俺、シドーは先程から違和感を感じていた。セラフォルーに何かを入れられてから、何かこう、正解だけど何か違う、みたいな感じのモヤモヤが胸にあるんだ。どうしたもんかな。
サーゼクス救出と、リゼヴィム討伐のために準備を進めているD×Dの面々。俺も刀を研ぐくらいはしておく。
するとアジュカが近づいてきた。
「調子はどうだい?」
「なぁ、さっき何をしたんだ?体が変な感じなんだが」
俺が訊くと、アジュカが言った。
「先程キミに入れたのは
「許可もなしにやることじゃないだろ。それ」
「あの駒は元からキミの中にあったものだ。それを戻すことで記憶が戻れば、説明もいらないと思ったんだがね」
俺は胸をさすりながら言う。
「何か突っかかってるみたいで気持ち悪いのは、普通なのか?」
アジュカはそれを聞いて少し驚いていた。
「いや、そんな事例は確認されていない。それが例え強制されたことでも駒は馴染むものだ」
「強制されたって、怖いこと言うなよ」
「一部の悪魔は、非人道的に眷属集めをしているからね。多少セーフティーをつけておくできだったかな」
「今からでもそうしとけ、無理やり悪魔にされる身にもなれっての」
俺は試しに翼を出してみる。右は蝙蝠のような翼だが、左はドラゴンの翼だ。リアスの眷属の
「何か、中途半端じゃないか?本当に成功したのかよ」
アジュカはあごに手をやり、何かを考えているようだ。すると「よし」と一言呟いて、俺に向き直った。
「少し駒を見せてくれないか?入れる前と後とで、何か変化が起きたのかもしれない。調べてみる」
アジュカは返事を聞く前に俺に魔法陣を当て、動かし始めた。
悪魔って、こう、自由なのか?もう少し俺の話を聞いて欲しいもんだ。
アジュカは一通り調べると、息を吐いた。
「駒は問題なく作動している。だが、何かがおかしいのは確かだ。調整をミスったかな?」
「『ミスったかな?』じゃねぇよ!死活問題だぞ!?え、どうなるの俺!どうなっちまうの!?」
俺が慌てていると、アジュカは冷静に言った。
「そこまで大きな問題ではないはずだ。
「話をそらすなよ!って、速度強化!?ありがたいけど、今以上に速くなったら自分でも反応出来るかわからんぞ!?」
「キミは元気だね」
「おかげさまで元気一杯だよ!」
アジュカはここまでやり取りすると、少し笑った。
「いい気分転換になったよ。ここ最近働いてばかりだったからね」
気分転換に使われたっ!悪魔じゃなくて、魔王が自由なんだな。多分。
「もういい………疲れる。とりあえず、悪魔になったのか」
俺が項垂れていると、アジュカが返す。
「悪魔に『なった』よりも『戻った』の方が正しいがね」
そうだったな。俺はドラゴンとしての自分しか知らないんだけどな。
「どっちでもいいさ。サーゼクスを助けて、リゼヴィムは殺す」
俺はそれだけ言うと、刀を鞘にしまってから立ち上がる。アジュカも立ち上がり、俺に言った。
「サーゼクスを頼む。私は下手に動けないのでね」
「ああ、任せとけ。あいつは俺の『兄』らしいからな」
俺はそう言うと転移魔法陣まで移動するために歩き出す。
さて、悪魔としての初陣だ。頑張らないと。
アザゼルたちが作戦を練ったらしく、俺とリアスたち、ソーナたち、デュリオ、シスター・グリゼルダ、ヴァーリチームは作戦の説明を受けていた。
リゼヴィムとサーゼクスがいるのは、旧魔王が遺した遺跡だそうだ。ご丁寧に地図も用意してある。
作戦は簡単だ。一転突破、これに限る(俺はこれしか知らない)。転移したら最短ルートで遺跡に飛び込み、サーゼクスを見つけ、リゼヴィムを殺し、逃げる。単純明快だがやりやすい作戦だ。道中で何グループかに別れると思うが、そこは臨機応変にいこうということになった。
作戦を確認してから全員がやる気に満ちていた。サーゼクスという魔王を助けに行くんだ、やる気にもなる。サーゼクスの眷属も動かそうかともなったが、下手に人員を集中すると、他の主要都市なんかを攻められた時にそしたら大惨事になる。それを警戒しているそうで、グレイフィアだけが来ることになった。少しとはいえ、戦力が増えるのはいいことだ。
全員が転移魔法陣に乗ると、アザゼルが言った。
「さて、これがクリフォトとの最終決戦になるだろう。おまえら、気合い入れていくぞ!」
『はい!』
アザゼルが檄を飛ばし、全員が返事をしていた。アザゼルは笑顔で俺を見る。
「シドー、何か言うことはないか?」
俺に振るなよ、まったく。俺は頬を掻き、言葉をまとめてから言う。
「あ~、そうだな。とりあえず、成功をイメージしろ。でないと出来ることも出来なくなるぞ。ベストを尽くせ。いいな!」
『…っはい!』
何か嫌な間があったんだが、何で?俺が困っていると、ロスヴァイセが笑みを向けてきた。
「やっぱり、シドウさんはシドウさんですね」
「だからシドーだ。間違えんな」
「ふふ、わかりました」
ロスヴァイセは上機嫌そうだ。だから何で?
「さて、行くぞ!」
アザゼルはそう言うと、魔方陣にオーラを込める。魔法陣が光輝き、その光が俺たちを包み込んでいった。
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