グレモリー家の次男   作:EGO

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life29 超越者VS明けの明星

白銀と黒の鎧を纏ったヴァーリ。漆黒の鎧を纏ったシドウ。二人は兜越しに睨みあい、そして、同時に動き出した。

シドウとヴァーリが同時に消え、遥か上空で戦闘に突入した!

シドウの斬撃とヴァーリの打撃、二つがぶつかり合い、空間を激しく振動させた。

アザゼルに言われた三つのルール。その内の二つの、『殺すな』と『全力でやれ』は二人とも意識しているが、『フィールドを壊すな』に関しては守る気がなくなっていた。

空中で戦っている二人は、飛行に使う神経すら戦闘に使い、落下しながら戦闘していた。二人は同時に同じ事を考え始めていた。

アザゼルが用意してくれたこの空間は『狭い』。消耗し、若干反応が悪くなってきている体が『邪魔』。自分達を縛る全てが邪魔でしかない。二人はそう思えるほど、激しく激突していた!

数十回という攻防を一瞬にして展開した二人だったが、地面に着地すると同時に、ヴァーリの放った拳をシドウが左手で弾き、その隙にシドウが放たれた上段からの斬撃を、ヴァーリが両手をクロスすることで真っ正面から受け止める。

そこで一瞬、動きが止まるが、ヴァーリの鎧がシドウの斬魔刀を完全に防いでいた。しかし、パワーはシドウの方が上のようで、そのまま押し込まれてヴァーリは片膝をつく。

シドウはそのまま斬魔刀を右に振り、ヴァーリの両手が弾くことで、態勢を崩した。シドウは態勢を崩したヴァーリに蹴りを決めて、吹き飛ばした!

吹き飛ばされたヴァーリは態勢を整えると、空中で急停止。シドウに向かって無限にも思えるほどの魔力弾を放った!

シドウはヴァーリに向かって突貫。迫り来る魔力弾を片っ端から斬り裂き、速度を緩めることなく接近していった。

ヴァーリは焦らず、十二本の翼の半分から先を分裂させ、飛龍(ワイバーン)を出現させると、その飛龍(ワイバーン)からも魔力弾を放ち、弾幕を濃くしていった。

シドウはついに前進を止め、防御に専念し始めた。

ヴァーリは飛龍(ワイバーン)の半数をシドウを囲むように配置し、全方位からの攻撃を開始した。ヴァーリの攻撃で、少しずつシドウの被弾は増えていくが、どの攻撃でも鎧を砕くことが出来ずにいた。

すると突然、シドウが消えた!

ヴァーリでも視認できず、シドウを見失うが、同時にシドウを囲んでいた飛龍(ワイバーン)が全て斬り裂かれた。

シドウは再び同じ場所に現れ、真・斬魔刀を右肩に担いだ。

兜で隠れて見えないが、シドウは笑っている。ヴァーリにはそう思えた。

シドウは再び駆け出し、ヴァーリに接近する。ヴァーリは残った飛龍(ワイバーン)を使い、シドウを囲いこむと同時に、自分はシドウを迎え撃つべく、駆け出した!

再び二人は激突し、火花を散らした。シドウは時には拳を、蹴りを放つことで攻撃のペースを変え、ヴァーリも自爆覚悟で飛龍(ワイバーン)から魔力弾を放ち、シドウに隙を作ろうとする。

シドウは魔力弾を時には弾き、時には消しながらヴァーリへの攻撃の手を緩めることはなかった。ヴァーリがシドウに渾身の右ストレートを放つと、シドウが消え、拳が空を切った。

ヴァーリは驚愕しながらも周囲を見回し、気配を探ろうとする。その瞬間、残った全ての飛龍(ワイバーン)が斬り裂かれ、同時にヴァーリの鎧にも大小様々な斬り傷が幾重(いくえ)にも生まれた。

ヴァーリが肩で息をしていると、シドウが目の前に現れ、左拳で顔面を殴り抜いた!

