グレモリー家の次男   作:EGO

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本日は、二話更新を予定しています。
では、一話目、どうぞ。


自由登校のルシファー
life01 大博打だぜ


俺が目を開けると、そこはまた病院だった。

体に痛みはない。動けそうだ。

俺はベッドから降りて、病室を出る。

看護師や医師が慌ただしく廊下を行き来している。

すると、俺の背中に何か張り付いてきた。その何かは俺の右肩に顔を乗せるようにする。

「シドー。おきた」

リリスである。………何でリリスがここに?

俺は疑問符を浮かべながら部屋に入り、リリスをベッドに座らせる。

「リリス、何でここに?」

「シドーについてきた」

……何だ?懐かれたか?

俺が対応に困っていると、部屋の扉が開いた。

入ってきたのは黒髪に金のメッシュの男。アザゼルだ。

「アザゼルか。今はどういう状況だ?」

「おまえとヴァーリを運び出したら、それについてきたんだよ」

アザゼルは苦笑したがら答えてくれるが、俺が知りたいのはそっちじゃない。

「トライヘキサと邪龍の方だ。あれからどうなった」

アザゼルはあごに手をやり、言葉を探しているようだ。

「どうした?」

「ああ、トライヘキサだったな。あれからあいつらは堕天使の研究施設に転移、破壊した。その後は天界だ。それで、今は……」

「今は?」

「北欧の領域で、既に二日近く暴れている」

「暴れているって、だったらおまえはここにいたらダメだろ」

「それもそうなんだがな。おまえのレプリカブーステッド・ギアの事を言いに来たんだ。それが、摘出が難しそうでな」

アザゼルは申し訳なさそうに言ってくる。摘出が難しいか……。

俺は自分の右手を見て籠手を出現させる。これにはある意味で、ドラゴンが宿っているのか、だが今は宝玉は陰っている。この中身は空っぽだ。今は出すことは出来ても、起動は出来ない。

リリスは話についていけてないのか、首を傾げて疑問符を浮かべていた。

「アザゼル、ひとつ、頼んでいいか」

「何だ」

俺は籠手を差し出しながら、アザゼルに言う。

「こいつに…………」

俺は大きな賭けに出ようとしていた。

 

 

 

 

 

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俺、アザゼルはシドウからの頼みを聞いて驚愕していた。

「おまえ……正気か?どうなるかわかったもんじゃねぇぞ!」

俺は語尾を強め、シドウを説得しようとする。

「正気かどうか……それは自分でもわからない。だが、俺はこれしかないと思ってる」

シドウは覚悟を決めた目になっていた。

三兄妹揃って頑固野郎だな。まったく。

俺はわざとらしく大きく息を吐き、頷く。

「………わかった。天界は襲撃を受けて大変らしいが、ミカエルに打診する」

「頼む」

シドウは頭を下げ、俺に頼んでくる。昔なら断るところだが、今は少しでも戦力が欲しい。それが、セラフォルーやロスヴァイセに恨まれる結果にになったとしても……。

「アザゼル、全部悪いのは俺だ。だから、気負うなよ」

こいつ、俺の心を読めんのか?

北欧の戦闘が始まって既に二日、間に合うか?いや、間に合わせる!

 

 

 

 

 

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北欧での戦闘が始まって、もうすぐ三日が経とうとしていた。

私こと、ロスヴァイセは量産型邪龍に砲撃をし続けていた。ヴァルブルガの一件で使用した邪龍の動きを封じる術式、それを使用しても量産型邪龍の動きを停めきれない。数が多すぎて効果が薄れてしまっているのかもしれない。攻撃しても数が減っているようにも思えない。これではきりがない!

リアスさんたちは、イッセーくん不在の中でも頑張っている。私もシドウはさんの分まで頑張らないと!

私はそう決めて攻撃を激しくさせていく。

すると、ついにアジ・ダハーカとアポプスが動き出した。

アジ・ダハーカが幾千もの魔法陣を展開して、一斉に攻撃を放ってきた!

私とは比較にならないほどの攻撃……あれが伝説の邪龍。

「ロスヴァイセ!アポプスが動くに当たって、奴の術を阻止するらしいわ!あなたも行きなさい!」

リアスさんが指示をくれた。アポプスの術を阻止、自信はありませんが、やるしかありませんね。

「わかりました!」

私が移動を開始しようとすると、背後から突然邪龍が現れた!

