グレモリー家の次男   作:EGO

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life21 斬魔の一撃

俺はリゼヴィムの残留思念体に突っ込み、兄さんがそれに続く。思念体は体から触手を伸ばし、俺たちを貫こうとする。兄さんは滅びの球体を放ち触手を消滅させ、俺はブレードに戻った斬魔刀で触手を斬り落とす。が、すぐに再生して、再び俺たちに襲いかかってきた。

俺と兄さんは後ろに飛び退いて回避する。

兄さんが訊いてくる。

「再生するのか。一撃で消し飛ばせば良いのかな?」

「それで良さそうだが、誰がやるかだな。神器(セイクリッド・ギア)が効くかは別として、全員、消耗しすぎだ」

俺は全員を見渡してから言うが、全員が肩で息をしていた。

「兄さん、もうちょい時間を稼げば回復出来るか?」

「ん?出来るが、一人で大丈夫か?」

俺はサムズアップで答えると、兄さんが頷いた。

「わかった。みんなもわかったね!」

兄さんの言葉に全員が頷いてた。

俺は斬魔刀を右肩に担ぎ、思念体に近づいていく。

『負けてなぁぁぁぁぁい………』

意思を持たず、ただ俺を殺すために動いているように思えるそれは、それに大量の触手を伸ばしてきた。

俺は跳躍してそれを避け、そのまま触手に乗りその上を走る!

その俺を落とそうと他の触手が伸びてくるが、前に跳びながら体を捻り、全て紙一重で避ける。再び触手に着地して、走り出す。

思念体は俺が乗る触手を波打たせ、俺を上にはね飛ばした。俺は落下しながら態勢を整え、迫り来る触手を全て斬り裂いていく。いくら斬ってもすぐに再生して迫ってくるが、何度も斬り裂いていく。

本体にある程度近づいたところで、斬魔刀を逆手に握り直す。すると、触手がとぐろを巻き、壁のようになる。俺は落下のエネルギーを乗せて、前方宙返りの勢いで斬魔刀を突き出し、その壁を貫いた!

斬魔力で深々と貫かれた本体は、言葉にならない呻き声をあげ、体を揺らし俺を振り落とそうとする。

俺は斬魔刀をしっかり握り、踏ん張るが、触手が殺到し始めたので、斬魔刀をそのままにして一度飛び退く。

俺がいなくなったことで触手は本体に当たり、転倒させた。その勢いで刺さっていた斬魔刀が抜け、あらぬ方向へ飛んでいってしまった。俺は走り出し、触手を避けながら跳躍、落下中だった斬魔刀をキャッチする。

俺はそのまま翼を展開して、滞空。斬魔刀で迫ってくる触手を斬り払い、距離を取ると、本体を見た。

本体は体を揺らして元の態勢に戻っていた。触手をさらに鋭くさせ、俺に向けてくる。

俺は手招きして、伝わるかどうかは別として、言う。

「来い!まだ遊び足りねぇ」

本体は吠えると、大量の触手を伸ばしてくる。

俺は翼をしまい、重力に任せて落下することでそれを避け、時には斬り払う。

俺が地面に足をついた瞬間、足に何かが俺に巻き付いた!

見るとそれは触手だった。地面に潜らせていたのだろう。

触手はそのまま俺を横に振り回し、勢いをつけてから壁に叩きつけ、そのまま俺で弧を描くようにして、地面に叩きつける!

いってぇぇぇ………。けどまだ大丈夫!

俺は勢いよく立ち上がると、触手を斬り、本体を睨む。本体は吠え、俺を威嚇していた。リゼヴィムの残留思念も消えかけ、ただ目も前の敵を排除しようと動いているようだ。

すると、その本体にどこからか攻撃が放たれた。それは雨のように降り注ぎ、本体を削っていくが、削りきるよりも速く回復していた。

俺は攻撃の主に叫ぶ。

「ロスヴァイセ!無理すんな、休んでろ!」

ロスヴァイセは首を横に振り、俺にこう返した。

「また全部一人でやろうとしないで、私を頼ってください」

本体はロスヴァイセに向け、触手を伸ばしていく。俺は神速とも言える速度でロスヴァイセの前に行き、全ての触手を斬り払った。

俺は後ろのロスヴァイセに言う。

「安心しろ、俺はどこにも行かねぇ。今度はちゃんと帰ってくるからさ」

俺は振り向き、笑みを浮かべる。ロスヴァイセも頷いてくれた。

ロスヴァイセが下がろうとした瞬間、俺とロスヴァイセを何かが囲んだ。地面から出てきて俺とロスヴァイセをすっぽり覆うように出てきたそれは、禍々しい色から察するに、触手だ。思念体は触手を広げて俺とロスヴァイセを包み込もうとしていた!

