「私がころころしてあげるわよーん♪」
突如響いた第三者の声。全員が周辺に目を配らせ、声の主を探す。
俺たちから少し離れたところにゴシック調の衣装に傘を差している女性……魔女ヴァルブルガがいた。ま~た侵入してきたのかよ、あいつ。
全員が奴を狙い構える。ヴァルブルガは愉快そうに笑った。
「最後の最後、美味しいところを横合いから取っちゃう♪うーん、燃え萌えだと思わなーい?」
ヴァルブルガはそう言うとステップを踏み始めた。そのステップと同時に無数の転移型魔方陣が展開され、光を放ち始めた!
その光が止むとそこには大量の量産型邪龍が現れていた!
数としてはざっと見ただけで百はいるな。
そう考えているなかでも邪龍は増えていった。
邪龍の群れをバックにヴァルブルガがせせら笑う。
「んじゃ、邪龍の皆に活躍してもらおうかなーん♪」
邪悪な笑みを浮かべ手を前に出して邪龍に指示を出そうとするヴァルブルガ。
「ロスヴァイセッ!」
「はいっ!予定通りですっ!」
ロスヴァイセが指を鳴らす。すると、フィールド全体が銀色に輝き始めた!
フィールドの全てが輝き、その光に包まれた邪龍が力を失ったように倒れ始めた。
ピクリとも動かない邪龍軍団にヴァルブルガは驚愕していた。
おお~作戦成功。
俺が笑みを浮かべロスヴァイセにサムズアップをする。彼女も微笑みサムズアップを返してきた。
「これってっ!どうことなのん!?」
ようやく状況を理解したヴァルブルガが声を出した。
そんな彼女にロスヴァイセが不適に言う。
「あなたたちが来ることは想定済みです。このフィールドは私が独自の結界術式を編んで構築されたいまして、邪龍を呼び寄せると機能を封じる作りになっています」
そう言うロスヴァイセだが、トライヘキサ封印のために作っていたものが、こんな形でも役立つとは、わかんないもんだ。
ロスヴァイセが続ける。
「アーシアさんが量産型邪龍を手懐けたのが、今回の術式の大元になっています。量産型邪龍を調査させてもらいましてね。結界を作る際、彼らの動きを停止させるという術を式に盛り込んだのです」
そう言えば、アウロスの一戦で何体かの邪龍をアーシアが手懐けたと言っていたな。それからも繋がっているのか。それを一発で成功させるロスヴァイセもなかなかやるね。
ヴァルブルガは悔しそうに口元をひくつかせていた。が、途端に哄笑する。
「わーお、これは怖いことになりそうだわん。んじゃ、おいとましましょうかしらねん♪」
到着から三分足らずで撤退しようとするヴァルブルガ。
だが、彼女が転移型魔方陣を展開しても何も起こらない。
「……発動しない?まさか転移封じを……」
「いや、経路を全て断っただけだ」
再び響く第三者の声、だが今回のは聞き覚えがある。
「遅かったな。
俺が声の主に声をかける。
「さすがに数万単位の術式を全て断つのは時間がかかるのでね」
俺と幾瀬が話を進めているとヴァルブルガが声を出す。
「あ、あんた……本当に人間!?」
俺も当然のように話をしていたが、結構驚いていたりする。
幾瀬はそれを無視し、イッセーに言う。
「さぁ、決めるんだ。兵藤一誠くん。表舞台で輝いてこそ、伝説のドラゴンなのだから」
「は、はい!」
イッセーは返事をして、ヴァルブルガを視線に捉える。
さて、俺も仕事しないとな。
俺たちD×D全員がヴァルブルガだけに集中していた。
ヴァルブルガは高笑いを始めた。
「あーっはっはっはっはっ!」
両腕を広げ、紫炎を発生されるヴァルブルガ。
「じゃあ、見せてあげるわよんっ!私の
ヴァルブルガがやる気になるとそれに呼応するのうに紫炎が膨張していった。
紫炎は少しずつ形を変え、巨大に膨れ上がり、何かを形成していく。超巨大な十字架と、そこに磔にされてある八つの首を持つドラゴン……てかあれは
ヴァルブルガは紫炎大蛇を背後に言う。
「これが私の亜種
長々とどうも、てかまたあれか、毒もってんのかな?
