっくりとドアが開いた。開けたのはロセだ。彼女は俺を潤んだ瞳で見つめていた。

「えっと……どうかしたか?」

俺が訊くと、ロセは消え入りそうな声で言った。

「その……ですか?」

「ごめん。もう一回言ってくんない?」

俺が訊き返すと、ロセはドアを閉めて俺の右隣に腰を下ろした。

「その……一緒に寝て良いですか?」

………ロセが何かおかしい。前はこんな大胆なことをすることはなかった。まぁ、混浴したことはあったが、あれは事故みたいなもんだ。

そういえば、イッセーがサマエルで一度死んで、その後無事に戻ってきてから、リアスたちのアプローチがスゴかったと言っていたな。ロセもそれか?

「ダメ……ですか?」

ロセは上目遣いで俺に訊いてくる。か、かわいい……。

リアスたちみたいに忍び込まないのは、ロセの良心が働いているからだろう。誰かがベッドに忍び込んできたら、俺だったら飛び起きて戦闘体制になっちまうからな。

ロセは黙って答えを待っててくれていた。いい加減答えてやらんとな。

「いいぜ。迷惑かけちまったし、それくらいなら……」

「本当ですか!じゃあ、明日も明後日もその次も!」

おいおいおい!何かロセが暴走し始めたぞ!

ロセはそう言うと、落ち着くように息を吐き、俺の肩に寄り添ってきた。俺の手を握りながら、ぼそりと言葉を漏らす。

「……本当に心配したんですよ?シドウさん、いっつもいっつも死んじゃいそうになって、それでも無事だったけど、今回は……」

声を震わせるロセ。俺は彼女な手をやさしく握り返す。

「安心しろ。あの時も言ったが、俺は『不死身』だ。何かあっても、絶対に帰ってくる」

「本当ですか?」

「ああ、本当だ。だから、ゆっくり休め」

「……はい」

ロセは返事をすると、ゆっくりと瞼を閉じた。

セラとも一緒に寝てわかったが、二人ともかなり無理をしていたようだ。何と言えば良いか、なんか寝れるけど熟睡は出来ていない。二人からはそんな感じがしてならなかった。

二人がそうなったのは俺のせいだ。だったら、俺が二人を支えてやらないと。

俺はそう決めると、ロセをベッドに寝かせ、約束通りにその横に寝そべった。

「おやすみ、ロセ」

ロセは俺の言葉に返さなかったが、二度と離さないと言わんばかりに俺のことを強く抱きしめてきた。

俺もロセを抱きしめ返し、瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 




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