では一話目、どうぞ。
life01 新年会とまた問題だぜ
クリスマスから何日か経ち、もう新年だ。
と言っても、やることは去年とあまり変わらないはず。てか、今年中に色々終わらしてのんびりしたい。
俺が真面目に考え事をしていると俺の腕に抱きついてくる女性が一人。
「えへへ~、シドウ~」
「セラ……ベロンベロンじゃないかよ」
「酔ってなーい。酔ってなーい」
セラである。
現在俺は、アザゼル主催の各勢力合同新年会に参加して(されされて)いる。
俺は壁にもたれかかって座り、セラの頭を撫でながら回りを見る。
酔っ払ったアザゼルは上半身裸で踊り、それに同じく酔っ払ったオリンポスの主神、ゼウスがそれに即発されて踊り始め、これまた酔っ払ったミカエルがその二人を見て爆笑。
酔っ払ったグレイフィア義姉さんに怒られ、正座しているコスプレ野郎、もといサーゼクス兄さん。
そして、
「おーでぃんのくそじじいぃぃ!かくごぉぉ!」
「なぜお主がここに居るんじゃ!」
酔っ払ったロスヴァイセに追われるあまり酔っていないオーディンのじいさん。
ちなみにロスヴァイセは俺についてきた。
後でイッセーに写真でも送ってやろう。
「何かカオスだな~」
俺はそんなことを言いながらアザゼルたちと同じくらい酒を飲んでいるわけだが……俺が酒に強いのか、回りが酒に弱いのか。
するとロスヴァイセがオーディンへの攻撃を諦め、千鳥足でこっちにくる。
「しどうしゃ~ん。おーでぃんのじじいつかまえるの、てつらってくらさい」
「断るっ!」
「え~つれませんねぇ~。そんなしどうしゃんにはまた……」
ロスヴァイセはそう言うと俺の胸に顔を預けてくる。
ま、またあれされるのかっ!?
身構える俺だが、ロスヴァイセは何もしてこない。
「すぅぅ………すぅぅ………」
ね、寝たのか。助かった~。
セラも静かだなと思ったら、そちらも眠ってしまっていた。
やれやれ、どうしたもんか……。
右手にはセラが絡み付き、体にロスヴァイセが抱きついている。動けんっ!
すると先ほどまで踊っていたアザゼルがニヤニヤしながらこっちにくる。
「ふふふ、シドウ。それなら何もできまい……」
アザゼルはどこからか筆ペンを取り出した。
「ア、アザゼル!テメェなにするつもりだっ!」
「誰かシドウを押さえろっ!落書きしてやる……日本の新年はこういうこともするらしいからな」
「それをやるなら羽子板とかで勝負してからだっ!」
俺が反論していると、兄さんとゼウスさまがガッチリと俺の顔を押さえつけてくる。
「な、何をするだっ!」
「まあまあ、シドウ。これも余興だよ。たまには付き合ってくれ」
「よくわからんが、面白そうだっ!」
「ふざけるなぁぁぁ!」
「ふふふ、シドウ……覚悟っ!」
「のぉぉぉぉぅ!」
この後、なぜかアザゼルが筆ペンを全員に回し始め、俺の顔は大変なことになった。止めない兄さんも兄さんだが、グレイフィア義姉さんもやってくるとは思わなかった。
ユーグリットの件で疲れてそうだから、俺と兄さんとで無理やり連れてきたんだが、正解だったな。
「てか、いい加減にしろぉぉぉ!」
俺の叫びは誰の耳にも届くことはなく、新年会は続いたのである。
悪夢の新年会から数週間、駒王学園三学期が始まった。
旧校舎にはいつものオカ研メンバーと生徒会メンバー、アザゼルが集まっている。
全員いることを確認して、アザゼルが話し出す。
「新学期早々だが、悪いニュースだ。ま、悪いと言っても最悪ってわけじゃないが、おまえらの耳には入れておいたほうがいい」
イッセーたちの表情が固くなった。
それを確認して、アザゼルは続ける。
「教会の一部信者……主に所属していた戦士たちがクーデターを起こしたのは話したな?」
