あれから三日の時が経ち、喧嘩に参加するメンバーが兵藤宅の地下転移室に集合していた。
その三日の内にタイニーンが来て、ドラゴンの卵を預けて来たらしい。あとクロウ・クルワッハもそれに付き添ってきたらしいが、タイニーンの頼みってこともあり、彼に任せたとのことだ。
俺がこの三日のことを思い出していると、アザゼルが話し出す。
「いいか、これは教会クーデター組との喧嘩だ。場所はこの転移魔方陣の先に作ったレーティングゲーム用のフィールドで行う。相手もそれを承知した。ここよりは派手に暴れられる」
ソーナが言う。
「深夜零時ちょうどに開始ということになっています。相手もこちらが用意した転移型魔方陣でフィールドに来ることでしょう」
俺がソーナに続き、言う。
「その転移で牢獄にってのも考えたが、そんなことしたら余計に禍根が残っちまうからな、やらないことになった。それに、喧嘩をするなら面と向かってやるのが礼儀ってやつだ。上の連中もクーデター組に退路がないのも重々承知なんだろうよ」
あと、俺たちのことを多少は信頼してくれているのだろうか、それとも俺たちを信用した、ストラーダとクリスタルディを信頼しているのか。
アザゼルが続く。
「貧乏くじを引かせてしまって申し訳ない。だが、ストラーダ、クリスタルディ、この両名がただイタズラに不満を抱いた戦士を連れてきてはいないだろう。戦士たちの憤りを俺たちにぶつけたいのが本音だろうが、枢機卿の三名の真意は他にある。ある程度、ヴァチカン本部から情報を得ていてな……あいつらは本当の大馬鹿野郎だってことがわかった」
アザゼルは苦笑いしているが、どことなく呆れと悲哀の色を瞳に映していた。
まぁ、俺は戦闘に集中させてもらうがね。
俺がもうひとつ情報を言う。
「それと、フィールドのモデルは駒王町だ。学園を中心に半径十キロの地域を再現した。フィールドの形成にはロスヴァイセが協力してくれた」
ロスヴァイセが一歩前に出て、説明を始める。
「トライヘキサ用に研究中の術式をフィールドに用いています。……良い結果が得られればいいのですが…」
ロスヴァイセが昔に書いた論文、それはどうやらトライヘキサの封印に一役買いそうだと言う。アザゼルや研究者と協力して作っていると聞いたが、だいぶ形になってたんだな。
未知の相手に封印術式を作る……ストレスがスゴそうだな。今度何かやってやるか。
俺が説明を続ける。
「向こうはストラーダを中心としたグループと、クリスタルディを中心としたグループに別れてくるそうだ。というわけで俺たちも別れるぞ。クリスタルディのほうにはデュリオを中心として、グリゼルダ、イリナ及び
アザゼルが追加で情報を言う。
「ルフェイと黒歌、
俺たちが一通り話し終えると、木場が一歩前に出た。
「シドウさん、僕もジョーカー側に付いてもいいですか？」
木場が何かを言ってくるとは、まぁ予想通りではあったが。
「エクスカリバーか？クリスタルディは天然のエクスカリバー適合者、しかも今はエクスカリバーのレプリカを持っている、だからだろ？」
俺が訊くと木場は頷いた。
「戦わせてください。僕はもう一度、エクスカリバーをエクスカリバー使いを越えたいと思っています。これは復讐ではありません。挑戦なんです！」
木場は昔行われた『聖剣計画』という非人道的な実験の生き残り、一時期エクスカリバーへの恨みを爆発させていたらしい。それが再燃とまでは行かなくても、嫌でもエクスカリバーを意識してしまうのだろう。
「やらせてあげてもよろしいのでは？」
突然聞こえた第三者の声、その声の主は今しがた部屋に入ってきたと思われる、ヴァーリチームのアーサー・ペンドラゴンだった。
「まぁ、剣士のこだわりは剣士でしか癒せないからな。俺もコカビエルにこだわってたわけだし」
「それでは！」
「別にいいが、アーサー。おまえが変わりにこっちにつけ、いいな」
アーサーは作ったような笑みを浮かべていた。
それからしばらくそれぞれがリラックスするように心がけ、時間が過ぎていった。
時計を見て、時間を確認し、同じく確認していたソーナと頷きあう。
「さて、時間だ。行くぞっ！」
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