グレモリー家の次男   作:EGO

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life24 パーティー

俺、シドウはのんびり……させてほしかった。

セラと兄さんが主催と思われるパーティー『シドウの帰還を祝う会』。名前から察するに、俺が主役な訳なのだが、いかんせん、こんなのに出るのは久しぶりすぎる。

若い頃は任務で飛び回り、ちょっと前は教師として人間界で活動、さっきまで記憶喪失で旅していた。

パーティーなんて縁がねぇにも程があるよ!まぁ、嬉しいけどさ!

そんな俺には構わず、歌が歌われ、誰かがダンスを踊っていた。

いやはや、元気そうで何よりだよ。

俺はそんなダンスを見ながら椅子に座り、食事に手を出していたんだが、なかなか旨いな。ふと見ると、タキシードに身を包んだイッセーとドレス姿のリアスがダンスを踊って(踊らされて)いた。なかなか上手ではある。まぁ、心配はしてなかったけどさ。

セラが俺に近づいてくる。

「シドウ、楽しんでる?」

「ああ、見てる分には退屈しない」

「ふふ、ならよかった」

セラは俺の横に座り、真剣な声音で言った。

「本当に無事で良かった………毎回心配かけすぎよ」

「ごめんな。だが、最終手段は使わせたくなかったんだ。そこは、わかってくれ」

「わかってるわよ」

セラは頷いた。実際、最終手段は使わせたくなかった。各勢力のトップ陣がトライヘキサもろとも隔離空間に転移して、倒せるまで戦い続ける。

なんてこと、兄さんやセラにはさせたくなかったし、やったらリアスとソーナが泣く。だからやらせたくなかったのだが、結果的に泣かせちまったかな?

「シドウ、ちょっと来て」

セラは立ち上がり、俺に手を伸ばした。俺はその手を取るが、一瞬にして後悔した。セラがイタズラを思い付いたような表情になっていたのだ。

「ふふ、しっかりリードしてね♪」

「はは、マジか。頑張らないと」

俺はセラに引っ張られるまま、ホールの中央、つまり、ダンス会場へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、ダンスが無事に終わり、俺はバルコニーに出て休憩していた。

いや~、緊張した。もう踊りたくないね。

俺がそんな事を考えていると、俺の横に立つ人影が。俺が目を動かして確認すると、兄さんだった。

「シドウ、楽しんでるかい?」

「俺よりも父さんとか、アザゼルが楽しんでる風に見えるがな」

「確かに」

久々の兄弟の会話だが、話題に困るな。

「シドウ、お父様とお母様には話したんだか、キミの記憶を移すように指示をした人物、『ベルゼブル』は死亡した」

唐突に話始めたが、割りと重要な話だった。

「実行した者たちも、既に亡くなっていることも確認できた」

「そうか………言いそびれたな」

「言いそびれた?一体何をだい?」

俺の一言に兄さんが反応し、訊いてきた。俺が言いたかったことはただ一つ。

「こっちに送ってくれて『ありがとう』ってな。何だかんだでこっちに来てから楽しいことばっかりだったし」

兄さんは少し驚くと、笑みを浮かべた。

「キミに余計な事をしてしまった。彼はそう言っていたが、その言葉を聞かせてあげたかったよ」

「死んじまったんなら仕方ない。俺は今まで通りやっていくさ」

「キミらしい答えだ。あ、そうだ」

兄さんは何かを思い出したように口を開いた。

「シドウ。キミを超越者と認定した。なったから何かあるという訳ではないが、心に留めておいてくれ」

超越者……つまり、俺は兄さんとアジュカ様と同列ってことか。

「そのうちイッセーとヴァーリもなるんだろ?」

「はは、わかってたかい?」

「未来の義弟とそのライバルだぞ?そのくらいわかる」

「それもそうだね」

兄さんはそう言うと、ホールへ戻っていった。

グレモリー家男子の三人が超越者とは、恐ろしいな。

俺は体が冷えきらないうちにホールへと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に声をかけてきたのは、黒髪の二十代男性と女性だ。

