トライヘキサとの決戦が終わり、連合軍の者たちはそれぞれの場所に帰っていっていた。
その中で俺、アザゼルは動かなかった。あれから近くの無人島に着地し、バックアップメンバーにトライヘキサが逃げていないかを確認を取った。どこにも転移した痕跡はない、完全に消滅したとの連絡が先ほど来たところだ。
トライヘキサの消滅、それは素直に喜ぶべきことだろう。だが、俺は喜ぶ気も、喜ぼうとも思わなかった。
リアスは後ろで「シドウお兄様のバカ……」と声を震わせていた。セラフォルーとロスヴァイセは落ち着いて見えるが、覇気を一切感じない、抜け殻のようになってしまっていた。
シドウ、おまえは本当に………。
「バカ野郎だよ……」
サーゼクスが声を漏らしていた。
本当にあいつはバカ野郎だ。世界のため、いや、愛する者たちのためにその身を犠牲にした。それが守りたかった者たちを一番傷つけるとわかっていながら、あいつは実行した。
グレンデルを取り込んでいる以上、
「…………撤収するぞ」
俺はリアスたちに指示を出す。自分でも驚くほど、俺の声が震えるえていた。
----------------------
僕、サーゼクスは最後まで残り、一人で海を見つめていた。シドウが散った場所をこの目に焼きつけるように。自分の力不足が、この事態を招いてしまった。
「シドウ、キミがやったことを僕がやっていれば良かったのか?それとも、あのまま最終手段に移れば良かったのか?」
僕がそう問いかけても、波の音が虚しく響くだけだった。
----------------------
リゼヴィム率いる『クリフォト』が起こした一連のテロ行為は、こうして幕を閉じた。
アグレアス奪還作戦、そしてトライヘキサ迎撃戦、それらは後に『邪龍戦役』と呼ばれることとなった。
邪龍戦役において、各勢力は大打撃を受けた。だが、アザゼルらが計画していた『最終手段』。それを行っていれば、さらに大きな被害が出ていたとも言われている。
トライヘキサに決定的な隙を与えた、シドウ・グレモリーは、必死の捜索が行われたが、発見されることはなく。邪龍戦役から一週間後、正式に戦死となった。
セラフォルー・レヴィアタンはそれに反対はしなかった。
それから、彼女はいつもと変わらない様子に戻っていた。サーゼクスを始めとした各勢力トップ陣は、彼女にそしてロスヴァイセに気を配った。二人が彼の後を追うことを心配したからである。
ジオティクス・グレモリーとヴェネラナ・グレモリーはシドウの戦死を、
リアス・グレモリーはシドウの死を認めるのに時間がかかった。学園では気丈に振る舞った。だが、イッセーたちの前では一人の妹として、一人の兄の死を悲しみ、涙を流した。
セラフォルー・レヴィアタンは今まで通りに振る舞った。シドウの死を受け入れ、仕事と趣味を、いつも通りに
ロスヴァイセも同じように仕事をこなしていた。生徒たちからも心配の声が上がったが、いつも通りの笑顔と、厳しさで生徒たちに接していた。一人の時にだけ、泣き出しそうな顔になることは、誰も知らない。
アジュカ・ベルゼブフは一人、いつかにシドウと会った場所で、物思いにふけっていた。
トライヘキサとの決戦直前、ある人物から、メッセージとディスクが届いたのだ。そのメッセージにはこう書かれていた。
『俺が帰らない時は、みんなにこれを聞かせてください』
匿名だったとは言え、これが誰からのメッセージだったかはすぐに想像出来た。彼は全てを覚悟の上で戦い、そして散ったのだ。ならば、自分も彼に応えなくては。
アジュカはメッセージを確認すると、サーゼクスに連絡を取った。
「サーゼクス、キミとセラフォルー、ファルビウム、D×Dのメンバー、そしてキミのご両親に連絡をしてくれ。キミたちに話がある」
連絡を終えたアジュカは背もたれに身を預けた。
「まったく、キミも用意がいいな」
アジュカは夜空を見上げながら一人呟いた。その言葉は、誰にも聞こえることはなく、静かに夜空に溶けていった。
誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。