あのやり取りの後、父さんと母さんは退室して、兄さんとリアスのもとに行った。
俺は二人の気配が離れたことを確認して、ベッドの下のリリスに声をかけた。
「リリス、出てきていいぞ」
「うん」
リリスは返事をすると、ベッドの下から出てくる。リリスは再びベッドの端に座ると、俺の顔をまじまじと見つめてきた。
「シドー、嬉しそう」
「そうか?まぁ、憑き物は一つ取れたけどさ」
「つきもの?」
リリスは首を傾げて訊いてきた。
「悩み事みたいなもんだよ」
「ふ~ん」
俺が答えると、リリスは興味無さそうに答えた。俺は話題を戻す。
「さて、リリス。俺たちが退院したら、早速もう一人のリリスに会いに行くぞ。準備しといてくれ」
「うん!楽しみ」
リリスはオーフィスと比べると感情の起伏が大きいな。
俺はそう思いながら、特に理由はないが、リリスの頭を撫でる。
「~♪」
リリスは上機嫌そうに足をブラブラとしていた。
俺はベッドにゆっくりと寝そべり、目を閉じた。とりあえず、今は体力を回復しないと。リリスとオーフィスを会わせるのはそれからだ。
俺は襲ってくる睡魔とは勝負せず、眠りについた。
目を覚ましたのは夜だった。冥界にも一応だが、昼と夜がある。夜の証に月が出ているが、あれは魔力で再現しているそうだ。
俺は体を起こそうとするが、何かが俺に乗っており、起こすことが出来ない。
毛布をどかし、その何かを確認する。
「すぅ………すぅ………」
リリスが俺の体をベッドにするように眠っていた。リリスはこの間にオーラを渡してくれていたのか。
リリスを起こすのも悪く思い、俺はベッドの上でボケッとしていた。今までぐっすり寝てしまっていたので、眠くない。
「シドー……」
リリスが俺を呼んだので反応するが、本人は寝ている。寝言か?ドラゴンでも寝言を言うのか。
「シドー……次あっち、それで次はこっち……」
旅の夢でも見てるんだろうか?
俺はリリスの頭を撫でる。リリスはくすぐったそうにするが、すぐに笑顔になった。起きる気配はない。
もう一眠りするか。
俺はそう決めると、目を閉じた。眠気はなかったが、目を閉じてみると、意外とあっさり睡魔に負け、再び眠りについた。
数日後、俺たちはようやく退院となったのだが、今はグレモリー城に来ていた。理由はよくわからないが、とりあえず来てくれと言われたのだ。
椅子に座る俺の膝の上にリリスが座っている。連れてくるべきか悩んだが、俺についていくと聞かなかったのだ。
準備があると言われ、リアスたちと部屋で待機している。リリスは初めて見る豪華絢爛な修飾に興味津々でキョロキョロしていた。
俺はリアスに訊く。
「なぁ、何で俺たちは待たされてるんだ?」
「それは……何ででしょうね?」
リアスはわざとらしく目をそらした。何か隠してるな。
俺が問い詰めようとすると、イッセーが言った。
「シドウさんとリリスって、何か親子みたいですよね。いっつもそばにいるし、シドウさんはリリスに懐かれているし」
「懐かれているってよりは、憑かれてるかな?イッセーと同じだ」
俺はわざとらしく笑うと、イッセーは目をそらした。何か、避けられてる?本当に何で待たされているんだろ。
俺が疑問を抱いていると、部屋の扉が開き、グレイフィア義姉さんが入ってくる。
「皆様、準備が整いました。ホールへどうぞ」
準備?ホール?はて、何のことだか。
「シドウお兄様、行きましょう。サーゼクスお兄様もお待ちですから」
「兄さんも来てるのか?仕事はどうしたんだよ……」
俺が呟くと、義姉さんが言った。
「しっかりオフを利用しております。セラフォルー様もいらっしゃっていますよ」
セラも来てるのか。一体何をするつもりなんだ?
俺はリリスを降ろし、立ち上がる。降ろされたリリスは俺の後ろに回り、背中に飛び付いてきた。俺はそのままリリスをおぶる。
「本当に親子ですね……」
「まぁ、慣れだな」
イッセーの言葉に適当に返して、俺たちは歩き出した。
途中でロセが。
「子供……シドウさんと………」
何て言っていて、何か嫌な予感がしてならなかった。
俺がホールを目指して移動していると、リアスたちとは途中で別れ、リリスもそっちについていった。理由はよくわからないが、義姉さんは気にしていないので問題はないのだろう。
俺はグレモリー城でも一際巨大な扉の前に到着した。
「では、シドウ様。失礼します」
「へ?」
義姉さんは一言俺に言うと、俺の顔に魔法陣を当てる。すると視界が真っ暗になり、前が見えなるなった!え、ちょっ、何事!?
俺がテンパっていると、扉が開く音が響き渡った。数秒後、扉が開ききったのか、義姉さんが言う。
「では、こちらです」
俺の手を引き、ホール(?)へ招き入れる。しばらく前進すると、義姉さんが手を離した。
「それでは、ここでお待ち下さい」
義姉さんが言うならそうするが、え?どういう状況?
俺の耳に誰かが指を鳴らす音が聞こえると、視界が少しずつ回復する。俺はボヤける目を必死に凝らし、周囲を確認すると……。
『シドウ様!お帰りなさいませ!』
「うおっ!?」
数十人の男性と女性が声を出し、俺は軽く驚いた。俺は声の主たちを確認すると、グレモリー城の従者たちだった。
俺の前にセラが笑顔で立っていた。
「さぁ、シドウ。楽しんでね?レッツ……パーティー!」
セラの号令で、音楽が始まり、くす玉らしきものが割られ、垂れ幕が出てくる。
『シドウ様、お帰りなさいませ』
先ほど言われた言葉が垂れ幕に書かれていた。
「えっと、セラ?これは?」
状況が飲み込めていない俺は、セラに訊くと、セラは満面の笑みで答えた。
「あら、わからない?だったら教えてあげる!」
いつになくハイテンションのセラが宣言した。
「これは『シドウの帰還を祝う会』よ!」
俺は嬉しかった。こんなことをしてくれたからだ。だが、こうも思った。名前、どうにかならなかったのか?
誤字脱字、アドバイス、感情など、よろしくお願いします。