まぁ、簡単に言うと、今まで敵対していた奴らと突然仲良くしましょうと言われても無理だ。と感じる奴が多く、不満が溜まりに溜まってたわけだ。それがクーデターに繋がった。
俺が続く。
「と、言っても転生天使が頑張ってくれたおかげで大半は収拾できてるんだが……首謀者の三名が逃亡中、その三人にはまだかなりの数の戦士が付き従っているらしい」
ソーナが名を上げ始める。
「司教
それを聞いた一名を除いたメンバーが険しい顔をしていた。
イッセー……勉強不足だな。
「イッセー、簡単に言うと、教会の上から二番目、三番目、四番目の役職の奴がクーデターをやってるってことだ」
「…あ、ありがとうございます」
「だが、ストラーダってかなりの年じゃなかったか?」
俺の質問にイリナが答える。
「はい、御年八十七になります」
「は、八十七……前デュランダル所持者もそんな年なのか」
俺の一言にゼノヴィアは目元を険しくさせた。
「年齢のことは忘れたほうがいい。あの方は……生きる伝説、いまだ肉体は衰えていない」
「どんな鍛え方してんだよ……」
「まぁ、シドウじゃ任務とかで知らないことが多いかもな。ストラーダは昔にコカビエルと一戦交えたが、相当追い詰められた。つまり、少なくとも昔のおまえ並みに強いってことだ」
つまり化け物ってことか。
「クリスタルディってヒトはエクスカリバーの使い手だったな。確か……三本を同時使用だったか?」
俺が若干疑問形で言うと、アザゼルは溜め息を吐きながら言う。
「シドウ、どうしてうろ覚えなんだよ……。まぁ、あってるがよ。クリスタルディはグリゴリでも話題の人物だった。理論上、全て使えたのではないかと言われてもいる。ていうよりも、ストラーダもクリスタルディも戦士時代に大きく名を馳せた怪物だよ。多くの戦士を育成した成果も相まって、戦士出の聖職者としては二大巨頭だ。そんな二人が声をかければ、どれほどの戦士が動くか……」
元デュランダル使いと、元エクスカリバー使いか、何か縁を感じるんだが。
「それで………テオドロ・レグレンツィは、最年少で司祭枢機卿に上り詰めたスゴい奴?」
再び疑問形で言うが、アザゼルもよくわかっていないような表情になっていた。
「俺もその程度の認識しかなくてな、おまえのことをバカにできん。それで、イリナ。どうなんだ?転生天使のおまえなら何か知ってるんじゃないか?」
イリナはあごに手をやり、首を傾けて考えている様子だった。
「私も名前だけしか知らないんです。シスター・グリゼルダも同様かと……」
転生天使でも会ったことがない司祭枢機卿、何かありそうだな。
アザゼルが改めて口にする。
「つまりだ。そのクーデターを起こした連中が逃亡しているが、目的地はおそらく、ここってことだろう」
アザゼルが人差し指を下に向けながら言った。
俺が続く。
「捕らえた戦士から聞き出した情報では、奴らはD×Dとの邂逅を望んでいるそうだ。同盟の中心とも言えるおまえらと会ってみたいんだろう。話し合いで済めばいいが……」
緊張感が増すイッセーたちにアザゼルは苦笑した。
「ま、そこまで気を張るな。命懸けの連続でそうなっちまうのもわかるが、今回は血生臭いことにはならないだろうよ。実際、クーデターで怪我人は出ているが死人は出ていない。今回はあくま戦士の不満が爆発しただけだ」
俺はアザゼルに続く。
「だが、こういう時をテロリストは狙ってくる。噂じゃ、リゼヴィムが煽ったって言われてるからな。用心を忘れるなよ」
『はい』
全員の返事を確認したとろこで俺は時計を見る。
「さて、そろそろ会議の時間だ。行ってくる」
俺の言葉にアザゼルが訊いてくる。
「ん?会議なんてあったか?」
「体育教師は忙しいんだよ」
俺はそう言って旧校舎を後にするのだった。
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