俺、兵藤一誠は焦っていた。突然リリスが消えたのだ。俺の家に移動中にフッと消えてしまったのだ。
リアスたちと別れ、町中を探し回っていた。オーフィスに聞いてみても「わからない」と返されてしまったし、居場所がわかりそうなシドーさんも冥界だ。どうしようもない。
そろそろ町外れの人通りの少ない道に差し掛かろうとしたとき、黒いドレスの着た女の子を発見した。俺は走って近づき顔を確認しようとする。すると突然、どこかに飛ばされたような感覚に襲われた。これは、結界か何かに捕まったような感覚だ。見ると、黒いドレスの少女がローブの一団に囲まれていた。俺も囲まれてるけどな。
俺を囲む一団の一人が言う。
「赤龍帝、兵藤一誠だな。リリスはいただく」
「やらせるわけねぇだろ!」
俺は鎧を纏い、敵を睨む。
この間にも、奥の一団がリリスに何か言っているようだ。
俺が飛び出そうとすると、俺を中心に魔方陣が展開された。同時に俺を異常なまでの重力がかかる。なんだ、これ!?
俺が驚いていると、リーダー格と思われる男性が言った。
「塵も積もれば山となる、とでも言おうか。一人一人の力が弱くても、集まればおまえを抑えられる」
俺を囲む一団の手元には、禍々しい光を放つ魔方陣が展開されていた。あれで重力を操作してるのか!
俺は四つん這いになり、手足に力を入れて立ち上がろうとする。テクニック系はやっぱり苦手だ!
「リリスを連れていけ、後は俺たちがやっておく」
男がそう言うと、リリスと何かを話していた一団が消えた。リリスもいない。連れていかれたのか!くそ!
「パワーバカを、舐めんなぁぁぁ!」
俺は叫びながら立ち上がり、一番近くの男を殴った!男は吹き飛ばされるが、態勢を立て直して着地していた。俺を囲んでいた奴らも飛び退いていた。
態勢が悪かったとはいえ、俺のパンチを受けても大きなダメージにならない。どうなってるんだ?
「いい一撃だ。強化なしなら殺られてたな」
男は左腕の宝玉を撫でていた。あれがタンニーンのおっさんが言っていたやつか。埋め込まれたら、いいドラゴンも邪龍になってしまう、悪魔とかに使ったら単純な強化になるってのも聞いたな。全員がそれを埋め込んでいるのか、厄介だな。
俺がどうしようか悩んでいると、突然空にヒビが入った。町中でもド派手に技を使ってる誰かがいるのか!?
「D×Dのメンバーにここまで大胆な奴はいないはず……まさか!?」
ヒビが広がり、ついには空が割れた。同時に何かが突っ込んできて男に攻撃した!男は咄嗟に避けるが、左腕が斬り落とされた!斬り落としたのは、黒いローブの男性だ。
「シドーさん!」
「よー、兵藤。リリスは?」
俺とシドーさんが話していると、男たちは消えていた。シドーさんも納刀し、日本刀を異空間に入れていた。あれが出来るのにいっつも手に持ってるんだよな。
左腕は塵となって消滅したが、血はどうしようもない。
俺たちが元の空間に戻るが、幸い人はいない
シドーさんもそれを確認して、俺に訊く。
「で、リリスは?」
「ごめんなさい。連れていかれました」
俺は素直に謝った。殴られても仕方がないとも思っているほどだ。
すると、俺の頭に手が置かれ、乱暴に撫でられた。俺が顔を上げると、シドーさんは笑みを浮かべていた。
「そっか、しゃーない。取られたなら取り返すまでだ。だろ?」
「は、はい!」
「さて、アザゼル。何か策はあるか?」
シドーさんは俺の後ろを見ながら言った。振り向くとそこにはアザゼル先生とリアスがいた。
アザゼル先生が言う。
「リリスのドレスに発信器をつけてある。場所はすぐにわかる」
「だってさ、名誉挽回のチャンスはすぐに来そうだぞ」
「そうよ、イッセー。誰を敵に回しているのか、思い知らせてあげましょう」
三人の言動は今まで通りのものだった。シドーさんは記憶がないのに言っていることは前と変わっていない。
「それで、どうするんだ?集合か?」
「ああ、詳しくは場所がわかってからだが、すぐに連絡が来るはずだ。とりあえず戻るぞ」
「了解っと」
「イッセー、行きましょう」
「おう!」
俺は三人について、家に戻った。
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数時間後、兵藤宅VIPルーム。そこにD×D駒王町チームが集まっていた。もうシドーを見てもリアクションするものはいない。
アザゼルが言う。
「さて、リリスに取り付けた発信器を元に、リリスの現在位置がわかった。やはりあいつら、コキュートスを目指してるな」
「なんだ、そのコキュートスってのは」
シドーの質問にアザゼルが答える。
「簡単に言うと、刑務所の一番厳重な場所だ」
「あ~、なるほど」
本当にわかっているのか疑問だが、アザゼルは時間がないため続ける。
「クリフォトの連中、一気に動き出したぞ。レーティングゲームで不正を
シドーが再び疑問符を浮かべているが、アザゼルはそれを無視して続けた。
「ヴァーリが動いた理由は、下手したらリゼヴィムが復活するからだ。あいつが動いて当然だな」
シドーが右手をあごに当て、首をかしげながら言った。
「ヴァーリってのが誰かは別として。とりあえず、リリスを取り返せばいいんだろ?そういう力押しはリアスたちに任せる。俺は、まぁ、フォローぐらいはしてやるさ」
今の言葉を聞いた全員が思った。
もう記憶戻っているんじゃないのだろうか?と。
シドーが立ち上がった。
「それじゃ、行こうぜ?早く始めて早く終わらせよう」
『はい!』
「お、おう。返事どうも」
シドーは全員が返事を返したことに困ったような表情になっているが、それは少し嬉しそうにも見えた。
彼らは冥界に向かうため、転移魔方陣を目指して歩き出した。
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