俺が疑問を抱いていると、ストラーダが言う。
「聞いた話では、現聖十字架の使い手の能力は、磔にしたモデルによって、その姿と特性を変えるという。此度の磔のモデルは八つ首の邪龍、ということなのだろう」
説明はありがたいが、時々飛んでくる紫炎の火の粉が地味に痛い。
そんなものを気にせず勇ましく前に出る者が一人。ゼノヴィアだ。二刀流のまま前に出た。
「私がやろう。いまなら、いけそうだ」
大胆な言動を裏付けるような自信に満ちあふれて表情。先ほどの一戦で何かを掴んだのだろう。
「アウロスでの借りを返さないとな」
「俺も行くぜっ!」
俺とイッセーがゼノヴィアの横に付く。
同時にオーラを解放し、身に纏う。
『さて、お二人さん。俺がお膳立てしてやるよ』
「はい!」
「ああ!」
俺は二人の返事を聞いてヴァルブルガの方に歩き出す。
「あら、あなたが来るのん。アウロスの時みたいに燃え燃えしてあげわすわん!」
ヴァルブルガが魔法を放ち、大蛇からも火炎が吐き出される。
俺は飛び出し、大蛇の火炎は避け、ヴァルブルガの魔法はあえて避けず、身に纏う滅びで消し飛ばす。
火炎のみを避けることで最短でヴァルブルガに肉薄する!が、ヴァルブルガを通り過ぎ大蛇の方に進んでいく。
そのままブレードにオーラを込め、前方宙返りの要領で勢いをつけ、振り下ろす!
体を縦に真っ二つにされた大蛇は動きを止める。が、すでに再生し始めている。
『さぁ、ゼノヴィア。ここまでやってやったんだ。決めてみせろっ!』
俺の横で言葉にゼノヴィアは頷き、不敵な笑みを浮かべた。
「遠慮なしでいかせてもらおう!私たちは三つでひとつの剣!さぁ、共にいこうっ!」
ゼノヴィアはオーラが高まった聖剣二本をクロスして、斬撃を放った!異常なまでの聖なるオーラが十字を形作り、放たれる!放った先のものを両断していき、紫炎の大蛇をま十字に斬り裂いたっ!
その余波でフィールドが再び悲鳴を上げ、裂け目ができていった。
「クロス・クライシス、とでも名付けようか」
なんて言いながら決めるゼノヴィア。まったくカッコつけちゃってさ!カッコいいけらいいけど。
「嘘、何でこんなので私の紫炎がっ……!」
今の一撃には体を強張らせるヴァルブルガ。イッセーが砲撃の態勢を整え、ヴァルブルガに砲身を向けた。
「いくぜっ!クリムゾン・ブラスタァァァアアァァッ!」
砲口から放たれた紅のオーラがヴァルブルガを包み込んだ。
全てが終わったバトルフィールド。教会クーデター組も素直に投降してくれていた。
最後の一撃、巻き込まれるかと思った……。
ヴァルブルガは無傷ではあったが、気を失っていたためそのまま拘束し、冥界の機関に送り飛ばした。
そこにアザゼルが到着、審問を受けるため、転移魔方陣に足を進めていたストラーダが声をかける。
「さて、元総督殿。どうやら、我らに付いていた背信の徒もあぶり出せたようですな」
「ああ、おかげさまでな」
「あれ?俺、知らないんだけど……」
「ん?ああ、そうだったな。戦闘前に要らん情報を教えないほうがいいかと思ってな。リゼヴィムが煽ったのは確かだった。となると、教会内に内通者がいるはずだ。事実ヴァルブルガが入り込んできたわけだ」
「で、そいつらは捕まえたのか?」
「問題ねぇよ」
「なら、いいさ。ロスヴァイセの結界、封印術も試せたんだ。結界オーライってやつだ」
俺がそう言うとロスヴァイセは誇らしげに笑んでいた。
「フィールドが壊れないか、封印術以上にそこが心配でしたよ」
確かに、このフィールドは通常以上に強固な作りらしい。それが今や崩壊寸前だもんな。そりゃあ、心配もする。
と、ストラーダが懐を探りひとつの小瓶を取り出した。
「アザゼル元総督殿、あなたにお渡ししたいものがあります。それは、此度の騒動の代価のひとつです。受け取っておいて損はないでしょう」
アザゼルが受け取った小瓶の中には陶器の欠片が入っている。
「アザゼル……もしかして、この欠片って…」
「ああ、本物の聖杯の欠片だ」
『……ッ!?』
それを聞いていたD×Dメンバーは驚いていた。まぁ、驚くよな。
アザゼルが確認するようにストラーダに訊いた。
「そういうことなんだな、ストラーダ」
ストラーダは無言で頷いた。そんなストラーダに俺が訊く。
「ストラーダ、おまえ、最初からこのつもりで?」
ストラーダは何も言わず笑みを浮かべるだけだ。
そして俺の横を通りすぎ、木場の方に歩いていった。
俺は振り返り彼の背中を見送る。
悪魔として長く生きてきたが、あの人はこの世界で会った最高の人間だと、俺は思った。
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