グレモリー家の次男   作:EGO

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life03 クリフォトの目的

俺、兵藤一誠は駒王学園旧校舎にいた。表向きの部活を終え、部室にこの町のD×Dメンバーを呼んだところだ。アザゼル先生から報告があるのだとか。部室には、現オカ研(ルフェイとベンニーアが今年加わった)と現生徒会のD×Dメンバー、先日卒業した、リアス、朱乃さん、ソーナ前会長、真羅前副会長。天界スタッフの、デュリオ、シスター・グリゼルダさんが来ていた。

全員が揃ったことを確認して、アザゼル先生が話し始める。

「さて、リアスたちが先日遭遇したドラゴン、『ブラック』についてだが、正直言って、情報が少なすぎる。おまえらも顔をしっかり見たわけじゃない、オーラも強く感じ取れたわけでもないからな、仕方のないことだ。なぜクリフォトを襲っているのか、敵なのか味方なのかもわからない」

アザゼル先生にリアスが続く。

「わかっていることといえば、左目が銀色のこと。鱗が黒く少なくとも私の攻撃を正面から止められるほど堅牢(けんろう)ということね」

リアスは悔しそうにしていた。リアスだけでなく、ここにいる全員がシドウさんの一件以降、今まで以上に修行に励んで強くなった。そのリアスが、牽制のためだったにしても、力を込めて放った一撃を片手で止められた。彼女にも思うものがあるのだろう。

アザゼル先生がポツリと言葉を漏らした。

「それで日本刀を使っていると。ドラゴンなら素の状態で殴った方が強力だと思うんだが、なぜ刀にこだわる……」

またアザゼル先生が独り言を始めちゃったよ。ブツブツと色々言っているアザゼル先生に、ロスヴァイセさんが近づいて、強めに咳払いをした。アザゼル先生は、ハッとして軽く咳払いをした。

「すまんすまん、いつもの癖だ。こっからが本題何だが、例の紙切れの解析が終わった。何が書いてあったかも先ほどコピーが届いた」

アザゼルはそう言うと、俺たち全員に紙が行き渡るように配る。長々と小難しいことが書かれている。

いやだめだ!今の俺は(キング)なんだ!しっかり理解しないと!

俺は首を振り、ゆっくりと紙に目を通していく。

アザゼル先生は全員が紙を見始めたところで、口を開く。

「とりあえず、重要そうなところだけを言うと、まず『捕らえられている(キング)の駒の使用者の解放』。次に『リリスの発見』。最後に『リゼヴィムの解放』。と言ったところか。紙が切れた痕跡があってな、おそらくこれは指示書の切れ端だ。クリフォトには他の目的もあるはず」

とりあえず、今の三つの阻止を目的に動けばいいのか。でも、他の目的ってなんだ?

俺が首をひねっていると、アザゼル先生が言う。

「まぁ、リリスの発見以外は不可能に等しい。おそらく、リリスの力を使って、(キング)の駒使用者や、リゼヴィムを解放するつもりなんだろう」

アザゼル先生の言葉を聞いて、匙が言う。

「じゃあ、リリスを見つければいいんですよね?オーフィスを頼ってみたらどうですか?」

アザゼル先生はあごに手をやり、何か考えているようだ。

「確かに、オーフィスとリリスの繋がりを利用すれば出来るかもしれん。だが、やり方がわからん」

前に、結界を無視して俺の家の地下にニーズヘッグが来たことがあったんだが、それはオーフィスとリリスの繋がりを使ったから出来たものかもって言ってたな。

「とにかく、おまえらは青春を謳歌してろ。何かあったら、その時はその時だ」

『はい』

アザゼル先生がそうまとめると、俺たちは解散となった。

もう一人のオーフィス、リリス。あの子は一体どこにいるんだろう。

 

 

 

 

 

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D×Dからブラックと呼称されている男は、リリスと二人で冥界の森を歩いていた。何か話すわけでもなく、どこかに行くわけでもない、いわゆる、『あてのない旅』というものをしているのだ。

そんな二人を五つの影が囲んだ。三つはヒトの形をしているが、残りの二つは獣のような形をしていた。ブラックはリリスを後ろに隠す。

リーダーらしき男が言う。

「そいつを渡せ」

ブラックは嘆息すると、口を開いた。

「しつこいねぇ……行く先々に出没してくれちゃって。迷惑だ」

「めいわく!めいわく!」

リリスもブラックに隠れながらかわいく続いた。

ブラックは左手に握っている日本刀に右手をかけ、抜刀の態勢に入る。

「そうか。ならば……」

力ずくで頂く!リーダー格の男がそう続けようとするが、言葉が続くことはなかった。

ブラックは歩き始める。三人と二匹の隙間を縫うように通り、リリスも彼に続く。

二人が通り過ぎた瞬間、五つの影は形を崩し、一面を赤黒く染めた。

斬られた側もわかっていない。ブラックは刀に右手をかけ、抜刀の態勢に入ったのではない。既に抜刀し、一閃していたのだ。

ブラックとリリスは歩いていく。

「どこいくの?」

リリスの問いにブラックは返す。

「さぁね。まぁ、俺が『誰』なのか、わかる場所へ……かな?どこに行けばわかるのかもわからないんだけどね」

ブラックはそう言うと微笑み、懐から何かを取り出した。

ひとつは『チェスの駒』だった。

もうひとつは『ハートマークが入ったお守り』だった。

「ホント、俺って誰なのかねぇ?」

ブラックはリリスに訊く。

「『シドー』」

「はいはい、シドーね」

リリスにシドーと呼ばれた男は、一度苦笑して、リリスの頭を撫でた。リリスは気持ち良さそうな表情になり、シドーを見上げた。

「さて、リリス。行きますか?」

「うん!」

リリスは返事をすると、シドーの後ろに回り込み飛び付いた。シドーも慣れているようでそのままリリスをおぶり、歩き出す。

グゥゥ~………

シドーの耳に、腹の虫が鳴く音が聞こえた。シドーは苦笑しながらリリスを見る。リリスはテンション低めでシドーに言う。

「シドー、お腹すいた」

「確かに、ちゃんとしたもの食べた記憶がないな」

シドーはあまり腹が減っていない。と言うよりも、『腹が減らない』の方が正しいのかもしれない。食べれば美味しく感じるだけだし、食べなくても別に何かあるわけでもない。彼が『自分が何なのか』その疑問が沸いた理由のひとつでもある。

「とりあえず、あっち行ってみるか」

「……うん」

「大丈夫?」

「……うん」

腹が減って急に元気がなくなったリリスを心配しながらも、シドーは歩みを進めた。だが、彼の前には立て札あった。

『この先タンニーンの領地。関係者以外、立ち入り禁止』

シドーは少し考えると、その立て札を無視して進み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 




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