グレモリー家の次男   作:EGO

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life17 グレンデル

俺、兵藤一誠と、ロスヴァイセさんの首を絞めているシドウさん。その双眸は銀色になっていた。銀色の目ってことは、まさか!

俺は弱めたクリムゾン・ショットをシドウさんの腹部に当てる。それを食らったシドウさんは怯み、俺たちを解放した。

「げほっげほっ……シドウさん?」

ロスヴァイセさんがシドウさんを見る。シドウさんは両手を見た後に哄笑した。

「くくく、はははははっ!やったぞ!ついに体を手に入れた!」

シドウさん、いや、あれは!

「グレンデルっ!」

俺は憎々しげにあの野郎の名前を呼んだ。

グレンデルはこちらを向き、言った。

「よう、ドライグ。今度こそ最後まで()ろうぜ?何ならアルビオンでもいいが、あん時やられた借りがあるんでなぁぁぁ!」

グレンデルはシドウさんの姿で、シドウさんの声でそう言った。怒りを抑えるので精一杯だよ。

「グレンデル……シドウさんの体、返してもらうぜ」

俺が怒りを必死に抑えながら言うと、グレンデルは笑った。

「そうこなくっちゃぁな!リゼヴィム!邪魔してくれんなよ?ドライグは俺が殺るんだからよぉぉぉぉ!」

グレンデルはリゼヴィムに言うと、リゼヴィムは頷いた。

もう聖杯による脅しもないのに、何でリゼヴィムの味方してんだよ!

『もしかしたら、あの宝玉には「リゼヴィムへ服従」するように術式が組み込まれているのかもしれんな』

だからあんなに仲良しこよしなのか!くそ、どうすればシドウさんを助けられるんだよ!

『アザゼルたちが装置の破壊に動いているだろう?それを破壊すれば、おそらく』

アザゼル先生を信じるしかない。破壊まで時間を稼げばいいんだ!よし、やってやるよ!

俺はドライグとの話し合いを終え、グレンデルに構える。

グレンデルは両手足に力を入れると、黒い鱗に覆われ始めた。あれで殴りあいをするつもりなんだろう。

『オリジナルと比べてどの程度強いかはわからん。だが、速度だけなら、あちらが上だろう』

わかってるよ。騎士(ナイト)の駒の力が反映されてるだろうからな。

グレンデルは姿勢を低くして、突撃の態勢になった。

俺も最初っから全力でいくぜ!

俺のオーラが高まったことを確認したのか、グレンデルは笑みを浮かべた。

「おらおら、いくぜぇぇぇぇぇ!」

グレンデルは飛び出し、俺も同時に飛び出す!

他のメンバーは再びリゼヴィムに攻撃していった。

俺とグレンデルの拳がぶつかり合い、衝撃波が闘技場を揺らした!

だが、同時に違和感を覚えた。まるで加減されているような、そんな感じがした。

そのまま俺とグレンデルは殴りあっていくが、その違和感が消えない。何なんだよ!

俺とグレンデルは距離を取ると、グレンデルに砲撃が放たれた!

グレンデルはそれを避ける。シドウさんの体では耐えられないと感じているのだろう。

グレンデルは全て避けると、砲撃を放った張本人を見た。

放ったのはロスヴァイセさんだ。肩を震わせながら次の魔法陣を展開していた。

「邪魔するなよ……真剣勝負してるんだ」

グレンデルとは思えない、冷静な声音だった。

グレンデルはそう言うとロスヴァイセさんに肉薄、そして腹に拳を撃ち込んだ。ロスヴァイセさんは崩れ落れ、床に転がった。

グレンデルはこちらに振り返る。

「さぁ、ドライグ!続けるぞぉぉぉぉ!」

グレンデルは両手を横に広げながら言った。

俺だって続ける気はあるさ!けど、けど!

何であんなに悲しそうなんだよ!

俺がそう感じた瞬間、グレンデルの顔は嬉々としたものに戻っていた。

シドウさんはまだ抗ってるのか。だったらもう少しで戻せるかもしれない!

