グレモリー家の次男   作:EGO

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今日は三話更新を予定しています。
では、一話目、どうぞ。


進路相談のべリアル
life01 冷静な判断を…だぜ


ライザーとレイヴェルの一見は冥界のニュースでも大々的に報じられ、イッセーたちもどこか暗い表情になっていた。

アザゼルや兄さんが動くと言っていたので、心配はないと思うが、俺はその事とは別の考え事をしていた。

アジュカ様は俺の真実を知っても、兄さんやセラたちは何も変わらないと言っていたが、果たしてそうなのか。俺は数百年間、俺に関わった全てのヒトに嘘をついてきた。そんな俺を許してくれるだろうか。

「……ウさん?シドウさん!」

机に向かい、何もしていなかった俺に、ロスヴァイセが話しかけてきていた。

「すまん。考え事をしてた」

「何か悩み事があるのなら、私が相談に乗りますよ?」

彼女の声音は本当に心配しているものだ。

俺はロスヴァイセにも嘘を付いているんだよな……。

「いや、大丈夫だ」

「なら、いいんですが……」

シャキッとしないとな、俺にはあまり関係ないが、今日からしばらく三者面談だ。

イッセーが、『これほど嫌なものはない』、と言っていたな。

俺はそんな事を考えながら、仕事に戻ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーの三者面談が終わった日の夕食の席。

イッセーの父親がすごく上機嫌になっていた。

なんでも、『今まで何も言ってこなかった息子が、しっかり将来を見据えていたから』、だそうだ。

そのイッセーは、はしゃぐ父親を見て、顔を赤くしている。

ロスヴァイセがイッセーに言う。

「ダメですよ?将来のことはご家族ときちんと話すべきです。ちゃんと話し合わないと理解を得られない場合があったとき、大変なことになりますよ?二年生のこの時期に……」

それから長々と語るロスヴァイセだが、彼女が言った、『理解を得られない場合がある』、その言葉が、俺の心にも突き刺さった。

隠し続けた自分のせいではあるが、今になって言うのも……だが、それで、拒絶されたら………。

「シドウさん、どうかしましたか?」

またロスヴァイセに心配されてしまった。

「いや、ちょっと疲れてるだけだ」

俺はそう言って立ち上がる。

「すまんが、先に寝る」

「は、はい。お休みなさい」

「ああ、お休み」

俺は一人、部屋に戻った。

だが、その日はあまり寝つけなかった。話すにしても、どう切り出すか。話したとしても、俺を受け入れてくれるのか。そんな疑問がずっと頭の中を渦巻いていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の昼、アジュカ様からライザーとレイヴェルの受け渡しを行うむねをアザゼルから説明された。やはり、あのヒトが見つけていたのだ。俺が会った時には既に見つけていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに二日が経ち、ライザーとレイヴェルの身柄受け渡しを行う日となった。

と言っても俺は行かない。できればアジュカ様に会いたくない。会ったら、自分からぼろを出してしまう。そんな気がするからだ。

そんなわけで俺は兵藤夫妻と共に、穴場と有名らしい釣りポイントに来ていた。

釣竿を振り、釣糸を海に垂らし、後はひたすら待つだけ。悩みだらけの俺にはちょうどいい、何も考えないでできることだ。

「いやー、シドウさんも釣りをするんですね。意外でしたよ」

イッセーの父親が言ってくる。確かに、俺が釣りをするなんて、いつぶりだろうか。

「気分転換にはちょうどいい、そんな気がしまして」

「確かに、シドウさんは最近になって、ずっと何かを考えてるような顔になってましたから。誘って正解でしたかね」

イッセーのお母さんはそう続けるが、それに気がついたのは、母親の勘なのか、それとも俺が馬鹿正直に顔に出していたのか、その両方なのかもしれない。

それから数十分、俺と兵藤夫妻は、並んでのんびりと釣りにしていた。

だが、平穏は長くは続かない。

俺たちの護衛として来ていた、堕天使側のエージェントの気配が急に途絶えた。

俺は近くの茂みに目を向ける。何かが俺たちを見ている、人間ではない。

兵藤夫妻は、そんな俺を見て首を傾げていた。

その茂みからヒトが現れる。ダークカラーが強い銀色の髪に、派手な衣装、そして邪悪な笑みを浮かべている中年男性。リゼヴィムだ。

俺はひとつ、大事なことを忘れてしまっていた。リゼヴィムは俺を狙っていた。そんな俺が仲間と離れ、民間人といる。ここを狙わないほど、あいつもバカではないだろう。

俺は立ち上がり、兵藤夫妻の前に立つ。

「あ、あの~。シドウさん?」

イッセーの父親が訊いてくるが、俺は振り向かずに言う。

「お二人は先に帰っていてください。あのヒトは俺の知り合いです」

「え?でも……」

「いいから行け!」

「「!?」」

突然、声を荒げた俺に、二人は驚き、体を強張らせてしまった。

何を焦っているんだよ、俺はっ!

俺は心の中で愚痴をこぼしながら、前にいる男性、リゼヴィムを睨んだ。

「クリスマス以来だな。シドウ・グレモリー」

「俺としては会いたくなかったんだがな」

リゼヴィムはそれを聞くと「フッ」と小さく笑い、口を開く。

「最後通告と言うやつだ。どうする?」

最後通告、これを断れば、俺は殺されるのか。

俺は構えを作り、リゼヴィムを見据える。

「答えは変わらん。俺はおまえが、大っ嫌いなんでな」

「そうか、まぁ、目的はキミだけではない」

リゼヴィムはそう言うと、俺の後ろに目を向け、再び小さく笑った。その瞬間、ドサッ、という何かが倒れる音が背後から聞こえた。

振り向くと、兵藤夫妻が倒れていた。俺はリゼヴィムに殺気を向け、睨み付ける。

「安心してくれ、二人には眠ってもらっただけだ。それにしても、今のにも気がつかないとは、腕が落ちたのではないか?」

「ほざくなっ!」

俺はオーラを解放し、身に纏う。それを見たリゼヴィムは笑みながら構えを作った。

「それでは、()ろうか。後ろの二人もしっかり守ってやれよ?巻き込まれて死んでしまったら、私の計画が狂ってしまうのでね」

『おまえを殺して、全て終わらせるっ!』

俺はリゼヴィムに向かい、飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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