俺は咄嗟に右手の斬魔刀を本体に投げ飛ばし、ロスヴァイセに左手を伸ばした。

「ロセ!」

「シドウさん!」

俺の手はロスヴァイセに届いたが、俺とロスヴァイセは触手に呑み込まれた。

 

 

 

 

 

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僕、サーゼクスは焦っていた。シドウとロスヴァイセがリゼヴィムの残留思念体に呑み込まれたのだ。二人の気配は微弱だが、感じることが出来る。無事なのだろう。そして、シドウが咄嗟に投げた斬魔刀は本体に突き刺さっていた。

本体は、僕たちを標的にするように、こちらに触手を向けた。回復は出来たけど、一撃限定だ。回避や迎撃には使えない。つまり、二人を助ける手段がない!

「サーゼクス様!俺は行けます!」

「私も行けます!」

イッセーくんとサイラオーグが僕の横に来る。イッセーくんはシドウが戻ってくるまで戦い続けて限界だというのに、サイラオーグも先ほどまで頑張ってくれていた。二人とも本当にすごい子だ。

「僕とイッセーくん、サイラオーグで二人を助ける!みんなはチャージを!」

『はい!』

僕は滅びを纏い直し、イッセーくんとサイラオーグと共に飛び出していく。触手を消し飛ばし、一気に本当まで肉薄すると、そのまま殴り付ける!イッセーくんとサイラオーグもほぼ同時に別の場所を殴っていた。だが、手応えがおかしい。これは止められている!?

僕たちは飛び退き、本体を見る。

シドウが斬ったときのようなダメージが見受けられない。やはり、斬魔刀が特別なのか?

僕はそう考えると同時に、あることに気がついた。斬魔刀は突き刺さっていて、中にはシドウがいる。賭けになるが、やってみる価値はあるかもしれない。

「二人とも、いいかい?」

「はい!二人を助けられるなら、多少の無茶はします!」

「シドウ様とロスヴァイセを助けるためなら、何であろうといたしましょう」

イッセーくんは頷き、サイラオーグも拳を握りながら答えてくれた。

僕は二人に言う。

「シドウの斬魔刀を体内に押し込む。手伝ってくれ」

「シドウさん的に言えば、『外からダメなら中から』ってやつですね。わかりました。俺とサイラオーグさんはどうすれば?」

「僕が囮になる。イッセーくんとサイラオーグは隙を見つけたら全力で斬魔刀を叩けばいい。それで中に入るはずだ」

「サーゼクス様が囮ですか?それは危険です。囮は私が……」

サイラオーグが言ってくるれるが、僕は出来るだけ優しく声をかける。

「心配は嬉しいが、僕だって魔王だ。あの程度の攻撃なら避けきれるよ」

サイラオーグは少し考えると、頷いた。

「……わかりました。では、行きましょう!」

義弟と従兄弟との共同戦線とは、良いものだね。

僕はそう考えながら、囮となるべく、動き出した。

 

 

 

 

 

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俺、シドウは目を開けた。左手に温もりを感じる。そちらを見るとロスヴァイセがいたが、気を失っているようだ。てか、ここどこだ?ロスヴァイセ以外何もない。禍々しい色のどこか。

俺は考え、すぐに結論にたどり着いた。リゼヴィムの残留思念体の中だ。それしかない。呑み込まれたが、こうなるのか。

体を動かそうにもうまく動かない。だが、何かされているというわけでもない。何でだ?

俺の胸元が光っていた。正確にはそこにいれてあるもの、ロスヴァイセから貰った『お守り』が光っているのだ。お守りは暖かい光を放ち、俺とロスヴァイセを守ってくれていた。グレンデルに体を持っていかれた時にもこれが助けてくれたが、また助けられているのか。

だが、どうしたもんか。少しずつだが光が弱くなっているように見える。長続きはしなそうだ。早く脱出しないと、でも体が動かない。どうすれば………。

 

 

 

 

 

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俺、イッセーは動き回っていた。サーゼクス様から斬魔刀を押し込む役を請け負ったんだけど、隙が見つからない!シドウさんどうやってあんなことしてたんだ!?

