シドウとヴァーリは同時に飛び出し、剣と拳を衝突させた!
ガキンッ!
「っ!?」
「普通の鎧じゃ、勝てねぇよ」
ヴァーリは驚愕した。シドウの斬魔刀を受けた右腕部分に大きなヒビが入ったからだ。通常の鎧とはいえ、強度には自信があった。だが、その鎧が、斬魔刀とぶつけあっただけでヒビが入ったのだ。
シドウは斬魔刀を握る右腕に力を入れ、左手で峰を押し込んでいく。それに伴って、ヴァーリの鎧のヒビが少しずつ深く、大きくなっていった。
ヴァーリは左手をシドウの腹部に向け、ゼロ距離で魔力弾を放とうとした!が、シドウは左手で斬魔刀の刀身を持ち、右手を離すと、ヴァーリの左手を弾き、あらぬ方向へと向けた。
魔力弾がその左手から放たれ、遥か遠くで爆発が起こった。
ヴァーリはその隙に蹴りを放つが、シドウは後ろに飛び退き、距離を取った。
シドウが斬魔刀を右肩に担ぎながら言う。
「おまえと戦うのは……コカビエルの一件以来だな。懐かしいもんだ」
ヴァーリが頷く。
「ああ、あの時、あなたと初めて会い、戦った。その時は俺が優勢だったんだがな」
「はは、あの頃は色々と制約があったからな。まぁ、全力でも勝てる気はしなかったが………今は」
シドウはそう言うと、消えた。
ヴァーリは目を見開きながらも反射的に体ごと後ろに振り向いた。
「負ける気がしねぇ……」
そこには突きを放とうとするシドウの姿があった。ヴァーリは上体を大きく後ろに反らした。その瞬間、シドウの突きが放たれ、ヴァーリの鎧の胸部装甲に傷をつけた。
ヴァーリはその態勢から、地面に手をつけ、蹴りを放つが、シドウは跳躍してそれを避け、前宙の要領で勢いをつけ、再びヴァーリに斬魔刀を振り下ろした!
ヴァーリは咄嗟に右に飛び退き、距離を取ると、オーラを解放し、鎧を通常の物から、白銀の輝きを放つ『極覇龍』への強化させた。今の彼はイッセー同様、詠唱なしで極覇龍になれるのだ。
シドウは斬魔刀を右肩に担ぎながら笑みを浮かべ、ヴァーリを見た。
「そう来なくちゃ。アザゼルも仕事にならないからな」
「行くぞ?」
ヴァーリはそう言うと神速でシドウの後ろを取り、拳を放つが、シドウは体を右に回転させることで紙一重で拳を避け、その勢いで右手一本で斬魔刀を横に薙いだ。ヴァーリはオーラを込めた左腕でそれを止める。今度はヒビは入らなかったが、刃が鎧に食い込んでいた。
「これでもダメなのか!」
ヴァーリは悪態をつきながら左腕に右手をつけ、力とオーラを込めていく。この状況で力を抜けば、腕を持っていかれる。そう判断したのだ。
シドウも両手で斬魔刀を持ち直して力を込めていく。
結果的に少しずつ、少しずつ、刃が火花を散らしながら鎧の深くに食い込んでいった。
「チッ!」
ヴァーリは舌打ちをし、シドウは笑みを浮かべた。
シドウは斬魔刀を引き抜き、ヴァーリの腹部に蹴りを放った!ヴァーリは咄嗟に腹部にオーラを込め、耐えようとするが……。
ドゴンッ!
