では一話目、どうぞ。
俺とロスヴァイセが走り出して数分、渡り廊下を使い、トウジさんがいるという病棟に到着した。
廊下の窓からは天使と量産型邪龍の戦いが確認できる。
ロスヴァイセが訊いてくる。
「シドウさん。大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、問題ない」
俺の返事を聞いて、ロスヴァイセは頷き、二人で病棟の見取り図を確認する。
「さて、トウジさんがいるのは~、この三階の集中治療室ってところだろ。で、俺たちは……七階か」
「はい、そのはずです」
俺とロスヴァイセでそれを確認して、移動を開始する。
「渡り廊下がこんなに上ってのも変な感じだ」
「二階にもありましたが、シドウさんの病室が上のほうだったんです。仕方ありませんよ」
愚痴をこぼしながら移動し、階段を下りて三階に到着。
「さて、集中治療室は……」
「こっちですね」
ロスヴァイセの先導で再び歩きだす。
にしても、広いなまったく。
俺がそう思いながら移動し、トウジさんがいると思われる部屋に続く曲がり角を曲がると、部屋に入ろうとしている人影が確認できた。
長い黒髪に、禍々しいオーラを放つ剣をもった男性。
俺とロスヴァイセはすぐさま構え、その男を睨む。
「シドウ・グリモリー……ずいぶん元気そうですね」
「おかげさんでな……
俺の言葉に男は、八重垣は薄ら笑いを浮かべた。
ロスヴァイセが俺の耳元で言う。
「シドウさん、ここで始めたら……」
「わかってるさ、どうにかして場所を移すしかないが……」
八重垣は剣先をこちらに向けながら言う。
「そちらから来ないのなら、こちらから行きますよ」
奴はそう言うと一気に距離を詰め、斬りかかってくる!
俺はそれを咄嗟にブレードで止めるが、それだけでブレードにヒビが入った!
不意討ち気味だったとはいえ、ここまで脆くなってるかよっ!
ロスヴァイセが俺に防御強化の魔法をかけてくれるが、ブレードのヒビはその間にも大きくなっていく。
俺は八重垣に押しきられ、態勢を崩す。奴はその隙を見逃さず斬り払おうとしてくるが、ロスヴァイセの放った電撃がそれを阻止してくれた。
俺はその間に態勢を整え、ブレードを凪ぎ払い、八重垣を牽制する。
どうしたものか……ここだと本気で攻撃ができずに防戦一方になるのは目に見えてる。
思い出せ、この建物の構造を……。
「ロスヴァイセ、確かここ中庭があったよな?」
「……はい!」
ロスヴァイセも気づいたようだ。
「やることは一つだ。俺に腕力強化をかけてくれ」
「それは負荷が大きすぎますっ!」
「殺られたらどっちにしろ終わりだ!やってくれ!」
「………わかりました」
ロスヴァイセはそう言うと俺に魔方陣を当てる。
腕に力が入ってきたが、これはキツいなっ!
「行くぜ?八重垣っ!」
俺は駆け出し突きを放ちにいく。八重垣は先ほどの攻撃から今の俺は大きな問題ではないと考えたのか、正面から迎えうつ構えを取るが、俺の突きを奴が剣で防いだ瞬間、八重垣は後ろに大きく吹き飛ばされた!
俺はすぐさま走り肉薄し、再び突きを放なって八重垣を追撃して吹き飛ばしていく!
吹き飛ばされた八重垣は、壁をぶち抜いて外まで飛んでいった。
一瞬、ふらつくがどうにか踏ん張り、声をだす。
「ロスヴァイセっ!援護頼むぞっ!」
「はいっ!」
俺は穴から飛び降り、八重垣を追い、ロスヴァイセはその穴から砲撃を放っていた。
悪魔の翼を出し、ゆっくり着地すると、そこに八重垣の剣から伸びた
俺はそれを避けていき、八重垣を狙いに行くが、前と同じように防がれてしまう。
ロスヴァイセの砲撃が首を吹き飛ばすが、すぐに再生してしまう。
今度は血がかからないように気を付けないとな。
俺はそう思いながら攻撃して、切り傷をつけていくが、また回復されてしまう。
このままじゃ、らちが開かないな。
俺がどうするか考えていると、八重垣が喋りだす。
「あなたにかまっている暇はないのでね、後はあれに任せるとしましょう……」
「あれ?また邪龍でも呼ぶのか?」
すると俺と八重垣の間に何かが降りてくる。
巨大な黒色の鱗に覆われたドラゴン……こいつはっ!
