リアスたちとの話を終え、グリゴリの施設に来ていた。背中にはリリスが張り付いている。転移の光に包まれる瞬間に飛び付いてきたんだ。どうしようもない。
「よっ!シドウ……リリス!?リリスが何で来てるんだ!」
「シドーとリリス。ずっと一緒♪」
リリスは上機嫌で言った。アザゼルが苦笑する。
「良い感じに
「……もうイッセーの事を笑えないな」
俺は肩を落としながら言い、リリスを下ろす。アザゼルは目を輝かせながら言ってきた。
「さてさて、ではシドウ。来てくれ」
「おう。リリス、行くよ」
「うん」
リリスは返事をすると、背中に飛びついてきた。
「あの~、リリス?」
「ん?」
俺が少し反論してやろうとしたが、リリスが首を傾げていたため、諦めた。俺はリリスをおぶったまま、新築独特の匂いを放つ施設内を歩き始めた。
歩くこと数分。ラボに到着。部屋の中には書類や、見たこともない機械(ガラクタにしか見えないものもある)が大量に転がっていた。俺は息を吐いた。
「アザゼル、掃除したらどうだ?いくら何でも……汚すぎるぞ」
「なかなか時間がなくてな。だから掃除用ロボットを……」
「止めてくれ!おまえが何か作ると、大抵ろくな事にならない!」
俺がアザゼルを止めようとするが、アザゼルは俺を『心外な』と言わんばかりの表情で見てきた。
「大丈夫だって。『今回は』普通のを造ったからよ」
「毎回普通のものを造れ!処理するこっち側のことを考えろ!」
アザゼルの遊び心で散々な目に遭ってきた俺が必死に懇願するが、部屋の奥から機械音が聞こえてきた。見てみると、700年間たった一人でゴミを集めていたどこぞのロボット、確か、ウォー何とか、何だっけ?まぁ、そんなようなものが動き回っていた。
リリスが俺の背中から降りて、そのロボットに近づいていった。
「アザゼル、何だ、あれ?」
「俺が造ったお掃除ロボットだ。名前は
「ならいいが……」
俺とアザゼルが話しているうちに、二人はゴミを投げ合ったり、リリスがウォーグのレーザーを避けたりして遊んでいた。
俺はアザゼルに訊く。
「あれは……ウォーグはリリスを敵と判断したのか?」
「いや、じゃれてるだけだ。レーザーの命中率は95%だ。俺が造ったんだからわかる。本気で撃てば、何発かは当たってるさ。少し感情を持たせてもみたんだが、良い感じの方向に作用しそうだ」
なるほど、感情を持たせたって大丈夫なのだろうか。
俺は咳払いをすると、アザゼルに言う。
「で、斬魔刀はどこだ?早く始めよう」
「おう!その言葉を待ってたぜ!」
アザゼルはそう言うと、部屋のある場所を指差した。
指の先にはゴミ山が……まさか……。
「あの中……か?」
「ああ。色々と書類を調べて投げて、調べて投げてとやってたら、あんなことになってた」
俺は無言で後ろに下がり、間合いを取ると、両足を肩幅に広げた。
「おい、シドウ。どうかしたか?」
アザゼルの言葉を無視して、俺は両手を左右に伸ばし、右手の平を上、左手の平を下に向け、足元に魔法陣を展開する。
「ちょ、待て!何をする気だ!」
ゆっくりと重心を下げながら左足を後ろに引き、右手を胸の前へ、左手を腰へ移動させる。移動が完了すると同時に魔法陣が右足に収束させる。収束が完了すると同時に俺は跳躍し、右足を前に突き出す!
「はあぁぁぁぁぁぁっ!」
ドゴンッ!
「うおっ!」
俺の飛び蹴りはアザゼルの胸部にクリーンヒットした!
俺は両足を広げた態勢に着地し、右手を前、左手を腰に当てた姿勢をとり、アザゼルに背中を向けた。
「いきなり、何しやがる……!グハッ!」
アザゼルはゆっくりと背中から地面に倒れこみ、その体は爆発!
