グレモリー家の次男   作:EGO

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life18 シドウ・グレモリー

彼は困っていた。自分は自由気ままに次元の狭間を飛んでいただけだ。なのに、自分の背中にまた紅い髪の彼が落ちてきた。前ほどではないがボロボロなのも、彼を貫いている刀が自分にも刺さっていることもわかる。そして、彼が帰りたがっていることも……。

彼を見るのは『三回目』だ。一回目は気配を感じただけだが、彼のことが気になって時々観察をさせてもらっていた。

これをするのは今回で最後にしよう。

彼はそう思いながら、背中の彼を、自分の肉でゆっくりと包み込んだ。

 

 

 

 

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俺たち、D×Dはリゼヴィムを睨み付けた。リゼヴィムは笑みを浮かべて、俺たち全員を見渡した。

「さぁて、サーゼクスちゃん、次は誰がいい?そこのユーグリットのお姉さん?それとも、妹さんがいいかな?」

サーゼクス様がグレイフィアさんを守るように前に出て、俺はリアスの前に出る。

「これ以上、犠牲を出すわけにはいかない」

サーゼクスさんは少し声を震わせていた。無事とわかったシドウさんがまた、あんなことになっちまったんだ。ロスヴァイセさんは泣き崩れ、リアスは目に涙を溜めながらリゼヴィムを睨んでいた。

「辞めた!やっぱりこの手で全員をぶちのめす方が楽しいだろうからな!」

リゼヴィムはそう言うと、魔法陣を展開して俺たちに向けてきた。

 

 

 

 

 

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何かに寝そべっている俺は、ゆっくりと手を前に伸ばした。手は何かに当たるが、それを突き破る。チラッと万華鏡のような景色が見えた。記憶が飛び飛びだが、どうしてここに、次元の狭間にいるのかはわかる。だが、何に寝そべっているのかがわからない。だが、早く帰らないと、あいつらをまた泣かせちまう。

「いい加減、起きたらどうだ?」

俺の耳に聞き覚えのない声が響いた。

誰だ?俺どうなってるんだ。

俺が心の中で思うと、声が返ってきた。

「おまえは生きてるさ、早く帰ってやれ」

俺はゆっくりと立ち上がり、何かを突き破る。

立ち上がったはいいが、上半身裸何だけど……。

「服はダメになった。まぁ、気にするな」

あ、はい。てかしれっと心を読むな。

俺は腹を見ると、刀で貫いたはずなのに傷がない。てか刀がないんだが。

「刀はおまえの右側にあるぞ」

俺は右を見ると刀はあった。何か形が変わってるし、地面に突き刺さってるんだけど。

「地面じゃない。俺の背中だ」

背中って、どんだけデカイんだよ。おまえさん。

「自分でもよくわからん」

俺はそれを聞きながら、刀の元まで歩く。ただの日本刀の鍔が無くなり、日本刀というよりもブレードに近くなり、鍔の代わりと言わんばかりに刃の根元に当たる部分には深緑色の宝玉が埋め込まれていた。鞘はリアスたちの方か。てか形がかなり変わってるが、鞘に納まるのか?

『出しやがれ!ここから出せっ!』

刀からグレンデルの声がするが、今は考える事じゃないな。

ところで、何で助けてくれたんだ?

「おまえに興味があった。それだけだ」

興味があるとは、理由は何となく察する。

俺は日本刀を持ち、刃に自分の顔を映す。紅一色の短めの髪に、両目が(あお)い。火傷もない。

うん……うん!?な、何か知っているのと違うんだが!?

俺は思わず二度見をして、顔を確かめる。たまげた、変わりすぎだろ。

「ついでに異物も全て取り出して、その刀に移した。おまえさん的に言えば、出血大サービスと言うやつだ」

つまり、この宝玉は俺に埋め込まれたやつで、中にはグレンデルが?はぁ~、助かる。

「どう使えばいいか、それは使っていけばわかるはずだ」

ここまでしてくれるとは、本当に感謝するぜ。グレートレッド。

「気にするな、代わりに頼みを聞いてくれ。ドライグと兵藤一誠に伝言を頼みたいんだが」

おう、お安いご用だ。何だ、言ってみろ。

「それでは、いくぞ?………」

 

 

 

 

 

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俺、兵藤一誠は膝をついた。あの後、ソーナ前会長とサイラオーグさん、そして二人の眷属が来てくれたが、すでにリゼヴィムと戦った全員が肩で息をしている。逆にリゼヴィムはピンピンしていた。

「え~、もう終わり~?もっと楽しもうよ~。つまんないなぁ」

くそっ!(キング)の駒を使っておいて、よく言うぜ!

「駒を使っていても、元のスペックが違いすぎるんだよ。勝てるわけないだろ?」

リゼヴィムは俺の心を読むようにして言ってきた。

こうなったら、『龍神化』をもう一回!

『よせ!今度こそ死ぬぞ!』

ドライグが制止の声をあげるが、俺は反論する。

このままじゃ、何も出来ないで全員殺されちまう!だったら、せめてあいつを………!

『またリアス・グレモリーたちを泣かせるつもりか!これ以上誰かを失ったら、あいつらは終わりかねないんだぞ!』

だったら、どうすりゃいいんだよ!