アジ・ダハーカが転移術を使い、こちらの陣形を乱そうとしていたのだ。

マズイ……避けられないっ!

「ロスヴァイセ!」

「ロスヴァイセ先生!」

リアスさんや木場くんが反応しようとしているけれど、間に合いそうにない。

ここまで、なのかな?

私は目をつぶった。その目蓋の裏にはシドウさんが映った。

ドゴンッ!

「……?」

何かを殴り付ける音が私の近くからなった。けれど、私は何ともない。

私が目を開けるとそこには、黒い全身鎧(プレートアーマー)の何かがいた。イッセーくんの赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)をそのまま黒くしたようなそれには、深緑色の宝玉が埋め込まれていた。

 

 

 

 

 

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アザゼルと冥界のトップ陣は北欧の中継映像を見ていた。アジ・ダハーカの転移戦術により陣形を乱された連合軍は、危機的状況になっていた。そんな時、彼が到着したのだ。

「間に合ったか……」

「アザゼル、あれは?」

アザゼルの呟きにサーゼクスが訊く。

「あれは……正真正銘のバカだよ」

アザゼルはそう返し、映像に目を戻した。

黒い鎧を纏った彼は吠えた。正確には吠えるように両手を横に広げ、上を見上げた。

すると、黒い鎧は映像から消える。同時に数十体の量産型邪龍が全身から血を吹き出しながら落ちていく。

続けて黒い鎧は、籠手から鉤爪のように刃を出現させ、量産型邪龍の群れに突撃していった。深緑色の軌跡を残しながら高速で飛び回るそれは、すれ違いざまに邪龍を蹴散らしていっていた。

アジ・ダハーカとアポプスはそれを見て、愉快そうに笑った。

すると偽赤龍帝の軍団が黒い鎧に殺到し始める。だが、それさえも黒い鎧は圧倒し、殲滅する。

リアスたちはそんな鎧を援護し始めた。彼女たちは、あの中に誰が入っているか、それはわかっていない。だが、黒い鎧を味方と判断した。

黒い鎧は量産型邪龍を蹴散らし、原初の水を使おうと準備していたアポプスに、まっすぐに突っ込んでいった!

アポプスごと山に突っ込み、黒い鎧はそのままアポプスに接近戦を挑んでいった。

その隙に、原初の水を阻止しようとしていたヴァルキリー部隊が、戦線に復帰する。

量産型邪龍をあらかた片付けられると、アジ・ダハーカが聖杯を掲げる。聖杯が光ると、大量の量産型邪龍と偽赤龍帝が現れた!

連合軍は一瞬狼狽するが、すぐに切り替え、果敢に挑んでいく。

アポプスを黒い鎧が抑えてくれているため、少しは楽になっているのかもしれない。

そこにインド神話、阿修羅神族が増援として駆けつけ、一気に攻勢に出た。

黒い鎧はそんなものお構いなしにアポプスと戦っている。

神クラスが相手するのはトライヘキサのコアだ。だが、コアはそんな神々とも互角に勝負している。『相手に合わせ進化する』という特性と、『驚異的な回復力』の二つがコア撃破の妨げになっていた。

増援到着からさらに数時間。突然、トライヘキサと邪龍、偽赤龍帝が転移を始めた。

アポプスも黒い鎧を振り切り、転移していった。

アザゼルたちはすぐさま次の転移先を特定しようとしたが、どこにも現れない。

『おおおおおおおおおおおおおおっ!』

映像の中では勝鬨(かちどき)が上げられていた。

だが、リアスたちは黒い鎧を囲み、警戒している。

すると、黒い鎧が黒い光に包まれた。その光が止むとそこにいたのは……。

「なっ!?」

「そ、そんな!」

サーゼクスとセラフォルーは、黒い鎧の正体を見て驚いていた。

「バカが……」

アザゼルは目を細め、誰にも聞こえない声を漏らしていた。当たり前だろう。黒い鎧を纏った人物は、全身血まみれになっていたのだから。

紅髪を赤黒く染めるほどの血を流していたのだから。

映像のリアスたちも驚いていたが、ロスヴァイセが肩を貸していた。

黒い鎧の正体……シドウ・グレモリーは全身から血を流しながらも、笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 




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