「するわけねぇだろが!いきなり何しやがる!」
俺は構えを崩し、アザゼルの方へ振り返った。
「ん?意外とクリーンヒットしたように思えたんだが」
「光力を集中して盾にしたんだよ!くそ!意外に重かったぞ!」
「サーセン」
俺が右手を上げながら謝ると、アザゼルは「もういい!」と言って許してくれた。さすが元総督だなぁ(棒)、心が広いなぁ(棒)。
「遊んでないで本題に入ろうぜ?斬魔刀はあの山のどこにある。中なのは確かだろ?」
俺が訊くと、アザゼルは胸を擦りながら、また違う方向を指差した。
「本当はあっちだ。まったく、痛い目にあったぜ」
アザゼルの指の先には、壁しかないが、その壁がスライドしてガラスケースのようなものが出てきた。中には一振りのブレードが入っている。
「質量はただの剣と変わらないのに、持とうとすると急に重くなる。何なんだ、一体」
アザゼルはそう言うとガラスケースの蓋に手を添え、魔法陣を展開した。俺はアザゼルの横に移動し、ガラスケースが開くのを待つ。その俺の背中にリリスが飛びついた。ウォーグは部屋の奥で煙を吹いていた。おまえの事は忘れない。
ガラスケースが開いたことを確認すると、俺は斬魔刀を手に取る。うん、手に馴染む。
斬魔刀を持つ俺に、アザゼルが言ってくる。
「鞘の方だが、どうする?要るか?」
「うーん。居合いをする機会はあるかもしれないが、あんまり俺にはあわないからな。亜空間にしまっとくからいいや」
俺はそう答えると、斬魔刀を亜空間にしまい、踵を返す。
「待て待て!どこに行くんだよ!」
アザゼルの呼び止めに、俺は振り向く。
「まだ何か?」
俺が訊くと、アザゼルは声を荒げた。
「テメェ!ヒトのこと蹴り飛ばしておいてただで帰れると思ってたのか!データが取りたいんだ!ちょっと来い!」
俺の手を引き、アザゼルは違う部屋を目指し始めた。
到着したのはだだっ広い部屋だ。途中で転移用魔法陣に乗ったから、特別な空間なのかな?
アザゼルが手を離してから言う。
「さて、シドウ。おまえにはここで暴れてもらう。相手は、こいつだ!」
アザゼルが指を鳴らすと、そこに転移用魔法陣が展開された。
転移の光が弾け、そこに現れたのは……。
「ようやくか。随分待たされたな」
ダークカラーが強い銀髪の青年。ヴァーリだった。
「相手って、ヴァーリか?よし、イッセーを呼んでくる。もう一時間くらい待っててくれ」
俺が遠回しに『嫌だ』と答えたが、それを聞いたヴァーリが言った。
「今日はシドウ・グレモリー。あなたと戦いに来たんだ。兵藤一誠との決闘は……向こうの気が向いたら、になるのかな」
ヴァーリはそう言いながら肩をすくめていたが、やる気はあるんだな。
「ヴァーリからのご指名ってわけか。だったらしゃーない」
俺は斬魔刀を取りだし、切っ先をヴァーリに向けた。
ヴァーリも笑みを浮かべながら鎧を纏う。
「それじゃ、最初は生身で行くぜ?俺もまだ慣れてないんだ」
「ああ、鎧を纏うのはそれからでも構わないさ」
俺とヴァーリがそれだけを確認すると、アザゼルが俺とヴァーリのちょうど中央に移動する。
「それじゃ、始める前に軽くルールを確認する。第一に殺すな。第二にフィールドを壊すな。第三は全力でやれ。ってところかな?」
相手を殺さず、フィールドを壊さず、全力でやる。ある意味一番難しい気がするんだが?
「それじゃ、レディー・ファイト!」
アザゼルはそう言うと転移でどこかに消えた。それと同時に俺とヴァーリは飛び出し、
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