俺、兵藤一誠とD×Dのメンバーはアジュカ様の元に来ていた。サーゼクス様からの連絡が合ったそうなのだが、何故呼ばれたのか、それすらも聞かせていない。
場所は、駒王町から八駅ほど離れた町。俺はそんな近くに魔王様がいるなんて思いもしなかったが、リアスたちは知っていたようであまり驚いてはいなかった。
アジュカ様がいるという建物に到着、そのままエレベーターで屋上を目指す。俺たちが到着すると、見覚えのある人物が椅子に腰かけている。
「お父様、お母様?」
リアスが言ったように、リアスのお父さんとお母さんだ。なんでこんなところに?
リアスのお父さんが口を開く。
「リアス、来たか。私たちもアジュカ様からお話があると言われてね」
リアスのお父さんはそう言うが、どういうことだろう。
それから待つこと数分。サイラオーグさんやシーグヴァイラさん、アザゼル先生に連れられたヴァーリチームも到着した。
すると、奥から、サーゼクス様、アジュカ様、セラフォルー様、ファルビウム様が登場した!マジかっ!魔王様全員集合かよ!
俺が驚いていると、魔王様方も席についた。
アジュカ様が全員を見回し、口を開いた。
「今回、皆さまに集まっていただいたのは、ある人物からのメッセージを聞かせるためです」
アジュカ様はそう言うと、懐から一枚のディスクを取り出した。
「アジュカ、いくら聞いても答えてくれなかったが、メッセージとは誰からだい?」
サーゼクス様も聞いていない事のようだ。
「聞いてもらえればわかる」
アジュカ様はそう言うと、ディスクを機械にセットした。
しばらく無音だったが、ディスクから音声が流れ始める。
『あーあー、録れてんのかこれ?録れてなかったらただの独り言になっちまうわけだが…………大丈夫そうだな』
ディスクから流れた音声は、シドウさんのものだった!
全員が驚いていた。当たり前だろ!だってシドウさんは………。
『これが流されてるってことは、俺は死んだのか……まぁ、覚悟はしていたが……とにかく話を始めるか』
シドウさん、最初からあれをするつもりで………。
俺たちが暗くなっていると、録音のシドウさんの声は逆にテンション高めで話し出した。
『さて、単刀直入に言うと、俺はある嘘をついていたんだ。ああ、死んでないとかじゃないからな?後ろから登場とかはしないからな?………話がずれたな。俺がついていた嘘ってのは……俺自身の存在だ』
俺自身の存在って、どういうことなんだ!?
アジュカ様から、アザゼル先生、ヴァーリは何かを知っているようで、大きなリアクションをしなかった。
シドウさんは続ける。
『まぁ、簡単に言うと、俺は〔異世界の記憶〕を持って生まれてきた。父さんたちは何となく気がついてたかもしれないけどな。俺が生まれつきに戦闘スキルがあったのはそのせいだ』
異世界の記憶?な、何だそれ?
