天界、第五階層こと第五天で俺とロスヴァイセは戦っていた。
俺たちの連携攻撃に量産型邪龍は次々と落とされ、息絶えていく。
俺が斬り損ねた邪龍をロスヴァイセが撃ち落とし、ロスヴァイセに向かっていく邪龍を俺たちが斬り殺す。
俺とロスヴァイセは出会って四ヶ月ぐらいだが、なんか無意識にそれが出来てしまう。
だが、そろそろヤバイかも……。
俺は膝をつき、立ち上がれなくなってしまった。
くそっ!動いてくれ、俺の体っ!
俺が踏ん張りながら立ち上がり、邪龍を斬るが、足を踏ん張ることができずに、斬った勢いのまま倒れてしまう。
「シドウさん!」
ロスヴァイセが邪龍に砲撃しながら近づいてくる。
「シドウさん!しっかりしてください!」
ロスヴァイセの肩を貸してもらい、立ち上がる。
これは、本格的にヤバイな……。
俺とロスヴァイセを囲む邪龍軍団。
一体一体が口から炎を溢れさせ、こちらに放とうとしている。
俺はロスヴァイセに言う。
「ロスヴァイセ、逃げろ」
「な、何を言っているんですか!」
「だから、おまえだけでも逃げろ」
「できるわけないじゃないですかっ!」
ロスヴァイセは俺から離れようとはせず、防御術式を展するが、この数はいくらなんでも無理だ……。
「ロスヴァイセ、頼む……」
「聞けませんっ!私は最後まであなたと戦いますっ!」
やれやれ、こいつは………。
邪龍軍団が炎を吐き出そうとした瞬間、邪龍軍団に向かって光の槍が降り注いできた。
「「?」」
俺とロスヴァイセが疑問符を浮かべていると、俺たちの上から金色の羽を展開した天使が降りてくる。
「ミカエル様っ!」
ロスヴァイセに呼ばれたそのヒト、ミカエルは微笑む。
「お二人とも、ご無事のようでよかった」
「………死にそうなんだがね」
「まだ邪龍は残っているのは知っています。彼の治療を最低限でいいので、お願いします!」
ロスヴァイセが頭を下げる。
「わかっていますとも、ガブリエル、頼みます」
「は~い」
間延びした声で返事をする、ブロンドの女性。
彼女が四大セラフの一人、ガブリエルだ。
「それでは~、こちらで~す」
ガブリエルの先導でロスヴァイセの肩を借りて、俺は移動する。とりあえず、助かったかな?
一応の治療(また薬を打ってもらった)を終え、俺は再び走り出していた。ガブリエルの話だと八重垣は第四天、エデンの園にいるとのことなのだ。
そこを目指して走っているわけだが、体がダルくてしょうがない。
俺の体調を心配するロスヴァイセが声をかけてくる。
「シドウさん。やはり休んでいたほうが……」
「大丈夫だって、下にはミカエルやイッセーたちもいるらしいし、戦闘になっても俺の出番はないだろ」
「お二人とも~、そろそろですよ~」
ガブリエルが声をかけてくれるが、何か調子狂うな。
ドゴオォォォォォンッ!!
爆音が俺たちの耳に届き、この先でまだ戦闘していることを知らせてくれた。
「まだやってるみたいだな。急ぐぞ」
「はいっ!」
「は~い」
俺の言葉にロスヴァイセははっきりと、ガブリエルは間延びした声で返事をしてくれた。
俺たちは速度をあげ、爆発の中心を目指した。
爆発が起こった場所に到着すると、リアスたちオカ研とデュリオ、それと帝釈天の使い、曹操、そしてなぜかクロウ・クルワッハが確認できた。
そして、爆発の中心にいたであろう男、リセヴィムは俺のことを発見し、笑っていた。
「シドウ・グリモリー、キミの答えは変わったかね?」
「逆に変わると思ってたのか?」
「それもそうだな……では、今回は退こう。目的は終えたのでね」
りリセヴィムの手には二つの果実が握られていた。
「それはっ!」
ミカエルはそれを見て驚き、ガブリエルも目を見開いていた。
あの果実……まさかっ!
俺たちを尻目にリセヴィムは言う。
「これは知恵の実と生命の実だ」
だろうな、だが確かそれって……
「もう長くなってないと聞いたんだがな……」
俺が言うとリセヴィムが果実を見ながら言う。
「確かにもうなってはいない。だが、保存はされていた。と言えばどうする」
「そうか、テメェの母親、リリスはここに……」
「その通りだよ、シドウくん。私の母リリスはよく言っていた。『神の目を盗んで、果実を隠してやった』と、自慢げにな。昔は半信半疑だったが、こうして見つけられた。干からびていたがね」
「それを聖杯で復活させるのか?まったく。ミカエル、よく探したのかよ」
「探すも何もありません。感知もできませんでした」
「当たり前だ。これは
煉獄か、冥府と天界を繋ぐ隠れ道。
「ここを攻めたのはついでか、まったくいい迷惑だ」
リセヴィムは俺の言葉を聞いて、ニヤリと口の端を歪めた。
「さて、私は帰るとしよう。リリス、行くぞ」
リセヴィムの言葉にリリスがどこからか現れ、横についた。リセヴィムはそれを確認し、転移型魔方陣を展開した。
「クロウ、キミもだ」
クロウ・クルワッハはリセヴィムを無視し、黙っていた。
「それも一興か」
リセヴィムはそう言うと転移の光に包まれていった。
そして俺の意識はそこで途切れたのだった。
再び目を覚ました俺は、体を起こし回りを確認す……
「シドウさん……いい加減に……」
ロスヴァイセが鬼の形相で俺を睨んでいた。
「いや、無理はしてないからな」
「………………」
「いや、ゴメン」
ロスヴァイセの無言の圧力に折れ、謝る。
ロスヴァイセは溜め息を吐きながら言う。
「いちおう解呪は完璧に終了しました。一度イッセーくんの家に戻って、クリスマス計画に」
「参加していいだろ?」
「参加しないで、安静にしていてください」
「なっ!?」
「『なっ!?』じゃないですよ!無理しすぎです!休んでください!」
クリスマス計画に参加できない……つまらんクリスマスになりそうだ。
俺がしょんぼりしているとロスヴァイセが言う。
「私がしっかり看病してあげますから」
ロスヴァイセはそう言うが、顔はすごい嬉しそうだ。
ロスヴァイセと二人ね……悪くない、かな?
「わかった。安静にさせてもらいますよ」
「わかればいいんです。それでは、移動の準備を始めましょう」
俺はそれを聞いてベッドから起き上がり、用意されていた服に着替えようとする。
「……ロスヴァイセ、いつまでいる気だ?」
「え?あ、いえ!すいませんっ!すぐ出ます!」
ロスヴァイセは部屋を飛び出していった。
やれやれ、退屈しないな本当に。
俺はそう考えながら身支度を整えるのだった。
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