シドーは先程の男、リゼヴィムをどうするのかを考えていた。今の自分では勝てない。勝てない勝負は避けたいが、やらなければならない。だが、先程から感じる既視感をどうにかしなければ戦闘どころではない。
とりあえず、リアスたちを運ぼう。
シドーはそう決めて立ち上がるが、一人で運ぶには人数が多い。どうするかと考えていると、アーシアが緑色の光を放ち始めた。その光に当たったら怪我が治っていく。一人、二人と立ち上がり、息を整えていた。
シドーはホッと息を撫で下ろした。数人を担がなくて済んだからではなく、全員が無事そうだからだ。シドーはなぜそう思ったのかはわからなかったが、とりあえず安心していた。そこに近づいてくる人影があった。アザゼルだ。アザゼルが開口一番に言う。
「おまえら無事か?」
「見ての通り、ボロボロだけどな」
シドーはアザゼルに苦笑しながら返すと、リアスが訊く。
「アザゼル、リゼヴィムは?」
「コキュートスを脱出しようと移動している。サーゼクスが止めに行ったから大丈夫だろ」
アザゼルが言うが、シドーは首を横に振った。
「
アザゼルは目を見開いて驚愕していた。
「リゼヴィムに
アザゼルの言う通りだ。強大な力を持つものが、更に強大な力を得る。体が
「それでもやった。あいつらがバカなのか、何か策があるのか」
シドーが呆れながら言うが、アザゼルは言葉に困っていた。
「とりあえず、アザゼル。サーゼクスの所に行くぞ。他のメンバーは撤収しろ、この事を上に通告するんだ。いいな」
シドーの言葉にリアスが返した。
「どうやって脱出を?出口にはリゼヴィムがいるのですよ」
シドーはアザゼルの方を向いて言った。
「アザゼル、転移とか出来ないのか?」
「あるにはあるが、一回限りだ。リアスたちに使ったら、俺たちは自力でしか出られない」
「それで十分だ」
シドーはそう言うと、リリスを視界に捉える。
「リリス、キミも脱出してくれ。今度ははぐれんなよ」
「うん、シドー、気をつけてね」
「大丈夫だ」
シドーは笑顔でサムズアップしながら答えた。
アザゼルが魔法陣を展開し、リアスたちがそれの中央に集まる。
「おまえら、任せたぞ」
『はい』
アザゼルは返事を聞くと、魔法陣を起動する。魔法陣から放たれた転移の光に包まれ、リアスたちは消えていった。
アザゼルはそれを確認すると、シドーに頷いた。シドーも頷き返して走り出した。
走ること数分、二人の前方で激しい爆発が起こっていた。二人はそれを確認して速度を上げた。
戦闘の中心に到着すると、滅びを纏ったサーゼクスと、彼と対峙するリゼヴィムが見えた。二人とも大きなダメージはなさそうだ。
二人が助太刀に向かおうとすると、ローブの集団が立ち塞がった。
「ルシファー同士の戦いだ。介入するな」
「「邪魔だ!」」
シドーとアザゼルが同時に叫び、斬り込んだ。
無意識の内に
アザゼルの背中をシドウが預り、シドーの背中をアザゼルが預かる。単純だが、個人の強さなら上位クラスの二人がそれを行えば、強力な連携となる。
シドーが突きで三人を纏めて貫き、アザゼルが横凪ぎに振った光の槍が五人の首を断つ。
二人が無双の勢いで敵を蹴散らしていると、突然何かが落下してきた。二人は敵を殺しながらも落下したものと、落としたものを確認した。
リゼヴィムは上にいる。つまり、落ちたのはサーゼクスだ。
シドーが敵を斬り伏せたと同時にアザゼルが叫んだ。
「シドー!おまえはサーゼクス所に行け!俺が抑える!」
「ああ、頼んだぞ!」
シドーは敵陣の隙間を縫うように一気に突っ切り、サーゼクスの元に移動した。
「おい!サーゼクス、無事か!」
サーゼクスはふらつきながら立ち上がり、シドーに言った。
「どうにかね。キミも無事そうで何よりだ」
「他人の心配出来るんなら大丈夫だな」
シドーはリゼヴィムを見上げ、睨み付けた。
リゼヴィムは愉快そうに笑った。
「兄弟お揃いでなかなかしぶといね!でもでも、二人同時でも今の俺なら負ける気がしない!」
シドーは眉を寄せ、リゼヴィムの言葉に疑問を抱いた。
リゼヴィムは、自分とサーゼクスを見て『兄弟揃って』と言った。自分とサーゼクスが兄弟?そうなのか?それともリゼヴィムが自分を惑わそうとしているのか?彼の脳内には新たな疑問が生まれていた。だが、今は。
シドーは剣先をリゼヴィムに向けた。サーゼクスもリゼヴィムを睨み付けた。
「いい目だねぇ。おじいちゃん興奮しちゃうよ」
シドーとサーゼクスは同時にリゼヴィムに向け、飛び出した!
シドーが先に袈裟懸けに斬りかかる。リゼヴィムはそれを体さばきで避け、シドーに拳を放とうとするが、サーゼクスがそこに滅びの弾丸を放ち、リゼヴィムを牽制する。
シドーはそのままリゼヴィムに斬り込むが、リゼヴィムの右手に止められる。
「いい攻撃だよ?でも何か足りない!」
リゼヴィムは左手でシドーを殴り飛ばし、サーゼクスに肉薄した。二人は肉弾戦を繰り広げる。サーゼクスの滅びさえもリゼヴィムの強化された魔力を破れずにいた。
シドーは態勢を建て直し、リゼヴィムに接近すると同時に
突きを放った。リゼヴィムはサーゼクスを殴り飛ばすと同時に上体を大きく後ろに反らしてシドーの剣を避けた。勢いのまま突っ込んだシドーの顔面を、リゼヴィムはオーバーヘッドキックの要領で蹴り、サーゼクスの方に飛ばす。
「面白かったけど、いい加減飽きたなぁ~。よし、終わらせちゃうよ?いいね?」
リゼヴィムはそう言うと、巨大な魔力の塊を作り出した。
それを近くにいたサーゼクスとシドーの二人の方へ撃ち出す構えを取った。
「サーゼクスちゃん、シドウちゃん、これで二人とも、ジ☆エンド!」
リゼヴィムは魔力の塊を放った。
シドーとサーゼクスも回避に移ろうとするが、二人が何かに引っ張られた。二人は驚きながら確認すると、リゼヴィムの攻撃に吸引されていたのだ。
リゼヴィムは醜悪な笑みを浮かべ、二人を見下ろした。
同時に二人を魔力の塊が包み込んだ。
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