「レンとユリヤじゃねぇか!ひっさしぶりだな!」

俺が久々の再開に喜ぶと、レンに睨まれた。

「シドウさん、俺たちがどんだけ心配したと思ってんだ?」

「そうです、そうです!何かやるなら一言告げてください!いきなりやられても動揺するだけです!」

二人とも手厳しいことで……。

「そ~だよ~。びっくりしたんだから~」

「やれやれ、今回はルテアに同意する」

俺の後ろには、白髪ダンディーな男性アシャと、金髪タレ目の少女ルテアがいた。アシャは腕を組み、ルテアは苦笑していた。

「おまえらも来てたのか。声かけてくれれば良かったのに」

俺が言うと、アシャが答える。

「しようとはしたさ、マスターと躍りに行ってしまったのでな」

あ~、なるほど。それじゃ無理だな。

俺は周りを確認するが、キアガラとゼイメファ、ベヒーモスがいない。

「ちなみに、ここにいない連中は、セラの仕事を手伝って倒れた者と、興味のないのどちらかだ」

アシャが俺に教えてくれたが、仕事を手伝ったのは、キアガラとゼイメファで、興味のないのはベヒーモスだろう。

あいつらも大変だな。

俺がここにいる全員に言う。

「まぁ、楽しんでけよ。ヒトのこと言えた義理じゃないけどな」

「もう楽しんでるさ。色々と食べさせてもらったし」

「はい!シドウさんのダンスも見れましたし!」

「有名演奏家の曲も聞けた」

「の~んびり、ま~ったり出来たからいいよ~」

レン、ユリヤ、アシャ、ルテアの順で言った。

四人はそれを言うと、別れていった。

あいつらにも悪いことしちまったかな?

俺はそう思いながら、再び移動した。

 

 

 

 

 

俺はリアスたちに話しかける。

「おまえら、教えてくれても良かったんじゃないか?」

俺が言うと、リアスが苦笑した。

「サーゼクスお兄様から『シドウには内緒の方向で』と言われていまして……」

「じゃあ、しょうがないか」

リアスの言葉に一応納得したが、兄さんとセラが決めたことなんだろうな。あの二人らしいよ。

「そうだ。リリスは?そっちについていったが」

「リリスちゃんは今、ヴァーリチームの同伴で、別室でオーフィスちゃんと会っていますわ」

朱乃が教えてくれたが、そっか……会ってるのか。

「食いしん坊の二人が出てこないのは誉めるべきかな?」

俺が言うと、リアスが返した。

「別室にも食事は用意してあります。ヴァーリチームにも振る舞わなければなりませんので」

グレモリー家の料理人、過労で倒れない?大丈夫なのか?

俺はそんな疑問を口に出さずに飲み込んだ。言ってしまうと、その料理人をバカにしていると思われそうだからだ。

「イッセー、リアス、また踊ってくればどうだ?」

話している間に次の曲が始まったので、ノリで言ってみると

「そうですね……イッセー、行くわよ!」

「え!?また行くんですか!?」

「あらあら、次は私ですわよ。ねぇ?イッセーくん」

「次は私ですぅぅぅ!」

「お、イッセーと踊れるのか?ならば私も!」

「天使のダンス、見せてあげちゃう!」

「負けてられない……イッセー先輩とは私が」

「私を忘れないでくださいな!」

リアス眷属と自分の眷属に押され、奥に連れていかれた。ギャスパーもヴァレリーと踊ることになり、木場は『トスカ』という名前の、聖剣計画のもう一人の生き残りの少女と踊ろうとしていた。

俺は柱に隠れていた人物に声をかける。

「何やってんの、ロセ」

「し、シドウさん」

ロセだ。綺麗な銀色のドレスに身を包んでいた。なのに柱の影に隠れていた。恥ずかしがっているのか。

俺はロセに手を伸ばす。

「Shall We Dance?」

キザっぽく英語で言ってみたが、スゲェ恥ずかしい!

「Sure,I'd love to」

ロセは顔を真っ赤にしながら律儀に英語で返すと、俺の手を取った。

俺が笑みを浮かべると、ロセも笑顔を見せてくれた。

俺とロセは二人でホール中央へと向かい、踊り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とロセのダンス(なぜかイッセーたちが出てこず、二人だけの独壇場になっていた)が終わると、ようやくパーティーもお開きとなり、一部のヒトは二次会へと向かっていった。俺はグレモリー城の自室でのんびりさせてもらっているがな。久々の我が家は何か安心する。

俺はベッドに身を投げ、ボケッと天井を見ていると、ドアが開けてセラが入ってきた。

「お邪魔するわね」

「いらっしゃいっと。で、どうかしたか?」

俺が体を起こすと、セラが俺の横に座った。

「どうだった?シドウの帰還を祝う会は」

「久しぶりに楽しめたよ。いい刺激になった」

「それは良かった」

「………………………」

「………………………」

俺とセラは黙りこんでしまった。わ、話題が見つからない。俺が困っていると、セラが沈黙を破った。

「ベルゼブルの話、サーゼクスちゃんから聞いた?」

「ああ、聞いた。もう亡くなってるだろ?」

「ええ、最後に話したのが、アザゼルとサーゼクスちゃんだったんですって」

「二人の前で死んだのか。まぁ、気にしてても仕方ないがな」

「そうね。どうであれ、シドウはシドウですもの」

「ああ、俺は俺さ。体はダメになったが」

俺は右親指を胸に突きつける。

(ここ)は何も変わらない」

セラは黙って俺のことを見つめてきた。俺も言葉を続けず、セラを見つめ返す。

ゆっくりと顔を近づけ、唇を重ね、そして、俺たちは体を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 




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