「グレンデルっ!?」
俺の目の前に降り立ったドラゴン、それはつい先日封印したはずのグレンデルだった!どうしてこいつが!
八重垣が俺の心を読んだように言う。
「なぜこいつが、と思いましたね?邪龍は量産できるのは知っているはず。後は……わかりますね?」
「グレンデルの量産型かっ!」
「ご名答です」
俺は量産型グレンデルに気をとられて気がつかなかったが、大蛇の首の一本が地面に潜っていた。
まさかっ!
「ロスヴァイセっ!避けろっ!」
「…ッ!」
俺の叫びにロスヴァイセは反応して、壁の穴から飛び出てる。
するとロスヴァイセがいた場所の下から首が出てきた!
地面、そして建物を貫通させて狙ったのか!
大蛇の首はそのままロスヴァイセを狙い、伸びていくが、俺は翼を展開、飛び出して、違いざまにロスヴァイセを回収、そしてその場を離れる。
「大丈夫か」
「はい、助かりました」
ロスヴァイセの無事を確認すると、八重垣は建物に入ってしまっていた。
奴を追うために俺とロスヴァイセは走り出したが、横から割って入ってきた量産型グレンデルに邪魔をされてしまう。
「だぁぁっ!とりあえずこいつを片付けるぞ!」
「やるしかありませんね」
俺とロスヴァイセはグレンデルに対して構えを作る。
ロスヴァイセが魔方陣を展開し、砲撃していき、俺はそれに紛れてグレンデルに肉薄していく。
グレンデルは砲撃を受けながらも俺を攻撃しようとしてくるが、どれも遅く、単純なものだ。
俺は隙だらけのグレンデルに斬りかかり、傷をつける。
今の俺の攻撃でも傷が出来るってことは……。
俺は一度距離を取り、ロスヴァイセに言う。
「ロスヴァイセ、こいつオリジナルほど固くない!」
「でしたら、やりようはあります!」
ロスヴァイセはそう言うと砲撃の砲弾を槍のように変え、連続で撃ち出していった!
オリジナルのグレンデルなら全て弾かれるのだろうが、奴には全てが突き刺さっていく。
槍が刺さり、そこから青い血を吹き出す量産型グレンデル。
俺はブレードに魔力を込め、グレンデルに飛びかかる。
グレンデルの拳を体を捻りながら避け、眉間にブレードを突き刺す!
『グオオオォォォォォォォッ!』
量産型グレンデルは叫びを上げるが、俺はブレードを突き刺したまま奴の背中のほうに走り、背中に大きな傷をつけたら飛び降りる。
ブレードで裂かれた背中にロスヴァイセの砲撃が降り注いだ!
『グオオオォォォォォォ…………』
量産型グレンデルは断末魔をあげながら、倒れた。
ピクリとも動かない量産型グレンデル、念のためブレードで突いてみるが、反応なし。死んだな。
それを確認すると同時に視界が歪み、膝をついてしまう。
「ッ!」
「シドウさん!」
ロスヴァイセが駆け寄り、支えてくれるが、ロスヴァイセはハッとした表情なっていた。俺の右手には黒いシミのようなものが出来ており、体を確認すると黒いシミがいたるところに出来始めていた。
毒が回り始めてるってことか………まずいな。
「シドウさん!もう限界です!これ以上は……」
「まだだ、まだ行ける」
ロスヴァイセに心配の言葉を聞いていると、誰かの声が聞こえてきた。
「紫藤さんはいただきました!私はこれで失礼します!」
八重垣だ。奴はトウジさんを脇に抱えていた。
その八重垣はどこかに走っていってしまう。
「逃がすかよっ!」
「シドウさん!」
追いかけようとする俺をロスヴァイセが止める。
「私一人で追いかけます!ここにはいてください!」
「確かに俺がいると足手まといだが、ここに一人でってのは無理だ」
俺はそう言うと回りを見渡す。
量産型邪龍が俺たちを囲んでいた。
ロスヴァイセは驚きの声をあげる。
「いつの間にっ!」
「グレンデルの咆哮で集まってきたのか……これは…やるしかないぜ?」
「……わかりました。無理はしないでくださいね」
「もう、無理しまくってんだかな」
俺はそんなことを言いながらブレードを構える。
ロスヴァイセも砲撃の態勢に入っていた。
「それじゃ、行くぜ!」
「はいっ!」
俺とロスヴァイセは再び戦い始めたのだった。
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