俺、アザゼルは、例の紙切れをグリゴリの施設に送り、その足で魔王領に来ていた。サーゼクスに会うためだ。
俺はサーゼクスの部屋に入り、テーブルを挟んで対面するように座った。サーゼクスの表情は真剣そのもので、あいつの後ろに控えているグレイフィアもいつも通りに真剣な顔をしていた。
サーゼクスは開口一番に俺に言う。
「話は聞いている。今回のテロリストを襲撃した者についてはこちらでも調べていく」
「それは助かる。あの後、グリゴリの機械を使って調べたんだが、死体になっちまった悪魔どもが派手にやったようで何も出なくてな。一体誰が襲撃してああなったのか、まったくわからん。だが、襲撃した奴はあの部屋で魔力を使ってない可能性が高い」
サーゼクスはそれを聞いて表情を険しくさせていた。
「壁にあった刀傷、そこから武器の種類を特定しようとしている。だが、『クリフォト』の悪魔たちが使っていた武器には合致するものはない。そして、オーラが関知できなかった以上、使われたのは聖剣や魔剣の類いでもないただの剣ということか」
「そういうことだな」
俺もまったくと言っていいほど何もわかっていない。俺たちよりも早くあいつらを見つけ出し、魔法も聖剣も使わずに悪魔数十人を惨殺した人物。一体何者だ?
「とにかく、今は
俺がそう言うとサーゼクスは息を吐いた。
「ようやく勝ち取れた平和を、僕が壊してしまったかな」
「そんなわけないだろ、全部あいつらの自業自得だ。俺たちの平和は俺たちが守る。そのためのD×Dってもんだ」
俺は笑みを作りサーゼクスに言った。こいつもこいつだ。シドウの一件から何かあるたびに『僕が悪かったのかな』なんて言ってきやがって。
「とにかく、あの紙切れの解析待ちだな。あれで少しは向こうの行動がわかるはずだ」
「それもそうだな」
俺とサーゼクスの話はそこで終わり、俺は退出する。
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俺、兵藤一誠は上級悪魔になってから、眷属にアーシア、ゼノヴィア、レイヴェルを迎えた(アーシアとゼノヴィアはリアスから、レイヴェルはレイヴェルのお母さんからトレードしてもらった)。こっから念願のハーレムをって思ったんだけど、余計に忙しくなっていた。まぁ、当たり前のことではあるけどさ。
そんな俺は、今、人間界のある廃ビルの前にいた。横にはもちろんリアスたち。サーゼクス様とアジュカ様が
テロリストとなった悪魔は冥界での居場所を完全に失い、結果人間界に逃げ出した。俺たちはそれの討伐のために走り回っているんだ。
「皆、行くわよ」
『はい』
リアスの言葉で俺たちは建物に入っていく。
入って数分。誰も、何も出てこない。いつもなら入ってすぐに何かしら仕掛けてくるのに。
リアスも違和感を感じているようで表情を険しくさせていた。
俺たちは警戒しながら進んでいくと、音が聞こえてきた。
何かを斬る音と、断末魔だ。
俺たちは音の方向へと足を進める。少しずつ音は大きくなってきたが、突然、音が消えた。
そこを曲がった先か!
俺たちは速度を上げて進んでいく。曲がり角を曲がり、進もうと…………。
俺たちは足を止めた。通路には窓からの月明かりが射していた。通路には大量の血が飛び散り、形を失った肉塊が大量にあった。
ゼノヴィアが咄嗟にアーシアの目を隠していた。ゼノヴィア、ナイスだ。アーシアが見るにはエグすぎる。アーシアはその手をどかして通路を見てしまい、一瞬ふらついたが、どうにか持ち直した。
俺たちは顔をしかめながら奥に進む。警戒しながらゆっくりと進んでいくと、奥から誰かの声が聞こえてきた。俺たちは一斉に奥へと走り出した。
俺たちが到着したのは一人の男性が悪魔を斬り殺した瞬間だった。天井の穴から漏れた月明かりが赤黒いシミができている黒いローブを照らしている。その男性は右手に日本刀、左手に鞘を持っていた。両手とも包帯のようなものが巻かれているが、ガッシリしていることがわかる。男性は日本刀を一度振って血を飛ばし、ローブの左袖で残った血を拭うとゆっくりと日本刀を鞘に納めた。
俺たちはハッとして構えた。何でボケッとしていたんだ!
男性はこちらを見る。銀色の左目に睨まれた瞬間、俺たちは動けなくなった!
な、何だ……圧倒的なまでのプレッシャーを感じる!まるでクロウ・クルワッハに睨まれた時みたいだっ!
男性は俺たちから視界を外し、黒いドラゴンの翼を展開した!
ド、ドラゴンの翼って、あのヒトはドラゴンで、クロウみたいに人間態の方がやりやすいとかなのかな?
