『シドウの帰還を祝う会』の前日、僕、サーゼクスは、アジュカと話していた。
僕がぼそりと呟く。
「シドウも超越者の仲間入りか……」
「俺たちと同じか、俺たちよりも上か、それはわからないが。おまえも負けれられないな」
アジュカは笑みを浮かべながら言うが、本当に負けていられない。
「サーゼクス、一つわかったことがあるんだ」
「わかったこと?シドウについてかい?」
僕が訊くと、アジュカは頷いて、右手を前に出して魔法陣を展開した。魔法陣から棒グラフのようなものが投影される。全体的に伸びていくが、一つだけ群を抜いて伸びるものがあった。
「アジュカ、これは?」
僕が訊くと、アジュカは言った。
「シドウくんの
「セラフォルーがシドウに入れた
「ああ、そうだ。だが、一つおかしい点が見つかってね」
「おかしい点?一体何が」
シドウの体に何か異常が見つかったのかと、僕は心配になったが、アジュカは笑んだ。
「彼の駒は、ただの
「変質した……理由は、グレートレッドか」
僕が言うと、アジュカは頷いて言葉を続けた。
「彼は、兵藤一誠くんのように、人型ドラゴンから悪魔に転生した。彼から滅びが無くなったのはそのせいだ」
僕は頷いた。シドウが『滅びが無くなっただけで、無事だったんだから、安いもの』と笑顔で言っていたことが、印象に残っている。
アジュカは続ける。
「問題は、悪魔のまま、もう一度グレートレッドの体内に入ったことだ。彼が言うには、『グレートレッドがケガを治して、斬魔刀を作ってくれた』らしいが、元ドラゴンとはいえ、悪魔がそんな事をされれば、何かしらの影響が出てもおかしくはない」
「………その影響が、シドウの駒に出たと」
「そういうことだ。彼の体には影響が無かったが、そっち方面に出てしまったのだろう」
「アジュカ、もったいぶらずに教えてくれ。シドウはどうなっているんだ」
アジュカは一度息を吐くと、言葉を続けた。
「彼の駒はどれでもないが、全てでもある。意味はわかるな?」
僕は驚愕した。シドウの駒は
僕が考えをまとめると、アジュカが言った。
「
アジュカの言葉で投影されたグラフの意味に納得した。鎧を纏ったシドウが、リゼヴィムや僕らに気配すら感じさせなかったスピード。速すぎて気配が感じられなかったのか?いや、どんなに速くても気配は完全には消せないはずだ。他に何かトリックが……。
アジュカは続ける。
「それと、もう一つ能力があるようだが、それはしっかり調べないことにはわからないな」
「もう一つか。今度シドウに行かせよう。調べるのはその時に頼む」
「ああ、任せろ」
アジュカはそう返すと、踵を返した。
「さて、俺は戻るよ。パーティーは明日だろ?顔を出せるかわからないが、シドウくんによろしく言っておいてくれ」
「ああ、わかった。また明日会おう」
僕とアジュカはこのやり取りを最後に、今日は解散したのだった。
パーティー当日。僕はシドウにアジュカが呼んでいることを伝え忘れてしまった。少し酒に酔っていたのかもしれない。
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俺、アザゼルはパーティーの前日、グリゴリの施設であるものを調べていた。
俺的には一番の研究対象は
シドウな話では、宝玉にはグレンデルの魂が封じられているらしいから、ある意味
本当に何なのか、さっぱりだ。シドウはグレートレッドが生み出した刀と言っていたが、対悪魔特化のシドウ専用武器ってところか?
一つわかったことと言えば、悪魔を斬ると『魔力の根元も傷つける』というところか。リゼヴィムは何回か斬られ、その都度
本当に、何なんだこれは?調べようにも、もう情報がないしな………そうだ。今度シドウをここに呼ぼう。そうすれば、もう少しいいデータが取れるはずだ。
そうと決まれば、とりあえず寝よう。明日はパーティーだ。今日はゆっくりと休んで、明日は存分に楽しませてもらうか。
パーティー当日。俺はシドウを見つけることすら出来なかった。少々悪のりしすぎたのかもしれない。
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俺、シドウは目を覚ました。
「すぅ……すぅ……ふにゅ……」
目の前に一糸纏わぬ姿のセラが寝ており、俺を抱き枕にしていた。密着してくるセラの柔らかい感覚が俺を襲ってきているっ!さっき色々とやったのに、気になってしまうのは俺が男だからだ!きっとそうに違いないっ!……ところで『ふにゅ』って何だ?
それにしても、今後、いろんな奴に呼ばれる気がするんだが、気のせいだろうか。
俺がそんな事を考えていると、セラがゆっくりと目を開いた。
「シドウ?どうかしたぁ?」
寝ぼけ
「いや、何でもない」
俺はそう言って、セラの頭を撫でる。
「にゅ~」
セラはくすぐったそうにしているが、気持ちよさそうに目を細めた。……か、かわいい。
俺はそう考えたが、心の中であることを決めていた。
だが、動きだすのは明日から。とりあえず、今は……。
「おやすみ、セラ」
「うん。おやすみなさい」
俺はセラを抱き締め、再び眠りについた。
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