俺とドライグが心の中で口論していると、リゼヴィムが言った。

「さて、もう飽きたから終わらせちゃうね」

リゼヴィムはそう言うと、両手を挙げて、上空に巨大な魔力の塊を生み出していた。

「グレイフィア!転移だ!ここは退くしかない!」

サービス様が叫んだ。だが、グレイフィアさんは苦虫を噛んだような表情で言った。

「ごめんなさい……もう魔力が……」

グレイフィアさんも限界なのか、どうする、どうすれば!

「それじゃ、皆さん!永遠に……ばいちゃっ!」

リゼヴィムはそう言うと、魔力の塊を俺たちに落とした。ゆっくりだが、確実に俺たちの方へ落下してくる空を埋め尽くすほどの大きさの塊。痛みを感じる前に消し飛びそうだな。すると、俺の手をリアスが握ってくれた。

「イッセー……」

「リアス……ごめん。俺はまた……」

何も守れかった。

俺がそう言おうとすると、リアスが先に口を開いた。

「そんな事ないわ、あなたは最後まで戦ってくれた。それだけで十分よ」

リアスは目に涙を溜めながら笑みを浮かべてくれた。

またリアスを泣かせちまった。けど、リアスを、皆を死なせるわけにはいかない!ドライグ、最後まで付き合ってくれ!

『ここまで来たらどこまでも付き合うさ』

俺はリアスの手を離し、上に飛ぶ。まだ魔力の塊とは距離がある。だったら、いけるはずだ。

俺が呪文を唱えようとした瞬間、リゼヴィムが俺の眼前にいた。

「なっ!?」

「また、あれされるのは嫌なのよね」

リゼヴィムは俺の腹に拳を撃ち込んできた。その拳は容赦なく俺の腹に突き刺った。

やばい……意識が……。

『相棒!しっかりしろ!』

ドライグの声が聞こえるが、遠くに感じる。

再び襲ったのも衝撃だ。リゼヴィムが踵落としを決めた態勢になっていた。

俺は勢いのまま落下し、地面に激突した。体が動かない。もうダメなのか?

俺は兜の中で涙を流した。シドウさんの分まで頑張るって決めたのに、これじゃ、何にも守れない。

ピシッ……ピシッ……。

何かにヒビが入る音が聞こえた。何だ、一体何が……。

パリンッ!

何かが割れる音が聞こえ、その次に声が聞こえてきた。

「まったく、いつの間に諦めるのが早くなったんだよ?」

俺たちは声の主を見た。悪魔の羽を生やした紅髪の男性が、俺たちに背中を向け、リゼヴィムが落とした魔力の塊を見ていた。

 

 

 

 

 

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それじゃ、グレートレッド。世話になった。行ってくる。

「二度と来るなよ」

グレートレッドの言葉に笑みを浮かべるが、走り出せない。だって……

どうやって戻るんだ?

グレートレッドは俺の思考を読み、俺の前にヒビを入れてくれた。

「それをぶち抜け、入ってきた場所に戻れる」

おう、サンキューな。それじゃ、今度こそ、じゃあな!

俺は助走をつけてヒビに体当たりをかまし、そこから飛び出した。

のはいいが、そこは空のど真ん中だったようで、俺はすぐさま翼を展開した。俺の前には巨大な魔力の塊。後ろには倒れる兄さんたち。何か諦めムードだな。

「まったく、いつの間に諦めるのが早くなったんだよ?」

俺の一言で全員が俺を見た。驚いているが、今はそれどころじゃないな。

俺はブレードをを下段に構え、オーラを込める。

宝玉が輝き、刀身が深緑色に変わる。そのままオーラが高まっていくのを感じる。

相殺は無理だが、一点集中で斬れば逸らすくらいなら出来るか。

ブレードから深緑色のオーラが迸る。いい塩梅だ。

俺はブレードを一気に振り上げ、斬撃を飛ばす!

俺の斬撃とリゼヴィムの魔力の塊がぶつかり合い、激しい閃光と衝撃が俺たちを襲うが、まだだ!

俺は振り上げたブレードの刃を返し、体を時計回りに回すと同時に斬撃を飛ばす!

二度目の斬撃が当たり、一度目の斬撃を後押しすることで少しずつ押し返していく。

もう一回いっとくか!

俺は上段にブレードを構え、一気に振り下ろす!

三度目の正直というように、三回目の衝撃で、ついに魔力の塊は両断され、空中で大爆発が起きた!閃光と煙が視界を遮るが、オーラで奴の場所を特定する。光が止み、煙が晴れると同時に、俺がゆっくりと着地する。リゼヴィムも顔を驚愕の色に染め上げながら降りてきた。リゼヴィムが狼狽えながら言う。

「お、おまえ。なんだって言うんだよ!死なねぇとかそんなもんじゃないぞ!」

俺は当然のような顔で、当然のように言う。

「俺は不死身だ。知らなかったのか?」

俺のふざけた回答に、リゼヴィムは怒りで顔を歪めた。

俺はブレードの切っ先をリゼヴィムに向けた。

「さて、久々の新武器だ。色々試させてもらうぜ?」

「俺を実験台とか笑わせんじゃないよぉぉぉぉ!」

リゼヴィムはオーラを放ち、周囲の物を吹き飛ばした。

「グレンデル、力貸してもらうぜ?」

俺はブレードの宝玉に言うと、一瞬宝玉が光った。どうせ『ふざけんな』とか言っているんだろうが、あいにく聞こえないんでね。

俺はブレードを握り直し、リゼヴィムは魔力を拳に纏わせていた。

「さぁ、決着だ!」

俺は宣言すると共に、走り出した。

 

 

 




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