リゼヴィムは三個目の駒を使い、さらにオーラを爆発させていた。
俺はブレードを上段に構え、一気に接近、そして振り下ろす。それをリゼヴィムは右手の人差し指と中指の二本で止めた。
リゼヴィムはドヤ顔で言う。
「ふふん♪さすがに勝てないでしょ?」
確かに、いくら力入れてもビクともしない。
リゼヴィムはそれを見ると、左拳を放ってきた!俺はブレードを手放し、足を踏ん張り、その拳を両手で受け止める!すさまじい衝撃が襲うが、耐えられないわけじゃない。
俺はその拳を上に弾き、顔面を狙って左拳を放つ!が、リゼヴィムは素早く左拳を戻し、それを軽々と受け止めた。
リゼヴィムはブレードを上に投げ、空いた右拳で、俺の左腕を殴り付けた!
俺は歯を食い縛り、痛みに耐える。骨は逝ってない、なら大丈夫!
俺は右手から魔力弾を放ち、リゼヴィムを牽制する。
リゼヴィムは回避のために俺の手を離し、飛び退いた。
落下してきたブレードを右手でキャッチする。
ちょっと左腕が痛いが、問題ないか。
リゼヴィムは笑みを浮かべて俺を見た。
「これがキミの本気?笑わせないでよ」
リゼヴィムの言葉、いちいち堪に触るな。
俺はリゼヴィムに切っ先を向け、宣言した。
「いいぜ、見せてやるよ。この剣の本当の力ってやつを」
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その場にいる全てのヒトがシドウを見ていた。
リゼヴィムは挑発するように、シドウに手招きをしていた。
シドウは瞑目し、集中する。そして、ブレードに深緑色のオーラを纏わせると空に向けた。そのブレードで円を描き、ブレードを降ろす。宙に円形の深緑色の軌跡が残り、魔法陣を展開される。魔法陣が光を放ち、その光が全員の視界を奪い、シドウを包み込んだ。やがて、光が形となり、籠手、脚甲、鎧となっていった。そして、それらはシドウに張り付くと同時に強く輝き、周囲を照らした。
全員が目を守り、光が止むのを待った。
光が止むと、そこにいたのは、黒い鎧を纏った
鎧を纏ったシドウは再び切っ先をリゼヴィムに向ける。
「リゼヴィム、これを使うのはおまえが初めてだ。自分でもどうなるかわからんが、テメェだけは確実に屠れる」
シドウが宣言すると、龍の頭部を模した兜が装着される。双眸からは銀色の光が漏れているが、グレンデルのような危険なものは感じない。
彼が使っていた
鎧を纏ったシドウはリゼヴィムを睨んだ。
『鎧の名前さえ決めてないが、
兜の影響でくぐもった声でそう言うと、シドウは消えた。
リゼヴィムは一瞬見失うが、すぐに左に飛び退いた。その瞬間、深緑色の軌跡を残しながら剣が振り下ろされ、その一撃は地面を抉り、クレーターが作った。
黒い鎧を纏ったシドウはリゼヴィムを睨んだ。
リゼヴィムはぎょっとしながらも睨み返した。
「あっぶねぇな!でもでも、次は止める!」
『やれるもんなら』
シドウは再び消える。リゼヴィムは気配を探るが、どこからも感じない。キョロキョロと回りを見渡してもどこにも見つからない。リゼヴィムの上から影が指した。上を見上げると同時に、目の前に切っ先が見えた。
『やってみろ!』
リゼヴィムは咄嗟に障壁を作り出すが、それを容易くぶち抜いた刃が、リゼヴィムの左肩に抉り取った!
