グレモリー家の次男   作:EGO

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life06 広がる戦火

シドーとリリスは温泉から上がり、上機嫌になっていた。だが、そんな彼らの前に巨大な影が落下してきたのだ。

落下と同時に舞い上がった雪がその何かを隠すが、シドーが左手に持つ日本刀を鞘に入れたまま大きく振り、吹き飛ばす。

視界が回復し、彼らの目に飛び込んできたのは、ドラゴンだった。タンニーンほどではないが、巨大なドラゴンだ。

シドーは近づき、話しかける。

「大丈夫か?何があった?」

どこか他人事のシドーに、そのドラゴンは言う。

「て、敵だ!おまえらを狙っているらしい!タンニーン様が抑えてくれている。今のうちに逃げろ!」

ドラゴンは急かすように言っているが、シドーは大して気にした様子はなく、タンニーンがいると思われる場所を見ていた。

タンニーンは彼らにとっては恩人だ。そんな彼を助けないのは、どうも嫌な感じがする。

シドーはそう思っていた。

「リリス、行くぞ」

「うん」

シドーの言葉を受け、リリスが背中に飛び付く。そんな二人を見て、ドラゴンは叫んだ。

「そうだ、それでいい!早く逃げるんだ!」

ボロボロになってまでそれを言いに来てくれたことは嬉しいが、彼らが目指す場所は違う。

「そこのドラゴン、動くなよ。助けを呼んでくる」

シドーはそう言うと、ローブを羽織り、ドラゴンに背を向けて黒い翼を展開した。

「ま、待て!話を聞いていなかったのか!?」

「聞いてたさ。おまえも敵にやられても来てくれたんだろ?だったら、俺も命賭けなきゃ」

シドーはそう言うと、飛び上がろうとするが、その前にドラゴンが質問する。

「おまえ、なぜだ?見ず知らずのモノのために、なぜそこまで?」

シドーは振り返らずに言った。

「俺の恩人は何としても助けたい。何でかそう思う」

シドーの瞳には強い覚悟の色が映っていた。

「そういうわけだから、行ってくる」

シドーはそう言うと、飛び出していった。

 

 

 

 

 

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俺、兵藤一誠は、オカ研の部室にいた。リアスや朱乃さん、ゼノヴィア、ソーナ前会長含め、その眷属もここにいる。だが、部室のメンバーの表情は険しい。

アザゼルが口を開く。

「現在、タンニーンの領土にクリフォトが攻め込んだでいる。そして、タンニーンが劣勢なようだ」

俺たちは驚愕した!タンニーンのおっさんの強さは誰よりも知ってる。おっさんが負けてるなんて、信じられない!それよりも、何でおっさんの領土を?

「冥界にいる、サイラオーグ、シーグヴァイラはもう動き出している。おまえらもすぐに向かってくれ」

『はい!』

アザゼル先生の言葉にすぐさま返事をして、俺たちは転移魔方陣に向かった!

 

 

 

 

 

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タンニーンは突如現れた悪魔の軍団と戦っていた。どこから入り込んだのかわからないが、おそらくこいつらの狙いはリリスだ。それだけはわかっていた。

タンニーンは火炎を吐き、五人を一気に消し炭にする。

だが、敵の増援が大量に転移してきていた。

近辺に住むドラゴンも加勢してくれているが、どういうわけか相手の方が優勢になっているのだ。

そして、明らかに動きが違う者たちが確認できた。その者たちは黒いローブに身を包み、フードを深く被っているため顔は見えない。だが強さは本物のようで、一人でドラゴン数体を圧倒していた。

タンニーンには見覚えがあった。自分もレーティングゲームに参加していた身だ。彼らはその時に見たのだ。不正を行ったレーティングゲームのトップランカーたち、そのほとんどは捕らえられているが、眷属が逃げ切ったという情報もきている。おそらく彼らは、その眷属なのだろう。おそらくは(あるじ)を助け出すためにクリフォトへ合流したのだろう。

