グレモリー家の次男   作:EGO

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life11 始まりの男

リゼヴィムは醜悪な笑みを浮かべ、D×Dの面々を見ていた。

「わお!シドウくんじゃありませんか!何々イメチェンでもしたの?似合ってるじゃん!黒と紅とか、誰もやろうと思わない斬新な色じゃないの!」

リゼヴィムはシドーを挑発するように言った。だが、シドーは。

「似合ってるのか?そりゃ、どうも」

髪をいじりながら返した。真に受けたのか、ふざけているのかはわからないが。

「リゼヴィム!今度こそ貴様を殺す!」

ヴァーリが宣言のように言い放った。リゼヴィムは笑みを浮かべる。

「オーラが高まってるねぇ。兵藤一誠の『龍神化』には困ったけど、ヴァーリきゅんはどうなの?似たようなことは出来そうだけどね」

ヴァーリは不敵に笑み、言葉を返した。

「貴様以上にルシファーらしいと、アジ・ダハーカにも言われた。その力、見せてやろうか?」

「ひゃひゃひゃっ!それは面白そうだけど、とりあえずはここから出ないとかな?寒くてまた凍り付いちゃうよ」

リゼヴィムわざとらしくガクガクと震えながら言った。

「だったら、そのまま凍り付いてろ」

シドーがぼそりと呟いた。

「シドウちゃん、相変わらず冷たいねぇ。おじいちゃん本当に凍るよ?」

シドーはため息をつき、日本刀を手元に出現させた。

リゼヴィムは疑問そうにそれを見ていた。

「およ?シドウちゃん、イメチェンだけじゃ飽き足らず、戦闘スタイルも変えたの?それは楽しみだ」

シドーは刀の柄に手をかけ、構えを取った。

「アーシアだっけ?リリスを頼めるか?」

「え?あ、はい!」

突然呼ばれたアーシアは驚いていたが、リリスが近づいてきたことに反応した。

リアスが一歩前に出て言う。

「リゼヴィム・リヴァン・ルシファー!今度こそあなたを消し飛ばすわ!トライヘキサがいない今、あなたを殺してはいけない理由もないのよ!」

リアスの一言にリゼヴィムはショックを受けているようだ。

「え?マジで?トライヘキサ倒したの?うわ~どうしよ。異世界行けないじゃん!」

リゼヴィムが地団駄を踏んでいると、今まで黙っていた黒ローブの男が口を開いた。

「リゼヴィム様、その怒り、現政府にぶつけましょう。我々もいい加減我慢の限界なのですよ」

リゼヴィムはあごに手をやり、少し考えてから言った。

「サーゼクスちゃんたちに八つ当たりか、それもいいねぇ。最初の目的だった、『本当の悪魔』を見せるにシフトするか。いいぜ、乗ってやるよ。楽しそうだ」

ローブの男たちが笑みを浮かべた。

リゼヴィムは両手を広げ、声高らかに宣言した。

「そういうわけだからD×D諸君!俺は再び行動開始するぜ!」

それを聞いたD×Dの全員が構え、クリフォトの面々も構えた。

「雑魚どもは俺と、ソーナの眷属に任せろ。リアスたちとヴァーリはリゼヴィムとかいう奴を叩け」

シドーが指示を出した。なぜ彼が指示を出したのか、それはシドー自身でもわかっていないが、不思議と声が出たのだ。

全員が指示を聞いたと同時に、クリフォトが突撃してきた。

「行くぜ!」

シドーが真っ先に飛び出し、それに全員が続いた。

 

 

 

 

 

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俺、アザゼルは、サーゼクスと共に、コキュートスのとある場所に来ていた。アジュカの情報を確かめるためだ。

アジュカが言った名前、それを聞いた時は驚いたさ。

コキュートスは四つの階層のようなものに別れている。俺がいるのはその一つ、『ジュデッカ』だ。主を裏切った者が行き着く場所なのだが、そこに奴がいるらしい。近くにイッセーたちもいるはずだ。後で合流しよう。