グレンデルが飛び出そうとすると、何かがそれを止めた。見ると、ロスヴァイセさんが後ろから抱き締めていたのだ。

グレンデルは動きを止め、首だけで振り向く。

「また、テメェか!ヴァルキリーの嬢ちゃんが、邪魔すんな!」

グレンデルは振りほどこうと暴れるが、ロスヴァイセさんは離さない。

ロスヴァイセさんが言葉を漏らす。

「シドウさん?シドウさんですよね?私にはわかります。あなたはまだ負けてません。私がそばにいます。だから、もう一度、戦いましょう。今度は一緒に」

ロスヴァイセさんはそう言うと、グレンデルの胸に手を当てた。すると、そこから光が漏れだし始めた。

途端にグレンデルが苦しみだした。

「グッ……テメェ!何しやがる!邪魔するなって言ってんだろうが!」

グレンデルはドラゴンの翼を広げ、上空に飛び上がった!ロスヴァイセさんは必死にしがみついていた。

少しずつ、光が強くなっていた。けど、何が光ってるんだ?ドライグ、わかるか?

『わからんな。あれだけ見ると、胸に何かついているんじゃないか?』

胸に何かって、ロスヴァイセさんがシドウさんに何か渡したのか?いや、くわしくは後だな。ロスヴァイセさんが死んじまう。

俺は遅れてグレンデルを追い、上空に向かった。

 

 

 

 

 

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俺、アザゼルは、鳶雄と(ジン)を連れて、例の宝玉を作っていると思われる部屋に入った。ソーナとサイラオーグたちは部屋の前で待機させ、敵襲に備えさせてある。

部屋を進むと、俺と同じくらいの大きさのカプセルのようなものを発見した。

「鳶雄、これか」

「そのはずです」

手短に確認すると、俺は周辺も確認する。カプセルから、部屋の奥に、天井伝いにコードのようなものが延びていた。

それを確認すると、カプセルの中を覗きこむ。何も入ってはいないが、どす黒い液体で満たされている。液体が何かを確認しようにもカプセルが開けられない。

どうしたもんかと、俺が悩んでいると、鳶雄が言った。

「どうします?下手に開けて罠があったら」

「だから悩んでるんだよ。奥に何かあるようだし、そっちを見てみよう」

「そうですね」

鳶雄とそれを確認すると、コードを追って奥に進む。

廊下のように長い部屋の壁には宝玉がずらりと並び、その奥には二つの駒が何かの装置に置かれていた。

この駒、まさか!

「アザゼル、これは!」

(キング)の駒が、何でたってこんなところにあるんだよ!助かるが、下手に触れるとどうなるかわかったもんじゃねぇ」

駒がセットされた装置からもコードが延び、宝玉に供給されていた。(キング)の駒のエネルギーを宝玉に流しているのかもしれないな。とにかく、止めちまおう。

俺は装置に近づき、調査用の魔法陣を展開する。

ほうほう、構造は単純だな。

俺はある程度理解すると、そのまま魔法陣を操作していく。ここをこうして、こうすればっと。

操作を終えると、装置から大量の蒸気が吹き出し、そして機能が停止した。

これで、大丈夫なはずだ。大丈夫……だのな?

「アザゼル、後はカプセルをどうにかしないと」

「ああ、わかってるよ。だが、その前に」

俺は駒をゆっくりと装置から取り外し、小型の転移魔法陣を展開し、駒をアジュカの元に送った。

「よし、完了だ。カプセルは……あっちだったな」

「ああ、そっちだ」

俺と鳶雄は走りだし、カプセルの元に移動した。

装置を停止させた影響なのか、カプセルが少し開いていた。同時に感じる寒気、何か開けてはいけないものを開けてしまったような。てか、初めてトライヘキサを見たときと同じものを感じるぞ。鳶雄と(ジン)も警戒の色を濃くしていた。ゆっくりとカプセルに近づき、開きかけのカプセルを開ける。中の液体は無くなっている。気化したのか?だが、一つわかったことがある。この独特の匂い、おそらく液体の正体は『血』だ。それもおそらく、トライヘキサの……そんなものを使って宝玉を作っていたのか?そう言えば、埋め込まれると邪龍になっちまうって言ってたな。トライヘキサの血が放つ禍々しいオーラ。それを利用していた?色々と憶測は出来るが、詳しくは調べてみてからだな。

