life01 終わらない戦い
邪龍戦役からおよそ一ヶ月、リアス・グレモリー、姫島朱乃、ソーナ・シトリー、真羅
兵藤一誠たちも三年生となった。確実に時が流れているのだが、駒王学園ではシドウ・グレモリーの話題が上がっていた。彼がいなくなった表向きの理由は、故郷の家族に問題が起こったということになっている。厳しいと有名だったが、生徒からの信頼も高かった彼が、突然教師を辞めたとなれば、話題にもなるだろう。
兵藤一誠は、邪龍戦役において、リゼヴィムを打倒(一歩手前)したこと、アポプスを打倒したことが認められ、上級悪魔となった。リアス眷属の全員と、ソーナ眷属の数人にはそれぞれ昇格の話が来ている。
ディハウザー・べリアルはレーティングゲームの闇を告白したことにより、投獄となった。だが、一部の者は彼のゲーム復帰を待ち望んでいる。
そして、悪魔はいまだに問題を抱えていた。
原因はディハウザーの告白を皮切りに、アジュカやサーゼクスが、不正に関わった政府役人の摘発を
そんな時、摘発された者たちにある情報がもたらされたのだ。それが『リゼヴィムの居場所』。現在リゼヴィムは
そしてもうひとつの問題は
そんな中でも、兵藤一誠の上級悪魔昇格式は執り行われた。厳重な警備のかいもあり、何事もなく式典は終了した。
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冥界の森の奥地、誰も寄り付かないような場所に、俺、アザゼルは来ていた。理由としてはテロリスト制圧のためだ。裏方から謎の反応があると聞かされたのだ。ディハウザーの一件で役職を追われた者たちは、『クリフォト』を名乗り冥界にテロを起こしていた。
だが、イッセーの上級悪魔昇格式で何事も起こらなくて良かった。
俺は真っ先にそう思った。あいつはクリフォトからしても邪魔な存在だろう。いつ消しに来るか、それはわかったものではない。
今回俺は、ソーナと
「アザゼル、そろそろ目的地です」
ソーナが確認するように言ってくる。
「わかってるよ、地図ぐらい読めるって」
「なら良いのですが」
ソーナは眼鏡を直しながら俺に言う。ソーナの言葉でソーナの眷属たちはクスクスと笑っていた。空気が
歩くこと数分、俺たちは驚いていた。
何もないはずの森の真ん中に、巨大な屋敷が建っているからだ。地図にも載っていない、遠くからの偵察でも気がつかず、近くから見なければわからなかったものだ。相手には高度な幻術使いがいるのかもしれないな。
俺たちは近くの茂みに隠れ、屋敷の様子を見る。
廃墟のようにボロボロで見張りもいない。ソーナたちが使い魔を飛ばして調べさせたが、誰もいないようだ。
「外れ……ですかね?」
匙が聞いてきた。俺もそう思い始めていたが、何かがおかしい。ただの廃墟ならもっと早くに気がつく。
「何かありそうだ。とりあえず調べてみるぞ」
俺たちは屋敷に近づき、さらに屋敷をよく見る。
近くから見てもただの廃墟だ。俺たちは頷き合い、
完全な廃墟だ。バカみたいに広いだけだが……。
俺たちは警戒しながら奥に進んでいく。壁に飾られている絵画は無残な姿となり、元の絵がわからないほどだ。
一時間ほど時間をかけて隅から隅まで調べ尽くす。そして屋敷の最奥の部屋の前まで移動した。ここまでは成果なし、骨折り損になりそうだと俺たちは思い始めていた。
匙がドアノブに手をかけ、ゆっくりと回す。少しだけ扉を開け、中を覗く。
中を見た瞬間、匙は固まってしまった。
ソーナが匙に訊く。
「どうかしたのですか?」
匙はゆっくりと振り向いた。顔色が悪い。
「会長、これは……」
俺は匙をどかし、扉を勢いよく開ける。
室内を見た瞬間、ソーナと眷属たちが口を抑えた。込み上げてくるものを必死に我慢しているようにも見える。部屋の中は実戦に慣れているこいつらでもこうなる状況だった。
俺は一人で中に入り、状況を確認する。
部屋の屋根が一部壊れ、冥界特有の紫色の空を見ることができた。中央にはクリフォトだったと思われる悪魔の頭と両手がない死骸が転がっている。そして、壁には肉の塊や血がこびりつき、部屋の中には何人分なのかもわからないほどの手足や頭も転がっていた。この部屋は『血の海』としか言えないほどの状況になっていた………。
一体何が?
俺はそれを調べるために部屋中を探した。そして俺は唯一形を保っていた死骸から紙切れを見つけることが出来た。
血でほとんど読めたものではないが、所々なら読める。
『リゼヴィム』『
この三つの単語だけはしっかり読むことができた。
リゼヴィムはコキュートス、駒は捜索中、リリスは現在行方不明。そんな三つがなぜ?
俺は部屋を見回しあるものを発見する。
血でよく見えなかったが、壁には鋭利なもので切ったような後が確認できた。
何者かがここで戦闘をしたということか……。
俺は血まみれの紙切れを袋にいれ、懐にしまう。読めない場所を解析するためだ。俺は部屋を出て、ソーナたちに指示を出す。
「おまえら、戻るぞ。かなり面倒なことになっていそうだ」
『………はい』
ソーナたちはどこか元気がない。あんなものを見てしまったらそうなるのも仕方がない。
俺たちは屋敷の捜索を
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アザゼルたちは気がつかなかった。屋敷から出てくる彼らを、屋根に腰掛けて見ている人影に。その誰かは返り血を浴びたように赤くなっている黒いローブを身につけ、フードを深くかぶっている。体格から見て男だと思われ、左手に日本刀のようなものを持っていた。
彼はアザゼルとソーナたちが立ち去ったことを確認し、笑みを浮かべた。そして背中に黒いドラゴンの翼を展開すると、音もなく冥界の空に消えていった。
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