グレモリー家の次男   作:EGO

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life25 悪魔の駒と斬魔刀と持ち主

『シドウの帰還を祝う会』の前日、僕、サーゼクスは、アジュカと話していた。

僕がぼそりと呟く。

「シドウも超越者の仲間入りか……」

「俺たちと同じか、俺たちよりも上か、それはわからないが。おまえも負けれられないな」

アジュカは笑みを浮かべながら言うが、本当に負けていられない。

「サーゼクス、一つわかったことがあるんだ」

「わかったこと?シドウについてかい?」

僕が訊くと、アジュカは頷いて、右手を前に出して魔法陣を展開した。魔法陣から棒グラフのようなものが投影される。全体的に伸びていくが、一つだけ群を抜いて伸びるものがあった。

「アジュカ、これは?」

僕が訊くと、アジュカは言った。

「シドウくんの悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を、握手のときに軽く調べさせてもらったんだ」

「セラフォルーがシドウに入れた騎士(ナイト)の駒だろう?話を聞いた限りでは、そのおかげで魂が目覚めたと…」

「ああ、そうだ。だが、一つおかしい点が見つかってね」

「おかしい点?一体何が」

シドウの体に何か異常が見つかったのかと、僕は心配になったが、アジュカは笑んだ。

「彼の駒は、ただの騎士(ナイト)ではなくなっている。悪魔の駒(イーヴィル・ピース)かどうかも怪しいほどに変質してしまっているんだ」

「変質した……理由は、グレートレッドか」

僕が言うと、アジュカは頷いて言葉を続けた。

「彼は、兵藤一誠くんのように、人型ドラゴンから悪魔に転生した。彼から滅びが無くなったのはそのせいだ」

僕は頷いた。シドウが『滅びが無くなっただけで、無事だったんだから、安いもの』と笑顔で言っていたことが、印象に残っている。

アジュカは続ける。

「問題は、悪魔のまま、もう一度グレートレッドの体内に入ったことだ。彼が言うには、『グレートレッドがケガを治して、斬魔刀を作ってくれた』らしいが、元ドラゴンとはいえ、悪魔がそんな事をされれば、何かしらの影響が出てもおかしくはない」

「………その影響が、シドウの駒に出たと」

「そういうことだ。彼の体には影響が無かったが、そっち方面に出てしまったのだろう」

「アジュカ、もったいぶらずに教えてくれ。シドウはどうなっているんだ」

アジュカは一度息を吐くと、言葉を続けた。

「彼の駒はどれでもないが、全てでもある。意味はわかるな?」

僕は驚愕した。シドウの駒は騎士(ナイト)だ。だが、アジュカの話から考えると、今のシドウは。

僕が考えをまとめると、アジュカが言った。

騎士(ナイト)というよりも、女王(クイーン)とも言える。各種能力が強化されているが、速度の強化が異常だ。見てみろ。他とは比べ物にならない程に跳ね上がっているだろう?」

アジュカの言葉で投影されたグラフの意味に納得した。鎧を纏ったシドウが、リゼヴィムや僕らに気配すら感じさせなかったスピード。速すぎて気配が感じられなかったのか?いや、どんなに速くても気配は完全には消せないはずだ。他に何かトリックが……。

アジュカは続ける。

「それと、もう一つ能力があるようだが、それはしっかり調べないことにはわからないな」

「もう一つか。今度シドウに行かせよう。調べるのはその時に頼む」

「ああ、任せろ」

アジュカはそう返すと、踵を返した。

「さて、俺は戻るよ。パーティーは明日だろ?顔を出せるかわからないが、シドウくんによろしく言っておいてくれ」

「ああ、わかった。また明日会おう」

僕とアジュカはこのやり取りを最後に、今日は解散したのだった。

 

 

パーティー当日。僕はシドウにアジュカが呼んでいることを伝え忘れてしまった。少し酒に酔っていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

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俺、アザゼルはパーティーの前日、グリゴリの施設であるものを調べていた。

俺的には一番の研究対象は神器(セイクリッド・ギア)なのだが、今はこれを、『斬魔刀』を調べようと思ったのだ。

シドウな話では、宝玉にはグレンデルの魂が封じられているらしいから、ある意味神器(セイクリッド・ギア)ではある。だが、リゼヴィムには通用した。それは神器(セイクリッド・ギア)ではないということになるのだが、イッセーのような例外がいるので何とも言えない。そして、出力を全開にすると禁手化(バランス・ブレイカー)のように鎧を纏うことが出来るが、シドウ以外は振ることが出来ないほどに重い。

本当に何なのか、さっぱりだ。シドウはグレートレッドが生み出した刀と言っていたが、対悪魔特化のシドウ専用武器ってところか?

一つわかったことと言えば、悪魔を斬ると『魔力の根元も傷つける』というところか。リゼヴィムは何回か斬られ、その都度(キング)の駒を使ったらしいが、それでも形勢が逆転しなかったのは、この能力のおかげだろう。強化されても魔力の根元がボロボロじゃ、強化の意味がない。

本当に、何なんだこれは?調べようにも、もう情報がないしな………そうだ。今度シドウをここに呼ぼう。そうすれば、もう少しいいデータが取れるはずだ。

そうと決まれば、とりあえず寝よう。明日はパーティーだ。今日はゆっくりと休んで、明日は存分に楽しませてもらうか。

 

 

パーティー当日。俺はシドウを見つけることすら出来なかった。少々悪のりしすぎたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

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俺、シドウは目を覚ました。

「すぅ……すぅ……ふにゅ……」

目の前に一糸纏わぬ姿のセラが寝ており、俺を抱き枕にしていた。密着してくるセラの柔らかい感覚が俺を襲ってきているっ!さっき色々とやったのに、気になってしまうのは俺が男だからだ!きっとそうに違いないっ!……ところで『ふにゅ』って何だ?

それにしても、今後、いろんな奴に呼ばれる気がするんだが、気のせいだろうか。

俺がそんな事を考えていると、セラがゆっくりと目を開いた。

「シドウ?どうかしたぁ?」

寝ぼけ(まなこ)でセラが訊いてきた。

「いや、何でもない」

俺はそう言って、セラの頭を撫でる。

「にゅ~」

セラはくすぐったそうにしているが、気持ちよさそうに目を細めた。……か、かわいい。

俺はそう考えたが、心の中であることを決めていた。

だが、動きだすのは明日から。とりあえず、今は……。

「おやすみ、セラ」

「うん。おやすみなさい」

俺はセラを抱き締め、再び眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 




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