俺は外のソーナたちに、リアスたちと合流するように指示を出すと、鳶雄と共に室内を捜索し始めた。

 

 

 

 

 

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「ロスヴァイセさん!離れてください!」

「もう少し、もう少しだから」

俺、兵藤一誠は焦っていた。あれからしばらく空中で待機していたのだが、グレンデルは暴れだし、ロスヴァイセさんも少なからずダメージを受けていた。このままだとロスヴァイセさんが耐えられない。

「しゃらくせぇな!おい、ドライグ!止めれるもんなら、止めてみやがれ!」

グレンデルはそう言うと、一気に急降下し始めた!ロスヴァイセさんを叩きつけるつもりか!

俺はグレンデルを追い、降下を始める。せめてロスヴァイセさんを引き離さないと。

俺の焦りとは裏腹に、グレンデルの速度はドンドン上がっていっていた!このままじゃ、追い付けねぇ!

俺は手を伸ばすが届くことはなく、グレンデルは最高速度のまま、地面に激突。砂ぼこりが闘技場一面を包み込んだ。リアスたちも、リゼヴィムも突然のことに驚き、攻撃の手を止めた。

少しずつ砂ぼこりが晴れていき、人影が見える。グレンデルであることに間違いはない。問題はロスヴァイセさんだ。生きててくれよ………。

「まったく、無茶するね」

俺たちが待ち望んでいた声だ。誰よりも家族を、仲間を大切にするあのヒトの声だ。

砂ぼこりが晴れ、完全に姿が見えるようになった。瞳の色がまた(あお)と銀のオッドアイに戻っていた。

シドウさんはロスヴァイセさんをお姫様抱っこの態勢で抱えている。抱えられているロスヴァイセさんは、涙を流していた。

ロスヴァイセさんが何かを言おうとすると、シドウさんはロスヴァイセさんを投げ飛ばした!

だが、荒っぽくではなく、ゆっくりと着地しやすく投げたように見えた。

ロスヴァイセさんはうまく着地して、シドウさんを見た。

シドウさんはふらつきながらも歩き出し、落とした日本刀を拾い上げ、その剣先を自分に向けた!?

「シドウさん!?一体何を!」

ロスヴァイセさんが駆け寄ろうとした矢先、シドウさんは日本刀を自分の腹に突き刺した!

「ぐっ!ううううう!」

歯を食い縛り、苦痛に耐えながらもシドウさんは何かをしようとしていた。

「これは、まずいかな?」

リゼヴィムはそう言うと、斬りかかっていた木場とアーサーを殴り飛ばした。同時にシドウさんに手を向ける。すると、シドウさんを中心に、転移魔法陣に似たものが展開された。

「宝玉は半永久的に機能するけど、効果に波があるのよねぇ。その弱い時に、本人が抉り出そうと思えばやれる。でもでも、リリスがいないんじゃ、次元の狭間に長居は無理でしょ?てなわけで、いってらっしゃい!」

ま、待てよ。今の言葉を信じるなら、俺の行動はほとんど無駄だったのか!?いや、それよりもあの転移魔法陣の行き先は!

俺たちは同時に動きだしリゼヴィムの妨害をしようとする。サーゼクス様が直接リゼヴィムを、グレイフィアさんが転移封じをやろうとしているようだ。ロスヴァイセさんはシドウさんに向かって走り出していた。

サーゼクス様の拳がリゼヴィムに当たろうとした瞬間、グレイフィアさんが転移封じをやろうとした瞬間、そしてロスヴァイセさんの手が届きそうになった瞬間。シドウさんが消えた……。

「一名様、無の空間にご案内♪」

リゼヴィムが醜悪な笑みを作り、わざとらしく言った。

 

 

 

 

 

 

 

 




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