「ッ!?」
左腕が宙を舞ったことを確認すると、リゼヴィムは飛び退いた。
両手で逆手持ちにし、深々と地面に突き刺さった剣を引き抜いたシドウはリゼヴィムを見る。
『どうした?攻撃しないのか?』
兜の奥のシドウの表情がわかる者はいないが、確実にわかるものがあった。
シドウがリゼヴィムを押している。
その事実だけが、突きつけられていた。
「これなら、どうよ!」
リゼヴィムは魔力弾を放ち、シドウはそれをノーガードで受け、彼を中心に大爆発が起こる。
リゼヴィムは口元を笑ませた。今のを食らって無事なわけがない。確実にダメージは通った。リゼヴィムはそう思い、余裕の笑みを浮かべたのだが。
『そんな攻撃、効くわけないだろ』
シドウの声が耳に届き、驚愕した。黒い鎧が煙からゆっくりと出てくると、一歩ずつ、一歩ずつ、確実にリゼヴィムに近づいていった。
「な、なんで効かねぇ!?強がってんのか!?」
『強がるもなにも、効いてねぇから』
シドウは肩をすくめて言うと、リゼヴィムが吠えた。
「は!?ふざけんなよ!効かねぇわけねぇだろ!」
興奮するリゼヴィムに、シドウは冷静に言った。
『グレートレッドの力を借りてるからな。効かなくて当然だ』
「………は?」
リゼヴィムはポカンとしていた。訳がわからない。それが本音だ。実際、リゼヴィム以外の人物もわかっていない。
シドウは剣を指差しながら言った。
『斬魔刀自体がグレートレッドの力で完成したもの。俺もグレートレッドの力を借りて復活した。グレートレッドの肉で出来てる俺と、グレートレッドのオーラが生み出したこの刀。この中にグレートレッドの残留オーラがあってもおかしくない。で、あったからそれを使って鎧を形成した』
シドウは当然のように言っているが、彼の鎧は。
斬魔刀に封じられたグレンデルと、残っていたグレートレッドのオーラ。シドウの体内に残っているグレートレッドのオーラ。その二つを使って鎧を形成。つまり、若干グレートレッドであるため、非常識なまでに固い。
『さぁ、続けようぜ?もっとも、ついてこれるかわからないがな』
シドウはそう言うと、再び消えた。
リゼヴィムは再びオーラを感じ取ろうと集中するが、感じ取れない。
『後ろだ、マヌケ』
リゼヴィムの背後に回ったシドウは、リゼヴィムが振り向くと同時に剣を降り下ろし、袈裟懸けに体を斬り裂いた。
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俺、シドウはリゼヴィムを斬り裂いた。リゼヴィムは血を吹き出しながら仰向けに倒れる。同時に鎧が解かれてしまった。念のため飛び退くと、視界がぼやけ、足がふらついた。
鎧を纏うだけでかなり消耗したな、というよりも、鎧はもう纏えないな。必要だったグレートレッドの残留オーラがもうない。
今回限りの力か……もっと短時間で済ませれば良かったかな?
「シドウさん!」
ふらつく俺の胸に誰かが飛び付いてきた。ロスヴァイセだ。
「シドウさん!良かった~、いぎでだぁぁぁ!」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、俺を抱き締めてくる。頭を撫でてやりたいところだが、まだ終わってない。
俺は一度ロスヴァイセを離れさせ、リゼヴィムを見た。
リゼヴィムの体から『ボゴッボゴッ』と怪しい音が鳴り始め、ついにはリゼヴィムの体を突き破って何かが出てきた。禍々しい光を放つそれは不定形の何かで、触手と思われるものを振り回していた。
兄さんが俺の横につく。だいぶ回復したようで、他のメンバーも立ち上がった。
「兄さん、あれは?」
兄さんはしばらく考えると、言った。
「おそらくだが、
俺は笑みを作り、兄さんに言った。
「俺を誰だと思ってる。あんたの弟だぞ?」
兄さんも笑みを浮かべた。
「そうだね。キミは始めたら最後までやるタイプだ。今さら降りるわけないか」
『まだだぁぁぁぁ………まだ負けてなぁぁぁい……』
久しぶりに兄弟で話していると、それを遮るように不気味な声を出しながら、少しずつこっちに向かってくるリゼヴィムの残留思念。
「さぁて、延長戦だ。ド派手に行くぜ!」
俺は斬魔力を持ち直し、リゼヴィムに突貫した。
魔騎士モードの元ネタは、陰我を断ち切る黄金騎士です。
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