俺はそう考えつつ、その者を探すために歩き続けた。

 

 

 

 

 

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クリフォトとD×Dが激突して数分。最初はD×Dが優勢だった。超越者候補の兵藤一誠とヴァーリがいるのだ、当然ではある。だが、彼らにも予想外の事態が発生してしまい形勢が逆転しかけていた。現在立っているのは、シドー、イッセー、ヴァーリ、リリス、アーシアぐらいである。他のメンバーは意識はあるが戦えないほど消耗している。

彼らを見てリゼヴィムは醜悪な笑みを浮かべていた。だが、彼を助けたクリフォトのメンバーも、半数にまで減っている。

クリフォトが命を捨ててまで行ったこと、それは簡単だ。

「まさか、(キング)の駒を持っているなんて……」

リアスが言葉を漏らしていた。

使えば力が数百倍にまでなる(キング)の駒。それを超越者に使ったのだ。

「いいねぇ、いいねぇ!力がみなぎる!今の俺は無敵、最強だぜ!」

リゼヴィムは自分に酔いしれたように言った。

シドーが言う。

「よくわからんが、今のあいつに勝てるかどうか微妙だぞ。力が膨れ上がった」

「ああ、こうなったらあれをやる。兵藤一誠。おまえは長時間の維持ができないのだろう?時間を稼いでくれ」

「わかった、シドーさんも手伝ってください!」

「おうよ」

イッセーとシドーが同時に飛び出し、リゼヴィムに攻撃した!

イッセーは『透化』の能力を込めた拳を放ち、シドーは日本刀で斬りかかった!

だが、イッセーの拳は右手で、シドーの刀は左手で止められる。

二人は目を見開き、リゼヴィムを見た。

「俺の力が高まりまくってるねぇ、サーゼクスちゃんにも負ける気がしない!」

リゼヴィムはそう言うと両手を離し、同時に拳を二人の腹部に撃ち込んだ!二人は吹き飛ばされ、地面に激突する。だが、同時に、黒と白銀の輝きを放つ鎧を纏い『魔王化』したヴァーリが飛び出した!

「リゼヴィム!」

「いいねぇ、いいねぇ!楽しいねぇ!」

リゼヴィムは嬉々としてヴァーリを受け入れ、肉弾戦を始めた。だが、ヴァーリの一撃はあまり効果がないように見える。

シドーは立ち上がり、再びリゼヴィムの元に向かった。

ヴァーリと共にリゼヴィムと戦う。

それがシドーには懐かしく思えていた。なぜか同じ事を昔にやったことがある。彼はそう思った。

そんな既視感を持ちながらも攻めるが、リゼヴィムには全て見切られてしまっていた。リゼヴィムに攻撃を当てるには速度が足りていないのだ。

「う~ん、つまんないねぇ。そういうわけだからこれでフィニッシュ!」

リゼヴィムはヴァーリに踵落としを決め、その勢いのまま回転、態勢を素早く戻すと、シドーの攻撃を避け、再び腹部に拳を撃ち込んだ!

二人は地面に激突し、立ち上がれなくなっていた。

シドーは、ヴァーリと二人して倒されることにもどこかに既視感を覚えていた。

リゼヴィムがローブの男に訊く。

「それじゃ、俺は行くぜぇ。クリフォト諸君、案内してくれ」

「こちらです」

ローブの男の先導で立ち去っていくリゼヴィム。D×Dの面々は動けず、それを見ていることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

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俺、アザゼルと、サーゼクスはコキュートスを歩き回り、ついに目的の人物を発見した。黒髪のしわくちゃな顔の年老いた男性だ。奴は俺を見つけて口を開いた。