『あいつも、おまえと同じグレートレッドの肉体を持ったイレギュラーみたいなものだ。おまえとは別方向に異常に強くなったのだろう。あの鎧も、見た限りでは負荷が少なそうだったしな』

シドウさんに勝てるなんて思っちゃいねぇよ!でも、どうすれば。

「イッセーどん!ちょいと賭けだけど、手伝うよ!」

俺の後方からデュリオが声をかけてくれた。でもデュリオの能力じゃ通じないんじゃ?

俺の疑問を気にせず、デュリオは雷をリゼヴィムの思念体の足元の地面に放ち、爆発させることでクレーターを作り出した。

爆風で怯んだリゼヴィムの思念体をサイラオーグさんが蹴り、クレーターにはめて動けなくした!斬魔刀はちょうど殴りやすい高さだ!

「イッセーどん!後は頼んだよ!」

「兵藤一誠!決めろ!」

デュリオとサイラオーグさんに頷き、俺は右拳を引いて飛び出していく。触手が俺の邪魔をしようと伸びてくるが、それは俺に到達する前に消し飛んだ。

「イッセーくん!行ってくれ!」

サーゼクス様が叫んだ。任せてください!ここまでやってもらえれば十分です!

俺はダッシュの勢いのまま、斬魔刀の柄頭を殴り抜いた!

斬魔刀は勢いよく、思念体の中へと潜り込んでいった。

 

 

 

 

 

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俺、シドウは必死に体を動かし、どうにか右手を前に出すことは出来た。が、他には何も出来ていない。お守りの光は消えてしまいそうだ。

だが、諦めるわけにはいかない!セラが待ってるんだ!ロスヴァイセを助けなきゃならないんだ!それに、リリスも待っててくれてる!何としても帰らなきゃならないんだよ!

俺がそう強く思った矢先、右奥から何かが飛んできた。目を凝らして見ると、斬魔刀だ。誰かが中に入れてくれたようだ。速度的にチャンスは一回だな。

俺は全神経を右手に集中して、タイミングを計る。

…………今だ!

俺が右手を握ると、斬魔刀の柄がすっぽりはまった。

斬魔刀を握ると同時に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

『シドー?シドー?聞こえる?』

その声、リリスか!

『うん、やっと届いた』

それは良かったけど、こっちがよくないんだよ!

『シドー、鎧、纏って』

それが出来たら苦労ないぜ。グレートレッドのオーラが残ってない。

『だから、リリスのオーラ使って』

……………今、なんて?

『シドー、ずっとリリスの一緒にいた。時々一緒に寝た。その時、リリスのオーラ、シドーに流してた』

空腹を感じなかったのはそのおかげか?まぁ今はいいや。で、どうやれば使える?

『大丈夫、さっきと同じ』

わかった。待っててくれ、すぐに帰る!

『うん』

リリスの声が聞こえなくなると、俺は目を閉じ集中した。

 

 

 

 

 

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俺、イッセーは、触手を避けながら結果を待っていた。斬魔刀は無事に入った。後はどうなるかだ。

すると、リゼヴィムの思念体から、強烈な光が放たれた始めた。これは、この光は!

俺とサイラオーグさん、サーゼクス様は、それを確認すると、後ろに飛び退き、思念体と距離を取った。光は強くなっていき、思念体を風船のように膨らませていった。

『うおぉぉぉぉ………うおおおぉぉぉぉぉぉん!』

思念体が一際大きく吠えると同時に、何かが思念体をぶち抜き、飛び出してきた!それは光を放ち続けていたが、地面に着地すると同時に光が弱くなっていく。

光が止み、そこにいたのは!

「すまん、心配かけた」

黒い鎧を纏ったシドウさんだ!兜をつけていないが、斬魔刀を背中に背負い、ロスヴァイセさんをお姫様抱っこしていた。ロスヴァイセさんは意識はないけど、きっと生きてる。

「今だ!撃て!」

サーゼクス様の合図で大量のオーラが思念体に叩き込まれていった!連続で爆発が起こる様は、トライヘキサの時を思い出させる!

俺も何かしたいけど、限界だ。鎧も纏ってられない。

俺は鎧が解除されると同時に片膝をつき、結果を見守る。

攻撃が止み、煙が晴れるとそこには……。

『ま……だ………て……な』

ボロボロの思念体がいた!?今のでもダメなのか!

