では、どうぞ!
あの任務からも更に月日は流れ、向こう陣営"旧魔王派"を冥界の辺境に追いやるかたちでどうにか決着がつき、遂に新たな魔王様が決まることに、正確にはとっくの前に決まっていて、その即位(?)式が行われることになったのだ。だが、
「あぅぅぅ…」
俺の前には緊張しまくっているセラがいる。てか、何か言ってやろうと控え室に入ったら、その部屋の椅子に座ってうなだれていた。
「セラ?大丈夫か?」
「だ、大丈夫!……でもないかも」
だよな。まぁ、緊張しているのは見れば分かる。
「やっぱ、緊張してんのか」
「それもあるけど、私でいいのかなって」
「なんだ、今さら」
俺が言うと、セラは顔を上げて俺の顔をまっすぐ見てきた。
「だって、私よりシドウの方が優秀じゃない」
「そうなのか?俺はそうは思わないけど」
「ううん、絶対シドウのほうが上」
そうなのか?あのコカビエルとの戦闘から、セラもだいぶ強くなったとおもうんだけどな。それに、
「同じ家から二人も出せないだろ」
「それもそうだけど」
そう俺は魔王にはならない、てかなれないの方があってるかもな……だって"兄さんが選ばれた"訳だし
「それに、これはチャンスだと思うぞ?」
「チャンス?」
「いつかに言ってただろ?皆が戦争なんかしないようにしたいって」
「…………」
珍しくセラが黙って聞いているので、俺は続ける。
「そうしたいなら、魔王として頑張ることが近道になるんじゃないか?」
「そうかな……いえ、そうなんでしょうね」
お、やっと元気になってきたな。
「そうゆうことだから、頑張れよ…俺も支えていくからさ」
「うん☆私頑張っちゃう☆」
セラは満面の笑みを浮かべてそう言ってきた。やっぱり、こうでないとな!
「どうしたの?シドウ、そんなニヤニヤしちゃって」
「いや、セラはこうでないとって思ってな」
「もう、からかわないでよ」///
昔はセラのことが苦手だったのに、今じゃこれだもんな。本当に人生わからん。
俺たちが話し込んでいると、聞き慣れた第三者の声が聞こえた。
「楽しそうだね」
「「!?」」
驚きながらその声の主の方を見ると、そこにいたのは、
「な、なんだ兄さんか」
「ど、どうしたの?サ、サーゼクスちゃん」
「いや、そろそろ時間だから呼びにね」
なるほど、もう時間か。
「じゃ、俺は戻ります」
「うん」
「分かったわシドウ、ちゃんと見ててね」
「わーてるよ」
という訳で俺は自分の席に戻ることにした。
式が始まる数分前。
どうにか席に戻ってきた俺に、母さんからの檄がとんできた。
「シドウ!どこいってたの」
「まぁまぁ、母さんシドウにも色々あるんだよ」
「もう!あなたはシドウにあますぎます!」
と両親がそんな話をしている。ある意味、こんな会話ができることに少し安心をおぼえてしまうのだった。
式が始まり色々な話がされていくなかで、俺は昔セラに言われたことを思い出していた。
『みんな仲良く、戦わない方が』
『綺麗事だけど現実にしたい』
初めて言われた時は、夢物語みたいなこと。なんて思ってたのに、今じゃあいつはそれを実現できる地位まで行った。あいつは、セラは本当にその夢のためになら命を捨てる可能性もある。なら、何としても守ろう。一人の"悪魔"として"魔王"を守り続けようとするように、俺は一人の"男"として"彼女"を守っていく。そう心に誓ったのだった。
この章はもう少しかかりそうです
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