そいつらを抑えないことには押し切られてしまう。タンニーンがそう思った矢先、黒いローブの男が一人、タンニーンに近づき、言った。

「タンニーン殿。このままここを破壊し尽くしても良いのですが、リリスを渡してはくれませんか?彼女を渡してくれれば、私たちは撤収します」

感情を感じさせない声で男は言った。心が壊れているのか、それとも操られているのかはわからないが、彼の言葉を鵜呑みにするほどタンニーンもバカではない。

「リリスとやらはここにいない!場所を間違えたな!」

タンニーンはそう言いながら男に火炎を吐いた。男はそれを鮮やかに避け、タンニーンを見た。

「では、山狩りといきましょうか」

男が指を鳴らすと、大量の転移魔方陣が展開された。そこから現れたのはドラゴンの群れ、一体一体の目が虚ろで禍々しいオーラを放っている。タンニーンは彼らに見覚えがあった。つい最近まで談笑していたドラゴンたちだ。

タンニーンは怒りをあらわにしながら言った。

「貴様ら!そいつらに何をした!」

「リゼヴィム様は聖杯で邪龍を量産した。だが我々にはそれが出来ない。ならば、ただのドラゴンを邪龍にしてしまえばいい。そう思ったんですよ」

「おのれっ!」

タンニーンは男に向かっていくが、男が一瞬にして姿を消し、タンニーンの背中を殴り付けた!

タンニーンは勢いのまま地面に叩きつれられた。

男はタンニーンを見下ろしながら言う。

「邪龍への仕方は簡単です。邪悪の結晶を体内に入れればいい。埋め込むもよし。食べ物に混ぜて食べさせるもよし。色々な手があります。事実私も……」

男は袖をまくり、腕を見せる。

「埋め込んでいますので」

腕には禍々しい光を放つ宝玉が埋め込まれていた。

タンニーンは驚愕しながらも、口を開いた。

「その結晶、どうやって作ったというのだ!」

男は肩をすくめ、言った。

「それは教えられません」

男はそう言うと、拳を構え、タンニーンに肉薄した。

タンニーンは避けるが、余波で彼の後ろにあった岩が砕け散った。明らかにただの悪魔としての力を越えている一撃だ。

そうこうしている間にも、邪龍とされてしまったドラゴンが暴れ始めていた。昨日までの友人ということもあり、ドラゴンたちは防戦一方となっていた。

このままでは押し負けてしまう。

タンニーンの脳裏に、『敗北』の二文字が浮かび始めた時だ。

何かを斬る音が聞こえてきた。一回や二回ではない、数十回にもわたる斬撃音。それが少しずつタンニーンの方へ近づいていた。

一際大きな斬撃音と同時に現れたのは、男と同じ黒いローブに身を包んだ男性だ。紅と黒が入り乱れた髪に、日本刀を持っている。タンニーンにはもう誰かはわかっていた。シドーだ。

タンニーンは怒気を孕みながらシドーに言った。

「貴様、なぜ来た!」

シドーは笑みを浮かべて言った。

「おまえは恩人だ、恩人は助けないと。なぁ?リリス」

「うん」

返事と共にシドーのローブの中からひょっこりと顔を出したのはリリスだ。リリスは二人羽織の後ろの人のように、シドーの顔の後ろから頭を出していた。なかなかシュールな光景である。

「いるではありませんか。では、リリスをいただきましょうか」

男はそう言うと消え、シドーの正面に現れた。男は素早く右拳を引き、勢いのまま撃ち出した!シドーはそれを真っ正直から受けてしまうが、怯みもしない。

「なかなか固いですね」

男は怯まずに、シドーの顔面を狙って拳を撃ち出した!

シドーは嘆息すると、右手でそれを受け止め、そのまま軽く力を込める。。

男の手から何かにヒビが入る音が出始め、表情も苦痛に耐えるようなものになっていた。

「攻撃ってのはこうするんだよ」

シドーはそう言うと、左手に持っていた日本刀を上に投げ、左手を引く。オーラが溜まり、筋肉が膨張する。

「覚えとけ」

シドーの一言と同時に右手を離し、左拳を撃ち出した!拳は男の顔面を捉え、めり込んだ。『グチャッ』と嫌な音が響き渡り、男の頭だけが遥か彼方に飛んでいった!

残された体は力を失い、地面に落下する。シドーは左手をスナップすると、落下してきた日本刀をキャッチした。

「次はどいつだ?」

シドーは狂喜を感じさせる表情で敵を睨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




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