「アザゼル元総督、サーゼクス様。私は『ベルゼブル』と申します。以後お見知りおきを」

「ベルゼブル?普通に名乗ったらどうだ?ベルゼブブさんよ」

ベルゼブルは笑った。

「ベルゼブブを名乗るのは、アジュカ様の仕事です。私はこっちの方が好きなのでね。他の呼び方もありますが、それだと被ってしまう」

「そうかよ」

俺たちの目の前にいるのは、初代ベルゼブブの息子にして、冥界最悪のマッドサイエンティストと有名だった。バアル・ゼブブとも呼ばれるが、被ってしまうとはそういうことだろう。死んだと聞いていたんだがな。

「それで、私に何か用ですかな。リゼヴィムが暴れているようですが」

ベルゼブルが言うと、サーゼクスが口を開いた。

「それはわかっております。ですが一つ聞きたいことがあるのです」

「と、言うと?」

「私の母、ヴェネラナ・グレモリーに何をしたのですか?」

凄まじい迫力を放ちながらサーゼクスが言った。

ベルゼブルは眉を寄せ、表情を険しくさせながら言った。

「ヴェネラナか……彼女には悪いことをした」

「つまり?」

「長い悪魔の生の中で、私たちはアグレアスを作った。だが、それがいけなかったのかもしれない。あれの持つ力があれを引き寄せてしまった」

サーゼクスがそれを聞いて呟く。

「それが、記憶」

「ええ。そして、それが何の記憶なのかも知りたかった。それで最初は自分にやろうと思ったんだが、どうやら胎児か、生まれて間もない新生児でなければダメなようだった」

ベルゼブルは遠くを見つめるようにして呟いた。

「だから、ヴェネラナを利用した」

「なぜ母を選んだのです?」

「彼女はグレモリーの者だった。慈愛深いグレモリーの。だからこそ、この真実を知っても愛してくれると思った」

こいつ、全部計算ずくか。事実、それは当たった。グレモリー家の者だけではないが、シドウの真実を知っても、誰もどうこうすることはなかった。

俺が訊く。

「で、何でここにいる?」

「主を裏切った者たちが行き着く場所。死ぬならここがいいと思ってね」

「どういうことだ」

ベルゼブルは空を見上げ、口を開いた。

「私はその後すぐに追放され、戦死したことなっていた。私を見つけたのはアジュカ様だろう?クリフォトの混乱に乗じて冥界に入り込み、ここに来た。私はルシファー様と、我が父を裏切った。お二人は俺に何もするなと言った。だが、俺は欲に負けた。そんな俺が死ぬなら、ここがいい。裏切り者たちが眠る、ここが……」

すると、ベルゼブルの体に魔法陣が浮かび上がった。

こいつ、もう……。

ベルゼブルが苦しそうに言った。

「サーゼクス様。弟さんはお元気ですか?」

サーゼクスは頷く。

「はい。いろいろ問題はありますが」

「そうか。別の世界で死んだ者に余計な事をしてしまったかとも思ったが、大丈夫だったようだな」

「それは本人に言ってやれよ」

俺が言うと、ベルゼブルは首を横に振った。

「それは無理です。この魔法陣は解けない。もう少し早く見つけられればよかったですな」

ベルゼブルは笑みを浮かべた。

「では、私は逝くとします。最後の話し相手があなた方とは、人生わからないものですな……」

ベルゼブルがそう言うと、魔法陣が怪しく輝いた。すると、ベルゼブルの体は塵となり、消滅した。

アジュカが言っていた通りだ。

ベルゼブルは旧魔王の血筋だが、リゼヴィムのように悪いやつではない。彼は罪を認め、自ら命を絶つだろう。

本当に死んでしまったが、話は聞けた。

「サーゼクス。納得出来たかはわからないが。お前が知りたがっていた真実はわかったぞ」

「これでいいさ。答えがわかった。それだけで十分だ」

「さて、それじゃ、リゼヴィムを止めないとな」

「ああ、行こうか」

俺とサーゼクスは、先程から感じる強力なオーラの主の元を目指して走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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