俺がそんな思考を巡らせていると、リアスが言う。
「あなたは何者なの!何が目的なの!」
男性はリアスを無視して飛び上がろうとする。
「待ちなさい!」
リアスはそう言うと滅びのオーラを飛ばした!そのオーラは真っ直ぐ男性に飛んでいくが、彼が突き出した右手であっさり防がれてしまった。その右手は完全に鱗で覆われている。腕だけドラゴンに戻したのだろう。
そのまま男性は天井の穴から飛び出していった。は、速い!木場並みに速かったぞ!
俺たちは構えを解き、回りを見回す。
あの男性が殺したと思われる死体が大量にある。
「とりあえず、ここを出ましょう。気分が悪いわ」
リアスの言葉で俺たちは一度建物から出ることにしたのだった。
建物を出て数分。現場に関しては、先ほど到着した調査班が詳しく調べるそうだ。俺は即席のベンチに腰掛け、左手に意識を集中する。ドライグと話すためだ。
ドライグ、あのドラゴンが何なのかわかるか?
『わからんな、似たような気配を感じたことはあるが……』
似たような気配って、参考程度に頼む。
『ああ、何となくだが、グレンデルに似ている。そう感じたな。だが、どうせグレンデルクラスの邪龍の誰かだろう。グレンデルはあの時………』
ああ、シドウさんと一緒に………。
『悪魔嫌いな邪龍なのかもな。なぜ俺たちに手を出さなかったのはわからんが』
とりあえず、そういうことなのかな。
俺とドライグが心の中で話し込んでいると、声をかけられる。
「イッセー、良いかしら」
「いいよ、リアス」
リアスが俺の隣に腰をかける。
「さっき、サーゼクスお兄様に連絡をしてみたのだけれど。最近、クリフォトが襲撃されるケースが増えているんですって。その襲撃者はおそらく………」
「さっきの男……」
「ええ、あれが何のために動いているのかはわからない、いつ私たちに牙を剥くかもわかったものではないわ。便宜上、あのドラゴンのことは、『ブラック』と呼ぶそうよ」
ブラック、か。全身黒ずくめだったけど、また単純な。
『俺たちだったら「レッド」とか「クリムゾン」とかだったかもな』
それはお笑いだ。聞かさせたら吹き出しちゃうかもしれない。
するとリアスが俺の腕に抱きついてくる!
「何かあったら、また消し飛ばしてあげましょう。私とあなた、二人の
リアスは良いこと言ってくれてるけど、服越しとはいえリアスの胸がぁぁぁぁ!
『おまえはぶれないな』
うるさい!俺は俺だ!変わる気はない!
俺は内心を隠してリアスに言う。
「おう!俺たちは無敵だ!」
俺が宣言すると、今度は背中から独特の弾力を感じた!この弾力は!
「あらあら、仲間外れはダメですわよ?」
やっぱり朱乃さんだ!相変わらず良いおっぱいです!
リアスと朱乃さんが睨みあい、静かに俺から離れてオーラを放っていた!
ま、また喧嘩ですか!?ここで!?いまから!?
「アーシア、イリナ、今のうちだ。イッセーを連れていくぞ」
「は、はい!ゼノヴィアさん!」
「うん、チャンスは今よね!」
俺がその声を聞くと同時に後ろに引きずられた。
「おまえら、何しやがる!?離して、離してぇぇぇぇっ!」
俺がジタバタ暴れていると、急に速度が上がった。え、な、何で?後ろを見ると、小猫ちゃんが引きづるのも手伝っていた!
「小猫ちゃん!?な、何で?」
「
小猫ちゃんは赤面して俯いてしまったが、俺を引きづっている。
「イッセー!待ちなさい!」
「あらあら、抜け駆けは許しませんわ!」
リアスと朱乃さんが追いかけてきているぅぅぅ!お二人ともすごい迫力ですっ!
ロスヴァイセさんは俺たちを眺めて笑っていた。
よかった、ロスヴァイセさん。シドウさんが死んじゃって、あまり笑わなくなってしまっていたから。
俺を引きづっている面々や、リアス、朱乃さんも笑みを浮かべていた。みんな、ある意味これを狙ってたのかな?
こんなことをしながら俺たちは、平和を満喫していた。
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黒いローブを纏った男は一人、森の中を歩いていていた。
すると男の背中に黒いドレスのようなものを着た少女が飛び付いた。だが、男は気にもせずに歩いていく。背中にくっついた少女が男に聞いた。
「ケガ、してない?」
「ああ、大丈夫だよ。『リリス』」
男は微笑みながらその少女、リリスを下ろし、頭を撫でる。リリスが嬉しそうな表情になると、男はフードを取った。男の、黒と紅が入り交じった髪が風に揺れていた。
今日からしばらく更新速度が落ちると思います。ご了承ください。
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