『イッセーがよくわかってないかもしれないから簡単に言ってやろう。俺には前世の記憶がある。余計に難しいか?』
前世って、あの前世だよな?ヒトによっては鳥とか、犬とかだったりするあれ。
『まぁ、その前世の記憶がちょっと変わっていただけだ。俺の前世は兵士だった。もっと言うと傭兵だったんだがな。セラ、ロスヴァイセ、安心してくれ。前世は恋愛なんてしてないから。ともかく、前世の俺は今と真逆だった。前世だと、毎日殺して、殺して、殺す。それで最後に殺される。そんな虚しい人生だった。でも、こっちだと毎日が楽しかった。家族がいて、恋人がいて、仲間がいて、本当に楽しかった。………まぁ、死んじまったみたいだかな』
シドウさんは時折こちらを心配するような事を口にしながらも話続けた。シドウさんの前世の事を………。
シドウさんは話した。前世の全てを、何故前世の記憶を持っていたのかはわからないと。一通り話終えたシドウさんは息を吐いた。
『はぁ~っ!スッキリした!そっちはどんよりしてそうだが、俺は生きていても告白はする気だったから、大して変わらないか。ただ、最後に言わせてくれ。父さん、母さん、リアス、サーゼクス兄さん、グレイフィア
そこで音声が終わる。サーゼクス様はアジュカ様を見た。
「……アジュカ、キミはいつから知っていた?」
「確信は無かったが、だいたい今年の終わりぐらいには……」
アジュカ様がそう言うと、セラフォルー様が机を叩いた。
「何でよ……何で言ってくれなかったのよ!」
セラフォルー様は怒りを露にしていた。
「落ち着きなさい、セラフォルー」
リアスのお母さんが静かにセラフォルー様を制した。
リアスのご両親が一番ショックを受けているはずだ。セラフォルー様もそれがわかってか、再び椅子に座った。
「さて、シドウくんが何故前世の記憶を持って生まれたか、それは現在調査中です。彼も何故そうなったか、それはわからないと言っていたので。グレモリー夫妻、お二人に何か心当たりは?」
リアスのご両親は考え込んでいた。すると、リアスのお母さんが何かに気がついたようだ。少し遅れてお父さんも気がついたようだ。
リアスのお母さんが言う。
「一度、シドウが生まれる前に危険な状態になったことがあったのですが、その時だけ特殊な治療を施すと言われて見覚えのない魔方陣を使われたことが……」
「何かあったとしたらその時だ」
リアスのお父さんが続いた。特殊な治療の施されたって、一体何を……。
「詳しく調べてみなければわからないのですが、胎児に記憶を移したという記録が発見されたのです。おそらくそれが……」
アジュカ様が何か説明し始めると、それをセラフォルー様が遮った。
「そんなの関係ない。シドウはシドウ。そうでしょ?」
有無を言わさない感じだけど、俺たちはあのシドウさんに支えられた。そのよくわからないのがあったからシドウさんはシドウさんになったんだ。
「その通りです。シドウさんはシドウさんです!」
ロスヴァイセさんが立ち上がりながらそう言い放った。
「ああ、その通りだ」
「ええ」
「そうですね」
「その通りよ」
リアスのお父さん、お母さん、サーゼクス様、リアスが揃って言う。悪魔の中でも特に慈愛が深いと言われるグレモリーだからこその発言なんだろう。
「それにしても、お母様にそんな事をしたのは一体誰なんだろうか」
サーゼクス様が若干の怒気を孕みながら言った。
問題なかったとは言え、自分の母親が訳のわからないものに関わることになっていたんだ。そりゃ怒るよな。
アジュカ様が返す。
「アグレアスが奪還できたらかな。じっくり調べさせてもらうさ」
とりあえず、シドウさん。こっちは新しい目標が決まりましたよ。
『あ、言い忘れてた』
シドウさんの音声が突然再開された!俺たちは驚きながらも再び耳を傾ける。
『このディスクは再生されると、爆発するんで気を付けてな』
言い終わると同時に、『ピッピッピッ』とタイマー音が聞こえ始めた!ヤバイ、ヤバイってどうすんのこれ!?
音の感覚は短くなり、『ピピピピピピ』と異常に速くなっていった!
それぞれが防御の態勢を作り、備えた!すると………。
『まぁ、冗談だけどな』
俺たちは数秒間固まったが、すぐさま復活して、苦笑した。シドウさんには敵わないな本当に。死んでも俺たちを笑わせようとしてくれている。
あのヒトらしいと言えばそうなんだけどな。
セラフォルー様とロスヴァイセさんも微笑んでいた。
『それじゃ、最後にひとつ』
お、まだ何かあるようだ。
『俺の魂は……いつもみんなの近くにいる。忘れんなよ?それじゃ、あばよっ!』
シドウさんの音声は今度こそ終わったようで、ディスクが排出された。
俺には、全員の表情が何となく、明るくなったような気がした。
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