グレモリー家の次男   作:EGO

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本日は、三話更新を予定しています。
では、一話目、どうぞ。


life05 悪意の終わりだぜ

俺、アザゼルは一人、アグレアスの内部に侵入、動力室を目指していた。今はその道中にいたリリスをお菓子で説得していたんだが、その途中でボロボロのリゼヴィム、そしてヴァーリが現れた。ヴァーリは動けなくなったリゼヴィムに、トドメを刺そうとするとそこに満身創痍のファーブニルが現れた。ファーブニルは天界でアーシアを守るために重症を負い、治療中のはずだった。だがファーブニルは相当な無理をしてここに来たのだろう。ただリゼヴィムを殺すために。奴はファーブニルの逆鱗に触れた。それだけで万死に値する。

リリスはお菓子に夢中、アジ・ダハーカとアポプスにも見限られ、聖杯を奪われた。奴を守るものは誰もいない。リゼヴィムが死ぬのは時間の問題だった。

「ここで、使う気はなかったんだか、しゃーねぇ!」

リゼヴィムは自分の目の前に転移型魔方陣を展開した。俺たちは逃げる気かと思ったが、転移するのではなく、転移させていることに気がついた。

転移の光が弾け、そこに現れたのは、赤い鎧を纏った紅髪の青年。シドウだ。

「ありゃ、意外とやられてるみたい?まぁ、いい!シドウ!俺を守れ!」

シドウはそれを聞くと、俺たちに構える。

こいつ、操られているのか……。

だが、シドウは構えただけで、俺たちに何かしようとするわけでない。俺たちが不信に思っていると、シドウは背後にいるリゼヴィムに見えないように、ウィンクした。

こいつ、操られているふりをしているのか。

「シドウ、何やってる!早くこいつらを殺せ!」

「………断る!」

シドウはそう言うと振り向き、倒れるリゼヴィムを見下ろした。

 

 

 

 

 

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俺、シドウは、リゼヴィムを見下ろした。

リゼヴィムの顔は驚愕に包まれている。

「あ、ありえねぇ……なんで、自我を保ってられるんだよ!」

俺は不敵に笑み、リゼヴィムに言う。

「自我を保ったんじゃない。みんなが戻してくれたんだよ。テメェが信じない、仲間の想いってやつだ」

リゼヴィムは心底悔しそうな表情になった。

それはともかくとして、

「ファーブニル、ストップだ」

俺はファーブニルに声をかける。ボロボロなのによくやるよ。俺もあいつのこと言えないかもだけど。

ファーブニルは怒気を孕んだ声音で言った。

『どうして、そいつはアーシアたんを泣かしたっ!』

「それは知ってる。だが、こいつが死ねば、またアーシアが泣く……」

『……!』

「ちょっと待て、どういうことだ?」

俺の発言にファーブニルは驚き、アザゼルが訊いてきた。

「若干だが、この奥の部屋がどうなってるか覚えてるんでな。なぁ、リゼヴィム」

「ちっ……」

リゼヴィムは舌打ちをして、目をそらした。

「この奥の部屋に666(トライヘキサ)が眠ってる」

「なっ!?」

アザゼルが驚いているが、俺も驚いてるよ。

「俺に自我がなかったからって、中を案内するのはどうかと思うぞ?」

リゼヴィムに言うと、奴は黙りこんでしまった。

「それで、封印を解いているんだが、まだ完璧じゃない。リゼヴィム……おまえが死んだら、段階無視で封印解除をする。そういう手筈だろ?」

「な、何を根拠に!」

リゼヴィムが言い返してくるが、理由は簡単だ。

「俺だったらそうする。それだけだ」

リゼヴィムは目を見開き、目元をひきつらせていた。

「そんなわけで、下手にリゼヴィムを殺すとこの世界がヤバくなる。……可能性が高い」

「なるほど、リリン。おまえが考えそうな事だな」

アザゼルは納得してくれたが、後は……。

「いいか、ヴァーリ、ファーブニル」

ヴァーリは何も言わず瞑目、ファーブニルは不満顔だが、先ほどの『アーシアが泣く』という発言から納得してくれたようだ。

「ありがとう」

ある意味、これは俺の自分勝手なわがままのようなものだ。リゼヴィムを殺しても、封印が解けないかもしれない。だが、万が一という事もある。そんな曖昧なもので、俺は殺したい相手が目の前にいるのに手を出すなと言ったんだ。二人はそれを飲んでくれた。

「そういうわけだ、リゼヴィム。生きて、罪を償え」

「ちくしょう………っ!」

リゼヴィムは観念したように呟いた。

あ、そうだ。念のためだやっておこう。

俺はリゼヴィムに近づき、あごを外す。

「がっ!?」

「舌を噛まれても困るんでね」

よし、それじゃ、送りますか。

「アザゼル、こいつを送り飛ばすぞ。手を貸してくれ」

「あいよ」

俺はレプリカのブーステッド・ギアをつけられてるからな。神器無効化(セイクリッド・ギア・キャンセラー)で転移が不発しても困る。

アザゼルに拘束用の魔法をかけられ、転移の光に消えていくリゼヴィム。

「殺すなら、全てが終わってから、か……」

ヴァーリがぼそりと漏らすが、少し悲しみを感じる声音だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで、リゼヴィムを兄さんの元に送り飛ばした、俺、アザゼル、ヴァーリ、リリス(俺の背中に張りついてきた)は、アグレアスの奥地を目指していた。ファーブニルは不満顔のまま、龍門(ドラゴン・ゲート)で帰っていった。今度、アーシアに何かあげるように頼んでおこう。

さて、俺も来るのは初めてなんだが、確か悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の材料があるんだよな。

俺がそんな事を思い出していると、アザゼルが俺の右手を指さしながら言ってくる。

「そのレプリカ、どうするつもりだ?」

今、俺は鎧を解き、元に戻っている。レプリカのブーステッド・ギア、さてどうしたもんか。

「まぁ、何かあるってわけでもないし……今度こっちからグリゴリの施設に行くから、その時に外してくれ。赤龍帝はイッセーだけで十分……だろ?ヴァーリ」

「ああ、リゼヴィムの討伐は出来なかったのでね。ライバル対決だけは邪魔しないでくれ」

そう言いながら、ヴァーリは俺を睨む。

「怖いねぇ~」

俺はそう言って肩をすくめる。

「赤龍帝……赤龍帝()める?」

「まぁ、そう言うことだな」

リリスが俺の右肩からひょこっと顔を出してきた。

かわいい顔してんな。

それはともかく、もうすぐアザゼルの言う動力室のはずだ。

すると、俺たちの前にデカイ扉が現れた。

これが、動力室への扉か……。

「それじゃ、行くぞ」

アザゼルはそう言うと、扉を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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