「かっ!」
シドウの蹴りは鎧を砕き、ヴァーリの腹部に届いた。シドウは一気に足を振り抜き、ヴァーリは肺の空気を一気に吐き出すと同時に吹っ飛ばされた。
ヴァーリは数十メートル吹き飛ばされ、地面を五回バウンドし、ようやく止まった。
ヴァーリは腹を押さえ、咳き込みながら立ち上がり、鎧を修復、構え直した。
シドウは笑みを浮かべながら斬魔刀を右肩に担いだ。彼は無意識にこれをやっているため、もはや癖になっているのかもしれない。
ヴァーリは遠距離から異常なまでに濃い弾幕を張った。近距離がダメなら遠距離から攻める。ある意味で正解ではあるが、相手が悪い。
シドウは右肩に担いだ斬魔刀にオーラを込めた。刀から
深緑色のオーラが迸ると、シドウはそれを右手一本で萩払い、オーラをヴァーリの弾幕を全て消滅させた。
が、そのせいでシドウの視界が一瞬、深緑色に染まり、ヴァーリを見失わせた。ヴァーリはその隙にシドウに接近し、勢いのまま拳を撃ち放ったが、シドウはわかりきっていたようにそれを左手で受け止めた。
ヴァーリがいくら力を入れてもビクともしない。
だが、これで条件が揃った。
『Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!』
ヴァーリは
シドウの力を吸い上げたヴァーリの拳は、ついにシドウの防御を崩し
ドゴンッ!
「っ!」
彼の顔面を捉えた!
シドウは盛大に吹っ飛ばされるが、その中で態勢を整え足の裏を地面に擦らせ、無理やり勢いを殺して停止した。
シドウは殴られた頬を擦りながら言った。
「いいパンチだ。こう、『ガツン!』と来るって言うのか?まぁ、結構効いた」
割りとピンピンしているシドウを見て、ヴァーリは苦笑した。ヴァーリも手加減している訳ではない。今の一撃は全力で殴り抜いた。が、シドウは頬が赤くなってはいるが、大したダメージを見受けられなかった。いくらヴァーリでも、もう笑うしかない。
ヴァーリは構えを解いた。シドウは疑問符を浮かべながらヴァーリに歩み寄っていく。
「どうした?諦めたか?」
シドウが訊くと、ヴァーリは返答の代わりに
「我に宿りし無垢なる白龍よ、覇の
白銀の鎧に漆黒の様相が加わる。
ヴァーリの声にアルビオンが続く。
『我が宿りし白銀の明星よ、
光翼が黒くなり、新たな翼が次々と生えていった。
「
ヴァーリの
『
ヴァーリの背中から、十二枚の漆黒の翼が生えていき、鎧が有機的な形状となっていく。
ヴァーリとアルビオンの声が重なる。
「『
宝玉にルシファーの象徴たる魔法陣の紋様が表示され、激しく輝いていく。
「『『汝、
ヴァーリ、アルビオン、オーフィスによる
『『『LLLLLLLLLLLLLLLL
エラーが起こったようにけたたましく宝玉から音が放たれ、
『『『
同時に、鎧から極大の輝きのオーラが放たれ、弾けた!
光の先にあったのは、白銀と黒を基調とした鎧を纏ったヴァーリだった。
「俺とアルビオンの全てを……シドウ・グレモリー、あなたにぶつけさせてもらう!」
シドウは目の前の『ルシファー』たる男に見惚れていたが、笑みを浮かべて斬魔刀の切っ先を天へ向けた。
「だったら、俺もいい加減、全力でいくかね!」
シドウは叫ぶと、斬魔刀で円を描く。宙に深緑色の軌跡が残り、魔法陣のようなものが展開される。シドウが斬魔刀を下ろすと同時に魔法陣から光が放たれ、彼を包み込んだ。光は鎧に、籠手に、脚甲へと変わり、シドウに装着され、いっそう強く輝いた!
シドウが左手を薙ぐと同時に光が止み、彼の姿を出現させる。
漆黒の鎧を纏ったシドウはヴァーリに、鎧の影響で変化した斬魔刀、『真・斬魔刀』の切っ先をヴァーリに向けた。
「さぁ、ルシファー。全力で来い!」
シドウが宣言すると、龍を模した兜を装着した。
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