すると、その思念体に向かって悠然と構える、一人の騎士の姿が俺たちの目に映った。

黒い鎧を纏ったシドウさんは、ゆっくりと瞑目し、ゆっくりと斬魔刀を上段に構えた。

斬魔刀の深緑色の刀身から、漆黒と深緑色のオーラが放たれ、天に向かって伸びる柱のようになっていた。余波で地面にヒビを作り、邪魔をしようと伸ばされた思念体の触手を溶かしていた。余波だけであれなのかよ!あんなのもろに食らったら………。

『俺やアルビオンでも無理だ。どうやっても、確実に消し飛ぶ』

ドライグが冷静に言った。俺と同じく鎧が解除されたヴァーリもシドウさんを見ていた。いや、俺を含めた全員がシドウさんを見ていた。

シドウさんは目を開き、左足を大きく前に踏み込ませて叫んだ!

無限の(アンリミテッド)凶刃(ファング)ゥゥゥゥッ!」

叫びと共に斬魔刀は振り下ろされ、漆黒と深緑色の圧倒的なオーラが思念体に放たれた!思念体は触手を盾のようにするが、それさえも一瞬にして蒸発させ、本体にぶち当たる!オーラはその瞬間、さらに膨れ上がり、周辺を閃光が包み込んだ!

 

 

 

 

 

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シドウは深く息を吐くと、ゆっくりと斬魔刀を右肩に担いだ。煙が彼やD×Dのメンバーを包み込んでいるが、少しずつ晴れ始めていた。

煙が晴れると、彼らの前の景色が激変していた。

シドウの前の闘技場の壁はなくなり、地面が数キロに渡り見えないところまで削り取られ、山が抉りとられていた。オーラの通った場所は、深緑色のオーラに包まれ、禍々しい光を放つ川のようになり、リゼヴィムの思念体がいた場所には巨大なクレーターが出来上がり、深緑色の泉が出来上がっていた。

シドウは笑みを浮かべゆっくりと左拳を突き上げた。

全員がその行動に納得し、ある者は座り込み、ある者は倒れこんだ。

シドウは鎧を解除すると振り向き、斬魔刀を亜空間にしまった。そして、後ろに寝かせていたロスヴァイセに近づく。彼は、自分のオーラがロスヴァイセに振りかからないように調整をして放った。なので、彼女は無傷だった。

気を失っているロスヴァイセの目が少しずつ開く。

「シドウさん?大丈夫ですか?」

「ああ、俺は大丈夫だ。それに全部終わったよ。ロセ」

ロスヴァイセは体を起こしながら表情を明るくした。

「シドウさん、今、私を!」

シドウはロスヴァイセをお姫様抱っこしながら、笑みを浮かべた。

「ああ、いつまでも『ロスヴァイセ』じゃ、堅い気がしててな。トライヘキサを倒したら『ロセ』って呼ぶように決めてたんだ」

シドウはそのままゆっくりとサーゼクスたちの方へ歩いていった。

サーゼクスたちもふらつきながらも立ち上がり、笑みを浮かべた。シドウが全員を見渡し、口を開く。

「さぁ、帰ろう。今度こそ、全員で」

『はい!』

全員が満面の笑みを浮かべながら答えると、彼らに近づいてくる影が複数。

「お~い!おまえらぁぁ。無事かぁぁぁ?」

「いい塩梅のオーラを感じましたが、あれは一体誰が?」

「本当に死ぬかと思いました!」

アザゼルと幾瀬鳶雄、シーグヴァイラとその眷属だ。アザゼルと鳶雄の二人は今までラボを調べ、シーグヴァイラたちはクリフォトの構成員と戦い続けていたのだ。

シドウ本人も彼らのことを忘れていたようで、彼らの登場に目を丸くしていた。シドウは肩をすくめ、再び言う。

「まったく、アザゼル!おまえがいると締まらねぇよ!」

「何だと!こっちが裏で頑張ってやったのに!その言いぐさはなんだ!」

アザゼルはキレながら反論するが、その顔は嬉しそうなものだった。

シドウは笑みを浮かべ、歩き出した。サーゼクスたちも後ろに続いて歩き出す。今度こそ、全員で家に帰るために……。

 

 

 

 

 

 




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