フィールドに快音が響き渡り、ヴァーリは吹き飛ばされた。

ヴァーリは数百メートル飛ばされ、地面を何度もバウンドすることでようやく止まった。ヴァーリはふらつく足を懸命に踏ん張り、立ち上がると同時に兜が砕け散った。ヴァーリは素の顔でシドウを睨み、考えを巡らせていた。

何をしたかはわからないが、彼は気配を感じさせずに自分と、十二体の飛龍(ワイバーン)を斬り裂いたのだ。それを見切れない限り、自分に勝ちはない。だが、自分の手札をだいぶ削られてしまった。残るはあれだが、やればシドウ・グレモリーを殺しかねない。

彼はそう考えていると、シドウが兜を解除した。ヴァーリは驚きながらもシドウを見ると、彼は笑みを浮かべた。ヴァーリは、なぜシドウが笑みを浮かべたのか、その理由をすぐに理解した。

ヴァーリは両足を踏ん張り、腹部と胸部に意識を集中させる。同時に鎧が変形し、何かの発射口が出現していた。

シドウはそれを見ると左足を引き、真・斬魔刀を両手で握り直し、左脇に構えると、オーラを集中させていった。

ヴァーリの発射口にゆっくりと、莫大な魔力が収束し、シドウを刀にも、それと同等なまでのオーラが収束していった。

二人がオーラを最大まで溜め終えると、同時に相手に向かってそれを放った!

無限の(アンリミテッド)凶刃(ファング)!」

『『『Satan(サタン) Lucifer(ルシファー) Smasher(スマッシャー)!!!!!』』』

シドウから放たれた漆黒と深緑色が入り交じった絶対の一撃。

ヴァーリから放たれた漆黒と白銀が入り交じった極限の一撃。

その二つが正面から激闘し、漆黒と白銀と深緑色が入り交じった波動が、フィールドを包み込んだ…………。

 

 

 

 

 

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俺、シドウは正座をさせられていた。横ではヴァーリも正座をさせられている。正座をさせているのは俺たちを鬼の形相で睨んでいるアザゼルだ。リリスは部屋の回転椅子に座って遊んでいた。

「で、何か言うことはあるか?まず、シドウ」

訊いてくるアザゼルに、俺は真剣な顔でアザゼルに言う。

「男の真剣勝負に手加減はダメだと思った」

アザゼルはこめかみに青筋を浮かべていた。

「で、ヴァーリは?」

ヴァーリも真剣な顔で言った。

「あの勝負で手加減出来ると思うか?」

ヴァーリは逆にアザゼルに質問していたが、俺とヴァーリの意見はだいたい一致していた。それを聞いたアザゼルは大きく息を吐くと、俺たちを交互に睨んだ。

「手加減したら失礼だってのはわかるぜ?だが、あそこまでやらなくでも良いだろ!」

アザゼルが怒っている理由は簡単だ。

まず、フィールドが完全に壊れた。次に俺は額に包帯を巻いているし、左腕を三角巾と固定具で止めている。ヴァーリも服の下は包帯だらけで、顔にも包帯を巻いている。

アザゼルの提示したルールのうち『フィールドを壊すな』を破り、『殺すな』を破りかけた。まぁ、怒られるよな。

アザゼルは再び大きく息を吐いた。

「おかげでいいデータは取れたぜ?だが、まぁ、代償が大きかった」

「なら良かった。じゃ、俺は帰るぜ?ヴァーリはどうする?アーシアに見てもらうか?」

ヴァーリはしばらく考えると、口を開いた。

「そうさせてもらおう。あいつらを呼んでくるが、俺たちは兵藤宅に直接転移する。向こうで会おう」

あいつらってのはヴァーリチームだろうな。

ヴァーリはそう言うと立ち上がり、歩きだすが、若干足取りがおぼつかない。足が痺れたのかな?

俺も立ち上がり、椅子に座り直した。そんな俺にアザゼルが言う。

「話は終わってなかったんだが、まぁいい。おまえのデータ、見るか?」

そう訊いてきたアザゼルに、俺は返す。

「いや、イッセーたちと一緒に聞く。言いに行くんだろ?」

「ああ、そのつもりだ。それじゃ、データをサーゼクスたちに送るから、ちょっと待っててくれ」

アザゼルはそう言うと、パソコンのようなものを操作し始めた。その隙にリリスが俺の膝の上に座る。

「シドー、これ邪魔」

リリスはそう言いながら三角巾を引っ張っていた。

「まぁ、我慢してくれ」

俺はそう言いながらリリスの頭を撫でてやる。

「む~♪」

機嫌がいいのか悪いのか、それがよく分からない声をリリスは発していた。

「よし、完了だ。行くぞ、お二人さん」

「了解っと」

アザゼルはそう言うと、先に歩き出した。俺は一旦リリスを膝から下ろすと立ち上がり、背中に張り付かせると、アザゼルの後ろについて歩き出す。

「いや~、ようやく帰れる」

「オーフィスに会える?」

「ああ、会えるだろ」

「やった!」

俺の言葉で喜びの声を上げるリリス。最近、リリスの感情の起伏が大きくなってるな。

俺はそんなことを思いながら、転移室に移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 




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