グレモリー家の次男   作:EGO

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life22 ただいまを家族に

俺、シドウはロセをお姫様抱っこしたまま、遺跡の出口まで歩いていた。アザゼルが言う。

「例の宝玉。どうやらトライヘキサの放っていたオーラを二つの(キング)の駒を使って濃縮。それを用途に合わせて調整していたようだ。ドラゴンにやるには異常にコストがかかることもわかった。駒はアジュカに送ったから安心していいぞ」

アザゼルがそう言うが、それはよかった。あの後で確認したんだが、リゼヴィムが使った三つの駒は消滅して欠片すら残っていなかった。だが、残りの二つは無事に回収出来たようだ。

アザゼルの話を聞いて、俺はハッとなり口を開いた。

「あ、そうだ。イッセー。おまえに伝言がある」

「伝言って、今ですか?一体誰から?」

「グレートレッド」

俺がさらっと言った一言に、全員が目を丸くしていた。

まぁ、グレートレッドから何か言われるってのは想像できないからな。

「それで、伝言というのは?」

俺はわざと若干溜めをつくる。その間にアザゼルは聞き耳をたて、他のメンバーもさりげなく耳を傾けていた。

俺は口を開き、伝言を伝える。

「『ずむずむいやーん』だとさ」

「……あの野郎」

伝言を聞いたイッセーは憎々しげに言っていたが、他のメンバーはこけかけていた。グレートレッドがそんな事を言ったんだ、そうもなる。

「しっかり伝えたぞ」

俺が伝言を伝え終えると同時に、遺跡の出口に到着。そのまま外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遺跡の外で待っていた部隊(アザゼルが呼んだらしい)の手を借り、ようやく撤収する準備を始められた。俺がやらかした自然破壊は、今後調査を進めて、元に戻せるかどうか調べるそうだ。

これから転移で魔王領まで戻るわけだが、俺はロセを一旦降ろす。ロセは若干悲しそうな顔になっていたが、すぐに息を吐き、調子を戻していた。ぼそりと何か言っていたが、俺には聞こえなかった。

俺たちは部隊が展開した転移の光に包まれ、魔王領にジャンプした。

 

 

 

 

 

 

 

 

転移は成功。俺たちは魔王領の転移室に……。

「シドウ!」

「おわっ!」

俺が周りを確認するよりも早く、俺の胸に飛び付いてきた魔法少女の格好をした女性。セラだ。

俺はセラを受け止め、彼女の頭を撫でながら言う。

「ただいま、セラ」

セラは顔を上げて、満面の笑みで言った。

「良かった!記憶が戻ったのね!」

セラはそう言うと、俺をいっそう強く抱き締めた。ロセからの視線が痛いんだが、後で頭を撫でてやろう。

「とりあえず、休ませてくれ。もうクタクタだ」

俺はセラにそう言って、離れさせる。

アジュカ様が俺に言う。

「シドウくん。無事どころか、全快になっているね」

『全快』と言うのは、俺が五体満足で両目が見えるようになったことだろう。

「はい。グレートレッドが色々としてくれたおかげです」

アジュカ様は笑顔で頷き、右手を前に出してきた。俺も右手を前に出し、固い握手をする。

「シドウ・グレモリーくん。キミに感謝する。サーゼクス救出、リゼヴィムの討伐。本当にご苦労だった」

「ありがとうございます。と言ってもD×Dいてこそでしたけどね」

俺はアジュカ様にそう言うと手を離した。

俺たちは、係りのヒトの指示で医療機関に転移させられた。場所はいつもの『セラフォルー記念病院』だ。

ケガはアーシアと回収部隊の協力でだいたい治ってはいるんだが、オーラが全然回復しない。一度空になると回復しにくいんだよな。

俺が病室のベッドに寝そべり、ボケッとしていると突然、窓がひとりでに開いた。よく見ると、窓枠に小さな手が見える。

「シドー!」

窓を乗り越えて出てきたのはリリスだ。元気一杯でよかったです。リリスはベッドにちょこんと正座して座った。

「シドー、お帰り」

「ああ、ただいま。リリス」

俺は体を起こしてリリスの頭を撫でる。撫でられたリリスは、気持ち良さそうな顔をしている。

「ありがとな。あの時助けてくれて」

俺は礼を言った。リリスの声がなかったら、俺もロセも死んでたからな。

「大丈夫。シドー、これからどうする?」

リリスはかわいく首を傾げて俺に訊いてきた。どうする………か。旅の目的は果たせて、再開する理由がないからな。

俺は頬を掻きながら言う。

「旅は終わりかな。リリスはさ、もう一人のリリスと会いたい?」

俺の質問にリリスは一瞬だけ考えると、笑みを浮かべて答えた。

「もう一人のリリス……会いたい!」

笑顔で答えるリリス。感情豊かだな。

俺とリリスが今後の方針を決めていると、病室に近づいてくる気配を感じた。

「リリス、ちょっと隠れてて」

「どこに?」

「え~と、ベッドの下でいいから」

「うん」

リリスがベッドの下に潜り込むと同時に、病室の扉が開いた。

入ってきたのは紅髪のダンディー男性と、亜麻髪の若い女性だ。俺の顔から血の気が引いていく感覚に襲われた。理由は簡単。今入ってきたのは、父さんと母さんだからだ。

説教をされるとビビる俺を尻目に、父さんが口を開く。

「シドウ?シドウなんだな?」

「は、はい。えと、その……」

俺が言葉に困っていると、母さんが俺を抱き締めた。

「良かった、本当に無事で……」

珍しく声を震わせて母さんが言った。

「サーゼクスからあなたが戦死したと聞いて、本当に……」

「……ごめんなさい」

俺は素直に謝る。心配かけてばっかりだったし、色々と隠していたわけでもあるからだ。

父さんが俺の肩に手を置いた。

「とにかく、無事で良かった!」

父さんは笑みを浮かべてそう言った。だが、俺には言わなきゃならないことがあった。

「色々と隠してて、本当にごめんなさい。今から言い訳もするつもりもないです。追放でも何でもしてください」

兄さんたちには悪いが、俺がケジメをつけるためにそう言った。だが、二人は首を横に振った。

「何をバカなことを……シドウ、おまえは私たちの息子だ」

「そうよ。たとえあなたが異質な者として見られようと、私たちはそれを自信をもって言えるわ」

俺は後悔した。こんな優しい二人を信じきれていなかったことに。そして、こうも思った。俺は二人の子供で良かった。

俺は頭を下げながら言う。

「ありがとう、父さん、母さん」

俺は何秒か頭を下げ続け、笑みを作りながら顔を上げて、言葉を続ける。旅の全ては、この一言のためだったと思える言葉を二人に、確かに言う。

「ただいま」

二人は笑みを浮かべ、返した。

「お帰り」

「お帰りなさい」

「「シドウ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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