では、一話目、どうぞ。
トライヘキサが日本近海に出現したとの報告を受けた俺たちは、病院のフロアに集まっていた。
リゼヴィムに大ダメージを与え、先ほどまで昏睡状態だったイッセーも参戦するようだ。
そのイッセーはリアスたちに色々言われているようだが。
すると、ロスヴァイセが俺にお守り渡してくれた。日本風のものだ。
「北欧の護符を日本のお守り風に収めてみました。ある程度の厄から守ってくれるはずです。持っていてください」
俺はお守りを受け取る。裏返してみると、ハートマークがあった。ロスヴァイセは顔を真っ赤にしているが、だからいい加減慣れてくれよ。
「それで、何でヴァレリーが?」
俺はロスヴァイセに訊く。
ヴァレリーは吸血鬼の国の件から意識不明だったのだが、先日の教会クーデター組との喧嘩の際、ストラーダが詫びの品として渡してきた『聖杯の欠片』、それを使ったペンダントで意識を回復させたしのだが、あそこまで回復したのか。
「アザゼル先生曰く、聖杯の制御法がわかったと」
「なるほど、量産型邪龍を止められるかもってことか」
「そう言うことです」
ロスヴァイセが頷きながら、肯定してくれた。
俺とロスヴァイセが話していると、アザゼルが言う。
「さて、ロスヴァイセ。作戦の確認を頼む」
「わかりました」
ロスヴァイセは頷き、説明を始める。
「今回の聖杯を停止させる作戦で、トライヘキサのコアに対して、私とアザゼル先生たちとで作り出した専用の束縛結界を使います。制限時間が付きますが、確実に止められるでしょう。ただし……」
言いよどむロスヴァイセにアザゼルが続く。
「現状、その結界は一度使用の使い捨てだ。同じ事をしようとしたら、一から術式を練り直すしかない。加えて、これはトライヘキサにしか効果がない」
出たとこ勝負の戦いか……やるしかない。
俺が言う。
「止めたら、行動開始か」
アザゼルが頷く。
「ああ、まずはトライヘキサを止めて、邪龍と偽赤龍帝を蹴散らしつつ、聖杯を停止される。雑魚どもを打ち止めにさせるってことだ」
ヴァーリが言う。
「それで、トライヘキサを止めたらどうするつもりだ?」
アザゼルは笑んだ。
「各神話、各勢力トップ陣の集中砲火を浴びせる。それでダメだったら……俺たちに考えがある。まぁ、成功させるさ」
あの作戦をやらせるつもりはないけどな。
俺が言う。
「成功をイメージしろ、でないと出来るものも出来なくなる。いいか、ベストを尽くせ!」
『了解っ!』
全員が力強く応じてくれた。
作戦開始までもうすぐだ。
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シドウの声に応えたオカ研、ヴァーリチーム、
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病院を出て、俺たちは日本近海の無人島に来ていた。
俺はリアスたちと別れ、一旦セラと合流していた。そのセラと俺は二人っきりだ。
他の眷属は冥界の暴徒(レーティングゲームの不正を行った者たち)の鎮圧に動いている。
出来ればセラもそっちに行ってほしかったが、ダメだった。
「……………」
そのセラは俺をかわいく睨んできている。
「セラ、大一番ってところで、何て顔してるんだよ」
セラは消え入りそうな声で言ってくる。
「シドウ……もっと体を大事にした方がいいよ。ほんとうに死んじゃうよ」
セラはそう言うと、俯いてしまった。
さっきのは睨んでいるのではなく、何て声をかけるか考えていたのか。
俺はセラをなだめるように言う。
「大丈夫だって、俺は頑丈なんだからさ」
俺はセラの頭を撫でようと右手を出す。
だが、俺は自分の腕を見て、すぐに引っ込めた。
「シドウ?」
セラが心配そうに俺を見てくる。
「大丈夫……大丈夫だ」
セラだけでなく、自分にも言い聞かせるように言う。
今はただの腕だ。だが、さっき、俺の腕は『黒い鱗』に覆われていた。そう見えてしまった。
「そう言えば、リゼヴィムはどうなった?」
俺は気を紛らわそうと話題を変える。
「コキュートス送りは確実よ。もう出てこれない」
「そうか」
俺はそう返すが、ヴァーリに悪いことしてしまったな。リベンジの機会すら奪ってしまった。
俺は首を横に振り、気持ちを切り替える。
セラがじっと俺を見ていた。
「どうした?」
「いいえ、何でもない」
セラはそう言うと顔を反らしてしまった。
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私は気がついてしまった。シドウの瞳が、ほんの一瞬、銀色になったことに。まさか、そんなはずない。シドウの瞳はリアスちゃんと同じ碧いはずなんだから。銀色……シドウの籠手に入っている、邪龍グレンデルと同じ色……シドウの瞳はそんな色じゃない!
私は気のせいと思いたくて仕方がなかった。
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ついに時間となり、作戦が開始された。
トライヘキサ迎撃のために様々な勢力からの協力者が来てくれている。現在進行形でこっちに向かってくれている者もいるそうだ。
俺たちは飛びながらトライヘキサまで接近する。
籠手を出すだけで鎧は纏わない。まだイッセーほど慣れていないからだ。
トライヘキサの影響なのか、空は厚く暗い雲に覆われていた。
俺は右腕を見る。ここにはグレンデルが宿っている。もしかしたら、こいつは俺を喰らおうとしているのかもしれない。…………上等だ。トライヘキサを止められるなら、喜んで喰わせてやる。
俺は右手で拳を作り、それを左手で包むように握った。
すると、横にいたセラが手を添えて、笑みを向けてくれた。
同時に連合軍の誰かが叫んだ。
「我らが住まう国を守るぞォォォォォォォォッ!」
『オオオオオオオオオオオオオオオオッ!』
叫びに全員が応え、トライヘキサの方に突貫していった。
俺はセラに笑みを返し、手を離して前に出る。
「グレンデル、暴れるぞ……力を貸せっ!」
俺は右手を突き上げる。
「
『balance break!!』
籠手から発せられた音声と共に、俺を黒いオーラが包み込み、鎧を形成していった。
「
俺は鎧を纏い、前線に向かった。
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